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大塚則久『退化の進化学』

  • 講談社ブルーバックス、2006年12月。
  • 難しいけれど面白いことが一杯書いてあります。
  • 肘から先は骨が二本、膝から下は骨が二本あります。一本折れても大丈夫という意味もあるんだって。身体のどこかに骨を移植する必要がある時、ここから削るという。
  • 膝から下の二本は普通に平行についていますが、肘から先の二本はねじれてついています。このあたりを進化の歴史に沿って眺めています。
  • 虫垂は、取り除いても何ともないといわれて、虫垂炎のオペがたくさん行われたのですが、最近は、免疫機能があるといわれている。
  • 人間の身体には退化のあとも進化のあともあり、他の動物と比較してみると大変面白い。
  • 人間の耳の中の骨は、サメのアゴの骨にあたる。
  • 胎児から成人に成長する過程で、生物進化の様子を再現することがある。個体発生は系統発生を反復する。その具体例が数多く挙げられている。参考文献の多さを見ても、文章の密度を見ても、緻密な論証であることが分かる。
  • しっぽがなぜなくなったか、分かっていない。
  • ヒトで毛が退化したのはなぜか、分かっていない。男性のほうが毛深く、ヒゲがあることの理由も分かっていない。髪の毛がある理由も分かっていない。仮説はいくつかあるが難問である。
  • これは確定した説ではないと思うのだが、紹介されていたので、ここに書いておく。……脳にも性差がある。女性の脳が原型で、誕生前後に大量に男性ホルモンを浴びることで男性脳ができる。女性でも、副腎から男性ホルモンが出過ぎれば男っぽくなるし、男性でもホルモンが足りないか、出たホルモンに脳が反応しなければ、女性脳に近くなる。遺伝的な性と脳の性が一致しないと性同一性障害が起こる。性器は正常なので、自分の心と体の性が逆になる。社会は男か女か二者択一を求めるので、これらの人はつらい立場におかれる。
  • 精子が体内で長い旅をする理由は、進化のプロセスから説明できる。
  • 農業が始まって以降のヒトは自己家畜化動物といわれ、発情サインが失われている。狩猟採集民族は発情サインがあり、春にしか出産しないらしい。
  • このほかにも一杯。よく調べたものです。拍手。


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