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ベンチで過ごす時間

驚いたことに、
公園の坂の途中にあるベンチで
呆然と時を過ごしていた

そのことにイライラしない自分がいた
酒を飲んでいるわけでもない
ただ呆然と時間をやり過ごしていたのである

いま思うに、それは恐ろしいことだ
そのようにして私はだんだんと過去の人になる

少し坂になっているので
登る人も降る人も
少しずついろいろな姿勢を見せている
恋人たちは自然に寄り添ったり
ふざけて背中を押してみたりしている

そのようにしてゆるゆると時間は過ぎていった

ベンチに座っていたら
あいているところに座っていいですかというので
半分席を譲った
聴くともなく話を聞いていた思ったのだが
人々は何と無駄な話をするものだろう
情報がないのだ
とても単純な情報の確認であって
極端に言えば、「私はあなたに敵意を抱いていない」ことを
時間をかけて証明しているような会話である。

たしかに、何も話さず緊張が高まる状況は得策じゃない。
武装解除させるためのどうでもいい会話なのだ。

このようにして人々は時間を過ごし
その果てに
高血圧になり糖尿病になり脳血管障害になり神経因性膀胱になり
心臓と腎臓と肝臓を悪くする
まあそんな未来を
脇にいるカップルに予想していた

ゆるゆると人々は流れてゆく。
坂道を歩く人々は、
平地を歩く時は隠していることを露出する。



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