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統合失調症のニューロン新生障害仮説について-1

統合失調症のニューロン新生障害仮説について
大隅典子氏の論文があるので読んでみる。

2004年「実験医学」11月号。

●はじめに
●統合失調症、自閉症、気分障害などの機能性精神疾患は
ストレスの多い現代社会において増加傾向にある。

○機能性精神疾患という言い方は微妙。
症状を呈しているということは機能に異常があるということなのだし、
機能に異常があるということは、それを裏打ちしている解剖学的、形態学的異常が必ずあるというのが、
共通認識である。
だから、機能性異常というのは、
「一見したところの形態学的な異常は見られない」という程度の意味である。
詳細に調べれば、機能異常に対応する形態異常が必ずあるはずである。

○この、機能と形態の対応は、生理学と解剖学の関係である。

○ストレスの多い現代社会という。本当にそうなのだろうか。
少しでも楽な、快適な社会を作ろうとして努力してきたはずで、
さしあたっての感染症、栄養不良、治安の悪さなどで命を落とすことは少なくなった。
そういった意味でのストレスからは解放されつつあると思う。

しかしそうでない意味でのストレスはじわじわと人々を苦しめているということになる。
でもやはり、現代社会でなければストレスは少なかったとは言えないだろうと思う。
現代社会特有のストレスは何かを特定して問題にすべきなのだと思う。

●なかでも統合失調症は発症率が比較的高く(生涯発症率として約1%)、
重篤な精神症状を呈し、長期間にわたり入退院を繰り返すケースが多いため、
精神科入院患者のかなりの部分を占めることになり、大きな社会問題となっている。

○重篤な精神症状とはいうものの最近は軽症化がいわれている。
理由は不明。

○生涯発症率1パーセント、地域差もあまりない、といわれる。
歴史上どうだったかは興味があるところ。
たとえば幻聴があってもそれは神のお告げであったり、
テレパシーであったり、動物の話が分かったりと解釈されていたのかもしれない。
古いもの語りではネガティブな記述としてみられるものは少ないと思う。
「たまに特別な人がいるものだ」と言う程度の認識ではないか。
はっきり病気として認識されたのはやはり産業革命とかそのあたりの動きと連動しているらしい
とは議論されている。
妄想産生というプロダクティブな面をとらえれば、
現代でもやはりいろいろに適応的な面も考えられると思う。

○長期間にわたり入退院を繰り返すというのも現在では正しいとも言えないだろう。
薬物療法が進歩している。

○精神科入院のかなりの部分を占めるので、
デイケアとかグループホームなどで地域医療に変化させたいわけだ。
しかし最近の問題は患者さんたちの高齢化で、身よりもなく、生活力もなく、
しかも身体疾患の合併が多くみられる。
病院内適応状態が続く。
しかしその様子を見ていて、病気のせいではなくて、人間はそのようなものなのだろうとも思う。

●これまでに多くの臨床研究から、統合失調症発症には、
遺伝的素因と環境的要因の両方が関わることが明らかにされてきている。

○ストレス脆弱性仮説といったもの。
もともと骨の弱い人が重い荷物を持ったら骨が折れたとか、そんな感じ。
two-hits-theoryなどもおもしろい。

●例えば遺伝学的な連鎖解析から多くの候補遺伝子が指摘されている。
臨床データとノックアウトマウスにおける結果が一致しているのは、
ニューレグリン、カルシニューリン、そのた少数のみである。

○どの部分かの遺伝子変化がまずあって、
その上で、何かのイベントが起こったときに症状が成立するのではないかと自然に考えられるが、
そして統合失調症というものがいろいろな原因で起こる不具合の集合体だとすれば、
複数の遺伝・環境の組み合わせがあって良いはずである。
そして、少なくとも、ひとつくらい、この遺伝子変化があって、
この生活史上のイベントが起こったときに、
統合失調症のひとつのタイプのものが起こると確定的に言えるようだとそれは大きな突破口になる。
しかしそれもまだ難しい。

●一卵性双生児における同胞罹患率は50パーセント前後であり、
遺伝的背景が同じであっても、統合失調症を発症しないケースが多くあるということは、
明らかに、統合失調症の発症には環境要因の影響があることを意味している。

○それはそうだ。
最近では(実は昔から)一卵性双生児研究は蓄積があり、
統合失調症家系と双極性障害家系とのクロスがみられたりして、
最近のように統合失調症の薬をうつ病に積極的に使う流れのひとつの淵源となっている。

病気の分類自体に問い直しが迫られていて、
次回のバージョンであるDSM-Vではずいぶん違う世界になるかもしれないとも言われている。

●胎生後期におけるウィルス感染、分娩時の障害、低栄養などがその原因としてあげられている。

○妊娠中にインフルエンザに感染しなかったかとかを執念深く調べている。
メカニズムは不明だけれど、とにかく統計的な有意が出るかどうか。

そのほかには、妊婦の摂取したアルコール、たばこ、その他薬剤。
また妊婦がさらされたストレス。

○分娩時の障害は、たとえば低酸素状態がどの程度の時間続いたかとか、そのようなデータ。

○低栄養は最近では何も食べ物がないということもないのだけれど、
たとえば妊婦が糖尿病だったとか、そのあたりから何か手がかりがないかとか。

○妊娠中のインフルエンザ感染は、
ひょっとしたら子どもの糖尿病の発症に関係していないかとかデータがとられている。

○気道系のウィルス感染ならば冬の方が感染しやすい。
そこで、患者さんの生まれ月と症状をクロスさせて統計的に検討したりもする。
夏だったら蚊に刺されやすいだろうとか。

●遺伝的要因は多因子である可能性が高い。

○だからなおさら研究は難しい。


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