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うつ状態の鑑別について

うつかも知れないんです
という人が現れたら

1.まず抑うつの内容をよく聞く。

2.身体疾患を除外する。脳の器質性病変についても除外する。

3.抑うつが確実にあるならば、人生の全体において、躁状態がなかったか、うつ状態がなかったか、幻覚妄想状態はなかったか、遺伝性はあるか、そのあたりを聞く。双極性障害、統合失調症、気分変調症、性格障害、PTSD、適応障害、自律神経失調症、パニック障害、などなどたくさんについて鑑別または併存を考慮する。

4.性格と人生の歩みとストレス状況を把握する。

5.この人の遺伝的性質、性格、人生の歩み、ストレス状況から考えて、理解できない範囲のうつ状態ならば、うつ病である。

6.この人の遺伝的性質、性格、人生の歩み、ストレス状況から考えて、理解できる範囲のうつ状態ならば、ストレス反応である。

7.ストレス反応については、体質性ストレス反応、急性ストレス反応、慢性ストレス反応、またはそれらの併存を鑑別する。

ストレス反応分類
 体質性ストレス反応急性ストレス反応慢性ストレス反応
体質弱い普通強い(強いからこそ10年も続けられる)
ストレス要因普通急性で強い慢性で持続性
環境調整無効休養のみで復帰環境を変える
症状ヒステリー反応系パニック系うつ病系、ときにPTSD系
のたとえ交通事故ラグビー何年特訓

 

8.治療が始まる。実際には診断が終了してから治療を開始するのでは遅すぎるので、
鑑別診断を進めながら治療を進めることになる。薬剤に対しての反応はよい鑑別材料になる。
また治療に対しての考えや反応はその人の思考や性格を把握するよい材料になる。
それは相談者が自分の体験や解釈を語る二次情報ではなく、診察室で現実に起こる一次情報であるから、
価値が高い。

9.比喩でいうと、ストレス反応は、誰にでも起こることで、地上での出来事、立体座標でいえば、Z=0の平面内での動きである。うつ病や躁うつ病や統合失調症は地上から少し上に上がったり下がったりしているのであって、Z軸での変動がある。この点で根本的に違うと理念的には考えられる。昔は了解可能ならば神経症と区別していたもので、現在のわたしの定義でいえば、了解可能ならばストレス反応である。了解不可能で、しかし疾患として説明可能ということならば、それは精神病であり、うつ病、躁うつ病、統合失調症などのグループになる。立体座標で考えて立体的に動いていて、明らかにうつ病の動きをしている場合でも、それをZ=0の平面に投影した成分はやはり動いているわけで、その部分だけを見れば、ストレス反応成分は精神病性の各疾患の場合にも含まれていることになる。実際、精神病は大きなストレスであって、ストレス反応は大きなものが起こっている。

10.現在世間で言う「うつ病」は精神病ではなくて、疲労の蓄積の結果とか、大きなストレスのあととか、そのような抑うつ状態を指すときに使うので、従来の精神病性の「うつ病」とは異なるものを指している。本来ならば「ストレス反応」と読んだ方がいいものと思う。

11.しかしながら問題はあり、遺伝的性質、性格、人生の歩み、ストレス状況を考慮して、現在のうつ状態が当然起こりそうな範囲に属するのか、それを超えた要素があるのか、判断は容易ではない。経験があれば間違いがないというものでもない。判断に際して困難な例はいくらでもある。9.で説明したように、精神病(つまり、Z軸上の変動)は大きなストレス要因であるから、ストレス反応を伴う。

12.http://shinbashi-ssn.blog.so-net.ne.jp/2008-05-11-1 このページで説明している「うつ病」「うつ状態」は上記の「ストレス反応」についてである。

13.躁うつ混合状態については、一部は躁状態が基本にあって、反応性のうつ状態が混在しているものもあるかも知れない。一部はもちろん、精神病レベルの躁とうつだと思う。


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