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亡き妻にどら焼き

亡き妻には苦労ばかりさせて
あんなに好きだったどら焼きもたくさんは食べさせてやれなかった
悔いが残る

最後の頃は寝てばかりいて起きている時間は一日のうち何時間あっただろうか
原因不明だった

「なごり雪」は電車で別れる歌だが
妻とわたしはあの世とこの世に別れてしまうとき
「去年よりずっときれいになった」と言ってあげたいと思ったものだ

文明堂の三笠山 枝分かれした文明堂ではそれぞれの店にある三笠山に違いがある
羽田空港と銀座松坂屋がいいという人がいた

浅草では先日、亀十のどら焼きを見つけた

こんなことも最愛の妻が生きていたらどんなにか喜ぶだろうかと思うと
心の空いた大きな穴はどら焼きでも埋められない

遺影の前に一日くらい供えて
食べる

食べることは宗教儀式なのだと腑に落ちた

濃いめのお茶で美味しくいただく
独り占めである


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