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傲慢なのに打たれ弱い未熟でワガママな若手社員はなぜ増えたのか?

傲慢なのに打たれ弱い未熟でワガママな若手社員はなぜ増えたのか?

 現代社会の未成熟化に伴い、職場でも性格が未熟でわがままな若い社員が増えています。彼らは、能力がないわけでもなく、むしろ積極的で活動的、華やかな場面が好きで、花見の席取りや宴会幹事などをさせると「デキル社員」です。しかし、いったんストレスのかかる場面に遭遇するととても弱く、強く叱責すると翌日から出社しなくなってしまったり、時には親身の指導を「パワハラである」と言い出します。最近は、こんな「会社のワガママちゃん」に振り回される管理職のグチをよく耳にします。

 第1回目は、この連載で取り上げる「会社のワガママちゃん」が増えた背景とその人物像について解説をしましょう。 

あなたの部下はワガママちゃん?「チェックリスト」で確認しよう

 以下のチェックリストのうち3項目が該当すれば、それは「ワガママちゃん」の可能性があります。

◇「会社のワガママちゃん」チェックリスト

1 「仕事がうまくいかないのは上司・先輩の指導が悪いからで、自分は十分にがんばっている」と考えている

2 「この部署の仕事は自分に向いていないから、やる気が起きない。○○課なら必ずうまくやれるのに」と周囲にもらす

3 業務に対して勇んで前向きな提案をするけれど、内容は稚拙、しかし本人は全くその認識がなく自信にあふれている

4 自身への適切な指導に対して表面的には聞くふりをするが、決して従おうとせず、強く指導するとふてくされる

5 「サポートしてもらってあたりまえ」的態度で、感謝の気持ちが薄い

 いかがでしょうか? それではまず、「ワガママちゃん」のできあがるメカニズムを説明しましょう。

過保護に育った「ワガママちゃん」は人にもまれた体験が足りない

 「ワガママちゃん」は人格の成熟が遅れています。

 では私たち精神科医が捉える、人格の成熟の「指標」とはなんでしょうか? 精神科医の斎藤環先生(※1961年生まれ。筑波大学医学研究科博士課程修了、医学博士。専門は思春期・青年期の精神病理学、病跡学)は次の2点をあげています。

・ストレスに耐えて葛藤を克服できる能力

・相手の感情を感じて自分の感情を適切にコントロールできる能力

 これらは、小学生時代から高校生くらいまでの思春期前後に、親子関係や友人関係における精神的葛藤体験の克服から獲得されてきます。

 ところが最近では、母親の溺愛と過保護、同年齢同士の交友関係の希薄化により、いわゆるギャングエイジと呼ばれる精神的な成長の時代に「人にもまれる」という経験をせずに、進学塾などで優秀に純粋培養されて成長した若者が増えています。

 このようなこどもたちは、友人とのケンカや争い、つまり葛藤状況に慣れていませんから、自分の辛さを乗り越えて、落としどころを見つけ折り合いをつけるスキルを持っていません。また、このことで相手がどの程度傷つくかなど理解できませんから、自分の気がすむまで、ひたすら主張を通します。もしどうしても上手くいかない場合は、お母さんが助けて保護してくれました。
 このように育った彼らは、現代の厳しい労働環境で人と協調して社会生活を営むには、あまりに未熟なのです。会社で困ったことがあっても、泣きつくお母さんがいない、腹を割って話す同僚がいない彼らは、どうしたらいいかわからなくなるのです。

職場で発揮される “自覚なきワガママぶり”

 「ワガママちゃん」の考え方と行動特性は以下の5つです。

1 他罰性と内省の欠如
 「仕事がうまくいかないのは上司・先輩の指導が悪いからで、自分は十分にがんばっている」と考えます。物事がうまく運ばなかったのは自分のせいではなく自分のことを理解しない周囲が悪い、俺のことを理解しない奴は頭が悪い、と考えがちです。決して反省しませんから成長しないのです。

2 現実検討能力の欠如(青い鳥症候群)
 「この部署の仕事は自分に向いていないから、やる気が起きない。◯◯課なら必ずうまくやれるのに」と常々もらします。本当に自己実現できる職場ならやる気が起きるけど、ここでは無理と考えます。上手くいかないと直ぐに異動願いを出そうとします。自分が会社に適応しようと努力するのではなく、会社は自分の能力を生かすために適正配置をするべきだ! と信じて疑いません。

3 自己イメージの肥大
 自己愛が強くナルシストのため、現実を冷静にみることができなくなっています。思いつきやテレビで見た浅い知識をもとに、勇んで胸を張り、業務について前向きな提案をしますが、内容はあきれるほど稚拙。しかし本人は全くその認識がなく自信にあふれています。むしろ自分の提案を取り入れない上司は理解力が足りない仕事のできない奴だと思っています。

4 高いプライド
 自己愛が強いので自分の非を認めず、助言や指導を受け入れません。自身への適切な指導に対して表面的には聞きますが、決して従おうとせず、強く指導するとふてくされます。もともとの能力が高い人ほどこの傾向が強く表れます。彼らの多くは、受験戦争で失敗してこなかったのです。もし失敗したとしても「それはあなたのせいではない、評価しなかった学校が悪い」と、お母さんが言ってくれました。プライドが傷つかないまま、すくすく育ったのです。

5 情緒的共感能力の欠如
 他人の心の痛みがわかりません。自分の痛みは、本当に痛む前に母親がかばってくれましたから、深く傷ついた経験がないのです。友人と取っ組み合いのケンカをした経験もないので、自分の痛みも人の痛みもわからず、限度を知りません。支援されてあたりまえだと考えていますから、先輩や上司が親身の指導をしてくれても、自分の仕事が片付けば先にさっさと帰宅してしまいます。感謝の気持ちが薄いのでやがて支援が少なくなります。

追い詰められたら「うつ病」を発症

 いかがでしょうか? 次第に嫌な人間に見えてきましたね。「会社のワガママちゃん」は、やがて課のお荷物になり、同僚上司からは嫌われ孤立していきます。仕事も当然上手くいきません。追い詰められ困った彼らは、ある日突然、うつ病になります。

 クリニックを受診して診断書を持参し、病気休職となり、その原因は会社にあると主張します。根本にあるものは、先にあげた5つの特性です。

 うつ病になった彼らはどうなるでしょう? このようなワガママちゃんの鬱の多くは、仕事を休んで自宅療養に入ると元気になります。

 「仕事は無理だけど好きなサーフィンはできる」「鬱になったから好きなパチスロで気分転換」と、従来の皆さんのよく知る、典型的な暗く陰鬱な「うつ病」からは、まるでかけ離れた病状を呈しながら、療養生活を送ることになります。

 このような経験をお持ちの皆さんの心中では、今、彼らに対する負の感情がわき上がってきましたね。怒りや憎しみの感情を陰性感情と呼びますが、皆さんの陰性感情、これが「ワガママちゃん」へ対処するうえで、最も良くないものです。

 彼らに対して陰性の感情を持ち、それをついつい表面に出してしまうと、たいへんこじれた状況に陥ってきます。


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