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職場の若手人材に急増する「未熟型うつ」の正体

職場の若手人材に急増する「未熟型うつ」の正体

 これまで、人格が未熟なワガママちゃんの成因と行動特性について6回にわたり解説してきました。今回は、「ワガママちゃん」が「うつ」になったケースを取り上げて、「ワガママちゃん」のうつ状態と従来型のうつ病の比較を示して、その特徴をまとめてみましょう。

【事例】

「おれは本来本社にいる人間」と豪語

工場勤務に我慢できずに「うつ」に
 
 25歳会社員。入社3年目で経理職。元来元気な性格で、人の前に立って活動することが好きだった。新入社員研修ではリーダーシップを発揮し、グループミーティングでは、積極的に発言していた。本人は本社宣伝部への配属を望んでいたが、都内近郊Y市にある、工場の総務課に配属された。

 本人は、「おれのイメージには合わない」「作業服を着て働くなんて格好悪い」と不満をもらしていた。

 課は、勤続30年のベテラン課長と勤続15年の女性係長と本人の3名であり、上司2名はたいへんに面倒見がよく、なんでもていねいにアドバイスを与えていたという。

 業務上のやりとりにおいて、子会社社員に対する態度が横柄であったため上司係長が、言葉遣いについてたしなめた。本人は憮然とした表情で返事もせず、以来係長を無視するようになった。

 係長は、それでもていねいに仕事を指導していたが、本人は社内外で係長の悪口を言い、「俺は本来本社にいるべき人間で、こんな工場の係長なんぞに、とやかく言われるような人間ではない」「係長は無能なくせに、いちいち細かいことにうるさい」「これでは会社の将来はない」などと言っているとの噂が流れた。それらに対して上司課長から厳しい叱責があった。その場では本人は謝ったが、以降も態度は改まらなかった。

 働きぶりは、本社課長などへの報告には身を入れて、それなりの仕事をするが、相変わらず工場内部の仕事や子会社に対する態度は横柄であり、周囲もつきあい方にかなり困り果てていた。

 人事考課では、本人の満足のいく評価を得られなかったところ、本人はその不満をついに課長にぶちまけて、課長とおおっぴらな口げんかになった。その事態が、本社人事に報告され、事情のヒアリングを受け、事実関係と日頃の働きぶりに関する報告に基づき、本社人事担当から改善するよう指導を受けた。

 翌日から3日間、本人は体調不良で会社を休んだ。心配した係長がアパートを訪ねたところ、「会社に行く気力がおきません」「食欲も出ず、夜もよく寝られない」と言うため、上司はまず、「有給休暇を取って少し休んだらどうか?」とアドバイスした。

 本人はそれに従い「わかりました、休みます」「でも私は病気かもしれませんし、課長のいじめが原因で会社に行く気になれない」「3日間、インターネットでいろいろな病気を調べました」「うつの症状に似ていると思う」「気分が重く暗い」「朝から1日ずっと憂うつです」「あんなに元気に働いていたのに今は全く気力が出ない」と述べた。

 3週間の有給休暇の後、本人から精神科クリニック発行の診断書が送付されてきた。

■診断名 抑うつ状態

憂うつ感が著明で就労意欲の低下、食欲不振と睡眠障害を認めるため、上記診断にて服薬と約3カ月間の休養が必要である。

 工場人事は、本社人事に相談をしたところ、「診断書が出ているのでは仕方がない」「まずは3カ月の休みを取らせるしかない」「しかしなにか納得がいかないなあ」としぶしぶ疾病休職とした。

今までの「うつ」とは明らかに違う「未熟型うつ」の人はいませんか?

 事例を読んでどのような感想をお持ちになりましたでしょうか。

 従来、「うつ病」といえば、まじめで几帳面、責任感が強く、とことん頑張る人がなりやすいとされてきましたが、まったく違いますね。

 「ワガママちゃん」が、職場で自分の思い描いたように周りから扱われなかったり、仕事がうまくいかなくなって「うつ状態」になるバックグラウンドや「うつ状態」になったあとの行動には、「未熟型うつ」としての特徴があります。

 かつて日本は、メランコリー型の労働者が、会社のために滅私奉公し、「私」と家族を捨てて勤勉に努力してきた結果、高度経済成長を為し得てきたとも言えるでしょう。社会が変容し価値観が多様化し、健全なワークライフバランスが求められる現代社会では、このようなメランコリー型の労働者が減ってきてもいたし方ないのかもしれません。

 確かに過剰なメランコリー型は、自ら過度な労働に突き進み、心身ともに疲弊して消耗型のうつ状態に陥ります。勤勉で秩序指向性の強いいわゆる「デキル社員」のところには、どんどん仕事が集まり、良いアウトプットが期待できます。しかし彼らに依存しすぎてしまうと、会社は貴重な有能な人材を「うつ」で失うことになりますから注意が必要です。

 一方、昨今は、親が子供を失敗しないように大事に育て、また、同世代の仲間たちとのギャングエイジ体験を積み重ねる土壌も失われています。その結果、自己愛が強く、ちょっとした躓きに耐えられない「ワガママちゃん」が企業に入ってくるようになりました。ただし、この連載で繰り返し申し上げているように、彼らは成長の可能性を秘めた人材です。そこで大事なのは、彼らの特性を理解したうえで、陰性感情を抱くことなく、適切な対応をすることです。

 彼らを「うつ」にさせないためには、前回ふれたように、「ワガママちゃん」のSOCを高めることを意識してコミュニケーションを図っていくことです。

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