思い出深い名前
幸せにもしなかったが
大して不幸にもしなかった
見かけると思い出して
これが個人のこころの歴史というものかと思う
はるか昔
関東大震災はうそだけれど
それくらい昔
ーー
お年寄りのお話をうかがう
関東大震災のとき
まだ赤ん坊だった
母親と姉がいた時に
震災にあった
母親は驚いて
その人をハンモックに残したままで家を飛び出した
揺れがすこし落ち着いたあとで
まだ子供だった姉が気づいて
赤ちゃんはどうしたのと聞くと
母親は、まあ、大変、忘れてきちゃった、と言った
姉が勇敢にも家に戻り、
赤ん坊を助けたのだと言う。
その話を姉に何度も聞かされて、
姉のその話を聞くのが大好きだったと
その人は語るのだ
戦争はそれからあとの話だ
長い長い人生
腰が曲がっていないですね、
牛乳が好きですからなどと話している
定型業務か応用か
どれもこれもある程度応用的である
割り切れば定型的にできるのかもしれないが
人間の生活自体はどの人も応用的に生きているもので
基本生活だけを生きている人というものはいないように思う
そうすると相談も応用的になる
統計処理をしたりするためには
定型処理が必要である
応用的な仕事ばかりしていると
統計処理に馴染まない
たとえていえば定食メニューがない
定番メニューもない
話を聞いて人柄に触れて生活の歴史を聞いて
インスピレーションに従う
30分で処理は完了 何でも役に立てる
なんて暑いんだと思い
一瞬の後に理解が戻っている
そして夢とはまた違った意味でひどい現実が
生きる元気を押しつぶす
まうそういっても仕方ないので
しばらく横になって夢を反芻する
これが精神療法なんだなと思いつつ
夢の断片を反芻して消化吸収する
何だって自分の役に立ててやるという
貪欲さである
相手がワニだろうとプレパラート標本だろうと
イメージ展開で処理する
プレパラートは実体は限りなく薄く、
イメージだけの存在ともいえるようで、
考えてみれば、
面白い
実体なのに顕微鏡の中のイメージなのだ
30分で処理は完了
昔だったら
夢違い観音様にお祈りするところだ
朝方の夢
ヘビーな夢を見て
グロッキー
目が覚めて
しばらく横になっていて
心を整える
トラウマのあとの
精神療法みたいな時間
夢を高速でめくり返し
意味をつけて心の引き出しにしまいこむ
なるほどな なんて思いつつ
夢が重かった分
少しだけ
浄化されたような気分になる
映画の中で時間を行きつ戻りつしているような
もどかしい感じですべてが存在している
などと書いたばかりだけれど
そんな懐かしいものではなくて
とってもグロテスクなリアリズム
体長80センチのワニの首の辺りをスパッと切って、
その頭のほうを手に持って
夢は始まる
登場する物質はどれも重くて
光はささず
解剖の標本のように時間が止まっていて
30年の月日が
バラバラに分解されて
編集しなおされたような
全体に検体を固定する薬剤の匂いが満ちている
あのにおいに満たされていた当時の私の脳は
たぶんすこし固定されているのだ
解剖標本的な意味で
ホルマリン漬けといえば一般には分かりやすいだろう
ホルマリン自体は現在は使わないのだがその代わりの液体である
呼吸している間に体内に取り込んで
あちこちで固定が進んだのかもしれないのだ
それはいいとして
夢は進行する
いまこうして改正した意識でイメージをシャッフルすると
自分が優位に立ってコントロールしていると感じられる
しかし夢を見ているその時間には
次々と意外な光景が現れその意味に圧倒され翻弄されていたような気がする
古典落語なんかを楽しんで
だらだら過ごしたあとで
こんな夢が待っているなんて
ひどい
考えてみれば
今も苦しいけれど
昔も苦しかった
人生は一貫してそうだった
それだけのことだ
夢だって一貫して苦しいものになるはずだ
それでいい
いまさら何も期待しない
でもまあ、こんなこともある
気にしないでいこう
軽井沢の不動産
話していたのだが、
これから長期的に値下がりするのだから、
買うよりも、賃貸でいいよねえという話になり、
それより、ホテルに泊まればそれでいいじゃないかとの話にもなった。
高原のホテルに泊まればそれで充分。
自分のものを管理するのは大変。
これからの時代、治安が悪くなり、泥棒さりれたり、逆にごみを捨てられたり、
いいことは何もないとの結論。
アパートを5万円で借りて社員で回すとすると、
年間60万円で、6家族で2週間ずつで10万円ずつ、すると一人約1万円の国民宿舎よりも安くなる。
でもまあ、3―4日いれば充分だな、
3日を二回、そんな感じだろうか。
そんなことより、海外に行くかとの話になり、
ハワイにコンドミアムを持つのはどうかとの話になり、
サブプライムショックの余波の不動産下落がどの程度まで進んでいるのか、
とか、
まったく実現性ゼロの話をしていたのだった。
ゼファーが民事再生手続き開始申請
とのことで容易ではない。
日本の都心部の不動産業はしばらく好調だった。
もちろん外資ファンドが買ってくれたから。
文京区の取引一覧を見たら外資ファンドがずらりと並んでいた。
最近の流れで、外資ファンドが資金を引き上げているようで、
さっぱり売れないようだ。
物件が動かない。
塩漬けになって、企業は利益がなくなる。
維持費ばかりがかかる。
チラシで見る不動産の値段が下がっている。
負債949億円で民事再生と言うと小さくない話だ。
債権者もゼロよりは少しでも取れたほうがいいと思うのだろうけれど、
きつい話だ。
大きく儲けて大きく損する業界は
実は繊細な人が多い。
株や先物の世界などでは、
危険の感受性のない人間が
大もうけをする局面があるらしい。
すべての人間が警戒ししり込みする場面で、
大金を張り込む。周囲が驚いている間に、巨大な利益を上げる。
その事を分かってはいるけれど、
恐怖心のある人たちは大博打が出来ない。
豪胆なのではなくて、恐怖心の欠如なのだ。
しかしそんな人たちも、誰も儲けられない相場では、結局儲けられない。
この局面で儲けるのは、資本にあるもので、体力があれば、
この局面で、仕込むことができる。
後で儲かる。
体力のない人たちも、金融工学でレバレッジとかヘッジとか言っていたが、最近では
「米国の金融工学の没落」といわれていて、
米株、米ドルと共に、米のビジネスモデルが否認されるような具合である。
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まあ、とにかく、不動産屋のいい時は過ぎて、悪い時に入った。
弁護士事務所は民事再生手続きで大忙しだ。