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現実を忘れるために本を読む 堀田善衞「ゴヤ」3-3

自分が今生きていて
現実に困難に直面していて
切り抜けなければならなくて
でもそれを忘れたくて
本を読んでいるわけだ
ゴヤは47歳、いよいよ耳が聞こえなくなって
耳の全く聞こえない画家が誕生した

聴覚と視覚の関係に興味がある私にとっては興味深い展開である

今日銀座の街を歩いてみて
市民が熱意なく無意味に生きているように見える
生きている気迫に欠ける
品川のサラリーマンの群れの方が気力を感じる

この社会は消費社会だと言われて
しかしみんなそれなりに生産に従事しているではないかと思いつつ生きていたのだが
本当に消費しかしない人たちがこんなにも沢山いると知って
驚く

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悪魔が憑いたら 堀田善衞「ゴヤ」3-2

堀田善衞「ゴヤ」の中に概略次のような記述がある。

当時、狂気の一部は、悪魔に魅入られたものと解釈された。
悪魔を追い出す方法を知るには宗教的観念が必要である。
相手は悪魔であるから、人間の中からそれを追い出すまでは、
人間の外の存在として扱って構わないとされたこともある。
たとえば、死んでも教会で葬式をしてもらえないこともあった。

*****
悪魔なんか見たこともないのに
こんなことを決めつけていたとは。
私たちがいま、
あたかも存在するかのように当然に思って使用している概念の中にも、
単なる仮定に過ぎないものが沢山あるのではないかと、心配になる。

「悪魔」みたいな観念を使って思考していないか、
調べてみた方がいい。

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堀田善衞「ゴヤ」(3)

・スペインとロシアの類似
  支配層の態度は似ていた
  ドストエフスキーとトルストイは出現しなかった

・書簡に見るゴヤの性格
  何という俗物

・躁うつの反復を疑わせる人生
  しかもサイクルが徐々に短縮していて、典型的な経過

・おびただしい肖像画が語る当時の状況
  特に複数枚描かれた場合の、絵の対比と、人生
  大女優でありながら、人生の最後を劇団の経理として過ごした女性など
  肖像画が雄弁に語る人間の内面

・それにしても、ときに非常に拙劣な絵を描くゴヤ
  やる気がないんだな、多分

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goya 堀田善衞「ゴヤ」2-2

堀田善衞「ゴヤ」を読み始めた。
「goya」でイメージを検索すると、沢山みつかった。
いい時代になったものだ。
ゴーヤチャンプルも予想通りひっかかった。
CDを出している女性もいた。



正直、あんまり好きな画家ではないし、
現在でいえばイメージは氾濫していて、
特に画家の筆を借りなくても、すばらしい写真もコラージュもある。

この人、本当に上手と言えるのだろうかと思ってしまう。
幻想的といえばそうかもしれないが、
気持ち悪い。



この絵などは比較的目に心地よいのだが、
手を描くのが面倒で省略したものか?
顔を描くところまでで料金いっぱい、なんて言いかねない気がする。
指まで丁寧に書くと料金が高くなる。
それに、忙しい人だと顔だけ描いてもらって、あとは適当に、
ということもあったようだ。
ゴヤは早描きを自慢に思っていたらしい。

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堀田善衞「ゴヤ」(2)

スペイン人口のたったの2パーセントの貴族や大地主たちが、
土地全体の半分を所有しているのである。

なるほど。
そうならざるをえないだろうな。
日本くらい相続税を高くしても、なお、会社などの資産にしてしまうこともあるわけだろうし。
せっせと働くということの意味は何だろうな。
古い言葉であるが、疎外、という言葉が浮かぶ。



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堀田善衞「ゴヤ」(1)

サラゴーサの名門、ルナ家の出身、アヴィニョンの教皇ベネディクトゥス13世について。
彼はコンスタンツの公会議で辞職を命ぜられた。
ところがこの人は頑固かつ強情無類で、辞職どころか、
彼一人だけを除いて、全世界を破門し、死ぬまで妥協しなかった。

まことにあっぱれである。

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堀田善衞「歯車」「波の下」

戦後まもなくの頃の作品。
堀田善衞については、定家名月記私抄、ゴヤ、ミシェル城館の人、日々の過ぎ方、スペイン断章、など比較的後期のものに親しみ、多くを学ばせてもらった。

戦後中国、日本ポツダム宣言受諾、秘密細胞、コミュニスト、スパイ、情報戦、女であることを武器にもする、過去の愛、秘密の連絡暗号、こうまで舞台装置が整うと、まるで精神病院の奥に長年住んでいる患者の話を聞くような気分になってくる。途方もない被害妄想と妄想的関係づけ、長い時間が熟成した妄想的構築物。
そんな連想さえわいた物語である。

無論、当時、東南アジアの一部で、そのような動きはあり、そのような人生があったのだろうとは思う。ただ嘆息するだけである。
次第に行動選択の自由がなくなり、否応もなく圧殺されてゆく道筋が見えてしまう、それを歯車と表現しているようだ。

妄想者はまさにその「歯車」の感覚に悩まされる。巨大で運命的で悪意に満ちた何ものかが、誰にも止められない歯車のようにわたしを圧殺する。その感覚である。
人間は脳の機能障害が起こると、他の妄想よりも、圧倒的に被害妄想を呈する。これが不思議である。

*****
抜き書き。一部漢字表記変更。

なにか人間らしい感情といいますか、いつもいつもこめかみと眼に力を入れ緊張していなくてもいい、あたたかい血がゆっくりとめぐってゆくような感じが通ってきて、次第にわたしに浸透して来ていたのです。

*****

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困ったことだけれど

人生にはどうしようもないことがある

困ったことだけれど

いろいろ説明はできても
それは解決にはならず
やはりどうしようもない

困った困った

*****
どうしてこんな風な仕組みになっているのか
不思議なのだけれど

嘆いても仕方がない

一人が考えるよりは
誰かと一緒に考えた方がいいとは思うが
夫婦のことなどになると
夫婦の場面でしか分からないこともあり
二人の言い分を聞いて総合しても
やはりそれだけで全部ではないようなところがある

別れてくださいと言っても
別れませんとつっぱってるわけだし

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種差海岸

東北青森県八戸のあたりに
種差海岸というところがある。

彼らは夏のある一日
種差海岸に行き、蕪島で一日を遊んだらしい。
その白黒写真が今も残っている。

蕪島はウミネコの楽園である。
ハマナス
ヒルガオ
ニッコウキスゲ
ウミネコの産卵
ホオアカの歌
オオヨシキリの歌
イソヒヨドリ
ヒナの誕生

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王の前で純潔をアピールする少女たち

南アフリカの有力部族ズールーの少女が
アシ(リード)を持って集まり、
王の前で純潔をアピールする伝統の踊りを踊る。
2008年9月15日の新聞。

純潔に価値があると考えているようで、これは新鮮。

純潔キャンディーという物があり、新興宗教系のグッズであるが、
書かれている内容はたしかに伝統的価値観をくすぐるところがある。

簡単に言えば宗教右派が結婚前の性行を禁止する運動を純潔運動という。

現状では
純潔どころではない。
いま日本で踊る人がアピールするのは純潔ではないだろう。

どのように踊れば純潔をアピールできるのか思いつかない。
アシを手に持ち、槍のように手に持っているのだが、つめかけている様子だ。
ここから純潔の情感を読み取ることもできるものなのだろうか。

*****
同じ日の新聞では
リーマン・ブラザーズの破綻回避策大詰めとある。

また自民党総裁戦中で、マスコミは総裁選報道で自民党を助けていいのかとの議論。
自民党によるメディア・ジャックだとの声。

どうも世論を形成している声は政治的に発言する層である年配に偏っているのではないかとの話
若者は感心がないし選挙にも行かない
しかし年金や医療などは関心があるのではないかとのこと

サイレントでいる人たちが多いのは事実だろう

何かのついでに意見を表明できる機会があればいいと思うのだが。
一番関心が高まるのは納税時だと思うが、
それだと納税していない人を差別するようになるのでやりにくいだろう

お一人様のコマーシャル。

米軍女性兵士でイラクに派兵された人。心の傷で、育児が困難。

一方で、先日の投書では、子どもが僕は戦争がしてみたい、格好いいからと近所の婦人に言い、
その人がショックを受けたという話。

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時雨 変わらない部分で愛すること

世にふるもさらに時雨の宿りかな

   年をとっても旅から旅への私に無情の雨だという
   宗祇は81才で箱根湯本で亡くなったそうだ。

芭蕉から以降のわびさびに時雨は似つかわしいもの

しぐるるや死なないでゐる 山頭火

うしろすがたのしぐれてゆくか 山頭火

後姿の我を絵に見る時雨かな

*****
古典に戻ると

たつた川もみぢばながる神なびのみむろの山に時雨ふるらし
   竜田川に紅葉が流れているのは上流の三室の山に時雨が降っているからだろう

竜田川錦をりかく神な月しぐれの雨をたてぬきにして
   川が錦織なし、時雨は縦糸だという

一人寝る人の聞かくに神な月にはかにも降る初時雨かな
   独り寝に初時雨とは実際寒い
   
音にさえ袂をぬらす時雨かな真木の板屋の夜半の寝覚めに

昔の人はよく我慢したものだ

*****
神無月(陰暦の十月)は冬のはじめの月であり、時雨の枕詞のように結びつけて詠まれることが多い。王朝和歌の世界では、時雨は木の葉を紅葉させたり散らしたりする、物寂しい雨と考えられていた。そして木の葉が移ろい散ることは、人の心の移ろいや心変わりを表すものと考えられた。

心は変わる。

*****
しかしながら心の全部が変わるわけもないだろう。
心の中の変わらない部分で人を愛することができれば
変わらない愛になるはずだ。

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一人残らず、死という遠い所へ

所詮我々は
自分で夢の間に製造した爆裂弾を、
思い思いに抱きながら、
一人残らず、死という遠い所へ、
談笑しつつ歩いて行くのではなかろうか

『硝子戸の中』 夏目漱石



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夢の世に土筆煮てゐる我は誰

夢の世に土筆煮てゐる我は誰
芳田昭代

*****
この境地であれば
とにもかくにも強烈な陰性感情からは逃れられているのだと思う
いいことだ

どうせ長くも生きないのだから
静かに過ごしたい

人を傷つけたくないし
人に傷つけられたくない

どうせ長いか短いかはあっても
病院の待合室で
死の順番を待っているだけだ

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雨ふるふるさとははだしであるく

鉄鉢の中にもあられ

雨ふるふるさとははだしであるく

種田山頭火

どうしようもないわたしが歩いてゐる

こんなにうまい水があふれてゐる

しぐるるや人のなさけに涙ぐむ

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花にあかぬ 歎はいつも せしかとも けふの今夜に にる時はなし

花にあかぬ 歎はいつも せしかとも けふの今夜に にる時はなし
在原業平

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鞦韆(しゅうせん)は漕ぐべし愛は奪ふべし

鞦韆(しゅうせん)は漕ぐべし愛は奪ふべし
三橋鷹女

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いかなごにまづ箸(はし)おろし母恋し

いかなごにまづ箸(はし)おろし母恋し
虚子

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年々にわがかなしみは深くしていよよ華やぐいのちなりけり

年々にわがかなしみは深くしていよよ華やぐいのちなりけり
岡本かの子

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最近の夢

睡眠を少し浅く調整すると夢を見る
二晩続けて長い映画くらい疲れる夢を見た
その後も考えているので実質、その夢に費やす時間は結構長い。

*****
一つの夢ははっきりと既視感がある夢で
夢の中でも前半は既視の物語をなぞるように展開した。
後半は同じ物語がもう一度展開されて、
少しずつずれてゆくのだがどうしてそんな話になっているのかはよく分からない。
たぶん前の日の事とその次の日の事とで
反復されていることを知っている人が登場する人物の半分くらいだと思う

結局既視感の分と合わせて、三つの時間の流れがあるようだった

海の表面から何かが立ち上るまたは発射されていて
それをよけるようにして無数の飛行機が飛んでいる
爆撃機のようなもの
それらがトリッキーな動きでその何かの物体をよけて飛んでいる
要するにジグザグに飛んでいる
ああ最近はこんな風だよねと言い合って納得したり

船に乗っていると巨大な魚が後ろを泳いでいる
すごいねと見ていると何万年も生きているもので魚ではないと説明してくれた
赤い色をしたもので表面はぬるぬるしていた
形は魚だけれどかなり巨大でゆっくり泳いでいた

箱根みたいな山の上の別荘地を訪れて
私は誰かに紹介される予定だ

その紹介の手はずが昨日と今日で反復されているようだった
同じ人が同じ衣装で出て来るのだが
少しずつ話がずれていって私を驚かせる

昨日はただの紹介人だった人が今日は誘惑的である
誘惑を達成してしまった後のけだるいみだらさを放散している

昨日は三人で乗った車に今日は四人で乗っている
増えた一人はどうしてかと思い
その理由を私は知っていると思う

最終的に私に紹介されるはずの人は
紹介されたことにして、その後の企みに協力して欲しいとか言い出している

お正月のような訪問着を着ている
ため息をつきながら
二人きりになっている

*****
一つの夢は大学の教授室だ
その人は退官後、臨時雇いで仕事をしていたが今日が最後の日らしい
留学生がいてパキスタンとかで明治時代のような書類に印鑑をもらっている
ナンを二つ合わせたような物の間に油を少しだけはさんであるらしい
メモがあって、食べてください、油は上等です、と書いてある
そう書いてあると一体どんな物なのかとても怪しいのだが
食べた
味気ないような気がした

石畳の坂道があって
窓が見えているのは建物の二階部分くらいに作られた食堂のような部分で猥雑だ
何か話している

女が荷物を片付けていて事件は進行するが
驚いているだけまたは感慨にふけるだけで
有効な対処ができないでいる

石畳の感覚が残っている

*****
短夜や夢も現も同じこと
高浜虚子

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花衣脱ぐやまつわる紐いろいろ

花衣脱ぐやまつわる紐いろいろ
杉田 久女

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君に恋ひうらぶれ居れば怪しくも吾が下紐の結ふ手たゆしも

君に恋ひうらぶれ居れば怪しくも吾が下紐の結ふ手たゆしも

ときにかくのごとくである

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秋の野に露負へる萩を手折らずてあたら盛りを過ごしてむとか

秋の野に露負へる萩を手折らずてあたら盛りを過ごしてむとか
大伴家持
秋の野に露をいっぱい載せて重そうな萩、それを手に取って折り取らないで、惜しいことに、その萩の盛りをやり過ごしてしまったことだなあ。

盛りを過ごしてむ


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菊の歌

このごろのしぐれの雨に菊の花散りぞしぬべきあたらその香を

この冷たい雨で散ってしまっただろうな その香りが惜しい

ちりぞしぬべき など ちょっと大変な音の連なり

*****
ぬれて干す山路のきくのつゆのまに いつかちとせを我は経にけむ

菊の露に濡れた衣を干すちょっとの間に
自分は俗界の千年を過ごしてしまったのか

衣をと出さなくても、
濡れて乾く山路の菊のつゆ、たったその間に、千年がたったとしてもいいのだろうかと思う
ここでいう山路は仙宮への道のことらしい。

*****
心あてにおらばやおらむ初霜のをきまどはせる白菊の花 おおしこうちのみつね

初霜の白と菊花の白とが区別がつかないというわけだ

心あてには、あてずっぽうにということ。
当てずっぽうに手折られるのはつらかろう。さだめとしても。

まどはせると言っているがこれも他人のせいにしている。
あなたがあまりに美しかったから私を惑わせたと言っているようだ。
そのように言ってくれるだけ上等だろうか。

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耐える理由もなし

煩わしさに耐える理由もなし
ただひとりがいいと思うばかり

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2008年10月3日

読み損ねた古い新聞を読む。
2008年10月3日。
朝日新聞は一ヶ月購読で3925円。

麻生政権は出発したものの
支持率低迷と中山国土交通相の失言があり、
10月26日の総選挙日程がどうなるのかはっきりしなくなっている。
行事が組まれている日でもあり、各自治体は対応に悩んでいる。
11月前半になったとしてもやはり行事が多いシーズンで、日程調整が難しい。
どこかの市役所ではすでに10月26日で印刷物を作ってしまったとかで、
実施されないと廃棄処分になるという。

大阪の個室ビデオ火災事件。
男性15人が死亡。
一泊1500円。なぜ一人か。
身元を確認すると、その住所に住んでいたのは昔のことで今は別人が住んでいたり、
別のケースでは、女性と住んでいて、契約者はその女性だった、
そして男性は朝出勤する女性を見送っていた、女性の姿が消え、そのあと男性も消えた。
親とは音信不通になっていたり。
はぐれて一人になってしまうらしい。
やはり人間は集団性の生き物なのだと思ったりする。

年を取って一人になるのが一番こたえる。

房になって何本かつながったバナナと
一つだけになったバナナを考える。
これが孤独。



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寝ている間の責任

寝ている間に
いびきや歯ぎしり、
寝言や夢遊病に近い行動までいろいろとある。

本人の責任ではないのだが
それでもそばで寝ている人にとっては
悩みの種になる。

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恋心というやつ

恋心というやつ、
いくら罵りわめいたところで、
おいそれと胸のとりでを
出て行くものでありますまい

夏目漱石

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ゆるされていること

法律で禁止されていなければ何事も自由であるというアメリカ人。
法律で許可されていなければ何事も禁止であるというドイツ人。
ジョークにあった項目だ。
自由とモラルと法律の関係。

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考えの途中

自己愛性格とは
1.プライドが高い
2.他人に共感するのが苦手である
3.他人の評価に敏感で、絶えず人の注目や賞賛を求める。逆に嫉妬の感情にとらわれやすい。
昔職人気質と呼ばれた性格は、これに近いという指摘もある。

1.コンピュータに接していると、能力があれば万能感を持ちやすいため、プライドが高くなり、自己愛性成分を培養する。

2.コンピュータを使っている限りは他人との共感が課題にならない。むしろ賞賛と嫉妬が前景にある。

3.他人との共感がないことの結果の一つであるが、他人との関わりが、賞賛されるか嫉妬するかといった平板なものになりやすい。

4.共感が苦手という点では統合失調症に近縁の性格傾向も、コンピュータやゲームによって培養されていると考えられる。

5.誰の心の中にもある、自己愛性成分や回避性成分、依存性成分、強迫性成分、演技性成分、衝動型成分、境界性成分、統合失調症質性成分、受動・攻撃性成分などの中で、ネット・携帯社会が特に自己愛性成分を拡大させていると考えられる。従って、個人の中で自己愛性成分は強まる一方で、社会全体としても自己愛性性格者の増大をみていると考えられる。

6.コンピュータと携帯と暮らす毎日は、幼児的な自己愛の保存と強化を可能にするだろう。欲求があれば、キーを押すことで即座に満たされる。それは幻想的万能感を維持させる。

7.ネット社会は自分の内部にある幼児的プライドや非現実的な自我理想の保存に働き、自分に都合のいい情報しか見ないという意識的無意識的検閲によって自我の傷つきを回避している。

8.自分は素敵という人たちも自己愛性であるが、アイドルを素敵と崇拝する人たちもまた、自己愛性である。崇拝されるべきアイドルを、正しく崇拝している自分たちは、これまた崇拝に値するのである。自己愛は延長する。アイドルサイトに集合する人たちの独特の性格傾向は、自己愛性といっていいものだろうと思う。宗教的な集団の一部もこのような力動の中にあると考えられる。

9.こうした背景の中でうつ病が発生すれば、当然、「自己愛性性格傾向を基盤としたうつ病像」になるはずであって、その特徴もいくつか抽出されている。昔のメランコリー親和型うつ病に代わって、種々の新型うつ病が議論されており、ディスチミア親和型うつ病、未熟型うつ病、神経症性うつ病、職場結合性うつ病、逃避型抑うつ、退却神経症、現代型うつ病、などと提案されている。このそれぞれと関連の深い現実的社会的環境的要素は何であるか、もうひとつは性格的要素は何であるか、そのあたりを整理できればよい。

*****
10.ネット社会が人間の性格傾向にどう影響しているかを考えるとき、集団の中での自分の位置を気にするヒエラルキー的心性の影響を考える。どの性格傾向にしても、極端に出やすいのではないかと思う。

10-2.一つには、ネット社会では人格の部分的交流であるため、実際の人間関係で見られるような、バランスの取り方がなくなり、片方の特性だけが突出するのだと考えられる。

10-3.集団の中での自分の位置を問題にする心性は、分割された集団から集団へ移動するにつれて、より先鋭化する。

11.ネット社会自体は水平的連帯になじむ道具である。むしろシゾイド的交流。他人のとげが怖い。

12.ヒエラルキー形成には昔流の人間交流の方がなじみやすい。官僚組織、マフィア、体育会系。

13.ネット社会にヒエラルキー的心性を持ち込むと、新しい劇場で昔の演劇が上演される。



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