一番ひどいPTSD
一番ひどいPTSDは
一番信頼している親に裏切られること。
たとえば、親からの性的虐待。
またたとえば、軍隊で他人を射殺するとき。
殺される側は命を落とすが、殺す側は心を殺す。
たとえば、殺す側と殺される側が、
目と目を合わせて、じっと見つめあい、
その上で殺すことができるだろうか。
それでも殺すことができるなら、
その心はどこか壊れている。
目と目を見詰め合うとき、
人間の脳の中の、ミラーニューロンが働いて、
今相手は何を考え、何を感じているのだろうかと、
推定する。そして相手の恐怖を理解し、相手にも生きるに値する未来がある事を発見する。
同胞である事を知るのだ。
ジハードだと割り切るのは、人間としての共感を、中絶することだ。
アメリカで戦争をするたびに、
アメリカ人兵士はPTSDに苦しむ。
アメリカの子供は大人たちから受けたPTSDに苦しみ続ける。
東南アジアの子供たちは貧しさゆえのPTSDを苦しむ。
一方、日本では、ゲームが子供に与える、PTSD効果について議論されている。
ゲームを指定ても、テレビを見ていても共感が育ち、
自分の感情を客観的にとらえ、
他人の感情の相似物が自分の感情の中にあると発見できるように、
母親が一緒にゲームの画面を見て、感情反応を見せる、
母親が一緒にテレビを見て、感情反応を見せる、
そうすることによって、子供は自分の中にどんな感情が起こるべきかを知るし、
他人と自分の間に流れている共感を確認することができる。
それを感じることができるなら、
ゲームでもテレビでもアニメでもかまわないらしい。
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お岩の場合、求婚者が父を殺して、その事を秘密にしているのだから、
一番大事な人が一番大事な人を殺し、秘密にしているという、
実に悲惨なPTSDである。
http://jp.youtube.com/watch?v=w0gkl_8CgvY&feature=related
神宮外苑花火大会 お岩さん PTSD
躁状態の人ははずせないイベント。
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今夜、東海道四谷怪談のお岩さん。
お岩さんは、毒薬で殺されたというメインの話と、
伊衛門はアルコール症で小動物を見たというサブの話があるけれど、
考えてみれば、お岩さんは
「病弱+親を夫に切り殺されて秘密にされる+産後の負担+浮気をされる+按摩さんに性的暴行を受ける」といった具合で、
まさに複雑性のPTSDっぽいのだし、
これだけあったら、やはり、恨んでもいいと思う。
伊衛門にしても、お家とりつぶしで、傘張り職人をしていて、いろいろといざこざもあり、
さらにおきまりのアルコールもあり、
なによりいい友人が一人もいないというのも特徴で、
けんかは強かったようだし、何かといえば切って捨てるタイプのようで、
現在の状態で言えば、性格障害の要素があるけれど、
生育の歴史を辿ればやはりPTSDの要素もあるように思う。
登場人物はどの人も不幸であり、
不幸ゆえに精神的な不調を抱え、
さらに不幸を招き寄せてしまうようで、
そのあたりは鶴屋南北の設定がうまいと思う。
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恨と書いて思い出したが、
先日韓国についての話があって、
韓国で「恨」というときは、
個人から個人への怨念というよりは、
あるべき状態に自分がないという、自分への悔恨を込めて「恨」というのだと言っていた。
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大人と子供で言えば、
子供は圧倒的にPTSDになる危険があるのだし、
女性と男性で言えば、女性がPTSDになる危険が高いと思う。
世の中の仕組みで言えば、
「偉い人の子供」などというものは、
親を恨んだり羨んだりする気持ちが、
その子供への虐待につながらないでもなく、
偉い人の子供も、それなりに大変なのだと思う。
大人の男同士でいっても、やはりそこには虐待の要素は埋め込まれていて、
最終的にPTSDから免れているのは、
世の中の少数部分だと思う。
虐待は世代間で連鎖するもので、
あるいは、一世代ジャンプして後世代にジャンプして伝わることも多く、
(たとえば、おばあちゃんが孫を陰険にいじめて、PTSDにしてしまう)
人の世は簡単ではない。
PTSDになっても、「立ち直る力」がどのくらいあるかで、
未来はかなり違うのだけれど、
そのとき、「仲間」「友人」の力は大きいと思う。
あるいは「おじさん」「おばさん」の力が大きいこともしばしば言われる。
PTSDの物語になると
本当に人間であることが悲しくなってしまうような物語が多い。
絶望はしないようにしよう、
連帯しよう、
世代間の連鎖をくいとめよう、
などが思い浮かぶ。
端的なPTSDは性的なもので、
その場合は、子供と女性、そして一部の男性が被害者になる場合が圧倒的だ。
力関係というものは、性的な力関係によくあらわれるのだと思う。
http://jp.youtube.com/watch?v=w0gkl_8CgvY&feature=related
東海道四谷怪談
リンク切れが心配なので
採録。
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東海道四谷怪談
1959・新東宝
原作:鶴屋南北
監督:中川信夫
美術:黒沢治安
撮影:西本 正
音楽:渡辺宙明
出演:天知 茂
若杉嘉津子
北沢典子
江見俊太郎
池内淳子
物語
夜道を行く二人の武士の前に現れた浪人風の男。男は地べたに手をついて懇願した。
「お岩殿との先の話し、今一度お考えくだされ」 男の名は民谷伊右衛門(天知茂)。
「貴殿のような身持ちの悪い者に、岩はやれぬとお断りした筈ではないか」 伊右衛門を冷たく突き放したのはお岩の父、四谷左門である。そして、なおも言い寄る伊右衛門に対し、左門は悪態をついて言葉の限り罵った。
堪忍袋が切れた伊右衛門は抜刀し左門と従人を斬った。
さらに、目撃者である提灯を持っていた下男をも斬ろうとした時、「おっと、待った、旦那、えらいことをしちまいましたね。あっしにいい考えがありやすぜ」 下男の名は直助(江見俊太郎)。
四谷家の仏壇の前にお岩(若杉嘉津子)とその妹お袖(北沢典子)。そして、伊右衛門と直助がいた。
「仇は顔の真中に傷があったことから、近頃、御金蔵破りを押し切った者に間違いありません」 直助が言った。お岩とお袖は直助の言葉を信じた。そして、伊右衛門と直助、お袖の婚約者、与茂七とともに父親の仇を討つべく出立した。
直助はお袖に惚れていた。与茂七が邪魔でならない。直助は伊右衛門に左門殺しを自分の胸に納める代わりに与茂七の殺害に手を貸すよう条件を出したのだった。
そして、旅の途中、直助は与茂七を滝壷に突き落とした。
江戸の長屋に住み着いた伊右衛門とお岩の間に乳飲み子が出来ていた。
お岩はもともと病弱な体だったが、最近ますます弱っている。
「仇はいつ討てるのでございましょう・・・」 お岩が傘張りをしている伊右衛門に気兼ねしながら言った。「・・・必ず討つと申しておるではないか」 お岩は敵討ちに真剣さを見出せない伊右衛門に対し、折に触れて愚痴をこぼす。
そんなある日、伊右衛門は町で侍たちに因縁をつけられていた娘を助けた。伊藤家の娘お梅(池内淳子)の家で歓待を受ける伊右衛門。お梅は伊右衛門に対し、助けられた恩以上のものを感じていた。
伊右衛門の夫婦仲は冷え切っていた。毎夜、博打に明け暮れる。家の中の金目のものをお岩から奪っていく。お岩は仇を討とうともせずに遊びほうける伊右衛門が恨めしかった。
直助の口利きでお梅との逢瀬を重ねる伊右衛門。そんな折り、直助が言った。
「旦那、そろそろ、お岩さんをばらしちゃどうです」 「何!」伊右衛門が形相を変えた。「二人を斬った旦那が、そう驚くこたぁねえ。少しぐらいあこぎなことをしなきゃ、この世間は渡っていけませんぜ」 直助は真からの悪党だ。
「・・・妙案があるのか」 「そうこなくっちゃ、あんまの宅悦にお岩さんの間男をさせるんですよ」 「拙者に岩は斬れん・・・」 「南蛮渡来の毒薬を飲ませるんです」
伊右衛門がお岩に着物を買ってきた。何時にない伊右衛門のみやげに喜ぶお岩。「これは良く効く薬だ。飲むが良い」 「今夜は、何から何まで・・・」伊右衛門の親切に嬉し涙にむせぶお岩であった。
伊右衛門のくれた薬を有り難く飲むお岩。その時、両国の花火がけたたましい大音響で響いた。 伊右衛門が町へ出かけた。
そして、伊右衛門に言い含められたあんまの宅悦がやって来た。宅悦は時々お岩の体を揉みに来ている内にお岩に惚れてしまっていた。伊右衛門の借金のかたに公認の浮気ができれば宅悦としては願ったりだ。
お岩を揉む宅悦はお岩の体に手を出した。激しく抵抗したお岩にしり込みする宅悦。「・・・これは、旦那さまが何もかもご承知のこと・・・」 「それは、誠か!」 お岩は驚愕した。
その時、突然、お岩が苦しみだした。「水、水・・・」 宅悦が急ぎ水を持ってきた。「あ、その顔!」 宅悦がお岩を見て叫ぶ。「え!」
鏡を見るお岩。鏡の中の自分の顔が化け物のように崩れ初めていた。梳かした櫛に髪の毛がごっそり抜け落ち血が流れ出した。 怯える宅悦。
子供の泣き声がする。「坊や・・・、一緒に死んでおくれ・・・」お岩は伊右衛門の企みを悟り、身の不幸を呪った。「極悪非道の伊右衛門・・・この恨み、はらさでおくものか・・・」
そこへ伊右衛門が帰ってきた。死んでいるお岩の顔を見て、さすがの伊右衛門もすくみあがった。慌てふためき逃げる宅悦を斬って捨てた。
やって来た直助とともに、お岩と宅悦を戸板の両側に打ちつけた。そして、戸板を川に流した。
伊右衛門とお梅の祝言の日。その初夜、蚊帳の中で待っていたのは、お梅ではなく顔の崩れたお岩だった。「伊右衛門どの~」 「おのれ!血迷ったか!」 伊右衛門が刀を振り下ろすと、倒れたのはお梅であった。
そして、駆けつけた父親をも殺してしまう。
川で釣りをしていた伊右衛門の前に戸板が流れ着く。戸板にはお岩と宅悦が表裏に打ち付けられていた。戸板が伊右衛門を襲う。刀を振り回す伊右衛門。
一方、お袖と住んでいた直助のもとへお岩の亡霊がやって来た。お岩を見た直助は震え上がりながら告白した。「お父上の本当の仇は伊右衛門だ」
与茂七は生きていた。滝壷に落ちた後、近くの住民に助けられたのだった。
お岩の亡霊は与茂七とお袖を伊右衛門と直助のいる寺へと導いた。
寺では伊右衛門がさんざん難癖をつける直助を斬り捨てたところだった。
「父の仇!覚悟!」お袖と与茂七が寺へ駆けつけた。そして、伊右衛門は二人に討たれる。「岩・・・許せ・・・」 民谷伊右衛門の最後の言葉であった。
http://jp.youtube.com/watch?v=w0gkl_8CgvY&feature=related
花火の夜の悲劇
花火の話がないかと思って
検索していたら、
四谷怪談のお岩さんが
悪い薬を飲むのが花火の夜だ。
伊右衛門が他の女と仮祝言を上げる夜、
お岩が死ぬ夜。
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http://homepage2.nifty.com/e-tedukuri/yotuyakaidan.htm
こちらは映画。
伊右衛門のくれた薬を有り難く飲むお岩。
その時、両国の花火がけたたましい大音響で響いた。
伊右衛門が町へ出かけた。
http://jp.youtube.com/watch?v=PrTs_YEyhSQ&NR=1
http://jp.youtube.com/watch?v=JLIPZm7-GwE&eurl=http://homepage2.nifty.com/e-tedukuri/yotuyakaidan.htm
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http://jp.youtube.com/watch?v=U342tFC9yIQ&feature=related
こちらはアニメで、
物語はいろいろと改変が加えられているが、
オープニングの三味線とアニメとラップはなかなか印象深い。
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運命は破壊的で圧倒的であるとして、
それを理解することができる人間というものもすばらしいと思う。
運命のことはもう仕方がない。
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http://jp.youtube.com/watch?v=rKa8W-bQ0lw&feature=related
こういうのをみると、
もうすべてを捨てている感じがする。
フラメンコダンサーなんかもそうだったような気がする。
http://jp.youtube.com/watch?v=1I-iigL2a_Y&feature=related
このうねる感じ
ゆっくり広がる感じ
悲劇はゆっくり始まる
http://jp.youtube.com/watch?v=1i1FznZT7fU&feature=related
これなんかだと
三味線としての迫力はあるが
悲劇の力はどうだろう
正月のおめでたさが覆っている
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http://jp.youtube.com/watch?v=n5soMoU_djs&feature=related
こっちの方がなんだか
憑いているものがあるようにも思う
http://jp.youtube.com/watch?v=2Jqr_2hU4tY&feature=related
http://jp.youtube.com/watch?v=kYkrZxBjn-Y&feature=related
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越中おわら風の盆だと
http://jp.youtube.com/watch?v=DNVNsT_306A&feature=related
こんな感じ
http://jp.youtube.com/watch?v=t7YuqHK6ftI&feature=related
http://jp.youtube.com/watch?v=w0gkl_8CgvY&feature=related
アニメ版四谷怪談 四谷左門
アニメ版四谷怪談
お岩さんは四谷左門という人の娘で、
それで四谷怪談というのだけれども、
現代に四谷シモンという人がいて、
左門とシモンはただ事ではない。
http://jp.youtube.com/watch?v=w0gkl_8CgvY&feature=related
うらめしや
Oiwaが「うらめしや」と言うところを
フランス語では
C'est cruel.
と文字にしている。
http://mvnavi.blog114.fc2.com/blog-entry-802.html
スペイン語版に比べて長いようで
スペイン語版は省略があったようだ
フランス語版のほうが内容がよくわかる
成仏はニルバーナとなっている
たたりはmalediction(のろい)
la malediction d’ondine
Malediction & Prayer
などと使うようだ
Iemonはホークスの和田に似ている
戸板に貼り付けられる男は大リーグの田口に似ている
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お岩は産後の肥立ちが悪くても貧しくても愛されなくても耐えていたが
嫉妬に焼かれた
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地獄は満杯である
http://jp.youtube.com/watch?v=w0gkl_8CgvY&feature=related
『新釈 四谷怪談』
『新釈 四谷怪談』
小林恭二著 集英社新書、700円
虐げられた江戸の全女性のためになされた受難と復活の物語
御家人は、身分的には武士でも俸禄が極めて低く、内職や借金をしてやっと暮らせる「ワーキングプア」のような生活を強いられていた。家計のやり繰りに苦しむ妻たちは、荒れる夫の飲酒や暴力にも悩まされていた。そんな女性たちが、すがるように信仰していたのがお岩さんだった。
江戸後期にしてようやく都市の人口再生能力が上がり、地方からの流入者が暮らす江戸の街に共通の言葉ができあがった。その結果、それまで一部の特権階級が独占していた文学や演劇が庶民にも浸透し、教育も普及、下層民にも「江戸市民」としての自我が芽生えた。
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御家人の貧乏暮らし、さらに抑圧される女性の苦しみ、そのような下部構造をとらえているというのだ。
なるほどそうかもしれない。
文学の受容はいつでも現代の言葉によってなされる。
しかし私にとって興味深いのは、お岩が、貧乏にも暴力にも病にも耐え、子どもが泣いても耐えていたのに、化けて出ようと決意しのは、嫉妬の故だったという点だ。あの女だけは許せないというこの一点である。
http://jp.youtube.com/watch?v=w0gkl_8CgvY&feature=related