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統合失調症とうつ-6

Ⅰ既知の事項のまとめ

1.統合失調症ではうつ状態が認められる例は多く、古くから指摘されてきた。しかもあらゆる病相で認められる。また統合失調症の場合に約10%は自殺するといわれ、一般人口に比較して9~30倍といわれている。統合失調症に際しては、うつ状態と自殺が直結するものもあり、統合失調症そのものが自殺と直結するものもあり治療も異なるのであるが、すべての病期を通じて、自殺を防止することが重要である。
 一方、うつ状態は、不眠、食欲不振、不安、意欲低下などと共に、一般に何かの不調の始まりのサインであることが多く、疾患特異性は少ないと考えられる。

2.統合失調症患者がうつ状態を呈するとき、鑑別診断が重要である。

1)統合失調症前駆期のうつ状態。つまり、幻聴、させられ体験、被害妄想などが発現する前に見られるうつ状態である。これを統合失調症を基礎とするものと診断することは容易ではないが、相談時の年齢が30歳以下であること、遺伝歴があること、社会適応が悪いことなどが発見の手がかりとなることもある。うつ状態の形をとることもあれば、うつ状態類似の統合失調症性陰性症状の形をとることもある。児童思春期の場合には疾患の鑑別も難しいし、薬剤に対する反応が予測しにくいので治療も難しい。
 治療としては少量のSulpirideが有効であることが多い。女性の場合には高プロラクチン血症による副作用が出ることが多いので、クロチアゼパムなどのベンゾジアゼピンを用いる。遺伝歴など明白な場合にはSDAで開始する。統合失調症前駆期のうつ状態を考えたときにはSSRIなどの抗うつ剤は、自殺の危険を高める可能性を考えて、使用しない場合もあり、むしろバルブロ酸などで経過を見ることもある。精神療法としては、症状と距離をとり対象化することを目標とする認知療法がよい。

2)統合失調症急性期におけるうつ状態。つまり、幻聴、させられ体験、被害妄想とともに見られるうつ状態である。統合失調感情障害の可能性も考える。この場合には充分量のドパミン遮断薬が有効である。病識が残存する場合、二次的に抑うつ状態を呈することもあるが、その場合も、抗精神病薬で対処する。精神療法としては、寄り添うこととなる。

3)統合失調症急性期後のうつ状態。精神病後抑うつ(postpsychotic depression)と呼ばれているものである。これは疲弊性うつ状態と陰性症状、さらには薬物性のうつ状態とに鑑別できるはずのものである。実際には容易ではないが、疲弊性うつ状態の場合には疲弊に加えて病識の部分的回復も見られ、悲観的、憂うつ、自責的であり、陰性症状の場合にはむしろ、意欲減退、興味喪失、無為、自閉などが目立つ。
 統合失調症急性期後疲弊性うつ状態の場合には、抗うつ剤は有効、無効、有害の各説があるが、私見ではSDAと併用する形でSSRIやアモキサピンなどを使用してよいと思われる。ただし自殺には充分注意をする。SDAとSSRIの併用に際しては、酵素の代謝の関係で、お互いに作用を強め合うと言われている点にも注意を要する。
 陰性症状の場合には、SDAを調節・変薬しながら経過を見る。アリピプラゾールやブロナセリンを使うことが多い。
 薬物性うつ状態の場合には高力価の第一世代ドパミン遮断薬を大量に使っている場合が多く、不快気分と活動性低下が主症状となる。SDAの方が薬原性うつを起こしにくいと考えられている。SDAが使用され始めた当初はawakening(めざめ現象)に注意すべきと言われた。認知が急速に改善し、病識が回復すると、抑うつと自殺の危険が高まることが理由である。現在は第一選択薬がSDAであるから、昔ほどの危険はないと思われる。
 気分安定剤としてバルプロ酸やカルバマゼピンが使用される事もあり、これは自殺の危険を考えてのことである。しかしFDAは2008年に抗てんかん薬自体が自殺をリスクを高めると注意喚起し、それに対してはアメリカてんかん学会でメタ解析の方法などについて異議が提出された。私見としては、FDAの注意喚起とは次元の違う問題であるが、量によっては意識覚醒状態に影響を与えることがまず大きな要因かと思う。
 以上のように、抗精神病薬が全般に自殺のリスクを高めるとの報告があり、うつ状態に抗うつ剤を使えば自殺の行動化の危険があり、抗てんかん薬も上記のような警告もあり、自殺については、どの薬の場合にも、慎重に対処したい。
 薬剤によって引き起こされる症状として、アキネジア性抑うつと呼ばれるものがあり、活動量減少、無気力、無関心を主徴とする。主剤を減量または変更するか抗パーキンソン薬を加えるかする。この場合に主剤を増量すると悪化すると理論の本には書かれているが、実際には増量してうまく行く場合もあり、明確な指針とはしにくい。先輩に指導してもらうのがよい。ブロマゼパムを加えるとよいというのも先輩からの豆知識である。焦燥感を主とするアカシジアもうつ状態の焦燥感と似るが、これも同様の対処でよい。また、薬剤性パーキンソン症状が優位になるとアパシー(無欲動)、アンヘドニア(失快楽)などが見られる。これも同様の対処でよい。アカシジアに対しては抗パーキンソン剤を推奨しないガイドラインもあり、別の本ではベンゾジアゼピンとβブロッカーを推奨している。
 精神療法としては、病識回復にあたっての絶望と不安を受容支持する事である。自殺について積極的に話題にし、些細なきっかけも見逃さない。必要があれば入院を勧める。デイケア、通所作業所などの精神科リハビリテーションでは、患者の回復に合った課題を提案し、役割と居場所を提供し、自尊心を回復させることができる。また、家族と一時的に距離をとることができる。治療者の方が早足になってはならない。
 認知行動療法としては、認知の暗黙の否定的構え(スキーマ)があれば、それに対して働きかける。教育的観点からは、医学の発展もあり、社会の進歩もあり、決して悲観する必要のないことを伝える。また、自分が今回急性期に至ったきっかけを分析することで、再発のパターンを知り、次回の増悪に備えることができる。また、統合失調症の長期経過を示すことによって、次の急性増悪の予防が大切であること、そのために継続的服薬が大切であることを理解していただく。
 また、一定のレベルダウンのあった患者さんには、SSTのテクニックを用いて、日常生活に支障の少ないよう工夫を施していく。焦らずに着実に治療を進め社会に関わるためには、家族の理解と協力が不可欠である。早い時期に家族を治療協力者として役割を与え、位置づける。各種の社会福祉制度の利用も大切で、年金や施設の利用、また自助グループ(たとえばベテルの会)などで患者同士が啓発し合うことで深刻な抑うつから免れることができた例も多い。
 薬剤のアドヒランスを高めるためには漢方薬を併用することも方法である。精神安定のために柴胡剤(柴胡加竜骨牡蛎湯や柴胡桂枝乾姜湯)を中心にして、気を補う補剤(補中益気湯や十全大補湯)を用いたり、また不安に対して半夏厚朴湯、また女性の場合の生理周期と関係した不調に当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、桃核承気湯、などを病期に応じて最適なものを調整する。

4)疲弊期から回復しても統合失調性のレベルダウンが残り、うつ状態に類した病像を呈する場合。残遺期と呼んでいるが、環境刺激に弱いので、疎外体験や孤立体験のあった場合や自殺念慮のある場合は入院治療が勧められる。SDAを調整して不足のある場合にはSSRIを加えることがある。

5)総じて、統合失調症の再発と自殺を防ぐことが第一目標となるが、QOLを改善することも大きな目標である。どのようにすれば統合失調症が根治するのか、分かっていない。

Ⅱ背景となる仮説
 診察をするとき、どのようなイメージを持って判断しているか、自由連想風に書いてみようと思う。

 初診でうつ状態を呈している場合、うつ状態は統合失調症を否定しないし、甲状腺機能異常や副腎皮質ホルモン異常などの身体病であることもあり、認知症の始まりであることもあり、脳梗塞の症状であることもある。諸検査で身体病が除外されたら、年齢を目安にして、15から30歳ならば統合失調症と躁うつ病の可能性、30-50歳ならばうつ病と躁うつ病の可能性、50歳以上ならばうつ病と認知症の可能性を考える。

 遺伝歴は重要である。家族の雰囲気も重要である。病前性格についてチェックする。また、病前の社会適応についてチェックする。対人距離の取り方は、その人の生来のドパミンレセプターの敏感さを反映しているだろう。敏感ならば対人距離を大きくとる。

 幻聴もない、被害妄想もない、しかし、憂うつで興味減退があり、不眠で、食欲は増減があり、自責感があり、周囲の人たちとうまくなじめない、そんな20歳の大学生女性が初診で話をしているとする。積極的に統合失調症と診断するエピソードはないとしても、過剰な敏感さは感じられる。

 たとえばひとつの可能性はこうである。その人は生まれたときからドパミンレセプターが過剰で過敏な性質であった。人と同じ体験をしても過剰にドパミンを伝達してしまい、苦しいので、引きこもりがちになる。家にいると自然に読書に親しむようになる。成績は悪くない。肯定される。このようにしてドパミンレセプター過敏のままで、成長し、過敏さを保ちながら、何とか破綻しないで生活する方法を身につけている。しかし思春期になり、引きこもりがちではいけないと思い、異性に出会い、社会での自分を生きるので、「金、色、面子、健康」などを主題にして過剰なドパミンにさらされ、耐え難い違和感に直面する。性的場面や社会的序列を意識する場面でドパミンは放出され、そこを出発点にして自分の過敏さに傷つくようになる。非常に軽いとしても、自我障害の側面はないか、疑う。

 ドパミンD2受容体仮説は1960年代からのもので、中脳辺縁系のドパミン神経過活動が陽性症状と関係し、中脳皮質系でのドパミン神経の抑制が陰性症状や認知機能低下と関係するとする説である。黒質線条体でのドパミン神経抑制はEPSの出現に関係している。第一世代のドパミン遮断薬は中脳辺縁系をブロックして陽性症状を沈静化するが、同時に中脳皮質系をブロックするので陰性症状は悪化し、黒質線条体系のドパミンブロックでパーキンソン症状が現れる。最近のSDAの例で言えば、ブロナセリンは中脳辺縁系ドパミン伝達を抑制し、中脳皮質系ドパミン伝達を促進するとの説がある。これは理想的なプロフィールなのであるが実際にはさらにいろいろな要因があるのか、期待通りには行かない場合もある。アリピプラゾールはドパミン遮断と言うよりもドパミンスタビライザーと言われているが、これもまだ臨床的評価の途中である。両剤とも、従来薬剤に比較すれば、うつに対してはよい対策であるように思う。クエチアピンやオランザピンはMARTAと呼ばれることがあるように、ドパミン、セロトニンだけではなく、さらに多種類のレセプター部分に作用して効果を発揮するので、患者の特性に応じたものが見つかれば有効である。ドパミンについてはD2だけではなくD3やD4の関与も議論されている。症状の消長だけではなくQOLを改善する観点に立てばMARTAやSDAを活用し、錠剤数と服薬回数を減らす方針もよい。

 自我障害について考えてみる。動物の神経系は「感覚器で刺激受容」→脳の処理「自動機械」(無意識に反応している部分)→筋肉の反応→現実の結果→「感覚器で刺激受容」というように現実と脳を両側においてループを形成している。これだけならば自意識は発生しない。「自動機械」だけが存在していると形容してもいいだろう。猫などは多分これだけだろう。
 人間の場合、刺激を受容し、その出力としての筋肉の反応の間に、脳内の「世界モデル」を発生させ、行動の結果をシミュレーションする。そして、脳内の「世界モデル」から出力された信号と、「自動機械」が出した実際の行動の結果の信号を、比較検討する。違いがあれば脳内「世界モデル」を訂正することによって、さらに正確な予測ができるようにする。
 たとえばこのくらいの力で地面を蹴ったら体はどのように進むか、そのようなことをシミュレーションしながら、同時に結果を修正しながら、生きている。ある程度安定した世界に生きていれば、予測は次第に正確になり、「世界モデル」と「自動機械」は必要な部分でほぼ一致するようになる。「自動機械」は世界の必要部分のよい転写である。それをさらに転写して内部に蓄えるのが「世界モデル」である。年をとって筋肉が弱くなったとき、「昔のままの世界モデル」では通用しないのだと悟り、「世界モデル」を修正する。「世界モデル」そのものが現実とずれているとき、認知障害や行動障害となり、一部は性格障害となる。
 「世界モデル」が現実を転写する機能は、運動における小脳の機能と似ている。また受動意識仮説の「リベットの実験」については多くの論文がある。

  「世界モデル」からの出力と「自動機械」からの出力は、時間差があり、常に「世界モデル」からの出力が、比較照合部分に一瞬早く届くように調整されている。このことから、能動感や行為の自己所属感が生じる。(私の理論である「時間遅延理論」)。つまり、人間は「自動機械」部分だけで生きて行くには充分であるが、「世界モデル」部分があることによって自意識が発生する。この自意識が発生したおかげで時間が発生し、未来と目的が発生した。これは人間を強く特徴づけるものであるが、進化の最後に発生した部分であり、壊れやすい。
 「時間遅延理論」でいうと、自由意志は錯覚であり、自我障害は錯覚が失われる苦しみということになる。自由意志の錯覚は人間が当たり前に人間らしく生きるために必要な錯覚といっていいだろう。だからこそまた、このような説明には、納得しない人も多いだろう。長い時間をかけて納得されてゆくだろうし、そのうちには自由意志という言葉の意味も変化するだろう。

 そもそも考えてみれば、各感覚器から脳の処理部位に信号が伝達されるのは同時ではない。しかしそれを同時であると見なして現実を構成している。同時と見せるように時間調整をしている部位があると考えられる。

 「世界モデル」からの出力が「自動機械」からの出力に遅れると、自我障害となり、遅れの程度によって、させられ体験、強迫性体験、幻聴、自生思考などになる。これが統合失調症の急性期の事態である。例えば、幻聴は、自分で話そうと思ったことの出力が「自動機械」側が先になり「世界モデル」側からがあとになるので、他人が話している、聞きたくもないことを聞かされていると知覚することになる。

 ドパミン遮断薬はその特性によって、「世界モデル」からの出力と「自動機械」からの出力のそれぞれを違う程度に遅延させる。もっとも強力な薬剤は、両方とも大きく遅延させる。この場合は、「自動機械」も停止してしまうくらいで、これが薬剤過量による不快気分と活動性低下である。ある程度マイルドな処方にすると、「自動機械」からの出力はやや遅延させ、「世界モデル」からの出力は遅延させない。こうなると、自我障害は改善する。逆に、薬剤の特性によっては「自動機械」からの出力を遅延させず、「世界モデル」からの出力を遅延させるものだと、自我障害は改善しない。ブロナセリンのプロフィールはこの理論によく一致していて、中脳辺縁系と中脳皮質系への効果の差と考えても、さらに前頭前野などへの効果の差もあるのかと考えてもよさそうである。アリピプラゾールも同様に中脳辺縁系でドパミンを抑え、中脳皮質系でドパミンを増やすと言われていて、これも時間遅延モデルをよく補強する。

 一方、SDAの効果として、セロトニン系への関与が重要だと言われており、セロトニン5-HT2A受容体が遮断され、黒質線条体ではドパミン分泌促進につながり、前頭前野でドパミン分泌促進して陰性症状を改善すると言われている。統合失調症のうつの場合にSSRIを加えるのが有効であり、逆に、うつ病の場合に、SSRIだけで対処できない場合にはSDAを少量使って有効なことがある。このあたりからも、ドパミン系とセロトニン系はかなり影響し合っているのが分かる。さらに抗てんかん薬はグルタミン酸系やGABA系に作用して神経を保護している。グルタミン酸系をアクセル、GABA系をブレーキと考えて、アクセルを抑制し、ブレーキを促進すると説明されている。抗精神病薬も抗うつ薬も飲めば最初は眠くなり、そのことは脳神経を保護するのだろうと思う。

 自我障害が続くとうつ状態になるが、疲弊性以外にうつ状態の説明があるかといえば、難しい。例えば、精神病極期にはドパミンなどのモノアミン系が使い果たされて、モノアミン系枯渇状態にあるのだと説明することはできる。そのことを疲弊の実体だと考えてもいいだろう。そうであれば、ドパミン遮断剤はマイルドに使い、セロトニン系抗うつ剤を重ねて使用しても意味がある。時間遅延性の症状にはドパミン系を、疲弊性にはセロトニン系をと考える。

 自我障害が発生した場合の心理的外傷は大きく、充分に抑うつの原因となりうる。また、自分の現在と未来を考えて、悲観的になることも理解できる。こうした事情を含んで精神病後疲弊性抑うつと呼んでいる。この場合には、心因反応として、悲哀のエピソードのあとの抑うつともメカニズムは似ているし、躁うつ病において、躁状態のあとの疲弊性のうつ状態ともメカニズムは似ている。しかし躁うつ病の場合には、疲弊性うつが終わったあとに、本質的なうつ病が進行することが分かっている。自我障害のあとには疲弊性うつが前景に立つ時期があり、そのあとは陰性症状が主となる。このあたりを微細に診察することで症候学としての稔りがあるかもしれない。治療としては、セロトニン系の調整を眼目とする薬剤を用いてよい。自殺には充分注意し、面接の感覚を1週間程度に短めに設定する。場合によってはさらに短くし、家族と連携し、必要に応じて入院治療も考慮する。

 薬剤を用いる場合に、脳血液関門のことも気になる。犬のコリーは脳血液関門が弱くなる突然変異を維持しているので、普通犬に使う薬も使えない場合があるという。おそらく、脳血液関門が弱いので、気まぐれに何かを食べたりするとつらい思いをするのだろう。そこから食行動について気まぐれを排除する性格が発達し、それが食行動以外の行動全般に広がり、人間にとって信頼性の高い犬になったのかもしれない。人間の場合、性格の違いや認知の違いの原因として神経伝達物質の他に、たとえば脳血液関門が考えられないだろうか。薬剤を組み合わせて使用するとき、脳血液関門の通りやすさに違いが出てくることも考えられる。一緒なら通りやすいとかの可能性もあるし逆もあるだろう。

 認知療法で働きかけているのは「自動機械」に対してなのか「世界モデル」に対してなのか、治療者が意識するといいかもしれない。

Ⅲ統合失調症のリハビリについて
 統合失調症のリハビリにおいては、残遺期のうつ状態に類したレベルダウンした状態に対して行うことが多い。その場合に治療者の恐れることは再発・再燃と自殺である。そこで薬剤はなるべく維持しようとする。ドパミン遮断剤を維持すると、ドパミンレセプターにおけるアップレギュレーションが起こる。つまり、薬剤で蓋をしているけれども、実際のレセプター量は増えてしまい、潜在的な過敏さを作り出す。デイケアなどの場面においては、コントロールしつつといえども、少しずつドパミンを放出する活動をするのであって、そこにアドヒランスの悪さがあったりすると、潜在的な過敏さが形成されているので、再発再燃に至る。治療者はそれが怖いのでやはり薬剤を増量する。するとまた潜在的過敏性が用意されるという悪循環が形成される。
 この矛盾を回避するには、まず薬剤を少し減らして、かつ、デイケアでの活動量を増やして、ドパミンレセプターのダウンレギュレーションを目標にしなければならない。しかしながら、薬剤を減量することも、活動量を増やすことも、再発再燃につながるので、慎重かつ細心のプログラムが必要である。うつ病に類した状態からの脱出はなかなか容易ではない。







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