SSブログ

認知症治療効果を経済学的尺度からみる


認知症コラム:経済学的尺度からみた認知症治療とその改善効果
■認知症治療効果を経済学的尺度からみるということ
 前回は、アリセプトの投与が患者およびその介護者のQOLの向上に役立つことが示唆されることをご紹介しました。
 さらに、この研究から得られた効用値(EQ-5Dから求められたQOL値に生存年または対象期間(年)をかけた「QALY(質調整生存年)」で示します)を経済指標に換算し、患者や介護者の主観的な尺度に立脚した「経済的基準」によってアリセプトの治療効果を評価することを試み、その結果が報告されています。
 この報告では、効用値を経済指標に換算する方法として、「WTP(Willingness-to-pay)」が用いられています。WTPは「完全な健康状態で生存する1年に対する社会的な支払い意思額」。例えば、「効用値0.8の状態で5年間生存できる」治療の評価は0.8×5=4 QALYとなります。1QALYは国ごとで異なり、日本では平均600万円/年であるとされています。 


■経済学的尺度からみたアリセプト投与による治療効果
  前回ご紹介したアリセプト投与によるQOLの向上についての研究では、アリセプト新規投与患者と介護者の効用値は、14週間でそれぞれ0.1向上しています。この変化が1年間維持されたと仮定すると、年間のQALY変化量は0.1(効用値)×1(年数)=0.1QALYとなり、600(万)×0.1(QALY)=60万円程度に相当すると考えられます。

 これに対して、アリセプトの薬剤費は年間16~28万円とされていることから、効用値をもとにした分析においても医療経済的に有益であり、アリセプトによるAD治療の有用性は高いことが示唆されました。(また既に、介護費用、医療費、薬剤費用をもとに行った費用対効果分析では、アリセプトを使用した方が、よい状態が維持されるために、結局これらの総費用がかからないことが示されています。)

 今月は2回にわたって、患者本人のQOL指標や医療経済学的観点からAD治療の有用性についてご紹介しました。ADなどの認知症医療の目指すべき姿は、患者本人を中心とする医療であり、また、家族や介護者の戸惑いや不安などの軽減にも配慮するなど、複雑に絡まった要因に対応することです。
 2回にわたってご紹介した報告は、ADのアリセプトによる薬物治療について、わが国のデータに基づいたQOL指標を用い、患者本人や介護者を対象に検討された日本で初めての報告です。アリセプトによる治療は患者本人、介護者のQOLを向上させ、医療経済学的にも有用性の高い治療であることが示唆されました。また、これからのADなどの認知症医療のありかたとして、認知機能やADLの改善という観点からだけではなく、患者や介護者のQOLにも配慮した医療が重要です。

日本語版EQ-5D:健康状態を5つの項目(移動の程度、身の回りの管理、ふだんの活動、痛み/不快感、不安/ふさぎ込み)に分け、それぞれについて3段階で評価する尺度。効用値は得られた回答から日本語版効用値換算表により換算され、「完全な健康」を1、「死」を0と規定されている。


共通テーマ:日記・雑感

統合失調症と自殺

統合失調症で自殺が多いことは承知しているわけだが
ここに症例がある。

25歳、大手自動車会社勤務、転勤して環境が変わり、
上司との関係に悩み、同時にプライベートで遠く離れた恋人との関係に悩む。
幻聴と被害妄想がはじまり、医院を受診、第二世代抗精神病薬を投与され、経過を見たが、
仕事が手に付かないので、一旦自宅休養とし、田舎に帰って休んだ。

再度上京して通勤訓練を開始、比較的順調だった。
その日も、次の一週間のスケジュールについて話しあい、納得した感じで帰宅。
薬剤も同じで一週間分。
数日たって母親から電話、首吊して死んでいたのを発見されたという。
レシートを見ると、最後の通院の帰り道に、ホームセンターに立ち寄り、ロープを購入したらしい。

死にたいというサインは周囲の誰にも発信せず、
主治医にもまったくその素振りもみせず、
自殺未遂の過去もなく、希死念慮の表明もなく、
いきなり自殺してしまった。

十分注意しつつ、第二世代抗精神病薬を使用して、こうした結果になる。
だから、統合失調症の場合、うつ症状があってもなくても、自殺には注意をして、
危険がなくても定期的に話題にするくらい慎重であった方がよいと思われる。


共通テーマ:日記・雑感

直訳と超訳 統合失調症とうつ病の合併について

直訳ではなんともよくわからないので
いろいろ考えているうちに超訳になってしまった例

英語で難しいことを言われると
細かいところがよくわからない
補うと頭の体操にはなるけれど
訳文とは言えない感じになる

こうしてみると
本文のねじくれ具合をを予想させる訳文の意味もかなりあるのだと納得できる

翻訳の方が分かりやすかったら
なんかおかしいでしょう

(直訳)

統合失調症とうつ病の合併について

統合失調症の精神病症状と感情症状は精神医学の疾病分類の中心的なジレンマだったし、現在でもやはりジレンマである。
ここではレビューしないが、実証的な研究によれば、特に、統合失調症と双極性障害は一次元のスペクトラムとして分布するらしい。またたぶん、多次元的スペクトラムとして分布するらしい。
さらには、統合失調感情障害の疾病分類学的な位置づけについては、活発な議論が続けられており、様々な定義とアプローチの仕方があって、意見の一致は難しい。
この二つの側面、つまり、「統合失調症と双極性障害は疾病としてかなり一致している」と「統合失調感情障害の難しい位置づけ」はこの論文の射程を超える大問題であるが、疾病分類学の重要な側面である。ここでは話題を限定して、精神病症状と単極性うつ病症状の併存状態をとりあげる。
統合失調症の場合には大部分の症例で精神病症状とうつ症状の併存が見られる。これは昔から言われていることだが、同じくらいの割合で、原発性のうつ病患者の場合にも精神病症状とうつ症状の併存が多く見られる。
Moellerは問いかけている:「統合失調症の症状には中核的な幻覚妄想状態もあるし、陰性症状、認知障害さらにはうつ症状が見られると言われているが、果たしてうつ症状は、統合失調症の多彩な症状の一部と考えてよいのか、あるいは、統合失調症とうつ病は併存症の考え方から言えば、区別すべきものなのか。」
BartelsとDrakeによれば、統合失調症のうつ症状は3つに分けて考えることができる。(1)器質性原因から二次的に発生するうつ症状、(2)急性精神病エピソードに伴う「非器質性」うつ症状、(3)統合失調症の際に一時的ではなく起こる症状。たとえば統合失調症の前駆症状や精神病後抑うつは急性精神病の際に一時的に起こるうつ症状であるが、統合失調症の陰性症状は一時的ではない症状である。
そのような考え方をすれば、統合失調症の場合に見られるうつ症状を構造的にとらえることができる。

抗精神病薬はそれ自身で神経学的な副作用を呈し、薬剤性パーキンソン症状、(たとえば寡動、感情表現の低減、仮面様顔貌、構音障害)、さらにはアカシジアによるイライラが起こる。そ
これらは精神運動抑制や激越性うつ症状と混同される恐れがある。
抗精神病薬はまた薬剤性のディスフォリア(不機嫌)を起こす可能性があり、おそらく脳の報酬系におけるドパミンブロックによると思われる。抗精神病薬はもともとうつ症状を引き起こすものだと言われている。
統合失調症の人はほかの身体病にかかりやすいし物質使用障害を起こしやすい。身体病も物質使用障害もうつ症状を引き起こす可能性がある。
アンヘドニア(失快楽症)、無為(abulia)、失語(alogia)、無欲動、自発意欲減退、引きこもりなどのような陰性症状がうつ症状と重なり合うことかあり、うつ症状と見間違うことがある。
精神病症状後の士気喪失や絶望、孤独はうっすらと覆う不機嫌を引き起こす可能性がある。

統合失調症で古典的に言われているうつ症状はPPD(精神病後抑うつ)である。DSM-4TRの付録で定義されているように、統合失調症の急性期後に起こる大うつ病エピソードである。精神病後抑うつの古典的な定義は精神病エピソードによる喪失反応や心理的外傷反応(トラウマ)である。
Rothは「精神病エピソードに続く抑うつ反応は対人関係不全に対しての全体的心理生物学的反応である」と書いている。
精神病後抑うつと精神病エピソードの関係は不明確なままであり、うつ症状は精神病症状に対する反応であるのか、精神病症状が消退するときに認知が改善して起こるものなのかもはっきりしていない。
うつ症状が陽性症状スコアとよく比例することや統合失調症の薬を飲めばうつ症状がよくなることは、精神病後抑うつは精神病陽性症状消退による認知の改善によるものである可能性を支持している。
陽性症状が消えて、陰性症状が残った時期に、陰性症状を補うための反応が起こる。その反応が不足していると精神病後抑うつとなる。
うつ症状は統合失調症の陰性症状に対する代償反応不全であることが昔から根強く言われている。

統合失調症でうつ症状があると予後は比較的よいと昔は言われていたものだが、証拠によれば反対のことが真実であるらしい。
Mandelほかは、退院後1年間の211名の統合失調症患者を研究し、退院後の最初の数ヶ月でうつ症状を呈した患者の25パーセントは著名に悪化する傾向があった。Johnson は、急速に回復した後に一年以上たってうつ症状を呈した慢性統合失調症患者はそうでない患者よりも再発しやすいと報告している。TsuangとCoryellの古い研究やSimほかの最近の研究では統合失調症よりも統合失調感情症で予後がよいとは言えないと結論されている。

統合失調症患者では一般人口におけるうつ病罹患率よりもうつ症状を引き起こす可能性か高い。多くの報告では、精神病症状を呈した人の中でうつ症状を呈した者の割合が表4にまとめられている。予想されるとおり、うつ症状の割合には大きな違いがある。統合失調症や精神病の定義が違うので、研究対象は一様ではなく、またうつ症状が起こる時期の設定も様々で、点有病率(point prevalence)で評価する方式から多年にわたるまでている。
しかしながら、SirisとBenchのすばらしいレビューでは、ここに掲げた諸研究よれば、統合失調症患者はうつ症状を呈しやすく、およそ25パーセントとみられる。

大うつエピソードは精神病症状に発展しやすいことを考えてみるのも有益である。実際に感情障害の経過の中でうつ症状を呈する患者が精神病症状を呈することは多い。しかし、統合失調症患者がうつ症状を呈する場合ほどは研究されていない。
OhayonとSchatzbergはヨーロッパ諸国の18980名の一般人口研究で点有病率を研究した。うつ症状のなかで重要なキーとなる症状を少なくとも一つ呈するのは16.5パーセント、その中で妄想や幻覚があったのは12.5パーセントであった。DSM4の大うつエピソードを完全に満たす454名のうち、18.6パーセントが妄想や幻覚を経験していた。大うつ病と診断された人の14パーセント、大うつ病で初回入院した人の16.9パーセントがうつエピソードの経過中に精神病症状を経験していた。

進行性の統合失調症のハイリスクグループと超ハイリスクグループの研究で示されているのは、精神病症状が発現する前の時期と精神病症状が発現しているさなかでのうつ症状が著明に多い事である。
Corbblattほかは、精神病症状が現れつつあるさまざまな時期での62名の思春期症例についての研究の中で、感情障害とひきこもりを「潜在脆弱性中核」の一部と考えている。
Hafnerほかは232名の未治療の統合失調症初回入院の、成人患者と十代患者についての詳細な病歴と、130名の健康対照群と130名の人口統計学的に調整された130名のうつ病の初回入院患者の病歴を研究した。130名の統合失調症患者と原発性うつ病群を比較して、うつ病と統合失調症で10のもっとも頻発する症状を調べると、13の症状が同時に現れ、高度に重なり合っていた。13の共通症状の中で8つは頻度が変わらなかった。うつ病と統合失調症のどちらでも病初期に中核的うつ症状と陰性症状が見られ、密接に並行した経過を示した。思考障害、集中困難、エネルギー喪失、ひきこもりなどが陰性症状である。統合失調症では、驚くにはあたらないことだが、陽性症状が多く見られ、多いと入院に至る。うつ病と統合失調症のどちらでもうつ症状のふたつの病気の初期症状は、最初期症状に共通の中核精神病理を反映したものだと著者等は結論している。また彼らは統合失調症患者のうつ症状のピークは精神病症状のピークと一致していると書いている。

統合失調症とうつ病の神経生物学に関係して、そして、病因論的および精神病理学的な一致または重なり合いの証拠に関係して、多くの研究が、局所的な伝達物質についてうつ病と統合失調症で異なっており、両者で一致することはまれであると報告している。
うつ病の機能的脳画像では前頭葉前部の代謝の減少と、その部位での脳血流量の減少が示されているのだが、統合失調症とうつ病のワーキング・メモリー・タスクにおいて、直接比較した脳血流量変化はうつ病よりも統合失調症で、大きな脳血流量減少を示していた。うつ病と統合失調症で海馬体積の減少が報告されていて、最近の研究では、ミエリンに関係する遺伝子と280人の、統合失調症患者での臨床特徴とが関係していると確認されている。統合失調症にうつ病を併発しているかいないかでそれぞれ違いがあると報告されている。研究者によれば、グリコプロテインM6A遺伝子(GPM6A)、これは動物においてストレスが海馬に与える影響を調節している部位であるが、それは統合失調症の中で、うつ症状の危険が最も高いサブグループと関係している。

対照的に、機能性脳画像でもっとも確実にみられている所見は、正常比較対照に対してうつ病では扁桃体で脳血流量が増加しグルコース代謝が増加している。
この所見は統合失調症では見られないもので、統合失調症ではむしろ扁桃体の活動が低下している。
うつ症状を伴う統合失調症と伴わない統合失調症では、神経生物学的に違いがあるのか、明確な所見が得られていない。
うつ症状を伴う統合失調症の場合に、第二世代抗精神病薬が有効であろうと言われていて、ドパミンブロックによる不機嫌と錐体外路症状を回避できる。第二世代抗精神病薬はいろいろなセロトニンレセプターにも親和性があるし、直接、間接の有利さがある。

Tollefsonほかは、オランザピンを例として、統合失調症の場合にうつ症状への直接の効果がある可能性が言われている。
統合失調症におけるうつ症状の経過観察とオランザピンまたはハロペリドールによる治療研究では、オランザピンがより有効であり、その効果の56パーセントは、陰性症状に対する二次的なものと言うより、あるいは錐体外路症状の緩和による二次的なものでもなく、「原発性の」うつ症状に対して効いている。似たような分析は、他の第二世代抗精神病薬
についても言われている。さらに、クロザピンは抗自殺作用が優れていると言われているのだが、実際にはクロザピンとオランザピンは同等程度の効果を持つ。
さらに第二世代抗精神病薬は双極性障害で広く用いられており、そのことは、感情障害に対しての効果が、(陽性症状を減らすことによってうつ症状を減らすという)統合失調症の精神病への効果とはある程度独立であることを間接的に示している。

別の見地から見ると、統合失調症の抗うつ薬治療は比較的注目されなくなっており、それは統合失調症の治療に際してうつ症状の見られることが多くなっていて、抗うつ薬と抗精神病薬を使う割合が薬30パーセントにもなっていることも一因である。
Sirisほかは、イミプラミンを補強すると精神病症状の再発が少なくなると報告している。
第二世代抗精神病薬に加えての補強療法については情報が足りない。

第二世代抗精神病薬の神経可塑性への効果の点で考えると、これらの薬は統合失調症のさいに合併するうつ症状を治療するだけではないのかどうかが、興味深い。

Cornbattほかによれば抗うつ剤を投与された精神病発病前の思春期患者さんは、抗精神病薬を投与された患者さんと同程度に回復している。
厳しく統制された研究ではないけれども、抗うつ剤が精神病の発展に影響を与えるらしいことは、興味深い。

この節では以下のことが結論として言える。
(1)統合失調症においてうつ症状はしばしば見られる。
(2)うつ症状は統合失調症の障害をさらに重いものにするし、うつ症状は精神病症状の再発率を高める。
(3)精神病後抑うつ(PPD:Post Psychotic Depression)は統合失調症に大うつ病が起こる「不完全型」かもしれない。
(4)結論はできないが、可能性としては、薬剤が直接にうつ症状や自殺に影響しているかもしれない。精神症状が改善すればうつ症状が改善するというものでもないらしい。
(5)統合失調症の下位グループとしてうつ症状を伴う統合失調症を考えるのは、直感的には同意できるが、文献もないし、神経生物学的な研究も不足している。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(超訳)

統合失調症とうつ病の合併について

 統合失調症の精神病症状と感情症状は、精神医学の疾病分類の一大ジレンマである。

 統計研究によれば、統合失調症と双極性障害は一次元連続体(スペクトラム)として分布するようであるし、多次元的スペクトラムとして考えればさらに確かに、両者の関係を説明できるらしい。つまり、それぞれ独立のものとは言えないらしい。つまり、一つの変数に沿って並べるとおおむね連続体として分布し、さらに複数の変数に沿って並べると、もっとよい連続体になるので、両者は隠された変数で制御される表現型ではないかということになる。

 一方、「統合失調感情障害」の疾病分類学的な位置づけについては、いまも活発な議論が続けられており、様々な定義とアプローチの仕方があって、意見の一致は難しい。

 この二つの側面、つまり、「統合失調症と双極性障害は疾病としてかなり一致している説」と「統合失調症と双極性障害は疾病として独立しているが、ときに重なり合うことがあり、重なった部分を統合失調感情障害と呼ぶ説」のいずれが妥当であるかは、この論文の射程を超える大問題であるが、現在もやはり精神科疾病分類の重要問題であることに変わりはない。ここでは話題を限定して、精神病症状と単極性うつ病症状の併存について論じる。

 統合失調症の場合には多くの症例で精神病症状とうつ症状の併存が見られる。これは昔から言われていることだが、逆に同じくらいの割合で、原発性のうつ病患者の場合にも精神病症状とうつ症状の併存が多く見られる。
 Moellerは「統合失調症の症状には中核的な幻覚妄想状態もあるし、陰性症状、認知障害さらにはうつ症状があるが、果たしてうつ症状は、統合失調症の多彩な症状の一部と考えてよいのか、あるいは、統合失調症とうつ病とが併存症であるとして、区別すべきものなのか」と書いている。つまり、本質的に相伴うものなのか、偶然重なることがあるのか、議論はあるが、結論は得られていない。
 BartelsとDrakeによれば、統合失調症のうつ症状は3つに分けて考えることができる。
(1)統合失調症の器質性原因から二次的に発生するうつ症状。つまり、統合失調症の器質性原因としてドパミンの障害を考えるとして、ドパミンの変動から説明できるうつ症状。
(2)統合失調症の急性精神病エピソードに伴う「非器質性」つまり「心因反応性」うつ症状。
(3)統合失調症の特徴的な時期に起こるうつ症状。たとえば統合失調症の前駆症状としてみられるうつ症状、急性精神病が落ち着いた時期に起こる精神病後抑うつとしてのうつ症状、さらには残遺期にみられる統合失調症の陰性症状類似のうつ症状などがある。(1)ではうつ症状が精神病症状と消長をともにするのに対して、(3)は統合失調症の経過の中で特徴的に時期に現れる。
 このような分類をすれば、統合失調症の場合に見られるうつ症状を構造的にとらえることができる。

 抗精神病薬はそれ自身で神経学的な副作用を引き起こし、薬剤性パーキンソン症状(たとえば寡動、感情表現の平板化、仮面様顔貌、構音障害)やアカシジアによるイライラを起こす。これらは薬剤副作用であるが、うつ症状症状そのものである精神運動抑制や激越性うつ症状と混同される恐れがある。
 抗精神病薬はまた薬剤性のディスフォリア(不機嫌)を起こす可能性があり、おそらく脳の報酬系におけるドパミンブロックに原因すると思われる。抗精神病薬はもともとうつ症状を引き起こすと言われている。
 統合失調症の人はほかの身体病にかかりやすいし物質使用障害を起こしやすい。さらには身体病や物質使用障害がうつ症状を引き起こす可能性がある。
 アンヘドニア(失快楽症)、無為(abulia)、失語(alogia)、無欲動、自発意欲減退、さらには引きこもりなどのような陰性症状が、うつ症状と混同されることがある。
 精神病症状後の士気喪失や絶望、孤独はディスフォリアを引き起こす可能性があり、これもうつ症状と混同される可能性がある。

 統合失調症で古典的に言われているうつ症状はPPD(精神病後抑うつ)である。DSM-4TRの付録の定義によれば、PPDは統合失調症の急性期後に起こる大うつ病エピソードであるが、精神病後抑うつの古典的な定義によれば精神病エピソードに引き続く喪失反応や心理的外傷反応(トラウマ)であり反応性のものと解釈されている。
 Rothは「精神病エピソードに続く抑うつ反応は対人関係不全に対しての全体的心理生物学的反応である」と書いている。
 精神病後抑うつと精神病エピソードの関係は不明確なままであり、うつ症状は精神病症状に対する心理的反応であるのか、精神病症状が消退するときに認知が改善して起こるものなのか、はっきりしていない。
 うつ症状が陽性症状スコアとよく比例することや、統合失調症の薬を飲めばうつ症状がよくなることは、精神病後抑うつは精神病陽性症状消退による認知の改善によるものである可能性を支持している。
 陽性症状が消えて、陰性症状が残った時期に、陰性症状を補うための反応が起こる。その反応が不足していると精神病後抑うつとなる。
 うつ症状は統合失調症の陰性症状に対する代償反応不全であることが昔から根強く言われている。

 統合失調症でうつ症状があると予後は比較的よいと昔は言われていたものだが、証拠によれば反対のことが真実であるらしい。
 Mandelほかは、退院後1年間の211名の統合失調症患者を研究し、退院後の最初の数ヶ月でうつ症状を呈した患者の25パーセントは後に著明に悪化する傾向があったと報告しいる。Johnson は、急速に回復した後に、一年以上経過してうつ症状を呈した慢性統合失調症患者は、そうでない患者よりも再発しやすいと報告している。TsuangとCoryellの古い研究やSimほかの最近の研究では、統合失調症よりも統合失調感情症で予後がよいとは言えないと結論されている。つまり、統合失調症でうつ症状がみられる場合には、予後が悪い。

 統合失調症患者では一般人口におけるうつ病罹患率よりもうつ症状を引き起こす可能性か高い。多くの報告で精神病症状を呈した人の中でうつ症状を呈した者の割合が表4にまとめられている。予想されるとおり、うつ症状発生の割合には大きな違いがある。その原因として統合失調症や精神病の定義が違うので対象患者は一様ではないこと、また精神病症状が起こったあとどの時期にうつ症状が起こるかについての時期の設定もさまざまで、同時から数年後に至るまでさまざまであることがあげられる。
 そうした困難はあるものの、SirisとBenchのすばらしいレビューによれば、諸研究を通観すれば、「統合失調症患者はうつ症状を呈しやすく、最頻値としておよそ統合失調症患者の25パーセントがうつ症状を呈する」とみられる。

 逆に、大うつエピソードは精神病症状に発展しやすいことを考えてみるのも有益である。実際に感情障害の経過の中でうつ症状を呈する患者が精神病症状を呈することは多い。しかし、統合失調症患者がうつ症状を呈する場合ほどは研究されていない。
 OhayonとSchatzbergはヨーロッパ諸国の18980名の一般人口研究で点有病率を研究した。うつ症状のなかで重要なキーとなる症状を少なくとも一つ呈する人は16.5パーセント、その中で妄想や幻覚があったのは12.5パーセントであった。DSM4の大うつエピソードを完全に満たす454名のうち、18.6パーセントが妄想や幻覚を経験していた。大うつ病と診断された人の14パーセント、大うつ病で初回入院した人の16.9パーセントがうつエピソードの経過中に精神病症状を経験していた。

 進行性の統合失調症のハイリスクグループと超ハイリスクグループの研究によれば、精神病症状を呈する前の時期と、精神病症状を呈しているさなかでのうつ症状が著明に多い。
 Corbblattほかは、精神病症状が現れつつあるさまざまな時期の62名の統合失調症思春期症例についての研究の中で、感情障害とひきこもりを「潜在脆弱性中核」の一部と考えている。
 Hafnerほかは232名の未治療の統合失調症初回入院の成人患者および十代患者についての詳細な病歴と、130名の健康対照群とそれに統計的に対応する130名のうつ病の初回入院患者の病歴を研究した。130名の統合失調症患者と原発性うつ病群を比較して、うつ病と統合失調症でもっとも頻発する症状を調べると、13の症状が同時に現れ、高度に重なり合っていた。13の共通症状の中で8つは頻度が変わらなかった。うつ病と統合失調症のどちらでも病初期に中核的うつ症状と陰性症状が見られ、密接に並行した経過を示した。思考障害、集中困難、エネルギー喪失、ひきこもりなどが陰性症状である。当然であるが、統合失調症では陽性症状が多く見られるし、陽性症状が多いと入院に至る。うつ病と統合失調症のどちらでも、病気の初期症状としてのうつ症状は、最初期症状に共通の中核精神病理を反映したものだと著者らは結論している。また彼らは統合失調症患者のうつ症状のピークは精神病症状のピークと一致していると書いている。

 以上のように、症状研究では、統合失調症の固有症状とうつ症状は分離できない。

 一方、神経伝達物質研究の多くでは、うつ病と統合失調症では関係している神経伝達物質が異なっており、両者で一致することはまれであると報告されている。
 うつ病の機能的脳画像では前頭葉前部の代謝の減少と、同じ部位での脳血流量の減少が示されているのだが、統合失調症とうつ病の人にワーキング・メモリー・タスクを課したとき、脳血流量変化を直接比較すると、うつ病よりも統合失調症で大きく脳血流量が減少していた。うつ病と統合失調症で海馬体積の減少が報告されているし、最近の研究では、ミエリンに関係する遺伝子と統合失調症患者の臨床特徴とが関係していることが280名の患者について確認されている。その場合特に統合失調症にうつ症状を併発していることと関係していた。
 グリコプロテインM6A遺伝子(GPM6A)はストレスが動物の海馬に与える影響を調節している部位であるが、この遺伝子が統合失調症の中でうつ症状の危険が最も高いサブグループと関係していると報告されている。

 機能性脳画像での確実な所見のひとつとして、正常比較対照に対してうつ病では扁桃体で脳血流量が増加しグルコース代謝が増加している。この所見は統合失調症では見られないもので、統合失調症ではむしろ扁桃体の活動が低下している。うつ症状を伴う統合失調症と伴わない統合失調症についての神経生物学的数値の直接比較研究について、明確な結論を示している論文はない。

 うつ症状を伴う統合失調症の場合に、第二世代抗精神病薬が有効であろうと言われていて、これを使えばドパミンブロックによるディスフォリアと錐体外路症状を回避できる。第二世代抗精神病薬はいろいろなセロトニンレセプターにも親和性があるし、直接にも間接にも有利である。

 Tollefsonほかは、オランザピンを例として、統合失調症の場合にうつ症状への直接の効果がある可能性を指摘している。
 統合失調症におけるうつ症状の経過観察とオランザピンまたはハロペリドールによる治療研究では、オランザピンのほうが有効であるとされている。その効果の56パーセントは、陰性症状改善による二次的なものでもなく、あるいは錐体外路症状の緩和による二次的なものでもなく、「原発性の」うつ症状に対して効いている。似たような分析は、他の第二世代抗精神病薬についても言われている。さらに、クロザピンは抗自殺作用が優れていると言われているのだが、実際にはクロザピンとオランザピンは自殺に関して同等程度の効果を持つ。
 さらに第二世代抗精神病薬は双極性障害で広く用いられており、このことは感情障害に対しての効果が(陽性症状を減らすことによってうつ症状を減らすという)統合失調症の精神病への効果とはある程度独立であることを間接的に示している。

 統合失調症の際の抗うつ薬治療は比較的注目されなくなっているのだが、それは統合失調症の治療に際してうつ症状が見られることがあまりに多くなっていて、抗うつ薬と抗精神病薬を使う割合が約30パーセントにもなっていることも一因である。
 Sirisほかは、抗精神病薬にイミプラミンを補強すると精神病症状の再発が少なくなると報告している。
 第二世代抗精神病薬に加えて薬剤を用いる補強療法については特に情報が足りない。

 第二世代抗精神病薬は統合失調症の際に合併するうつ症状に効果があるだけではなく、躁うつ病やうつ病、躁病でも効果があることから考えると、神経可塑性への効果があるのではないかと興味が持たれる。

 Cornbattほかによれば抗うつ剤を投与された精神病発病前の思春期患者は、抗精神病薬を投与された患者と同程度に回復している。厳しく統制された研究ではないけれども、抗うつ剤が精神病の進展を抑制するらしいことは、興味深い。

 この節では以下のことが結論として言える。
(1)統合失調症においてうつ症状は考えられているよりしばしば見られる。
(2)うつ症状は統合失調症の障害をさらに重いものにするし、うつ症状は精神病症状の再発率を高める。
(3)精神病後抑うつ(PPD:Post Psychotic Depression)は心因性反応から生じるものではなく、また、認知の改善によるものでもなく、統合失調症に大うつ病が伴って起こる「不完全型」かもしれない。
(4)結論はできないが、薬剤が直接にうつ症状や自殺に影響している可能性がある。薬剤により精神症状が改善すれば、うつ症状が改善するというだけでもないようである。
(5)うつ症状を伴う統合失調症を統合失調症の下位グループとしてある程度独立したものと考えるのは直感的には同意できるが、文献もないし、神経生物学的な研究も不足している。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(以下、感想)
「統合失調症患者はうつ症状を呈しやすく、最頻値として、およそ統合失調症患者の25パーセントがうつ症状を呈する」
というのはそんな感じだと思うけれど
そんなのは別に面白くもない話で、もともと統合失調症と分かっていればなにも驚くこともない。
治療としても、論文に書かれているように、ドパミン系の病理と見ればSGAを調整するし、セロトニン系の病理と見ればSSRIやSNRIなどで調整する。またドパミン系もセロトニン系・ノルアドレナリン系も、お互いに影響し合っているし、作用が全く逆ということもなくて、いずれも神経系を保護するものである点は一致している。

しかし、初診で「うつ症状」が確認された患者さんの中で何%が「実は統合失調症なのだけれど、その部分症状としてうつ症状を呈している、またはその前駆症状としてのうつ症状、また精神病後抑うつ、または陰性症状、またはどこかで出された薬剤によるパーキンソン、アカシジア、またはアキネジア」なのか、その数字は興味がある。
今、これからどう診断して治療するかにかかわってくるからだ。治療の第一手が違ってくる。

その場合に、病前性格や症状経過で厳密に診断することはできないというのが学問の結果であるらしい。

ということは、現在症で厳密に分けることもできないし、病前性格や経過で分類することもできないのだから、一体のものなのではないかとの疑いは発生する。
それを裏付けるのが最近の薬の相互乗り入れである。第二世代抗精神病薬はうつ症状に有効であるし、抗うつ剤は精神病症状に有効であるというのだから、垣根はないのではないかとの意見も当然配慮されるべきだと思う。

そうは言うものの、厳密には決められないんですと言って、すますことができないのも、臨床現場の現実である。確定できないながらも、患者さんにとって最善の選択をしないといけない。

昔からそのあたりの事情は言われていて
スルピリドが便利に使われていたものだった。

つまり本質的には何も変わっていないのであって、
ということは、進歩もないけれど、大きな変更もないということなのかもしれない。
諸説はあるものの、諸説があるという安定した状況が続いていると言えるかもしれない。

統合失調症と感情障害を連続体としてみる方式は
一方では感情障害を根本とした単一精神病観となる
これはこれでなかなか強力である

また一方で統合失調症を根本とした単一精神病観に近いものを構成することも可能であり、
これもまた強力な説明力を持つ。
増して、躁うつ病の精神病的側面、つまり、現実検討の喪失を問題にすれば、根本は共通で、症状の現れる方面が違うだけと言えないこともない。

病前性格を対立的なものとしてとらえるとして
それは神経伝達物質説とは相容れない
セロトニン系病理の病前性格とドパミン系病理の病前性格が
対立的・相反的であるとは考えにくい

経過診断を用いるとして
それもなかなか難しい
経過を見極めてからの治療などはあり得ないのであって
診断学としても役に立たない診断学と言えないこともない

やはり現在の症状から
次の一手を決定したいのだが
子細に検討すると
精神病症状とうつ症状は一体となっており、あるいはそうでない場合でも、
時期を前後してある程度の傾向を持ってあらわれるのであって、
全く独立にあらわれるのではない。

このところもう何十回も同じ話を繰り返しているのだが
なんだか核心に至っていないもどかしさがある。

もうすこしクリアにできるはずと思うのだけれど。


共通テーマ:日記・雑感

無縁社会の無縁死 年間32000人

かつての日本社会には、血縁、地縁、社縁といった個人間の
 相互扶助システムが機能していた。しかし今、それらの縁を
 ことごとく失って孤立し、一人で死んでいく「無縁死」が
 急増しているという。1月末に放送されたNHKスペシャル
「無縁社会」では、年間に3万2000人が無縁死しているという
 衝撃的事実を提示、大きな話題を呼んだ。


共通テーマ:日記・雑感

シゾフレニーとバイポーラーの精神療法

病気が違っても同じ精神療法をするというなら
疾病分類か治療か、どちらかが間違っていると思う

昔、うつ病については、うつ病は、精神的に憂うつ悲哀、興味喪失、喜びの喪失、自殺念慮などだけではなく、自律神経全体を巻き込む病態であると言われ、休息と睡眠と食欲と自殺予防がまず大切であると言われた。

精神療法は神経症のためのものだった。

最近は認知行動療法の時代である。

うつ病の場合の認知療法としては「世界モデル2」に働きかけて、ひいては「世界モデル1」を変化させることである。

最初に自転車に乗るときも、まず、「世界モデル2」に働きかけて、それをつうじて、「世界モデル1」ほ変化させるのである。そしてされがさらに小脳回路に転写される。そのようにして「自転車に乗る回路」は完成する。

行動療法はもっと直接に「世界モデル1」に働きかける。

統合失調症の場合の認知療法は、自分の被害妄想や幻聴が、実は自分の内部の自己所属のもので、しかしそれが他者所属のように錯覚されるのには、「時間遅延理論」という理由があるのだと教育することである。




共通テーマ:日記・雑感

シゾフレニーとバイポーラー

そもそもの歴史を素朴に考えてみると
精神病と考えられたものの原型は
二つあって
ひとつは、元々の普段のその人の性質からは考えられないような、了解しがたい精神のありよう、
もうひとつは、もともとが、周囲の人には了解しがたい精神のありよう、
ということなのだと思う。

「了解しがたい」などという言葉がすでに困難な事態を暗示しているので不気味であるが
素朴には多分そうとしか言えないのだろう

家族や隣近所がその人をそのように理解しているという限りにおいては
「病気」と言うにはあたらない

ずいぶん変わっていると思われていても
その人はそういう人だと思われていればそれでいいのだし
家族がみんなそんな感じの人で
つきあいを広げない限りは問題ないという場合もあっただろうと思う

宗教的な理解の仕方もあったであろうし
習俗のなかで理解される範囲の出来事もあっただろうと思う

フランスやドイツの言葉で言えば
マニーとかメランコリーとかパラノアイア、さらにはヘベフレニー、カタトニー、などがあって
それぞれに独立ではなく
分類が難しいという時代が続いた

自分は重要人物で組織に命を狙われているなどと確信すれば
不安にもなり抑うつにもなり、また時には興奮もし、いろいろな精神状態を呈するはずであって
一面からの考察で済むはずはないだろう

こうした場合には人間は知性とか感情とかと分類をしたがるもので
簡単に言えば知性の病と感情の病というように分類したがる

そうして分類してみると
知性の病と感情の病は、目の前に現在あらわれている症状だけではっきりと分類できるわけではないが、
長期経過と病前性格を組み合わせれば
結構うまく分類できそうだということになった

そのようにして
マニーとメランコリーはチクロチミー、つまり循環病、後には躁うつ病として
パラノイア、ヘベフレニー、カタトニーはデメンチア・プレコックスつまり早発性痴呆、後にはシゾフレニーとして
疾病分類が確立された。

このようにまとまった後にも
両者は判然と区別できるわけではなかった
やはりどうしても症状として両者は混在するのであって
その場合、
(1)シゾフレニーであるが感情症状が現れる
(2)躁うつ病であるが精神病症状が現れる
(3)両者の中間に位置する
という類型が考えられ、実際にそれぞれの立場がとられた

(1)シゾフレニーを基盤として、診断として優先する考え方はドイツ精神医学の主流であり、結果として日本精神医学の主流となった。現在でもその伝統は続いており、うつ症状が見られるときでも、遺伝歴、病前性格と経過から判断してシゾフレニーが疑われる場合には、シゾフレニーの診断が優先する。シゾフレニーの診断を見逃してはいけないと言われている。

(2)躁うつ病を精神病の基本類型として考える学派はうつ病単一病説または単一(アインハイト)精神病観と言われ、昔から少数派ではあるものの、有力説である。

(3)これも様々あるのであるが、有名なものは満田の非定型精神病の類型である。
非定型精神病は、一時期には、統合失調症と躁うつ病とてんかんの、症状と長期経過を混合して持ち、さらには女性の月経周期に強く影響されるなどの特徴を持つといった、比較的限定された定義から、後には統合失調症にも、躁うつ病にも、てんかんにも当てはまらないというような拡大された定義まで、変遷がある。満田の定義は狭い方の定義で、長期経過は躁うつ病型で、完全に回復し循環するタイプで、症状はシゾフレニー型で、精神病症状がある、というものであるが、これには有名な逸話があって、満田の症例は実は東大がシゾフレニーとして診断していた症例であり、遺伝歴が明白だったので、症状としてはうつ症状が混在していたがシゾフレニーと診断したらしい。むしろシゾフレニーにおいてうつ症状が出現するのはまれならず見られることであったことはクレペリンやシュナイダーの昔から確認されているところである。大阪に行って、その患者が満田に非定型精神病と名付けられたらしい。
このように、この領域は精神病観によって分類が変更される種類のものであった。

しかし歴史時代の昔は、分類が何であっても、治療の方法は何もなかったのである。

その後に抗精神病薬が出現し抗うつ薬が出現した。この呼称で示されるように、伝統的な精神病観を踏襲した上での薬剤使用であった。しかし、第1世代抗精神病薬では精神病の陽性症状は抑えられても陰性症状ないしはうつ症状を抑えられず、第2世代抗精神病薬の開発につながった。また、抗てんかん薬がひろく気分安定剤として用いられた。さらには第1世代抗精神病薬は抗操作用が、第二世代抗精神病薬では抗操作用と抗うつ作用が強調された。さらに、抗うつ剤の使用がうつ病での精神病症状を抑えるとの観察も報告されている。つまり、抗精神病薬、抗うつ薬、抗てんかん薬のいずれもが、他の疾病類型にも好ましい作用をもたらすことが報告されている。そしてまた、シゾフレニーでうつ症状が、感情病で精神病症状が、まれならず見られることの証拠にもなっている。

ただ、第1世代抗精神病薬はうつ症状を誘発するとの報告があり、これには複雑な事情がある。
まず第一にはシゾフレニーにおけるうつ症状には、シゾフレニー陽性症状期に見られるうつ症状と、むしろ陰性症状期に見られると考えるべき、前期症状、残遺症状がある。シゾフレニー陽性症状期に見られるうつ症状には第1世代抗精神病薬も効果がある。しかしそれが治まったあとのうつ症状には効果がなく、一見したところ、陽性症状が治まったからなのか、陰性症状が顕在化したからなのか、認知機能が回復して現実検討が明確になり反応性にうつ症状が見られているのか、区別がつかなくなる。
さらには第1世代抗精神病薬の高用量使用がドパミン系を遮断することでうつ症状を起こすだろうとの議論は根強い。その点を改良するものとして第2世代抗精神病薬が使用された経緯もあり、本質的に第1世代抗精神病薬はうつ症状の原因になるとの見方が強い。
しかしまたそれは薬剤による認知機能の抑圧による可能性があり、またアカシジア、アキネジア、パーキンソニスムなど、薬剤の作用によるものとの解釈もある。

第2世代抗精神病薬、抗うつ薬、抗てんかん薬がそれぞれ相乗りの形で他の領域の疾病類型を治療するまたは予防するとなれば、そもそも疾病分類そのものがあやしいだろう。
クレペリン以来の疾病類型は現代薬剤によって否定されつつあるといってよいだろう。

DSMの流儀で現在症で分類していくことは重要なトライアルである。
しかし成功していない。どちらにも当てはまるものがあるのであって、その数は少なくない。
根本はシゾフレニーであって、一時的に「根本症状として」または「了解可能な反応性うつ症状」としてうつ症状を理解することもできる。その数は多い。シゾフレニーで自殺率が高いことが注意されるのであるが、それは、シゾフレニーにおいて出現するさまざまなうつ症状と、さらには直接の、シゾフレニーによる自殺が考えられる。
根本は感情病であって、一時的に精神病症状を呈していると考えることもできる。その数も実は多い。
その区別をするのは病前性格と長期経過と遺伝歴であって、結局DSMの理念を逸脱している。

またDSMでは重要な問題があり、
統合失調感情症である。理念としては、統合失調症に偶然感情病が合併することはあると思うが
そのような理解でよいものか実に怪しい。

シゾフレニーとうつ症状の有名なトピックスは
精神病後抑うつである。PPD。これについては、従来は、精神病急性期の、夢を見る如き状態から脱して、厳しい現実を認識するようになると、当然であるが、反応性に、喪失体験としての、うつ症状が見られるものと解釈されていた。一方、DSMでは急性精神病症状のあとの、大うつ病エビソードである。これはたとえば、ドパミンを一時的に使い尽くしたことを反映した症状と考えられないかということになるだろう。




共通テーマ:日記・雑感

認知療法・認知行動療法3

5.第4ステージ(第7~12セッションに相当)

5.1 第4ステージの目的とポイント
・第7~12セッションに相当
・目的
自動思考を適応的思考に修正する
認知のかたよりを理解する
行動実験を積極的に利用する
・ポイント
必要に応じて、問題解決スキル、対人関係スキルの介入を行う

5.2 第4ステージのアジェンダ
・チェックイン
・アジェンダを設定する
・アジェンダ:7つのコラム
・ホームワークを出す
パンフ「バランス思考のこつ」を読む
7つのコラム
行動実験
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
・次回への橋渡し

5.3 適応的思考を導く(7つのコラム)
・2つのアプローチがある
自動思考に「認知のかたより」がないか検討する
根拠と反証を検討する
・ソクラテス的質問法(誘導による発見)を重視する
患者が体験から気づいたものが最も強力
患者との知恵比べにならないように
患者が理解に達するには時間が必要である
「私も考えてみますので、○○さんも考えてみて下さい」
患者が自己発見できるような(行動的)ホームワークを設定する

5.4 「根拠」を整理する
「根拠」(第4)のコラム
自動思考を裏付ける事実を記入する
ポイント
客観的な事実を書く
相手の心を読むような「勝手な思い込み」や「事実の解釈」は避ける
例) × きっと○○だから・・・, ○○にちがいない

5.5.1 「反証」をみつける手がかり①
ポイント:第3者の立場で・・・
「もしほかの人が同じような考え方をしていたら、あなたはなんと言ってあげますか?」
「あなたがそう考えていることを知ったら、あなたの親しい人はどのような言葉をかけてくれるでしょうか?」

5.5.2 「反証」をみつける手がかり②
ポイント:過去や未来の自分だったら?
「元気な時だったら、違う見方をしないでしょうか?」
「5年後、10年後に同じ体験をしたとしたら、どのように考えるでしょうか?」

5.5.3 「反証」をみつける手がかり③
ポイント:経験を踏まえて・・
・「以前にも似たような経験をしたことはありませんか?その時はどうなりましたか?」
「その時と今回では、どのようなところが違うのでしょうか?」
「その体験から、今回役に立ちそうなものはありますか?」

5.5.4 「反証」をみつける手がかり④
ポイント:もう一度、冷静に・・・
「自動思考は100%正しいですか?」
「どんな小さなことでも、自動思考に矛盾することはありませんか?」
「自分の力だけではどうしようもない事柄について、自分を責めていませんか?」

5.6 気分の改善が見られない場合
・コラムがきちんと書けていない
状況 One Slice of Timeであるか/情景がありあり浮かぶか
気分 気分をすべてあげられているか
自動思考 「ホットな思考」をとらえられているか
根拠 事実にもとづいているか
反証 自動思考へのすべての矛盾点があげられていますか
適応的思考 信じられる新しい考えか
・自動思考に「認知の偏り」がない
→ 認知再構成でなく、問題解決を行う
→ 問題解決モジュール、対人関係モジュール

5.7 第4ステージのまとめとホームワーク
・ホームワークを設定する
7つのコラムを書いてきてもらう
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
2.7参照
・次回への橋渡し
2.8参照

6.第5ステージ(13-14セッションに相当)

6.1 第5ステージの目的とポイント
・第13~14セッションに相当
・目的
スキーマを整理する
終結を意識し始める
・ポイント
この段階では、セッションはかなり患者主導的になっているべきである
認知再構成のスキルが十分に身についていない場合は、スキーマを意識しながら、
認知再構成のスキルを練習する。

6.2 第5ステージのアジェンダ
・チェックイン
・アジェンダを決める
・アジェンダ:スキーマ(心の法則)を明らかにする
・ホームワークを出す
パンフ「心の法則とは」を読む
“心の法則リスト”をつくる
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
・次回への橋渡し

6.3 スキーマとは
・考えや行動に影響を与えるテンプレート
・過去のライフイベント、トラウマ、人間関係、成功体験、遺伝的要素などが形成に影響する
・スキーマは、状況によって活性化され、柔軟な考え方や自由な行動を妨げる

6.3.1 スキーマとは②
・その人の根底にある中核的信念core beliefと、ある状況において生じる条件的な信念underlying assumptionがあるが、厳密に区別しくにいことも多い
・このプログラムでは、総称してスキーマと呼ぶ
Core beliefの例
私は愛されない、世の中は危険なところ
Underlying assumptionの例 (If … , then … .)
人から頼まれたら断ってはいけない
課題に対してはどんな場合も全力を尽くさねばならない

6.3.2 スキーマを同定・修正すると
・現在の症状が軽減
・将来のストレッサーへの抵抗力が向上
・再発リスクの軽減に高い効果(Evansら1992,Jarretら2001)

6.3.3 スキーマが自動思考を作る

事実 スキーマ 自動思考
・会話中のあくび→ 
 


私は愛されない



 
→ 
 
・私の話は退屈? 
 
・食事の誘いを断られた 
 
→ 

 
→ 

 
・私なんかと食事したくないのかな? 
 
・電話も来ない→ 
 
→ 
 
ああ、嫌われた・・(><;) 
 


6.3.4 スキーマの3領域
① 自己へのスキーマ(特に、うつに強く関係)
「自分は無能だ」「自分は愛されない」
② 他人へのスキーマ
「他人は自分のことにしか関心がない」
③ 世界へのスキーマ
「渡る世間は鬼ばかり」「東京は怖いところ」

6.4 スキーマを同定する
・治療の後期において、スキーマを特定する作業を行い、終結・再発予防に役立てる
・治療者にとっては治療の早期から念頭におくものである
・しかし、治療の中では、必ず、患者が自動思考の同定と検証ができるようになってから行う

6.4.1 スキーマを同定する方法①
・心理教育を行う
「スキーマとはどういうものか」
「スキーマの同定がなぜ大切なのか」
・スキーマに気づくための質問を行う
「いつも決まってそのように考える、
何か心の中にあるルールや法則のようなものがあるのでしょうか?」
・自動思考のパターンを発見する
これまでの治療ノートを振り返る
何度も繰り返されるテーマは?

6.4.2 スキーマを同定する方法②
生活史をふりかえる
・価値観や、人生のモットーのようなものはありますか?
趣味、仕事、宗教、文化、教育、読書・・・が与えた影響は?
・価値観を一変させるような体験はありましたか?
・大きな影響を受けた人物はいますか?
「人生で強く影響を受けた人は誰ですか?」
「励まし/自信をくれた人は?」「悩まされ/拒絶された人は?」
・その人との体験から得た信念は?
「どんな影響を受けましたか」
「その人との関係から、どんな考え方になりましたか?」

6.4.3 スキーマを同定する方法③
下向き矢印法① <自己へのスキーマ>
状況) 会社で私を残して上司が同僚と食事に行った
                   ↓
自動思考) 私だけ、上司に誘ってもらえない
                   ↓
自己について) 自分は他人に気遣ってもらえないタイプ
                   ↓
自己について) 自分は、愛されない人間だ

6.4.4 スキーマを同定する方法④
下向き矢印法② <世界へのスキーマ>
状況) 上司は自分に残業させて食事へ
               ↓
自動思考) 一般職の女性社員だけ誘われた
               ↓
世界について) 私は総合職女性だから誘われなかった
               ↓
世界について) 仕事をがんばる女性は、嫌われる

6.4.5 (参考)ある症例のスキーマ
自分はだめな人間だ
人は何でも完全でないといけない
何でも自分でやらないといけない
すべての人から愛されないといけない
人は自分を利用するだけだ
他人に弱みをみせてはいけない
(仮定法の形で考えると理解しやすい)
もし少しでも失敗したら、仕事は台無しになるだろう
すべての人から愛されなければ、幸せになれない
心の奥底を見せたら、その人は私を嫌いになる
気持ちをコントロールできなければ、大変なことになる

6.5 心の法則リストを作りましょう
元気なときの心の法則うつのときの心の法則
・自分について・自分について
・人々について 
・世界観について
・人々について 
・世界観について
 
6.6 心の法則リスト の例
元気なときの心の法則うつのときの心の法則
・自分について 
ときには失敗もするけど人並みの実力はある 
苦手な人もいるが、信頼されている方だ 
・人々について 
ライバルも仲間のうちだ 
・世界観について 
馬が合わない人がいてもいい 
人生、七転び八起き 
夫婦は助け合うもの
・自分について 
自分は無能な人間だ 
自分は嫌われ者だ 

・人々について 
この世は弱肉強食だ 
・世界観について 
みんなに好かれないといけない 
少しでも失敗したらおしまいだ 
家事は妻の仕事

6.7 第5ステージのまとめとホームワーク
・ホームワークを設定する
スキーマリスト(心の法則リスト)を作る
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
2.7参照
・次回への橋渡し
2.8参照

7.第6ステージ(15-16セッションに相当)

7.1 第6ステージの目的とポイント
・第15~16セッションに相当
・目的
終結と再発予防
・ポイント
この段階では、セッションはかなり患者主導的になっている
治療ノートを振り返りながら、セッション全体をふりかえる
治療終了後の目標と、起こりうる問題の予測を行う

7.2 第6ステージのアジェンダ
・チェックイン
・アジェンダを設定する
・アジェンダ:終結と再発予防
・ホームワークを出す
治療ノートをまとめる
治療終了後の生活や見通しについて計画する
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
・終了時評価について説明する

7.3.1 アジェンダ:終結と再発予防①
・終結の準備を提案する
治療が終了後も、身につけたスキルを使うこと
うつの再燃の可能性と、その対応を説明する。
一時的にうつ状態がまた逆戻りしたりすることのほうが、むしろ普通であり、
そのことを患者に知らせておけば、仮に悪化しても患者の動揺は少なくなる。
悪化の際にこそ、これまでのスキルを使うチャンスである
「治療も残り2回になりました。これまでのふりかえりと、今後どのようなことが大事かをお話します」
「ほとんどの方は良くなったり悪くなったりします。」
「具合が悪くなったとき、今までの経験を生かして、すぐに対処できる準備をしましょう」

7.3.2 アジェンダ:終結と再発予防②
治療全体を振り返る
・治療を通じて身につけたこと、変化した点を話しあう
「治療を始めた時に比べて、うつが随分よくなりましたね。一体何が良かったのでしょうか?」
「どのようなことが役に立ったと思いますか?」
・気分や状況が改善したのは、患者自身が考え方や行動を変化させた結果であることを強調する。
治療者、あるいは薬のおかげと考える患者に対しては、それを認めつつも、
患者自身が変化した点を思い出させる。
「私がアドバイスした点もありましたが、考え方や行動を実際に変えたのは○○さんですよね?」

7.3.3 アジェンダ:終結と再発予防③
セッションで扱ったツールや技法をおさらいする
・ツールや技法は患者が将来にわたってもずっと使えることを強調する。
・うつ病だけでなく、感情的になったり、非機能的になっていると気づいたらいつでも用いることができる
「つらい気持ちになった時に、自動思考を検討することや、人間関係や問題解決法は、
ずいぶん役に立ちましたね。」
「この方法は、今後も、つらくなったときや、問題にぶつかったときにはいつでも使うことが
できるのですよ。」

7.3.4 アジェンダ:終結と再発予防④
治療が終了する不安にそなえる
・治療が終了するにあたっての不安について尋ねる
今後の具体的な心配事がある場合は、その対策を考える
ばくぜんとした終結の不安は当然のことで、勇気づける
不安が強くなったときになにができるかを話し合う
・「治療終了と聞くとどんな事が頭に浮かびますか?」
・「なにか具体的に心配なことはありますか?」
・「困ったとき、誰か相談できる人はいますか?」

7.3.5 アジェンダ:終結と再発予防⑤
悪化した場合の対処法を検討する
・「今後、うつ症状が出そうになったときにどう対処するか、前もって考えておきましょう」
・「一時的な気分の波は、正常で、心配いりません」
・「治療で身に付けた、使えそうな方法は何でしょう?」
・「それを治療ノートにまとめて、書き留めておいていただけますか。そうすれば、いつか具合が悪くなったとき、何をすればいいかがわかりますから。」

8.問題解決モジュール

8.1 問題解決のポイント
1)問題解決の必要性について説明する
「実際に困った問題があるときには、コラム法であまり気分が改善されないことがよくあります。
問題をうまく解決する方法を勉強していきましょう」
2)問題解決の2つのプロセスを説明する
①問題解決できるこころの準備をする
②アクションプランを立てて、行動する
「問題に対応するためには、第一に『問題に取り組む心の状態を作る』ことが大切です。
『どうせ無理だ』と思っていては、良い解決策があっても見落としてしまいかねません。」
「問題解決ができる心の準備ができたら、実際に『プランを立てて行動』していきます。」

8.2 問題解決の構成要素
1. 問題解決志向:問題に取り組める精神状態を作る
2.問題の明確化と設定:取り組む問題を設定する
3.解決策の案出:ブレインストーミング
4.解決策の決定:それぞれの短所長所の確認
5.行動計画の立案:解決策の行動計画を綿密に立てる
6.解決策の実行:行動計画に基づいて実行する
7.結果の評価:良い結果につながらなかった場合は、何が問題だったのかを再度検討する

8.2.1a 問題解決志向
・問題に取り組める精神状態を作りだす
×「もうどうしようもない」
×「やるだけ無駄だ」
○「なんとかなるかもしれない」
○「やるだけやってみて判断しよう」
・自己教示法
・認知再構成法
「とりくむ気持ちを妨げている、自動思考を検証しましょう」

8.2.1b 自己教示法
次のように自分に語りかけてみましょう
・気軽にやってみよう
・ゆっくりと、1回にひとつずつ取り組もう
・挑戦の機会、成長の機会と考えよう
・できれば自信が出るだろう
・できなくても、問題がよりはっきりするだろう

8.2.2 問題の明確化と設定
・問題を具体的に設定する
つらいこと → ×
仕事が思うように進まないこと → ○
・「結果をどうしたいのか」(望む結果)を明らかにする
「この状況の問題は何だと思いますか?」
「どうなれば随分と楽になりますか?」
・「望む結果」は取り組むべき問題として適切かどうか吟味する
他人の変化を望んでいないか
現実的な問題設定か
自分にとって重要な内容か

8.2.3 解決策を案出する
~ブレイン・ストーミング~
・数の原理
たくさんの案を出すほど成功しやすい
・判断の延期の原理
後から案出された解決策ほど効果的
・戦略と戦術
戦略:大きな方向付け
(例)職場での自分の状況をもっとよく知る
戦術:具体的な方法
(例)先輩と話す、前回の異動の時の自分の日記を読む

8.2.4a 解決策を決定する
利点・欠点を評価する
・その解決策で、問題はどの程度解決するか
・どのくらい実行可能か
・実行上の障害を予測する

8.2.4b 解決策の利点・欠点を評価する
解決策利点欠点
さらに残業する 
 
仕事がすすむ 
 
もっと疲れる 
これ以上はむり
辞める!楽になる食べていけない
上司に相談する上司が態度を改めてくれるかもますます嫌われるかも
同僚に相談する◎ 
 
仕事を手伝ってくれるかもしれない 
気持ちを理解してくれるかもしれない
負担をかけてしまい、距離がで
きてしまうかも

8.2.5 行動計画の立案・行動リハーサル
・行動計画立案 「同僚に相談する」
同僚の余裕があるとき(昼休み)に声をかける
「仕事がなかなか進まず困っている」「できれば仕事をひとつ手伝って欲しい」ということを伝える
良い返事がもらえればOK
良い返事がもらえなかった場合は、自分の仕事がうまくいっていない原因について
意見を聞いてみる。反論はしない。
あまりうまくいかない場合には、反論せず、計画の評価、再考に戻る
・行動計画をセッション中にリハーサルする
ロールプレイ

8.2.6 解決策の実行 / 効果の評価
・実行
実行計画に基づいて実行する
セッション内でリハーサルを行うのもよい
うまくいくかどうかよりも、実行してみることが重要
・評価
問題そのものの結果
個人の結果(現実的問題、気分、身体、個人的成長など)
対人的結果(個人、集団など)
などについて評価する
問題が十分に解決していない場合は、2.問題の明確化に戻って再検討する

8.3 問題解決のコツ
・一度に多くを望まない
・自分の望んでいる結果が適切かどうか判断する
△「上司はもっと気を使うべきだ」
△ 「この状況でも苦痛を感じず、仕事をやりぬく」
・一回でうまくいくことはまずない。何度か試行錯誤しながら、少しづつ解決に近づける

8.4 問題が解決できないとき
・問題に取り組めるこころの状態ができているか?
・問題の設定は適切か?
・実行計画は適切か?
・評価ができているか?

9.対人関係を改善するモジュール

9.1 対人関係の法則
(Kieslerの対人円環)
力の関係:一方が支配的になると相手は服従的に、服従的になると相手は支配的になる
距離の関係:友好的に接すると相手も友好的に、敵対的に接すると相手も敵対的になる

9.2 アサーション・トレーニング
日常の対人関係場面での「上手な主張のしかた」を学ぶトレーニング
・具体的なストレス場面と会話の抽出
・攻撃的発言を作成
・受動的発言を作成
・二つを融合してアサーティブな発言を作成

9.2.1 アサーション・トレーニングの留意点
・相手の気持ちを深読みしない
・「話さなくてもわかる」ことはないと自覚する
・事前に声に出して練習する
・落ち着いて穏やかに話をするよう気をつける
・言いたいことを簡潔にまとめる

9.2.2 アサーションを阻害する自動思考の例
こんなことをいうと相手が気を悪くするにちがいない
こんなことをいうと嫌われる
相手の希望を叶えないと関係が終わってしまうだろう
相手のことが好きなら意見の相違はあってはいけない
話さなくてもわかってくれるべきだ
自分の意見を主張しないと相手にいいようにされてしまう
など
・このような自動思考の修正には思考記録表を使用してもよい

9.3 具体的なストレス場面と会話の抽出
任されている仕事の締め切りが近づいてきたときに、仕事の進みが遅いと一方的に上司に怒鳴られて、何も言えずに黙ってしまった。
・アサーションを阻害している自動思考をチェックする
(例)
「こんなことをいうと相手が気を悪くするにちがいない」
「こんなことをいうと嫌われるだろう」
「どうせ言ってもわかってもらえないだろう」
「相手の希望をかなえないと関係が終わってしまうだろう」
「相手のことが好きなら、意見の違があってはいけない」
「自分のことを思ってくれているのなら、話さなくてもわかってくれるべきだ」
「自分の意見を強く主張しないと、相手にいいようにされてしまう」

9.3.1 攻撃的発言を作成する
(自分のことだけを思いやった言い方を書き出す)
「そんなに怒鳴らなくても良いじゃないですか。下準備はできて、後はそれをまとめるだけなんですから、そんな言い方はないでしょう。そもそもいつまでにやらないといけないとはっきりおっしゃらなかったじゃないですか」と、強い調子で言う。

9.3.2 受動的発言を作成する
(極端に遠慮した弱々しい言い方)
「申し訳ありません」と弱々しく言って黙り込む。

9.3.3 二つを融合してアサーティブな発言を作成する
(相手のことも自分のことも思いやった言い方)
「仕事が遅れていて申し訳ありません。お怒りはわかりますが、下準備はできて後はまとめるだけですので、もう少しだけ待っていただけないでしょうか」と、穏やかに言う。

ーーーー



共通テーマ:日記・雑感

認知療法・認知行動療法2

② 治療の継続に影響しうる現実上の大きな問題(例:経済的な問題、身体的健康問題、被虐待など)
③ 治療や治療者に対する陰性感情

【治療を早く終結したいと希望された場合】
過去の研究から、16週間続けることで、より十分な効果が期待できること、一見症状が良くなっていても、改善を定着させ、再発を予防するために、最後まで続けることが大切である旨を患者さんに話して下さい。

1.3 治療全体の流れ

1.3 治療全体の流れ
ステージ 
 
セッション
 
目的 
 
アジェンダ 
 
使用ツール ・配布物 
 
1

 
1-2 

 
症例を理解する 
心理教育と動機付け 
認知療法へsocialization
症状・経過・発達歴などの問診うつ病,認知モデル,
治療構造の心理教育
うつ病とは 
認知行動療法とは 
 
2 


 
3-4 


 
症例の概念化 
治療目標の設定 
患者を活性化する 

 
治療目標(患者の期待)を話し合う 
治療目標についての話し合い 
活動スケジュール表など

 
問題リスト 
活動記録表 


 
3 

 
5-6 

 
気分・自動思考の同定 

 
3つのコラム 

 
コラム法 
~考えを切り替えましょう
4 


 
7-12


 
自動思考の検証 
(対人関係の解決)
(問題解決技法) 

 
コラム法 
(オプション:人間関係を改善する) 
(オプション:問題解決) 

 
バランス思考のコツ 
認知のかたよりとは 
人間関係モジュール
問題解決モジュール
5 
 
13-14 
 
スキーマの同定 
 
上記の継続 
スキーマについての話し合い
「心の法則」とは 
心の法則リスト
6 



 
15-16 



 
終結と再発予防 



 
治療のふりかえり 
再発予防 
ブースター・セッションの準備 
治療期間延長について決定する 

 
治療を終了するにあたって



 


1.4 セッションの流れ(30分以上)
0.開始15分前に来てベックうつ病スケール(BDI)・簡易抑うつ症状尺度(QIDS -J)に記入してもらう
1.チェックイン
2.ホームワークをふりかえる
3.アジェンダ(取り扱う議題)を設定する
4.アジェンダについて話し合う
5.ホームワークを決める
6.セッションをまとめ、フィードバックを求める
※始めは治療者主導 → 徐々に患者主導にしていってください

1.5 アジェンダ設定について
(agenda = 議題、課題)

・患者と協力して双方的に設定する
治療者が必要と思うこと
患者が話したいこと

・総合的な治療目標、治療の段階を踏まえる
患者の問題点を念頭におく
認知・行動スキルの習得度にあわせる

・優先する項目
自殺関連
治療妨害行動:ホームワーク不履行、遅刻、治療の停滞、治療者と不和
生活上致命的な問題(例:期限のある決定事項、失職、虐待、物質乱用など)

1.5.1 アジェンダ設定のポイント

・1回のセッションで取り組めること
・具体的で達成可能であること
「不安をなくす」ではなく
「不安をやわらげる行動スキルを練習する」
「どんな時に不安を感じるか検討する」など
「苦手な上司に馴れる」ではなく、
「苦手意識について考える」
「上司との上手な話し方を考える」など
具体的で達成可能なものにする

1.6 典型的な認知行動療法の技法リスト

○行動的技法
1. 活動記録表/スケジュール
2. “ポジティブに言い換える”法
3. 行動実験
4. 段階づけ
5. 注意そらし法
6. リラクセーション
7. 社会技能(ソーシャルスキル)訓練
8. アサーション・トレーニング
9. 有意義な時間の使い方習得
10. 運動
11. 飲酒、薬物、カフェインを減らす
12. 不眠への介入
13. 「他の人に聞いてみる」
14.読書療法

○認知的技法
1. 認知再構成
2. スキーマを同定する・修正する
3. 「認知の偏り」を教育する
4. 認知的(想像上の)リハーサル
5. 自己教示法
6. 思考停止法
7. コーピング・カード
8. 過去の経験から証拠を探す
9. ロールプレイ
10. 不安な出来事の結果を考える
11. 問題解決技法
12. 利点・欠点を考える
13. 理知的/情緒的ロールプレイ
14. 認知的連続表

2.第1ステージ(第1-2セッションに相当)

2.1 第1ステージの目標

目標
・治療関係を結ぶ
・うつ病、認知行動療法を理解してもらう
・治療構造になじんでもらう
   時間配分
   ホームワーク
・症例の概念化(患者を「理解する」)
   問題点を整理し、目標と方向性を明らかにする
・患者を活性化する
   活動量を増やす
   活動記録表を利用する

2.2 第1セッションのアジェンダ
・自己紹介 と 治療構造の説明
・病歴聴取と問題点の整理
・うつ病と認知行動療法の心理教育
・ホームワークを出す
   ①パンフレットを読む
   ②治療ノートを作る
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
・次回への橋渡し

2.3 自己紹介と治療構造の説明

「はじめまして。認知療法を担当する●●です」
「今日は初回ですので大きく2つのことをします」
「はじめに、○○さんが今どのようなことでお困りかをうかがって、
どんなお手伝いができるか考えていきたいと思います。」
「次に、うつ病や認知療法がどのようなものか、ご説明します。」
「治療は毎週1回30分以上、計16回(場合によってはそれ以上)行います。もっとたくさん話したいときもあるかもしれませんが、時間を上手に使って話すことも、うつ病を治す上で大切ですのでご理解下さい。」

2.4 病歴聴取と問題点の整理

「担当医から既に概略はうかがってはいますが、○○さんの現状について、もう一度簡単にお話いただけますか?」

2.4.1 病歴の聴取のポイント①

・まだ聴取されていなければ・・・
成育歴の概略(人となりがおおむね想像できる程度)
現在の生活概要(1週間の生活の様子を想像できる程度)
家族背景、うつ病に対する家族の理解度

・うつ病の経過
きっかけ、背景因子
うつ状態を維持させる原因になっている因子
うつ状態の結果として生じている、現在の問題
(参考)問題リスト・4つの領域図

2.4.2 病歴聴取のポイント②

「出来事 - 認知 - 気分・行動」
   の関連に重点をおいて話を聞く
   の関連を強調して患者にフィードバックする
・うつ病に特徴的な認知・行動を念頭において、改変できる可能性を示す
・症例を概念化する(見立てる)
   共通するテーマを探る (スキーマ仮説をたてる)
   最初に取り上げる課題を考える
   現実的で、取り組み可能な課題を選ぶ

2.4.3 参考)認知行動療法の導入のポイント
・発言に現れる悲観的な「自動思考」に注目する
・「思考」について検討することを提案する
・否定的な思考と気持ちの関係に気付かせる
・認知行動療法の説明を患者の体験に沿って行なう

2.4.4 問題点の整理のポイント
・問題点を整理し、患者にフィードバックする
「なるほど○○さんのつらい状況がよくわかりました」
「次のような問題があるように思います。まず第一に・・・、次に・・・、そして・・・。」
・取り組む問題の方向性を示す
「まず●●の問題を中心に話し合っていきましょう」
「その際には、○○さんの【出来事-認知-気分・行動】の関係に注目して、
うつ的な認知や行動が、問題の解決をはばんでいないか、見ていくことが
助けになると思います」

2.4.5 第1セッションで十分に聴取しきれなかった場合
・1回で十分に聴取・把握しきれなかった場合も、その時点までの理解をフィードバックし、解決の方向性を示唆する。次回も引き続き話を聞いていくことを伝える。
・第1セッションで後述の「うつ病・認知行動療法の心理教育」に至らない場合もある。その際は、資料のポイントについて簡単に触れ、第2セッションまでに、資料の「うつ病について」の部分を読んできてもらうことをホームワークとし、次回に詳しく説明することを伝える。

2.5 うつ病と認知行動療法の心理教育
患者向け資料を使用する
・うつ病について話題にし、患者の現状・現在の生活の各領域にうつ病の影響があらわれていることを理解してもらう。
・特に
うつ病の症状(特に、認知・行動面)
うつ病のスパイラル
うつ病に特徴的な考え方(否定的認知の3徴)
うつ的な行動パターン
を中心に、患者の現状とのすりあわせを行う。

2.5.1 うつ病の心理教育
「うつ病という病状について、どのように理解されていらっしゃいますか?(主治医からは、どのように聞いていらっしゃいますか?)」
「これから、うつ病について簡単に説明しますね」
「○○さんの現在の状況には、うつ病に特有の考え方や行動パターンがあらわれていて、つらい状況を生じている/さらにつらくさせているようですね」

2.5.2 認知行動療法の心理教育
「先ほどお話ししたように、うつ状態では、ものの見方や考え方、行動パターンがマイナスになりがちです。」
「これはうつ病のためで、あなた自身のせいではありません」
「しかし、うつ病を一日も早く改善するために、マイナスの考えや行動パターンを少しずつ変えていきましょう」

2.6.1 ホームワークの設定
「以上が、うつ病と認知療法の説明です。詳しい内容が資料に書いてありますので、次回までに読んでおいていただけますか?」
「これからの治療では、このように、治療と治療の間にも、少しだけホームワークをやっていただきたいのです。」
「ホームワークには、
・治療セッションの30分以外の時間も治療に生かせる
・日々に困ったことを一緒に話し合う助けになる
というメリットがあります。」

2.6.2 ホームワークの設定②
「毎回、面接の最後に、次の面接までの間にやってくることを決めます。ホームワークといいます。」
「これはとても大切で、面接で話し合うだけでは、治療は1週間に30分間しかできませんが、面接までにいろいろやってくるようにすると、その間も治療を受けているのに似た状態になって治療の効果が出やすくなります。」
「ホームワークは話し合って決めましょう。治療に役立つホームワークをお伝えしますが、無理強いはしませんので、できそうかどうか、やる気がするかどうか、遠慮なくおっしゃって下さい。」

2.6.3 ホームワークの設定③
「もう一つ、治療のためのノートを作っていただけますか?」
治療ノートには、セッションで話し合ったことをメモに残して見直せるようにしたり、日々の生活で困ったことを書き留めて、セッションで話し合える手助けにします。」
「①うつ病と認知行動療法のパンフレットを読むこと、②治療ノートを作ること、この2つを今回のホームワークにしたいと思います。」

2.7 セッションをまとめ、フィードバックを求める
「これで第1回目は終わりです。いろいろ話して、ご感想・ご気分はどうですか?」
「役に立ったこと、気づいたことはありますか?」
「わからないこと、納得いかないことはありますか?」
「他にうかがっておいたほうがいいことはありますか?」
「次回話し合いたいことがらはありますか?」
「これから先も、疑問な点は遠慮なく言って下さい」
「今日はいろいろお話していただいて、○○さんのことがよくわかって良かったです」

2.8 次回への橋渡し
「面接が始まる前に、うつ症状のアンケート(QIDS、BDI)をつけて下さい。」
「時間を有意義に使うために、面接の始めに、30分の間にどのようなことを話しあうかを、一緒に話し合って決めましょう。○○さんが特に話されたいことがあればその都度おっしゃって下さい。」
「わからないこと、腑に落ちないことがあれば、次回また教えてください」

<第2セッション>

2.9 第2セッション
・目的
治療関係を強化する
治療構造になじんでもらう
問題点の整理をする
認知療法へのsocialization
・注意
初回セッションと同様、患者さんの気持ちを“受け止め”、共感を伝えることが重要です。

2.10 第2セッションのアジェンダ
・チェックイン
大まかな状態のチェック(気分、生活上の変化)
アジェンダを設定する
・ホームワークのふりかえり
・アジェンダ:病歴聴取と問題点の整理
・ホームワークを出す
パンフレットを読む
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
・次回への橋渡し

2.11 チェックイン check-in ①
・簡単な現状の把握と、気分のチェックを行う。
「前回から今日まで全般的にいかがでしたか?」
「何か大きな変化はありましたか?」
・QIDS/BDIを確認し、変化があれば話題にする。
「前回と比べて、気分が楽に/つらくなっているようですが、どうしたのですか?」
(注)患者は偶発的な出来事に原因を帰着させがちだが、
できるだけ患者自身の行動や考えの変化に結びつける。
「自殺」「絶望感」が高ければ、アジェンダとすることを考える
・前セッションの感想を尋ねる
「前回は、うつ病と認知行動療法の話をしました。それについて、その後なにか思ったことはありますか?」

2.12 アジェンダを設定する
「今日は、ホームワークのふりかえりと、○○さんが今お困りのことについて、引き続きお話をうかがって、治療の方向性を考えていきたいと思います。」
「他に話題にしたいことはありますか?」

2.13 ホームワークをふりかえる
・「前回のホームワークは、パンフを読むことと、治療ノートを作ることでした。できましたか? 気づいた点や、ご質問はありますか?」
やっていれば、十分に褒めた後、感想を尋ねる
やっていなければ、やろうとしてみたかを尋ねる
やろうともしていなければ、その理由を明らかにする
やろうとしていたら、やろうと試みことを褒める。
しかし、やりきれなかった理由を話し合い、次にできるようにする
※絶対に責めてはいけない!
・ホームワークの重要さを再度説明する

2.14 アジェンダ:病歴聴取と問題点の整理
・第1セッションに引き続き、病歴聴取と問題点の整理を行う
・第1セッション参照

2.15 ホームワークを出す
・パンフレットをもう一度読む
・1週間の【出来事-認知-気分・行動】
または
・1週間の【活動記録表】
をつけ始めてもらう(患者の理解度に合わせて)
・患者の状況に合わせて、課題の難度を変える
例:書くことに乗り気でない患者は、出来事だけをメモしてきてもらってもよい
(それを次回に話し合う)

2.16 第2セッションのまとめ
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
2.7参照
・次回への橋渡し
2.8参照
11

3.第2ステージ(3~4セッションに相当)

3.1 第2ステージの目的とポイント
目標
・治療目標を設定する
・うつ病、認知行動療法を理解してもらう
・治療構造になじんでもらう
時間配分
ホームワーク
・症例の概念化(患者を「理解する」)
問題点を整理し、目標と方向性を明らかにする
・患者を活性化する
活動量を増やす
活動記録表を利用する

3.2 第2ステージのアジェンダ
・チェックイン
状態チェック、アジェンダ設定
・ホームワークのふりかえり
・アジェンダ:病歴聴取と問題点の整理、目標設定
・ホームワークを出す
活動記録表を記入する
目標設定について考える
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
・次回への橋渡し

3.3 治療目標を設定する
全般的目標と具体的目標にわけて考える
・全般的目標 (大まかな達成目標)
・具体的目標 (具体的に行う小さな目標)
実現可能で目に見える変化がある
測定が可能である

3.3.1 治療目標の例
全般的目標具体的な小目標
周囲の協力を得る 
 
・上司と仕事について話してみる 
・同僚に相談してみる
決められた仕事を片付ける 

 
・期限以内に報告書を上げる 
・午前中の1時間でメールをまとめてチェックする
コミュニケーションを図る 
 
・一緒に食事に行く 
・挨拶をする

3.3.2 目標設定のポイント

1.その目標は重要ですか?
将来につながるものですか?
2.自分でコントロールできる変化ですか?
他人が決めるもの(昇進や配置転換、相手が暴力をなくすなど)ではない
3.具体的で現実的ですか?
達成困難な目標(”不安を二度と感じない”等)ではない

3.4 治療の方向づけ
A) 認知面への介入が必要な場合
→ 第3ステージ(コラム法)へ進む
B) 現実的な問題解決が必要な場合
→ 「問題解決」や「対人関係を改善する」モジュールを利用しながら治療を進める
・認知再構成(コラム法)と問題解決・対人関係の解決はどちらか一方を使うものではなく、患者の現状と治療目標に応じて相補的に用いる。

3.5 ホームワークの設定
・活動記録表を(継続して)記入する
・目標設定について考える
・1週間の【出来事-認知-気分・行動】をつけ始めてもらってもよい

3.6 第2ステージのまとめ
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
2.7参照
・次回への橋渡し
2.8参照

4.第3ステージ(第5~6セッションに相当)

4.1 第3ステージの目的とポイント
・目的
出来事-自動思考-気分・行動の把握
・ポイント
3つのコラムが使いこなせるようになる
初めは治療者が記載→徐々に患者自身で

4.2 第3ステージのアジェンダ
・チェックイン
・アジェンダを設定する
・アジェンダ:3つのコラム
・ホームワークを出す
3つのコラム
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
・次回への橋渡し

4.3 3つのコラムの書き方
・気分を同定する
気分リストを示してもよい
程度を%づけする : %づけする重要性を説明する
「これ以上ないくらい強いのを100%、全くないのを0%とします。感覚的なものなので大体で結構です」
「気分の変化に気づくために、強さをはかることが大切」
気分と思考を分ける (気分は一語、思考は文章)
・思考を同定する
気分を十分に説明する思考が出ているか
自分が同じ状況ならどんなことを考えるか

4.3.1 自動思考を明らかにする
・思考やイメージ・記憶
どのような思考やイメージが浮かんでいたか
・誘導による発見 guided discovery
そのときの状況に沿って、患者自身が気づけるような形で質問しながら、自動思考を明らかにしていく
・確信度の評価
自動思考それぞれについて、それをどのくらい信じているか、確信度を0~100%で評価する
・ホットな自動思考
気持ちが動揺したり、反応して激しい行動をとったりしたときは、「ホットな」自動思考が起こっていることが多い

4.3.2 自動思考を見つける聞き方の例
「その時どんなことが頭に浮かびましたか?」
「どのようなイメージや記憶が浮かんでいましたか?」
「こんなことが起こるのでは、と恐れていることはありませんか?」
「もしそれが実際に起こったとして最悪のことはなんでしょう?」

4.3.3 なかなか自動思考が出ない時は
・患者があまり自動思考を意識できていない場合には、自己、他者、世界に焦点をあてて質問する
自己
「そのときに、自分についてどういうことを考えましたか?」
他者
「相手についてどのようなことを考えましたか?」
「ほかの人があなたについてどのように考えていると思いましたか?」
世界
「そのことについて、世の中の人はどのように考えていると思いますか?」
「そのことに関係するあなたの“信条(こだわり)”のようなものはありますか?」
4.3.4 3つのコラムのトラブル・シューティング
「つらい状況を考えたら余計につらくなりました」
→ どんなことを考えてつらくなったのですか?
→ つらい考えに対して、バランスよく前向きに考える作業をこれからやりますから大丈夫です。「認知のかたより」を眺めながら、頭の中で考えたほど現実はひどくないことを思い出してください。
「自分のマイナス思考ぶりにつらくなりました」
→マイナス思考は、うつ病の特徴で、誰でもマイナス思考になるのです。○○さんも、元気な時は今ほどマイナス思考ではないでしょう?

4.3.5 3つのコラムのポイント
状況 




 
不快な感情を伴う出来事 
※できるだけ具体的に(情景がありありとうかぶくらい) 
※特定の時間(one slice of time) 
※5W1H(誰と、なにを、いつ、どこで、なぜ、どのように)
気分 

 
不安、悲しみ、落胆、怒りなど (強さ0~100%) 
※一語で表せることが多い
自動思考 






 
そのときに頭に浮かんだ考えやイメージ (確信度0~100%) 
※疑問形は言い切りの形にかえて書くこと 
(例:×どうして自分ばかり仕事を押し付けられるのか? 
⇒ ○自分ばかりが仕事をおしつけられる) 
※最も心を強く動かした考え(ホットな思考)に◎をつける

4.4 第3ステージのまとめとホームワーク
・ホームワークを設定する
3つのコラムを書いてきてもらう
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
2.7参照
・次回への橋渡し
2.8参照




共通テーマ:日記・雑感

認知療法・認知行動療法1

1.総論 
1.1認知療法・認知行動療法とは
  ○歴史的背景 
    認知療法・認知行動療法とは、人間の気分や行動が認知のあり方(ものの考え方や受け取り方)の影響を受けることから認知の偏りを修正し、問題解決を手助けすることによって精神疾患を治療することを目的とした構造化された精神療法です。

(構造化されているから効果を検証できるし、効果を比較できるわけですね。構造化というのは、簡単に言えば、「どんなときには、どうする、次には何をする」というような手順が決まっているということですね。治療者によって大きく違わない。
治療アルゴリズムとして認知行動療法の内部でも構造化されていますし、さらに、たとえば初回治療のうつ病の人に対して、
評価、薬剤、精神療法のアルゴリズムが検討されていて、そのなかに認知行動療法は組み込まれているわけです。
だからこそ、薬剤との効果比較検定も可能になっています。)

    精神科の治療方法としての認知療法・認知行動療法は、1970年代に米国のAaron T Beckがうつ病に対する精神療法として開発したものです。その後、認知療法・認知行動療法は、うつ病はもちろんのこと、不安障害やストレス関連障害、パーソナリティ障害、摂食障害(神経性大食症)、統合失調症などの精神疾患に対する治療効果と再発予防効果を裏づける優秀なエビデンスが多く報告されてきたことから、欧米を中心に世界的に広く使用されるようになりました。また、精神疾患以外でも、日常のストレス対処、夫婦問題、司法や教育場面の問題、などその適用範囲は広がりを見せています。 
      わが国では、とくに1980年代後半から注目されるようになってきました。それとともに、わが国での治療効果の検証も進み、厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業)「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」を初めとした研究でその効果のエビデンスが積み重ねられてきています。 

  ○認知療法・認知行動療法の理論 
    認知療法・認知行動療法は、近年発達してきた情報処理モデルないしは認知モデルを基盤にした治療法です。つまり、私たちは、自分が置かれている状況を絶えず主観的に判断し続けているのですが、通常は半ば自動的にそして適応的に行われています。しかし、強いストレスを受けるなど特別な状況下ではその判断に偏りが生じ、非適応的な反応を示すようになってきます。その結果、抑うつ感や不安感が強まり、非適応的な行動が引き起こされ、さらに認知の歪みが強くなるという悪循環が生じることになります。 

(自動的にというのは、たとえば自転車に乗るときのように、何も考えなくても、すいすいと、という感じ。
最初に自転車に乗るときはすいすいどころではないですね。でもだんだんすいすい乗れるようになります。
しかしその自動化した乗り方が不具合なものであったら訂正した方がいいわけです。
身についてしまった自転車の乗り方の癖を訂正するのは簡単ではないですね。
それで、いろんな作戦を考えているわけです。)

  ○認知療法・認知行動療法の実践 
    認知療法・認知行動療法では、「自動思考」と呼ばれる、様々な状況でその時々に自動的に沸き起こってくる思考やイメージに焦点を当てて治療を進めていきます。治療は対面式の面接が中心で、一回の面接時間は30分以上です。面接は、原則として16-20回行いますが、患者さんの状態にあわせて延長することを検討することもあります。また、場合によっては、フォロ-アップ面接を行うこともあります。 

      認知療法・認知行動療法ではまた、ホームワーク(宿題)といって、面接で話し合ったことを実生活で検証しつつ認知の修正を図ることが必須の課題となります。つまり、観念的な議論ではなく、あくまでも現実に目を向けた検証を基本とする点に特徴があり、日常生活が治療の場となるのです。 

      治療の流れは、①患者を一人の人間として理解し、患者が直面している問題点を洗い出して治療方針を立てる、②自動思考に焦点をあて認知の歪みを修正する、③より心の奥底にあるスキーマに焦点を当てる、④治療終結、となります。そこで用いる具体的な技法など、その詳細については後述します。 

    精神療法では良好な治療関係が重要ですが、認知療法ではとくに、患者を暖かく受け入れると同時に、患者の考えや思いこみを治療者と患者が一緒になって「科学者」のように検証していく協同的経験主義(collaborative empiricism)と呼ばれる関係の重要性が強調されます。そのときに治療者は、患者さんの主体性を尊重し、患者さんが自分の意見を表現しやすい雰囲気を作り出しながら、患者さんが自分で答えを見つけだしていけるような「ソクラテス的問答」と呼ばれる関わり方をすることが大切です。 

1.2 マニュアルの使用に当たっての注意 
  認知療法・認知行動療法は、原則としてマニュアルに準じて治療を進めますが、記載されたセッション番号は目安であり、患者さんの理解度と治療関係の維持を重視します。 

  【治療における優先事項】 
  下記のテーマが話題にあがった場合は、マニュアルの進行度によらず、優先して話しあうことを検討してください。 
① 自殺・自傷に関連する問題 → 可能性を評価してください 



共通テーマ:日記・雑感

うつ病の認知療法・認知行動療法 治療者用マニュアル

うつ病の認知療法・認知行動療法 治療者用マニュアル


共通テーマ:日記・雑感

優しさは報われることなく搾取される

優しさは報われることなく搾取される

どうしてなのかと問いかけて
返ってくる答えは
あの世で報われるという虚しい声


共通テーマ:日記・雑感

人にやさしく

人にやさしくと言うけれど

人にやさしくして得られるものは失望だけだ

傷つくだけで終わる

報酬は神から与えられるだけである


共通テーマ:日記・雑感

90と95の差は大きいのか小さいのか

外食するときには
平気で高級コースを頼む人が
家でパスタを食べるときは
マ・マー・スパゲッティで
最初からひとり分が束になっているから便利だなどという

その人にすれば
ディ・チェコとマ・マーはあまり違わないのかもしれないが
どういうものだろう

そういえば
昔いろいろと区別を気にしたものが
最近は全く区別も気にならなくなっているものも多い
自動車とかタレントとか全然分からない

たとえば美食の世界で最高を1000くらいとすれば
マ・マーとディ・チェコは90と95くらいであまり違わないのかもしれない

最高が100の世界だと
90と95はかなり違うということになるのかもしれない

自他共に認める美食家がいて
食事をしたところ
うまいにんじんのスープだといっていたら
店の人にトマトのスープだと教えられたことがあった

ゆで加減にしても
へにゃへにゃになったパスタもなかなか味わいがあると最近は思う

日本風お弁当ナポリタンはやはりおいしい


共通テーマ:日記・雑感

新しいテレビでセリーグ開幕

新しいテレビが到着したので
セットしようとしたけれど
ねじ回しがなくて
セットできなかった

床において
電源を入れたら
素晴らしく美しい
46型だと結構大きい

いきなりセリーグの開幕日で
巨人がヤクルトをリードしていた

優勝に向けてという決まり文句しか思いつかないのか
しかし
一億玉砕とかに比較すれば
それほど悪性の決まり文句ではないからいいのだろうと思うけれど
最初の試合から
優勝決定試合のような言葉しか使えないのも
新味がない

2010年3月26日の話

ーー
昔、セリーグの開幕試合、巨人阪神で江川が掛布にホームランを打たれたことを覚えている
わたしは友人宅でデイゲームの放送を観ていた

あの日スターだった江川と掛布もいまは解説屋になっている


共通テーマ:日記・雑感

精神病症状とうつ状態

1.はじめに
 かつては精神病症状とうつ症状は病前性格や長期経過の点で同一平面上の対極的な事態と考えられていた。病前性格としては統合失調気質と循環気質が、長期経過としては完全に回復せずに欠損を残す統合失調症型のものと完全に回復する躁うつ病型ものとが対比されてとらえられていた。
 しかし最近のとらえ方では、統合失調症の精神病症状と気分障害のうつ症状とは、同一平面上にあって境界線が引けるものではないし、同一平面上にあってなだらかな移行を観察できるものでもない。むしろ上下に重なっていて、同時に観察できるものと考えられている。さらに最近では精神病症状とうつ症状と不安症状とがそれぞれ別の次元のもので、状態により相伴うことがあるとする考えもある。その背景には、それぞれの症状に脳神経回路の中の、ドパミン系回路、セロトニン系回路、GABA系回路などを割り当てる考え方がある。それぞれが認知の回路、感情の回路、不安の回路などと考えられる。
 長期経過で疾病分類をしたクレペリンも、状態像として精神病症状とうつ症状が重複することは記述していて、重複した場合に、統合失調症が診断として優先するものであると説明している。そののち、ブロイラー、シュナイダー、コンラート、グロスなど、いずれも精神病症状とうつ症状を同一平面上の対極的な症状と考えてはいない。むしろ、統合失調症が診断として優先されると論じている(針間、五味渕、2005)。
 第一世代抗精神病薬で陰性症状によく対処できなかったことから、第二世代抗精神病薬では統合失調症における陰性症状あるいはうつ症状に対して効果的であることが強調された。第二世代抗精神病薬を第一選択として使用する現在では、精神病症状とうつ症状が伴うことにとまどいはないだろう(兼田、2005)。精神病症状を優先して基底の病理と考えるところまではいいとして、うつ症状が反応性のものなのか、あるいは統合失調感情障害としてとらえた方が良いものか、そのあたりの鑑別がむしろ問題となる。統合失調症治療の経過の中で生じる、陰性症状、精神病後抑うつ、抗精神病薬によるうつ症状、アキネジアやアカシジアによるうつ症状などの鑑別と治療については明解な論文があり、参考になる(宮田、2000)。精神病理学としてはいろいろな見解があり結論は得られないとしても、治療としては第二世代抗精神病薬を基本薬として使い、抗うつ剤を付加するかどうかの判断であり、ポイントは自殺を防ぐことである。
 最近の話題としては統合失調症を発症する可能性の高い人を、精神病症状発現の前に発見し発病を阻止する取り組みがある。その場合にやはりうつ症状は頻度の高い症状であり、うつ状態があるだけで精神病症状がない場合に、統合失調症の可能性をどのような手順で考えるかが、重要になる。外来精神科クリニックでは精神病症状を呈する前の統合失調症に近い患者さんが数多くいるものと考えられるので、その鑑別を考えてみたい。

2.疫学データ
 統合失調症の場合にうつ症状がどの程度の頻度で見られるかについては、それぞれの定義によるのであるが、通常の手順は各種評価尺度によって測定し、数値を出すものである。統合失調症に二次性のうつ症状が見られる割合は、精神病症状の定義についてはDSMやICD以外にもさまざま、うつ症状の定義もDSMのほかにHAM-Dその他さまざま、「精神病後」とはどの期間を指すかについても2ヶ月や1年から数年にわたるまでさまざまであるが、数値としては7から83%まで記載があり、おおむね30から50%程度の報告が多い(Buckley et al 2009、これはSirisらの研究をもとにしたものである)。精神症状後に病識が獲得されればうつ症状を呈することは了解しやすいので、治療がうまく行っていればむしろ一時期にはうつ症状を呈するという事情もありそうである。
 統合失調症と自殺については、評価尺度によるうつ症状よりも数値がまとまりやすいが、自殺の統計は正確な数字が出ていない場合があるので、注意が必要である。統合失調症患者の自殺企図の生涯危険率は25から50%、統合失調症患者の4から13%は自殺により死亡、統合失調症患者の自殺のピークは発症後の最初の10年であると記載されている(Harkavy-Friedman et al1999,Mortenson et al 1997)。さらに最初の5年で高いとの報告もある。一般人口に比較して9~30倍といわれている。統合失調症でなくても若年者の死因として自殺が多いことにも配慮が必要だし、統合失調症の場合にうつ症状を呈して自殺するのか、精神病症状から直接自殺するのか、そのあたりは興味あるところであるが鑑別は難しい。

3.診断
 自我障害、被害的幻聴、被害妄想などの精神病症状の発現後の時期で分けると、1.精神病症状と同じメカニズムで同時に発生するうつ症状。統合失調感情病と診断する場合もしない場合もある。2.精神病後うつ症状(PPD:Post Psychoyic Depression)。これは反応性うつ症状とも消耗性うつ症状とも解釈できる。両者を区別する立場もある。3.抗精神病薬によるうつ症状、これは第一世代抗精神病薬の高用量使用で見られたと報告があり、第二世代抗精神病薬でも見られることがあると言われている。4.アカシジアやアキネジアによるうつ症状様症状。5.残遺期の陰性症状。これは理念的にはうつ症状と鑑別できるはずであるが、必ずしも明確ではない。
 一方、精神病症状発現前のうつ症状にも注目すべきである。発病前の介入により発病を阻止できる可能性がある。その中でうつ症状について述べる。
 初診でうつ症状を呈している場合、うつ症状は統合失調症を否定しないし、甲状腺機能異常や副腎皮質ホルモン異常などの身体病であることもあり、認知症の始まりであることもあり、脳梗塞の症状であることもある。諸検査で身体病が除外されたら、年齢を目安にして、15から30歳ならば統合失調症と躁うつ病と性格障害の可能性、30-50歳ならばうつ病と躁うつ病の可能性、50歳以上ならばうつ病と認知症の可能性を考える。
 統合失調症と感情病の両方の遺伝歴や家族の雰囲気は重要である。病前性格と病前の社会適応についてチェックする。対人距離の取り方は、その人の生来のドパミンレセプターの敏感さを反映しているだろう。敏感ならば対人距離を大きくとる傾向がある。
 たとえばひとつのストーリーはこうである。その人は生まれたときからドパミンレセプターが過剰で過敏な性質であった。人と同じ体験をしても過剰にドパミンを伝達してしまい苦しいので、引きこもりがちになる。部屋にいて自然に読書に親しむようになる。成績は悪くないので肯定される。このようにしてドパミンレセプター過敏のままで成長し、過敏さを保ちながら、何とか破綻しないで生活する方法を身につけている。しかし思春期になり、異性に出会い、社会での自分を生きるので、「金、色、面子、健康」などを主題にして過剰なドパミンにさらされ、内面の危機に直面する。性的場面や社会的序列を意識する場面でドパミンは放出され、非常に軽いとしても、自我障害が発生する。
 こうした場合に自我障害の発症前に、「超能力で他人に何かされた」「テレビで自分のことが言われている」「おかしな声が聞こえる」などの精神病様症状(発症の10年前くらいに、子どもにおけるPLEs:Psychoyic like experiences、またもう少し後のARMS:At Risk Mental State)を呈するのではないかと提案されている。発症予測についてはあまり精度が高くないとの反省もあるものの、参考になる。

1.治療・リハビリテーション
 ドパミンD2受容体仮説は1960年代からのもので、中脳辺縁系のドパミン神経過活動が陽性症状と関係し、中脳皮質系でのドパミン神経の抑制が陰性症状や認知機能低下と関係するとする説である。黒質線条体でのドパミン神経抑制はEPSの出現に関係している。第一世代のドパミン遮断薬は中脳辺縁系をブロックして陽性症状を沈静化するが、同時に中脳皮質系をブロックするので陰性症状は悪化し、黒質線条体系のドパミンブロックでパーキンソン症状が現れる。最近の第二世代抗精神病薬の例で言えば、ブロナセリンは中脳辺縁系ドパミン伝達を抑制し、中脳皮質系ドパミン伝達を促進するとの説がある。これは理想的なプロフィールなのであるが実際には期待通りには行かない場合もある。アリピプラゾールはドパミンシステムスタビライザーと言われているが、これもまだ臨床的評価の途中である。両薬とも従来薬に比較すれば、統合失調症の経過で見られるうつに対してはよい対策であると思われる。クエチアピンやオランザピンはMARTAと呼ばれることがあるように、ドパミンとセロトニンだけではなく、さらに多種類のレセプターに作用して効果を発揮するので、患者の特性に応じたものが見つかれば有効である。症状の消長だけではなくQOLを改善する観点に立てば第二世代抗精神病薬を活用し、錠剤数と服薬回数を減らす方針がよいだろう。
 第二世代抗精神病薬を基本に使い、SSRIなどの抗うつ剤を加え、アカシジア、アカシジア、薬剤性パーキンソン症候群の場合には抗パーキンソン薬を使う。病理の見立てにより、抗精神病薬を増減するのだが、抗精神病薬がうつを引き起こすかどうかについては、結論は得られていない。しかし、抗精神病薬による悪性症候群は悪性カタトニアと似ているとの議論があり、悪性カタトニアは高力価ドパミン遮断薬の大量投与時に多い。そしてカタトニアの症状としては無動・無言、姿勢固定などがあり、うつと重なる。こうしてみると悪性症候群にならない程度の、マイルドなものの場合、カタトニアとうつは似たものになり、それがうつと診断されている場合があると思われる。その場合の対処は抗精神病薬の減薬、ベンゾジアゼピン高用量の使用、たとえばロラゼパム12~8㎎などの数字が挙げられている。カタトニアは従来、統合失調症の下位分類の一つとして言われてきたが、最近の調査ではうつ病に伴う場合が多いとの報告があり、重症の場合にはECT電気けいれん療法が推奨されている。現在は筋弛緩薬を投与し、麻酔医が呼吸管理をする無けいれん電気通電療法であり安全性が高いとされる。自殺衝動が強い場合や、拒食・拒薬が強い場合などに有効である。
 自殺の危険を考えて抗うつ薬よりも気分安定薬としてバルプロ酸などの抗てんかん薬が使用されることがある。しかしFDAは2008年に抗てんかん薬自体が自殺をリスクを高めると注意喚起し、それに対してはアメリカてんかん学会でメタ解析の方法などについて異議が提出された。FDAの注意喚起とは次元の違う問題であるが、私見としては、量によっては意識覚醒状態に影響を与えることにまず注意すべきだと思う。そのほか、炭酸リチウムが推奨されている。
 薬剤のアドヒランスを高めるためには漢方薬を併用するのも一法である。精神安定のために柴胡剤(柴胡加竜骨牡蛎湯や柴胡桂枝乾姜湯また加味帰脾湯など)を中心にして、気を補う補剤(補中益気湯や十全大補湯)を用いたり、また不安に対して半夏厚朴湯、女性の場合の生理周期と関係した不調に当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、桃核承気湯など、病期に応じて最適なものを調整する。
 精神療法としては、病識回復にあたっての絶望と不安を受容することである。自殺について積極的に話題にし、些細なきっかけも見逃さず、必要があれば入院を勧める。デイケア、通所作業所などの精神科リハビリテーションでは、患者の回復に合った課題を提案し、役割と居場所を提供することで自尊心を回復させることができる。また家族と一時的に距離をとることができる。治療者の方が早足になってはならない。
 認知行動療法としては、認知の暗黙の否定的構え(スキーマ)があれば、それに対して働きかける。患者・家族教育も大切である。自分が今回急性期に至ったきっかけを分析することで再発のパターンを知り、次回の増悪を予防する。また、統合失調症の長期経過を説明し、次の急性増悪の予防が大切であること、そのために継続的服薬が大切であることを理解していただく。一方、統合失調症に対しての早期介入が試みられており、その一部として学校でのメンタルヘルス教育が重要である。
 また、一定のレベルダウンのあった患者さんには、SSTを用いて、日常生活に支障の少ないよう工夫する。社会に関わり、焦らず着実に治療を進めためには、家族の理解と協力が不可欠である。早い時期に家族に治療協力者としての役割を引き受けてもらう。各種の社会福祉制度の利用も大切で、年金や施設の利用、またベテルの会などの自助グループで患者同士が啓発し合うことにより深刻な抑うつから免れることができた例も多い。
 統合失調症のリハビリにはジレンマがある。残遺期の陰性症状に対してリハビリを行う場合、治療者は再発・再燃と自殺を恐れるので、薬剤はなるべく維持しようとする傾向がある。ドパミン遮断薬を維持すると、ドパミンレセプターのアップレギュレーションが起こる。つまり、薬剤で蓋をしているけれども、実際のレセプター量は増えてしまい、潜在的な過敏さを作り出す。デイケアなどの場面においては、刺激はコントロールされているものの、生活刺激が増えることで少しずつドパミン放出が増える。そのなかで決意して服薬を中断したりすると、レセプターは増えていて同時にドパミンは増えているので容易に再発再燃に至る。治療者はそれに対してさらに薬剤を増量することがある。するとまた蓋をされるレセプターが増えて、レセプターのアップレギュレーションが起こり、潜在的な過敏さが増大するという悪循環が形成される。この悪循環を回避するには、まず薬剤を少し減らして、かつ、デイケアでの活動量を増やして、ドパミンレセプターのダウンレギュレーションを目標にしなければならない。しかしながら、薬剤を減量することも、活動量を増やすことも、再発再燃につながるので、慎重かつ細心のプログラムが必要であり、容易ではない。

5.病態仮説
 ここでは統合失調症の特徴的な症状である自我障害について考えてみる。一般的に考えてみると、動物の神経系は「感覚器で刺激受容」→脳の処理(無意識に反応している部分)→筋肉の反応→現実の結果→「感覚器で刺激受容」というように現実と脳を両側においてループを形成している。これだけならば自意識は発生しない。自我の能動感という人間にとって極めて当然の経験を説明できない。
 人間の場合、刺激を受容し、その出力としての筋肉の反応の間にまず「第一の世界モデル」があり、これは他の動物と同様であるが、さらにもう一つ脳内に「第二の世界モデル」を並行して発生させ、「第一の世界モデル」から出力された信号と、「第二の世界モデル」からの信号を、比較照合する。両者に違いがあれば「第二の世界モデル」を訂正することによって、一致させることができる。「第二の世界モデル」が「第一の世界モデル」を比較対照し転写する機能は、運動において小脳が大脳の運動信号を複写する様子に似ている。
  「第二の世界モデル」からの出力と「第一の世界モデル」からの出力は、時間差があり、常に「世界モデル」からの出力が、比較照合部分に一瞬早く届くように調整されていると考えると、能動感や行為の自己所属感、つまり自我意識が生じると仮説を考えている(「時間遅延理論」)。たとえて言えば、二台の並列されたコンピュータがほとんど同じ結論を出すのだが、二つ目の、進化的に新しい方のコンピュータが一瞬早く結論を出して、古いコンピュータがそのあとに同じ結論を出す。それが能動感や自己所属感の本質であると考える。
 人間は「第一の世界モデル」部分だけで生きて行くには充分であり、それは他の動物と同様であるが、「第二の世界モデル」部分があることによって自意識が発生する。これは人間を強く特徴づけるものであり、進化の最後に発生した部分であるから壊れやすい。壊れたときにはジャクソニスムの原則に従い、壊れた部分の陰性症状と、それによって抑制を失ったために発生する陽性症状が観察される。これは、一般に言われる「あるはずのものがない」陰性症状と「ないはずのものがある」陽性症状と似ているが、原理的に異なるものである。
 人間は言葉で内省を表現できるのではっきりと自我意識の存在を確認できるが、他の動物の場合も程度の差はあるものの、進化の過程で似たようなメカニズムを持っているのだと思う。たとえば動物にも原初的な形での能動感や自己所属感はあるのだろうと思う。人間はうわの空でいるときには、全く無意識のうちに改札で定期を出して通っていたりもする。これは「第二の世界モデル」からの信号が弱くなり「自動運転」に近くなった状態である。また人間は極度に集中しているときや熟練した技を発揮するときなどは、「第二の世界モデル」からの信号が「第一の世界モデル」と精密に一致しているので、逆に「第二の世界モデル」からの信号が遮断されているように感じることがある。何も考えないでとか夢中でとか感想を語るようである。「時間遅延理論」でいうと、自由意志は錯覚であり、自我障害は錯覚が失われる苦しみということになる。これに関連して、受動意識仮説の「リベットの実験」について多くの論文がある。
 そもそも考えてみれば、各感覚器から脳の処理部位に信号が伝達されるのは同時ではない。しかしそれを同時であると見なすように到着時間の調整をして現実を構成している。各感覚器官からの信号を同時と見せるように時間調整をしている部位があると考えられる。同じようなメカニズムで、「第一の世界モデル」からの信号と「第二の世界モデル」からの信号を一つの場所に集めて比較照合し、時間調整をしている部分の障害を考えて、自我障害のモデルとできるのではないか。
 「第二の世界モデル」からの出力が「第一の世界モデル」からの出力に遅れると、自我障害となり、遅れの程度によって、遅れが大きい方から、させられ体験、強迫性体験、幻聴、自生思考と並べることができて、自生思考ではほぼ同時となるだろう。これが統合失調症の急性期の事態である。例えば、幻聴は、自分で話そうと思ったことの出力が「第一の世界モデル」側が先になり「第二の世界モデル」側からがあとになるので、他人が話している、聞かされていると知覚することになる。
 ドパミン遮断薬はその特性によって、「第一の世界モデル」からの出力と「第二の世界モデル」からの出力のそれぞれを違う程度に遅延させる。もっとも強力な薬剤は、両方とも大きく遅延させる。これが薬剤過量によるうつである。ある程度マイルドな処方にすると、「第一の世界モデル」からの出力はやや遅延させ、「第二の世界モデル」からの出力は遅延させない程度になる。こうなると、自我障害は改善する。逆に、薬剤の特性によっては「第一の世界モデル」からの出力を遅延させず、「第二の世界モデル」からの出力を遅延させる。この場合は自我障害は改善しない。ブロナセリンのプロフィールはこの理論によく一致していて、中脳辺縁系と中脳皮質系への効果の差と考えても、さらに前頭前野などへの効果の差もあるのかと考えてもよさそうである。アリピプラゾールも同様に中脳辺縁系でドパミンを抑え、中脳皮質系でドパミンを増やすと言われていて、これも時間遅延モデルをよく補強する。
 自我障害が続くとうつ状態になるが、その事態の説明としては反応性および疲弊性うつになるだろう。例えば、精神病極期にはドパミンなどのモノアミン系が使い果たされて、モノアミン系枯渇状態にあるのだと説明することはできる。そのことを疲弊の実体だと考えてもいいだろう。そうであれば、ドパミン遮断薬はマイルドに使い、セロトニン系抗うつ薬を重ねて使用しても意味がある。時間遅延性の症状にはドパミン系を、疲弊性うつの回復にはにはセロトニン系をと考える。
 自我障害が発生した場合の心理的外傷は大きく、充分に抑うつの原因となりうる。また、自分の現在と未来を考えて、悲観的になることも理解できる。こうした事情を含んで精神病後疲弊性抑うつと呼んでいる。この場合には、心因反応として、悲哀のエピソードのあとの抑うつともメカニズムは似ているし、躁うつ病において、躁状態のあとの疲弊性うつ状態ともメカニズムは似ている。しかし躁うつ病の場合には、疲弊性うつが終わったあとに、本質的なうつ病が進行すると考えられている。自我障害のあとには疲弊性うつが前景に立つ時期があり、そのあとは陰性症状が主となる。このあたりを微細に診察することで症候学としての収穫があるかもしれない。治療としては、この場合もセロトニン系の調整を眼目とする薬剤を用いてよいが、自殺には充分注意し、面接の間隔を1週間程度に短めに設定する。場合によってはさらに短くし、家族と連携し、必要に応じて入院治療も考慮する。認知療法を考える場合、治療で働きかけているのは行動から「第一の世界モデル」にアプローチしているのか、認知から「第二の世界モデル」にアプローチしているのか、治療者が意識するといいかもしれない。


共通テーマ:日記・雑感

Schizophrenia and Depression

Scan00021.jpg

Scan00031.jpg
Scan00041.jpg
Scan00051.jpg
Scan00061.jpg
Scan00071.jpg
Scan00081.jpg
Scan00091.jpg

point prevalence は 点有病率

これは公衆衛生学で使う用語
ある一時点での有病率で、用語自体の意味は厳密なのだが
この筆者はそのような意味で使っているのではなくて
「精神病症状とうつ症状が同時に起こる場合」から数年ずれて起こる場合まで
という意味で使っていると思う

ーーー
modal frequencyは《物理》モード周波数
と出ているがこれでは意味不明
周波数の話ではないから

統計学で
最頻値をモード (mode)、並み数 ともいう。データのうち、度数分布において最も高い度数を示す値、つまり最も多く現れているデータの値。
であって、modalはそのあたりの意味を示すのではないかと推定する。
「most frequentな値、つまりmodeは」ということで、「最頻値」の意味なのだろうと推定する。

ーーー
この人の文章は
元の自然な文章があって
それを圧縮したり修飾したりしているうちに
次第に意味が不安定になり
最初から分かっている人にしか分からないようなタイプの文章のように思われるが
もともと専門家が読む文章なのだから
それでいいのだとも思う

高度なレトリックなのだろうか


共通テーマ:日記・雑感

寒冷と進化圧力

2010年3月25日
桜の開花宣言もあったというのに
東京は冷たい雨

吐く息が白くなるくらいと
テレビで言っていた

温暖化していると言われていても
東京も結構寒い
昔は暖房設備も貧弱だっただろうし
人間は我慢強いものだったと思う

ふすまで仕切られた家で
どうして我慢できたのだろう

現在の高度な文明地域を見ると
どちらかと言えば寒い地域が多い
なぜなのかと考える

苦労しなくても食料が手に入り
子どもも育てやすくて快適な地域で
もっと富の蓄積が進行してもよかったはずだけれど
現実はそうなってはいない

むしろ生存に不利な状況で
人類は進歩を遂げたように思われる

蓄積の衝動が強かったような気もする

ーー
進化論の方面で言えば
適度に不利な状況があった方が進化の圧力が高くなり
生物は変化するものなのだろう

ーー
個人的推測としては
寒い地域の人たちは
気道感染症にかかりやすく
その原因となるウィルスが人類の進化を促進してきたのではないかと思う

だから完全にいつも寒くて
寒さに適応してしまった民族でもなく
いつも温かくて温かさに適応してしまった民族でもなく

気候変動があって
適応しきれないうちにウィルス性の気道感染症にかかる民族が
進化の速度が速かったのではないかと思う

ウィルス感染があるとその一部は
精子の遺伝子に組み込まれて
進化を促進するという
きわめて単純で短絡的な考え方である

そのためには
免疫系と精巣血液関門(BTB)が連動していると考える。
オスが主に変化の主体となっている。
メスは生まれたときから持っている卵子を大切にする。

ーー
別の推定としては
温かい地域では他の生物も生きやすいので人類だけが快適というわけにはいかない
寒冷地の方が大きな脳を持った人類の適応余地が大きかったと言えるのかもしれない

人類だけで言えば温かい方が快適だけれど
他の生物との競合を考えると
寒冷地の方が相対的に人類に有利なのかもしれない

ーー
また、別の推定では、人類の最大の敵は当然人類なので
競合するとしてもっとも脅威なのはやはり人類である

その場合、相手を完全に絶滅させやすいのは寒冷地域かもしれない
温暖な地域だと命からがら
鎌倉から平泉に逃げることだってできる
ロシアだとそうはいかなくて
圧勝か絶滅かになり
そうなるとわずかの力の差が拡大されて
絶大な権力につながる

それが高度な文明につながったかもしれない



共通テーマ:日記・雑感

学問と個人生活

人間の営みで不思議だと思うことがあって
それはたとえば
物理学とか工学の人たちは
昔の人にはとてもできないような高度な仕事をしているのに
家に帰って
昔の人と同じようなことで喧嘩をしたり悩んだり
本を読めば
非常にくだらない小説とか
つまらない哲学とかを読んでいるし
テレビや映画では筋立ては相変わらずのばかばかしいものが多い事だ

この深刻な格差が面白い

学問は人類を通じての加算になるのに対して
個人の成長はひとり限りとなるからなのだろう




共通テーマ:日記・雑感

ウルトラマンワールドヒーロー最強バトル

http://www.youtube.com/watch?v=rycFViy7DLY&NR=1&feature=fvwp

八岐大蛇(やまたのおろち)とすさのお、くしなだ
などのお話とよく重なり合う感じがする




共通テーマ:日記・雑感

陰性と陽性

陰性症状と陽性症状については
しばしば言及していて
今さらの感じはあるけれど
もう少し

統合失調症で
普通ならないはずのものがあることを陽性症状と言って
幻覚・妄想なんて言っている

普通ならあるはずのものがない場合は陰性症状と言って
感情の平板化とか意欲減退とかそんなことを言っている

ーーー
でもたとえば
躁うつ病の場合にも言えるのかなと考えてみると
少し考えて
もちろん躁病が過剰で
うつ病が不足のように思われるわけだけれど

自殺したいという気持ちは
何かの不足なのか過剰なのか

自殺したい気持ちの過剰や悲観的考えの過剰だと言えるし
生きる意欲や将来への希望が不足とも言える

そんな話は言語の習慣でしかない

サンスクリット語では
「非在が存在する」というような語法をよく使うと
中村元先生に教えてもらった覚えがある

存在するとは非在の不足なのである

ーーー
統合失調症ならば
ドパミンが多すぎるのと少なすぎるのとで
陽性症状と陰性症状に振り分けたい気がするのだけれど
どうか?もちろんとても怪しい

でも、一応話のつじつまは合うので
個人的にはよく使っている

潜在的にドパミンへの過敏性があると仮定して
陰性症状主体の生育歴を説明し
思春期でドパミン過剰になって陽性症状が出現し
その時期が終わると
長い陰性症状が残るという説明

躁うつ病になると躁病がセロトニンの過剰だというわけでもないので
セロトニンの多い少ないだけで
何か結論できるわけでもない

統合失調症はドパミンでうつ病はセロトニンで躁病については何も言わないというのは
最近の話で
またすぐに変わるだろう

脳イメージングで血流やグルコース代謝で何か結論を言いたいようだけれど
それが原因なのか結果なのかも分からない

なにしろ脳の中ではドパミンとセロトニンは独立しているのではない
東横線に乗っているつもりが途中から日比谷線になっていたみたいなもので
日比谷線が事故を起こすと東横線も停まってしまう

ーーー
すごくレベルを落としてたとえ話をすると
男性にあるはずのものがないのが女性で
だから男性は陽性で女性は陰性だと言ったとすると
そういうとらえ方ができないわけではないけれど
あまりに一面的すぎてほとんど意味がない
言語の習慣に過ぎないことが分かる

陽根、女陰と言ったりする

ーーー
しかしまた
現在目の前にある症状が
何かの不在で、何かの過剰であると、見極めるのは大変有用である
ジャクソニスムでいえば
脳の欠損はその部分の機能欠落を生じ、さらには
その下位部分の機能過剰を生じる

これは実に頭のいい考え方で好きなのだが
難しい

ーーー
物事を極端に簡単にして説明する仕方として
陰陽の説は昔からあって
中国でこの言葉を使っていた
3とか5とかもよく使われる

血液型は本質的には2なのだけれど
その組み合わせで4になる

漢方で虚実とか証を言うときも
二分法で細分化していく

なんのことはない
脳の都合をぶちまけているに過ぎないようだ

ーーー
デジタルの時代によく合うのだろう

ーー



共通テーマ:日記・雑感

他人に罪悪感を抱かせるのはなぜか

かなりあからさまに、他人に罪悪感を抱かせる方向での
態度、行動、ものの言い方をする場合があり
なぜなのかなと思う

だって何でも人のせいにしたら
嫌われるに決まっているでしょう

そんなことが何度か続くと
やはり私は嫌われているんだと
ますます
自己予言的になってしまう

嫌われていると思い込んでいるから
やはり現実に嫌われる

困ったものだけれど
実に普遍的に数多くみられる現象で
不思議なものだと思う

どこかで逆転できるものか


共通テーマ:日記・雑感

泣く場所

人間には時に泣く場所が必要である

ここに来て
泣きなさい

共通テーマ:日記・雑感

岩波ジュニア新書 世界の悪といかにしてつきあうか

世の中にはいろいろな人がいて悪い人もいる
また
悪い人ではなくても状況により悪いことをする
また
いいとか悪いとかも立場により異なる

大人の世界は腐っているが
宗教界も腐っていて
マスコミも腐っていて
医学も法曹もどこもかしこも腐っている

そのようなことを
岩波ジュニア新書で
高校生に宛てて書き残したいのだという

それが自分にまつわることかと思えば
苦しさと怒りが先に立ち
何ともやるせない

しかしそれを子どもたちに語るという立場に立つならば
また何か新しい考え方もわくかもしれない
そこに希望を抱いて
岩波ジュニア新書のために書いてみようと
その人と話し合った

共通テーマ:日記・雑感

新橋 焼鳥屋

宮崎地鶏炭火焼 車 銀座8丁目店 (新橋、内幸町、銀座 / 居酒屋、焼鳥、炭火焼き) 
銀座 比内や コリドー店 (新橋、内幸町、銀座 / 焼鳥、親子丼、郷土料理(その他)) 
鳥九 (新橋、内幸町、虎ノ門 / 焼鳥) 
焼鳥&ベルギービール ホップ デュベル (新橋、内幸町、汐留 / 焼鳥、鳥料理、親子丼)
炭火串焼 三政 (新橋、汐留、内幸町 / 焼鳥、串焼き) 
地鶏屋 (新橋、汐留、内幸町 / 焼鳥、居酒屋) 
王将 (新橋、内幸町、汐留 / 焼鳥、居酒屋)
銀座 比内や コリドー店 (新橋、内幸町、銀座 / 焼鳥、親子丼、郷土料理(その他)) 
伊勢廣 銀座店 (新橋、内幸町、銀座 / 焼鳥、鳥料理)
鳥助 (内幸町、虎ノ門、霞ヶ関 / 焼鳥、日本酒)
銀座 比内や 本店 (新橋、東銀座、銀座 / 焼鳥、鍋(その他)、鳥料理) 
鶏繁 総本店 (新橋、内幸町、汐留 / 焼鳥、鳥料理、居酒屋) 
炙り炭火串焼 鳥藤 (新橋、汐留、内幸町 / 焼鳥)
鳥長 (新橋、内幸町、銀座 / 焼鳥) 
銀座和乃匠 (新橋、銀座、内幸町 / 焼鳥、ダイニングバー、和食(その他)) 
やきとん まこちゃん 本店 (新橋、汐留、内幸町 / 焼鳥、串焼き、居酒屋)
宮崎地鶏炭火焼 車 銀座8丁目店 (新橋、内幸町、銀座 / 居酒屋、焼鳥、炭火焼き) 
金太郎 (新橋、内幸町、汐留 / 焼鳥、居酒屋、ホルモン) 
串ひで (新橋、汐留、内幸町 / 焼鳥、串焼き)
炭火焼鳥居酒屋 バル8 (新橋、内幸町、汐留 / 焼鳥、居酒屋、炭火焼き) 
東京やきとり亭 銀座本店 (新橋、銀座、東銀座 / 焼鳥、鳥料理、釜飯)
焼鳥&ベルギービール ホップ デュベル (新橋、内幸町、汐留 / 焼鳥、鳥料理、親子丼)



共通テーマ:日記・雑感

海中生物

2692773086_1fde535003.jpg

共通テーマ:日記・雑感

はな

2482109137_cb9fb3f1b6.jpg

共通テーマ:日記・雑感

はな

1148647713_dd4aa6b95a.jpg

共通テーマ:日記・雑感

はな

390006169_4cd7cd86cc.jpg

共通テーマ:日記・雑感

はな

103730781_e6a549a3b2.jpg

共通テーマ:日記・雑感

花粉症の心身症的側面

喘息でもアトピーでも
免疫とかアレルギー機序が関係している訳なので
たぶん
花粉症も
単純に「何かの花粉に排気ガスなどがくっついてアレルゲンになって鼻水が出て目がかゆくなる」
というだけではなくて、
心理的側面が大きく関係しているのではないかと思う

ーーーー
うんと次元を低くして
QOLのことを考えても
割り切りがよかったり
集中力が保てたりすれば
多少鼻水で出ていても
関係ないと考えられる部分はある

ーーーー
ヒスタミンが関係して鼻水が出るのだから
SSRIを使ってセロトニンをコントロールすることは多分有効なはずだろうと
思っている

作用機序は充分には明らかではないのだが
「花粉症に心身症的治療を」と考えられる。


共通テーマ:日記・雑感

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。