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統合失調症とうつ状態

昔、三大精神病と言えば
統合失調症、躁うつ病、てんかんのことだった

最近はてんかんは精神科ではなくて小児神経科や神経内科で診察することも多く
精神の病というよりは身体的疾患の分類になっている

そこで二大精神病と言えば
統合失調症と躁うつ病ということになる

躁うつ病とうつ病の関係についてはまだ確定的な結論は出ていない
二大精神病と対立的に考えていいのかどうか疑問がある
躁うつ病の一部としてのうつ病と、躁うつ病とは別のものとしてのうつ病の両方があるとする考えと
あくまでも躁うつ病の一部としてのうつ病だけがあるのだとする根強い理論もある
観察できないほどの短いものであっても
躁状態があった「はずだ」と考えることはできる

また逆に、うつ状態のない躁病の場合、
躁うつ病なのだがうつ状態は寝ている間に過ぎてしまうとか
きわめて短時間に経過してしまうとか
理論としては様々に考えることができる

いずれも問題はうつ病とは何か、躁うつ病とは何かがはっきりと確定できないままで
議論しているところにあるのだが
しかしそのように議論しないと原因確定に至らないのであるから
現状では仕方がない

DSM方式の診断方法は
病気を確定しているのではなく
単にDSMという箱に入れておいて統計分析しようというものだ

しかしDSMの影響は大きく
そのこともまたうつ病とは何か、ひいては躁うつ病や統合失調症との関係はどうかという問題を難しくしている

ーー
二大精神病なのだから
磁石のNとSのように対立し逆のものだろうとの議論は昔からあり
長期経過についてのクレペリンの説とか
病前性格と関係づけたクレッチマーの説などは
対立型分類になる

しかし実際には
統合失調症型の幻聴や被害妄想や現実検討の悪化を呈している人が
同時に抑うつ的で悲観的で希死念慮があり不眠で食欲がなくなることは
当然多いわけで
それを、統合失調症の症状から二次的に派生するうつ状態と解釈する場合もあれば
統合失調感情障害(Schizoaffective disorder)と名付けて解釈する場合もある
これらは非対立型分類になる

統合失調感情障害について実際に何を意味するのか
様々に解釈はあり
また同時に定義の提案も様々にあり
決定しがたい
たとえば幻聴、被害妄想、うつ状態が併存している場合に
幻聴や被害妄想を基盤として「共感」できるならば二次性のうつ状態で
「共感」はできないが「説明」はできるならばうつ状態は原発性のもので統合失調感情障害と呼ぶべきだとの
意見もある
しかしこれは「共感可能」の客観的な定義が困難で、理論としては採用できない

統合失調症の症状から二次的にうつ状態が発生することは理解しやすい
また疲弊性のうつ状態についても理解しやすい
そうなれば、統合失調症と躁うつ病またはうつ病は併存することが可能である
しかしながらその場合は二大精神病という言い方は適切ではない

統合失調感情障害を重く見て、また、統合失調症と躁うつ病の遺伝歴の重なりが多い事を重く見て、
むしろひとつの原因が両方の障害を引き起こすことがあると考えることもできる
しかしそうなればやはり二大精神病とは言えないことになる

また、ひとつの原因が統合失調症から躁うつ病、うつ病に至る
さまざまな結果を惹き起こすメカニズムについての説明を考えると
相互に排他的な二大精神病と言えないこともない

ーー
排他的な原因なのか
併存可能な原因なのかを
知りたいところだが容易ではない

ドパミンと統合失調症の関係についても確定的ではないし
関係があるとしても原因なのか結果なのか確定できない

セロトニンとうつの関係についてはさらに弱い関係しか推定できない

たとえば
甲状腺ホルモンが多すぎるのか少なすぎるのかについては排他的である
しかしおそらく統合失調症とうつ状態についてはそうではない
むしろ
統合失調症とパーキンソン病が
ドパミンが多いか少ないかでは対立的な病気なのだが
脳の中でどの部分で過多と過少が起こっているのかについては違いがある

統合失調症とパーキンソン病でさえ症状として対立的ではないのだから
ましてや統合失調症とうつ状態に関しては
対立的と言うことはできない

ーー
印象としては
統合失調症は脳の人間に特有な発達部分の異常と考えやすく
うつ病は局所症状ではなくむしろ全般性の異常と見える

統合失調症は脳内部で不可逆の変化が起こると考えられる
また躁うつ病については可逆性の変化と考えられる
との意見は昔から強力である

その点では早発性痴呆の呼び名は的確なのだけれど
現代では外来で治療可能で
人格・知能の荒廃に至らない統合失調症の軽症型が増加していて
それらは性格障害とか発達障害と分類されていることもある

そうなると
定義の点で
次第に荒廃に至るものを統合失調症と分類していたのでは合理的ではない
早発性の痴呆に至らない、外来で治療可能な統合失調症と表現する時点ですでに
統合失調症とは何かの定義の議論を含んでいて循環論的である

ーー
と、まあ、いろいろと困難である


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