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認知療法・認知行動療法3

5.第4ステージ(第7~12セッションに相当)

5.1 第4ステージの目的とポイント
・第7~12セッションに相当
・目的
自動思考を適応的思考に修正する
認知のかたよりを理解する
行動実験を積極的に利用する
・ポイント
必要に応じて、問題解決スキル、対人関係スキルの介入を行う

5.2 第4ステージのアジェンダ
・チェックイン
・アジェンダを設定する
・アジェンダ:7つのコラム
・ホームワークを出す
パンフ「バランス思考のこつ」を読む
7つのコラム
行動実験
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
・次回への橋渡し

5.3 適応的思考を導く(7つのコラム)
・2つのアプローチがある
自動思考に「認知のかたより」がないか検討する
根拠と反証を検討する
・ソクラテス的質問法(誘導による発見)を重視する
患者が体験から気づいたものが最も強力
患者との知恵比べにならないように
患者が理解に達するには時間が必要である
「私も考えてみますので、○○さんも考えてみて下さい」
患者が自己発見できるような(行動的)ホームワークを設定する

5.4 「根拠」を整理する
「根拠」(第4)のコラム
自動思考を裏付ける事実を記入する
ポイント
客観的な事実を書く
相手の心を読むような「勝手な思い込み」や「事実の解釈」は避ける
例) × きっと○○だから・・・, ○○にちがいない

5.5.1 「反証」をみつける手がかり①
ポイント:第3者の立場で・・・
「もしほかの人が同じような考え方をしていたら、あなたはなんと言ってあげますか?」
「あなたがそう考えていることを知ったら、あなたの親しい人はどのような言葉をかけてくれるでしょうか?」

5.5.2 「反証」をみつける手がかり②
ポイント:過去や未来の自分だったら?
「元気な時だったら、違う見方をしないでしょうか?」
「5年後、10年後に同じ体験をしたとしたら、どのように考えるでしょうか?」

5.5.3 「反証」をみつける手がかり③
ポイント:経験を踏まえて・・
・「以前にも似たような経験をしたことはありませんか?その時はどうなりましたか?」
「その時と今回では、どのようなところが違うのでしょうか?」
「その体験から、今回役に立ちそうなものはありますか?」

5.5.4 「反証」をみつける手がかり④
ポイント:もう一度、冷静に・・・
「自動思考は100%正しいですか?」
「どんな小さなことでも、自動思考に矛盾することはありませんか?」
「自分の力だけではどうしようもない事柄について、自分を責めていませんか?」

5.6 気分の改善が見られない場合
・コラムがきちんと書けていない
状況 One Slice of Timeであるか/情景がありあり浮かぶか
気分 気分をすべてあげられているか
自動思考 「ホットな思考」をとらえられているか
根拠 事実にもとづいているか
反証 自動思考へのすべての矛盾点があげられていますか
適応的思考 信じられる新しい考えか
・自動思考に「認知の偏り」がない
→ 認知再構成でなく、問題解決を行う
→ 問題解決モジュール、対人関係モジュール

5.7 第4ステージのまとめとホームワーク
・ホームワークを設定する
7つのコラムを書いてきてもらう
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
2.7参照
・次回への橋渡し
2.8参照

6.第5ステージ(13-14セッションに相当)

6.1 第5ステージの目的とポイント
・第13~14セッションに相当
・目的
スキーマを整理する
終結を意識し始める
・ポイント
この段階では、セッションはかなり患者主導的になっているべきである
認知再構成のスキルが十分に身についていない場合は、スキーマを意識しながら、
認知再構成のスキルを練習する。

6.2 第5ステージのアジェンダ
・チェックイン
・アジェンダを決める
・アジェンダ:スキーマ(心の法則)を明らかにする
・ホームワークを出す
パンフ「心の法則とは」を読む
“心の法則リスト”をつくる
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
・次回への橋渡し

6.3 スキーマとは
・考えや行動に影響を与えるテンプレート
・過去のライフイベント、トラウマ、人間関係、成功体験、遺伝的要素などが形成に影響する
・スキーマは、状況によって活性化され、柔軟な考え方や自由な行動を妨げる

6.3.1 スキーマとは②
・その人の根底にある中核的信念core beliefと、ある状況において生じる条件的な信念underlying assumptionがあるが、厳密に区別しくにいことも多い
・このプログラムでは、総称してスキーマと呼ぶ
Core beliefの例
私は愛されない、世の中は危険なところ
Underlying assumptionの例 (If … , then … .)
人から頼まれたら断ってはいけない
課題に対してはどんな場合も全力を尽くさねばならない

6.3.2 スキーマを同定・修正すると
・現在の症状が軽減
・将来のストレッサーへの抵抗力が向上
・再発リスクの軽減に高い効果(Evansら1992,Jarretら2001)

6.3.3 スキーマが自動思考を作る

事実 スキーマ 自動思考
・会話中のあくび→ 
 


私は愛されない



 
→ 
 
・私の話は退屈? 
 
・食事の誘いを断られた 
 
→ 

 
→ 

 
・私なんかと食事したくないのかな? 
 
・電話も来ない→ 
 
→ 
 
ああ、嫌われた・・(><;) 
 


6.3.4 スキーマの3領域
① 自己へのスキーマ(特に、うつに強く関係)
「自分は無能だ」「自分は愛されない」
② 他人へのスキーマ
「他人は自分のことにしか関心がない」
③ 世界へのスキーマ
「渡る世間は鬼ばかり」「東京は怖いところ」

6.4 スキーマを同定する
・治療の後期において、スキーマを特定する作業を行い、終結・再発予防に役立てる
・治療者にとっては治療の早期から念頭におくものである
・しかし、治療の中では、必ず、患者が自動思考の同定と検証ができるようになってから行う

6.4.1 スキーマを同定する方法①
・心理教育を行う
「スキーマとはどういうものか」
「スキーマの同定がなぜ大切なのか」
・スキーマに気づくための質問を行う
「いつも決まってそのように考える、
何か心の中にあるルールや法則のようなものがあるのでしょうか?」
・自動思考のパターンを発見する
これまでの治療ノートを振り返る
何度も繰り返されるテーマは?

6.4.2 スキーマを同定する方法②
生活史をふりかえる
・価値観や、人生のモットーのようなものはありますか?
趣味、仕事、宗教、文化、教育、読書・・・が与えた影響は?
・価値観を一変させるような体験はありましたか?
・大きな影響を受けた人物はいますか?
「人生で強く影響を受けた人は誰ですか?」
「励まし/自信をくれた人は?」「悩まされ/拒絶された人は?」
・その人との体験から得た信念は?
「どんな影響を受けましたか」
「その人との関係から、どんな考え方になりましたか?」

6.4.3 スキーマを同定する方法③
下向き矢印法① <自己へのスキーマ>
状況) 会社で私を残して上司が同僚と食事に行った
                   ↓
自動思考) 私だけ、上司に誘ってもらえない
                   ↓
自己について) 自分は他人に気遣ってもらえないタイプ
                   ↓
自己について) 自分は、愛されない人間だ

6.4.4 スキーマを同定する方法④
下向き矢印法② <世界へのスキーマ>
状況) 上司は自分に残業させて食事へ
               ↓
自動思考) 一般職の女性社員だけ誘われた
               ↓
世界について) 私は総合職女性だから誘われなかった
               ↓
世界について) 仕事をがんばる女性は、嫌われる

6.4.5 (参考)ある症例のスキーマ
自分はだめな人間だ
人は何でも完全でないといけない
何でも自分でやらないといけない
すべての人から愛されないといけない
人は自分を利用するだけだ
他人に弱みをみせてはいけない
(仮定法の形で考えると理解しやすい)
もし少しでも失敗したら、仕事は台無しになるだろう
すべての人から愛されなければ、幸せになれない
心の奥底を見せたら、その人は私を嫌いになる
気持ちをコントロールできなければ、大変なことになる

6.5 心の法則リストを作りましょう
元気なときの心の法則うつのときの心の法則
・自分について・自分について
・人々について 
・世界観について
・人々について 
・世界観について
 
6.6 心の法則リスト の例
元気なときの心の法則うつのときの心の法則
・自分について 
ときには失敗もするけど人並みの実力はある 
苦手な人もいるが、信頼されている方だ 
・人々について 
ライバルも仲間のうちだ 
・世界観について 
馬が合わない人がいてもいい 
人生、七転び八起き 
夫婦は助け合うもの
・自分について 
自分は無能な人間だ 
自分は嫌われ者だ 

・人々について 
この世は弱肉強食だ 
・世界観について 
みんなに好かれないといけない 
少しでも失敗したらおしまいだ 
家事は妻の仕事

6.7 第5ステージのまとめとホームワーク
・ホームワークを設定する
スキーマリスト(心の法則リスト)を作る
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
2.7参照
・次回への橋渡し
2.8参照

7.第6ステージ(15-16セッションに相当)

7.1 第6ステージの目的とポイント
・第15~16セッションに相当
・目的
終結と再発予防
・ポイント
この段階では、セッションはかなり患者主導的になっている
治療ノートを振り返りながら、セッション全体をふりかえる
治療終了後の目標と、起こりうる問題の予測を行う

7.2 第6ステージのアジェンダ
・チェックイン
・アジェンダを設定する
・アジェンダ:終結と再発予防
・ホームワークを出す
治療ノートをまとめる
治療終了後の生活や見通しについて計画する
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
・終了時評価について説明する

7.3.1 アジェンダ:終結と再発予防①
・終結の準備を提案する
治療が終了後も、身につけたスキルを使うこと
うつの再燃の可能性と、その対応を説明する。
一時的にうつ状態がまた逆戻りしたりすることのほうが、むしろ普通であり、
そのことを患者に知らせておけば、仮に悪化しても患者の動揺は少なくなる。
悪化の際にこそ、これまでのスキルを使うチャンスである
「治療も残り2回になりました。これまでのふりかえりと、今後どのようなことが大事かをお話します」
「ほとんどの方は良くなったり悪くなったりします。」
「具合が悪くなったとき、今までの経験を生かして、すぐに対処できる準備をしましょう」

7.3.2 アジェンダ:終結と再発予防②
治療全体を振り返る
・治療を通じて身につけたこと、変化した点を話しあう
「治療を始めた時に比べて、うつが随分よくなりましたね。一体何が良かったのでしょうか?」
「どのようなことが役に立ったと思いますか?」
・気分や状況が改善したのは、患者自身が考え方や行動を変化させた結果であることを強調する。
治療者、あるいは薬のおかげと考える患者に対しては、それを認めつつも、
患者自身が変化した点を思い出させる。
「私がアドバイスした点もありましたが、考え方や行動を実際に変えたのは○○さんですよね?」

7.3.3 アジェンダ:終結と再発予防③
セッションで扱ったツールや技法をおさらいする
・ツールや技法は患者が将来にわたってもずっと使えることを強調する。
・うつ病だけでなく、感情的になったり、非機能的になっていると気づいたらいつでも用いることができる
「つらい気持ちになった時に、自動思考を検討することや、人間関係や問題解決法は、
ずいぶん役に立ちましたね。」
「この方法は、今後も、つらくなったときや、問題にぶつかったときにはいつでも使うことが
できるのですよ。」

7.3.4 アジェンダ:終結と再発予防④
治療が終了する不安にそなえる
・治療が終了するにあたっての不安について尋ねる
今後の具体的な心配事がある場合は、その対策を考える
ばくぜんとした終結の不安は当然のことで、勇気づける
不安が強くなったときになにができるかを話し合う
・「治療終了と聞くとどんな事が頭に浮かびますか?」
・「なにか具体的に心配なことはありますか?」
・「困ったとき、誰か相談できる人はいますか?」

7.3.5 アジェンダ:終結と再発予防⑤
悪化した場合の対処法を検討する
・「今後、うつ症状が出そうになったときにどう対処するか、前もって考えておきましょう」
・「一時的な気分の波は、正常で、心配いりません」
・「治療で身に付けた、使えそうな方法は何でしょう?」
・「それを治療ノートにまとめて、書き留めておいていただけますか。そうすれば、いつか具合が悪くなったとき、何をすればいいかがわかりますから。」

8.問題解決モジュール

8.1 問題解決のポイント
1)問題解決の必要性について説明する
「実際に困った問題があるときには、コラム法であまり気分が改善されないことがよくあります。
問題をうまく解決する方法を勉強していきましょう」
2)問題解決の2つのプロセスを説明する
①問題解決できるこころの準備をする
②アクションプランを立てて、行動する
「問題に対応するためには、第一に『問題に取り組む心の状態を作る』ことが大切です。
『どうせ無理だ』と思っていては、良い解決策があっても見落としてしまいかねません。」
「問題解決ができる心の準備ができたら、実際に『プランを立てて行動』していきます。」

8.2 問題解決の構成要素
1. 問題解決志向:問題に取り組める精神状態を作る
2.問題の明確化と設定:取り組む問題を設定する
3.解決策の案出:ブレインストーミング
4.解決策の決定:それぞれの短所長所の確認
5.行動計画の立案:解決策の行動計画を綿密に立てる
6.解決策の実行:行動計画に基づいて実行する
7.結果の評価:良い結果につながらなかった場合は、何が問題だったのかを再度検討する

8.2.1a 問題解決志向
・問題に取り組める精神状態を作りだす
×「もうどうしようもない」
×「やるだけ無駄だ」
○「なんとかなるかもしれない」
○「やるだけやってみて判断しよう」
・自己教示法
・認知再構成法
「とりくむ気持ちを妨げている、自動思考を検証しましょう」

8.2.1b 自己教示法
次のように自分に語りかけてみましょう
・気軽にやってみよう
・ゆっくりと、1回にひとつずつ取り組もう
・挑戦の機会、成長の機会と考えよう
・できれば自信が出るだろう
・できなくても、問題がよりはっきりするだろう

8.2.2 問題の明確化と設定
・問題を具体的に設定する
つらいこと → ×
仕事が思うように進まないこと → ○
・「結果をどうしたいのか」(望む結果)を明らかにする
「この状況の問題は何だと思いますか?」
「どうなれば随分と楽になりますか?」
・「望む結果」は取り組むべき問題として適切かどうか吟味する
他人の変化を望んでいないか
現実的な問題設定か
自分にとって重要な内容か

8.2.3 解決策を案出する
~ブレイン・ストーミング~
・数の原理
たくさんの案を出すほど成功しやすい
・判断の延期の原理
後から案出された解決策ほど効果的
・戦略と戦術
戦略:大きな方向付け
(例)職場での自分の状況をもっとよく知る
戦術:具体的な方法
(例)先輩と話す、前回の異動の時の自分の日記を読む

8.2.4a 解決策を決定する
利点・欠点を評価する
・その解決策で、問題はどの程度解決するか
・どのくらい実行可能か
・実行上の障害を予測する

8.2.4b 解決策の利点・欠点を評価する
解決策利点欠点
さらに残業する 
 
仕事がすすむ 
 
もっと疲れる 
これ以上はむり
辞める!楽になる食べていけない
上司に相談する上司が態度を改めてくれるかもますます嫌われるかも
同僚に相談する◎ 
 
仕事を手伝ってくれるかもしれない 
気持ちを理解してくれるかもしれない
負担をかけてしまい、距離がで
きてしまうかも

8.2.5 行動計画の立案・行動リハーサル
・行動計画立案 「同僚に相談する」
同僚の余裕があるとき(昼休み)に声をかける
「仕事がなかなか進まず困っている」「できれば仕事をひとつ手伝って欲しい」ということを伝える
良い返事がもらえればOK
良い返事がもらえなかった場合は、自分の仕事がうまくいっていない原因について
意見を聞いてみる。反論はしない。
あまりうまくいかない場合には、反論せず、計画の評価、再考に戻る
・行動計画をセッション中にリハーサルする
ロールプレイ

8.2.6 解決策の実行 / 効果の評価
・実行
実行計画に基づいて実行する
セッション内でリハーサルを行うのもよい
うまくいくかどうかよりも、実行してみることが重要
・評価
問題そのものの結果
個人の結果(現実的問題、気分、身体、個人的成長など)
対人的結果(個人、集団など)
などについて評価する
問題が十分に解決していない場合は、2.問題の明確化に戻って再検討する

8.3 問題解決のコツ
・一度に多くを望まない
・自分の望んでいる結果が適切かどうか判断する
△「上司はもっと気を使うべきだ」
△ 「この状況でも苦痛を感じず、仕事をやりぬく」
・一回でうまくいくことはまずない。何度か試行錯誤しながら、少しづつ解決に近づける

8.4 問題が解決できないとき
・問題に取り組めるこころの状態ができているか?
・問題の設定は適切か?
・実行計画は適切か?
・評価ができているか?

9.対人関係を改善するモジュール

9.1 対人関係の法則
(Kieslerの対人円環)
力の関係:一方が支配的になると相手は服従的に、服従的になると相手は支配的になる
距離の関係:友好的に接すると相手も友好的に、敵対的に接すると相手も敵対的になる

9.2 アサーション・トレーニング
日常の対人関係場面での「上手な主張のしかた」を学ぶトレーニング
・具体的なストレス場面と会話の抽出
・攻撃的発言を作成
・受動的発言を作成
・二つを融合してアサーティブな発言を作成

9.2.1 アサーション・トレーニングの留意点
・相手の気持ちを深読みしない
・「話さなくてもわかる」ことはないと自覚する
・事前に声に出して練習する
・落ち着いて穏やかに話をするよう気をつける
・言いたいことを簡潔にまとめる

9.2.2 アサーションを阻害する自動思考の例
こんなことをいうと相手が気を悪くするにちがいない
こんなことをいうと嫌われる
相手の希望を叶えないと関係が終わってしまうだろう
相手のことが好きなら意見の相違はあってはいけない
話さなくてもわかってくれるべきだ
自分の意見を主張しないと相手にいいようにされてしまう
など
・このような自動思考の修正には思考記録表を使用してもよい

9.3 具体的なストレス場面と会話の抽出
任されている仕事の締め切りが近づいてきたときに、仕事の進みが遅いと一方的に上司に怒鳴られて、何も言えずに黙ってしまった。
・アサーションを阻害している自動思考をチェックする
(例)
「こんなことをいうと相手が気を悪くするにちがいない」
「こんなことをいうと嫌われるだろう」
「どうせ言ってもわかってもらえないだろう」
「相手の希望をかなえないと関係が終わってしまうだろう」
「相手のことが好きなら、意見の違があってはいけない」
「自分のことを思ってくれているのなら、話さなくてもわかってくれるべきだ」
「自分の意見を強く主張しないと、相手にいいようにされてしまう」

9.3.1 攻撃的発言を作成する
(自分のことだけを思いやった言い方を書き出す)
「そんなに怒鳴らなくても良いじゃないですか。下準備はできて、後はそれをまとめるだけなんですから、そんな言い方はないでしょう。そもそもいつまでにやらないといけないとはっきりおっしゃらなかったじゃないですか」と、強い調子で言う。

9.3.2 受動的発言を作成する
(極端に遠慮した弱々しい言い方)
「申し訳ありません」と弱々しく言って黙り込む。

9.3.3 二つを融合してアサーティブな発言を作成する
(相手のことも自分のことも思いやった言い方)
「仕事が遅れていて申し訳ありません。お怒りはわかりますが、下準備はできて後はまとめるだけですので、もう少しだけ待っていただけないでしょうか」と、穏やかに言う。

ーーーー



共通テーマ:日記・雑感

認知療法・認知行動療法2

② 治療の継続に影響しうる現実上の大きな問題(例:経済的な問題、身体的健康問題、被虐待など)
③ 治療や治療者に対する陰性感情

【治療を早く終結したいと希望された場合】
過去の研究から、16週間続けることで、より十分な効果が期待できること、一見症状が良くなっていても、改善を定着させ、再発を予防するために、最後まで続けることが大切である旨を患者さんに話して下さい。

1.3 治療全体の流れ

1.3 治療全体の流れ
ステージ 
 
セッション
 
目的 
 
アジェンダ 
 
使用ツール ・配布物 
 
1

 
1-2 

 
症例を理解する 
心理教育と動機付け 
認知療法へsocialization
症状・経過・発達歴などの問診うつ病,認知モデル,
治療構造の心理教育
うつ病とは 
認知行動療法とは 
 
2 


 
3-4 


 
症例の概念化 
治療目標の設定 
患者を活性化する 

 
治療目標(患者の期待)を話し合う 
治療目標についての話し合い 
活動スケジュール表など

 
問題リスト 
活動記録表 


 
3 

 
5-6 

 
気分・自動思考の同定 

 
3つのコラム 

 
コラム法 
~考えを切り替えましょう
4 


 
7-12


 
自動思考の検証 
(対人関係の解決)
(問題解決技法) 

 
コラム法 
(オプション:人間関係を改善する) 
(オプション:問題解決) 

 
バランス思考のコツ 
認知のかたよりとは 
人間関係モジュール
問題解決モジュール
5 
 
13-14 
 
スキーマの同定 
 
上記の継続 
スキーマについての話し合い
「心の法則」とは 
心の法則リスト
6 



 
15-16 



 
終結と再発予防 



 
治療のふりかえり 
再発予防 
ブースター・セッションの準備 
治療期間延長について決定する 

 
治療を終了するにあたって



 


1.4 セッションの流れ(30分以上)
0.開始15分前に来てベックうつ病スケール(BDI)・簡易抑うつ症状尺度(QIDS -J)に記入してもらう
1.チェックイン
2.ホームワークをふりかえる
3.アジェンダ(取り扱う議題)を設定する
4.アジェンダについて話し合う
5.ホームワークを決める
6.セッションをまとめ、フィードバックを求める
※始めは治療者主導 → 徐々に患者主導にしていってください

1.5 アジェンダ設定について
(agenda = 議題、課題)

・患者と協力して双方的に設定する
治療者が必要と思うこと
患者が話したいこと

・総合的な治療目標、治療の段階を踏まえる
患者の問題点を念頭におく
認知・行動スキルの習得度にあわせる

・優先する項目
自殺関連
治療妨害行動:ホームワーク不履行、遅刻、治療の停滞、治療者と不和
生活上致命的な問題(例:期限のある決定事項、失職、虐待、物質乱用など)

1.5.1 アジェンダ設定のポイント

・1回のセッションで取り組めること
・具体的で達成可能であること
「不安をなくす」ではなく
「不安をやわらげる行動スキルを練習する」
「どんな時に不安を感じるか検討する」など
「苦手な上司に馴れる」ではなく、
「苦手意識について考える」
「上司との上手な話し方を考える」など
具体的で達成可能なものにする

1.6 典型的な認知行動療法の技法リスト

○行動的技法
1. 活動記録表/スケジュール
2. “ポジティブに言い換える”法
3. 行動実験
4. 段階づけ
5. 注意そらし法
6. リラクセーション
7. 社会技能(ソーシャルスキル)訓練
8. アサーション・トレーニング
9. 有意義な時間の使い方習得
10. 運動
11. 飲酒、薬物、カフェインを減らす
12. 不眠への介入
13. 「他の人に聞いてみる」
14.読書療法

○認知的技法
1. 認知再構成
2. スキーマを同定する・修正する
3. 「認知の偏り」を教育する
4. 認知的(想像上の)リハーサル
5. 自己教示法
6. 思考停止法
7. コーピング・カード
8. 過去の経験から証拠を探す
9. ロールプレイ
10. 不安な出来事の結果を考える
11. 問題解決技法
12. 利点・欠点を考える
13. 理知的/情緒的ロールプレイ
14. 認知的連続表

2.第1ステージ(第1-2セッションに相当)

2.1 第1ステージの目標

目標
・治療関係を結ぶ
・うつ病、認知行動療法を理解してもらう
・治療構造になじんでもらう
   時間配分
   ホームワーク
・症例の概念化(患者を「理解する」)
   問題点を整理し、目標と方向性を明らかにする
・患者を活性化する
   活動量を増やす
   活動記録表を利用する

2.2 第1セッションのアジェンダ
・自己紹介 と 治療構造の説明
・病歴聴取と問題点の整理
・うつ病と認知行動療法の心理教育
・ホームワークを出す
   ①パンフレットを読む
   ②治療ノートを作る
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
・次回への橋渡し

2.3 自己紹介と治療構造の説明

「はじめまして。認知療法を担当する●●です」
「今日は初回ですので大きく2つのことをします」
「はじめに、○○さんが今どのようなことでお困りかをうかがって、
どんなお手伝いができるか考えていきたいと思います。」
「次に、うつ病や認知療法がどのようなものか、ご説明します。」
「治療は毎週1回30分以上、計16回(場合によってはそれ以上)行います。もっとたくさん話したいときもあるかもしれませんが、時間を上手に使って話すことも、うつ病を治す上で大切ですのでご理解下さい。」

2.4 病歴聴取と問題点の整理

「担当医から既に概略はうかがってはいますが、○○さんの現状について、もう一度簡単にお話いただけますか?」

2.4.1 病歴の聴取のポイント①

・まだ聴取されていなければ・・・
成育歴の概略(人となりがおおむね想像できる程度)
現在の生活概要(1週間の生活の様子を想像できる程度)
家族背景、うつ病に対する家族の理解度

・うつ病の経過
きっかけ、背景因子
うつ状態を維持させる原因になっている因子
うつ状態の結果として生じている、現在の問題
(参考)問題リスト・4つの領域図

2.4.2 病歴聴取のポイント②

「出来事 - 認知 - 気分・行動」
   の関連に重点をおいて話を聞く
   の関連を強調して患者にフィードバックする
・うつ病に特徴的な認知・行動を念頭において、改変できる可能性を示す
・症例を概念化する(見立てる)
   共通するテーマを探る (スキーマ仮説をたてる)
   最初に取り上げる課題を考える
   現実的で、取り組み可能な課題を選ぶ

2.4.3 参考)認知行動療法の導入のポイント
・発言に現れる悲観的な「自動思考」に注目する
・「思考」について検討することを提案する
・否定的な思考と気持ちの関係に気付かせる
・認知行動療法の説明を患者の体験に沿って行なう

2.4.4 問題点の整理のポイント
・問題点を整理し、患者にフィードバックする
「なるほど○○さんのつらい状況がよくわかりました」
「次のような問題があるように思います。まず第一に・・・、次に・・・、そして・・・。」
・取り組む問題の方向性を示す
「まず●●の問題を中心に話し合っていきましょう」
「その際には、○○さんの【出来事-認知-気分・行動】の関係に注目して、
うつ的な認知や行動が、問題の解決をはばんでいないか、見ていくことが
助けになると思います」

2.4.5 第1セッションで十分に聴取しきれなかった場合
・1回で十分に聴取・把握しきれなかった場合も、その時点までの理解をフィードバックし、解決の方向性を示唆する。次回も引き続き話を聞いていくことを伝える。
・第1セッションで後述の「うつ病・認知行動療法の心理教育」に至らない場合もある。その際は、資料のポイントについて簡単に触れ、第2セッションまでに、資料の「うつ病について」の部分を読んできてもらうことをホームワークとし、次回に詳しく説明することを伝える。

2.5 うつ病と認知行動療法の心理教育
患者向け資料を使用する
・うつ病について話題にし、患者の現状・現在の生活の各領域にうつ病の影響があらわれていることを理解してもらう。
・特に
うつ病の症状(特に、認知・行動面)
うつ病のスパイラル
うつ病に特徴的な考え方(否定的認知の3徴)
うつ的な行動パターン
を中心に、患者の現状とのすりあわせを行う。

2.5.1 うつ病の心理教育
「うつ病という病状について、どのように理解されていらっしゃいますか?(主治医からは、どのように聞いていらっしゃいますか?)」
「これから、うつ病について簡単に説明しますね」
「○○さんの現在の状況には、うつ病に特有の考え方や行動パターンがあらわれていて、つらい状況を生じている/さらにつらくさせているようですね」

2.5.2 認知行動療法の心理教育
「先ほどお話ししたように、うつ状態では、ものの見方や考え方、行動パターンがマイナスになりがちです。」
「これはうつ病のためで、あなた自身のせいではありません」
「しかし、うつ病を一日も早く改善するために、マイナスの考えや行動パターンを少しずつ変えていきましょう」

2.6.1 ホームワークの設定
「以上が、うつ病と認知療法の説明です。詳しい内容が資料に書いてありますので、次回までに読んでおいていただけますか?」
「これからの治療では、このように、治療と治療の間にも、少しだけホームワークをやっていただきたいのです。」
「ホームワークには、
・治療セッションの30分以外の時間も治療に生かせる
・日々に困ったことを一緒に話し合う助けになる
というメリットがあります。」

2.6.2 ホームワークの設定②
「毎回、面接の最後に、次の面接までの間にやってくることを決めます。ホームワークといいます。」
「これはとても大切で、面接で話し合うだけでは、治療は1週間に30分間しかできませんが、面接までにいろいろやってくるようにすると、その間も治療を受けているのに似た状態になって治療の効果が出やすくなります。」
「ホームワークは話し合って決めましょう。治療に役立つホームワークをお伝えしますが、無理強いはしませんので、できそうかどうか、やる気がするかどうか、遠慮なくおっしゃって下さい。」

2.6.3 ホームワークの設定③
「もう一つ、治療のためのノートを作っていただけますか?」
治療ノートには、セッションで話し合ったことをメモに残して見直せるようにしたり、日々の生活で困ったことを書き留めて、セッションで話し合える手助けにします。」
「①うつ病と認知行動療法のパンフレットを読むこと、②治療ノートを作ること、この2つを今回のホームワークにしたいと思います。」

2.7 セッションをまとめ、フィードバックを求める
「これで第1回目は終わりです。いろいろ話して、ご感想・ご気分はどうですか?」
「役に立ったこと、気づいたことはありますか?」
「わからないこと、納得いかないことはありますか?」
「他にうかがっておいたほうがいいことはありますか?」
「次回話し合いたいことがらはありますか?」
「これから先も、疑問な点は遠慮なく言って下さい」
「今日はいろいろお話していただいて、○○さんのことがよくわかって良かったです」

2.8 次回への橋渡し
「面接が始まる前に、うつ症状のアンケート(QIDS、BDI)をつけて下さい。」
「時間を有意義に使うために、面接の始めに、30分の間にどのようなことを話しあうかを、一緒に話し合って決めましょう。○○さんが特に話されたいことがあればその都度おっしゃって下さい。」
「わからないこと、腑に落ちないことがあれば、次回また教えてください」

<第2セッション>

2.9 第2セッション
・目的
治療関係を強化する
治療構造になじんでもらう
問題点の整理をする
認知療法へのsocialization
・注意
初回セッションと同様、患者さんの気持ちを“受け止め”、共感を伝えることが重要です。

2.10 第2セッションのアジェンダ
・チェックイン
大まかな状態のチェック(気分、生活上の変化)
アジェンダを設定する
・ホームワークのふりかえり
・アジェンダ:病歴聴取と問題点の整理
・ホームワークを出す
パンフレットを読む
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
・次回への橋渡し

2.11 チェックイン check-in ①
・簡単な現状の把握と、気分のチェックを行う。
「前回から今日まで全般的にいかがでしたか?」
「何か大きな変化はありましたか?」
・QIDS/BDIを確認し、変化があれば話題にする。
「前回と比べて、気分が楽に/つらくなっているようですが、どうしたのですか?」
(注)患者は偶発的な出来事に原因を帰着させがちだが、
できるだけ患者自身の行動や考えの変化に結びつける。
「自殺」「絶望感」が高ければ、アジェンダとすることを考える
・前セッションの感想を尋ねる
「前回は、うつ病と認知行動療法の話をしました。それについて、その後なにか思ったことはありますか?」

2.12 アジェンダを設定する
「今日は、ホームワークのふりかえりと、○○さんが今お困りのことについて、引き続きお話をうかがって、治療の方向性を考えていきたいと思います。」
「他に話題にしたいことはありますか?」

2.13 ホームワークをふりかえる
・「前回のホームワークは、パンフを読むことと、治療ノートを作ることでした。できましたか? 気づいた点や、ご質問はありますか?」
やっていれば、十分に褒めた後、感想を尋ねる
やっていなければ、やろうとしてみたかを尋ねる
やろうともしていなければ、その理由を明らかにする
やろうとしていたら、やろうと試みことを褒める。
しかし、やりきれなかった理由を話し合い、次にできるようにする
※絶対に責めてはいけない!
・ホームワークの重要さを再度説明する

2.14 アジェンダ:病歴聴取と問題点の整理
・第1セッションに引き続き、病歴聴取と問題点の整理を行う
・第1セッション参照

2.15 ホームワークを出す
・パンフレットをもう一度読む
・1週間の【出来事-認知-気分・行動】
または
・1週間の【活動記録表】
をつけ始めてもらう(患者の理解度に合わせて)
・患者の状況に合わせて、課題の難度を変える
例:書くことに乗り気でない患者は、出来事だけをメモしてきてもらってもよい
(それを次回に話し合う)

2.16 第2セッションのまとめ
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
2.7参照
・次回への橋渡し
2.8参照
11

3.第2ステージ(3~4セッションに相当)

3.1 第2ステージの目的とポイント
目標
・治療目標を設定する
・うつ病、認知行動療法を理解してもらう
・治療構造になじんでもらう
時間配分
ホームワーク
・症例の概念化(患者を「理解する」)
問題点を整理し、目標と方向性を明らかにする
・患者を活性化する
活動量を増やす
活動記録表を利用する

3.2 第2ステージのアジェンダ
・チェックイン
状態チェック、アジェンダ設定
・ホームワークのふりかえり
・アジェンダ:病歴聴取と問題点の整理、目標設定
・ホームワークを出す
活動記録表を記入する
目標設定について考える
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
・次回への橋渡し

3.3 治療目標を設定する
全般的目標と具体的目標にわけて考える
・全般的目標 (大まかな達成目標)
・具体的目標 (具体的に行う小さな目標)
実現可能で目に見える変化がある
測定が可能である

3.3.1 治療目標の例
全般的目標具体的な小目標
周囲の協力を得る 
 
・上司と仕事について話してみる 
・同僚に相談してみる
決められた仕事を片付ける 

 
・期限以内に報告書を上げる 
・午前中の1時間でメールをまとめてチェックする
コミュニケーションを図る 
 
・一緒に食事に行く 
・挨拶をする

3.3.2 目標設定のポイント

1.その目標は重要ですか?
将来につながるものですか?
2.自分でコントロールできる変化ですか?
他人が決めるもの(昇進や配置転換、相手が暴力をなくすなど)ではない
3.具体的で現実的ですか?
達成困難な目標(”不安を二度と感じない”等)ではない

3.4 治療の方向づけ
A) 認知面への介入が必要な場合
→ 第3ステージ(コラム法)へ進む
B) 現実的な問題解決が必要な場合
→ 「問題解決」や「対人関係を改善する」モジュールを利用しながら治療を進める
・認知再構成(コラム法)と問題解決・対人関係の解決はどちらか一方を使うものではなく、患者の現状と治療目標に応じて相補的に用いる。

3.5 ホームワークの設定
・活動記録表を(継続して)記入する
・目標設定について考える
・1週間の【出来事-認知-気分・行動】をつけ始めてもらってもよい

3.6 第2ステージのまとめ
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
2.7参照
・次回への橋渡し
2.8参照

4.第3ステージ(第5~6セッションに相当)

4.1 第3ステージの目的とポイント
・目的
出来事-自動思考-気分・行動の把握
・ポイント
3つのコラムが使いこなせるようになる
初めは治療者が記載→徐々に患者自身で

4.2 第3ステージのアジェンダ
・チェックイン
・アジェンダを設定する
・アジェンダ:3つのコラム
・ホームワークを出す
3つのコラム
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
・次回への橋渡し

4.3 3つのコラムの書き方
・気分を同定する
気分リストを示してもよい
程度を%づけする : %づけする重要性を説明する
「これ以上ないくらい強いのを100%、全くないのを0%とします。感覚的なものなので大体で結構です」
「気分の変化に気づくために、強さをはかることが大切」
気分と思考を分ける (気分は一語、思考は文章)
・思考を同定する
気分を十分に説明する思考が出ているか
自分が同じ状況ならどんなことを考えるか

4.3.1 自動思考を明らかにする
・思考やイメージ・記憶
どのような思考やイメージが浮かんでいたか
・誘導による発見 guided discovery
そのときの状況に沿って、患者自身が気づけるような形で質問しながら、自動思考を明らかにしていく
・確信度の評価
自動思考それぞれについて、それをどのくらい信じているか、確信度を0~100%で評価する
・ホットな自動思考
気持ちが動揺したり、反応して激しい行動をとったりしたときは、「ホットな」自動思考が起こっていることが多い

4.3.2 自動思考を見つける聞き方の例
「その時どんなことが頭に浮かびましたか?」
「どのようなイメージや記憶が浮かんでいましたか?」
「こんなことが起こるのでは、と恐れていることはありませんか?」
「もしそれが実際に起こったとして最悪のことはなんでしょう?」

4.3.3 なかなか自動思考が出ない時は
・患者があまり自動思考を意識できていない場合には、自己、他者、世界に焦点をあてて質問する
自己
「そのときに、自分についてどういうことを考えましたか?」
他者
「相手についてどのようなことを考えましたか?」
「ほかの人があなたについてどのように考えていると思いましたか?」
世界
「そのことについて、世の中の人はどのように考えていると思いますか?」
「そのことに関係するあなたの“信条(こだわり)”のようなものはありますか?」
4.3.4 3つのコラムのトラブル・シューティング
「つらい状況を考えたら余計につらくなりました」
→ どんなことを考えてつらくなったのですか?
→ つらい考えに対して、バランスよく前向きに考える作業をこれからやりますから大丈夫です。「認知のかたより」を眺めながら、頭の中で考えたほど現実はひどくないことを思い出してください。
「自分のマイナス思考ぶりにつらくなりました」
→マイナス思考は、うつ病の特徴で、誰でもマイナス思考になるのです。○○さんも、元気な時は今ほどマイナス思考ではないでしょう?

4.3.5 3つのコラムのポイント
状況 




 
不快な感情を伴う出来事 
※できるだけ具体的に(情景がありありとうかぶくらい) 
※特定の時間(one slice of time) 
※5W1H(誰と、なにを、いつ、どこで、なぜ、どのように)
気分 

 
不安、悲しみ、落胆、怒りなど (強さ0~100%) 
※一語で表せることが多い
自動思考 






 
そのときに頭に浮かんだ考えやイメージ (確信度0~100%) 
※疑問形は言い切りの形にかえて書くこと 
(例:×どうして自分ばかり仕事を押し付けられるのか? 
⇒ ○自分ばかりが仕事をおしつけられる) 
※最も心を強く動かした考え(ホットな思考)に◎をつける

4.4 第3ステージのまとめとホームワーク
・ホームワークを設定する
3つのコラムを書いてきてもらう
・セッションをまとめ、フィードバックを求める
2.7参照
・次回への橋渡し
2.8参照




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認知療法・認知行動療法1

1.総論 
1.1認知療法・認知行動療法とは
  ○歴史的背景 
    認知療法・認知行動療法とは、人間の気分や行動が認知のあり方(ものの考え方や受け取り方)の影響を受けることから認知の偏りを修正し、問題解決を手助けすることによって精神疾患を治療することを目的とした構造化された精神療法です。

(構造化されているから効果を検証できるし、効果を比較できるわけですね。構造化というのは、簡単に言えば、「どんなときには、どうする、次には何をする」というような手順が決まっているということですね。治療者によって大きく違わない。
治療アルゴリズムとして認知行動療法の内部でも構造化されていますし、さらに、たとえば初回治療のうつ病の人に対して、
評価、薬剤、精神療法のアルゴリズムが検討されていて、そのなかに認知行動療法は組み込まれているわけです。
だからこそ、薬剤との効果比較検定も可能になっています。)

    精神科の治療方法としての認知療法・認知行動療法は、1970年代に米国のAaron T Beckがうつ病に対する精神療法として開発したものです。その後、認知療法・認知行動療法は、うつ病はもちろんのこと、不安障害やストレス関連障害、パーソナリティ障害、摂食障害(神経性大食症)、統合失調症などの精神疾患に対する治療効果と再発予防効果を裏づける優秀なエビデンスが多く報告されてきたことから、欧米を中心に世界的に広く使用されるようになりました。また、精神疾患以外でも、日常のストレス対処、夫婦問題、司法や教育場面の問題、などその適用範囲は広がりを見せています。 
      わが国では、とくに1980年代後半から注目されるようになってきました。それとともに、わが国での治療効果の検証も進み、厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業)「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」を初めとした研究でその効果のエビデンスが積み重ねられてきています。 

  ○認知療法・認知行動療法の理論 
    認知療法・認知行動療法は、近年発達してきた情報処理モデルないしは認知モデルを基盤にした治療法です。つまり、私たちは、自分が置かれている状況を絶えず主観的に判断し続けているのですが、通常は半ば自動的にそして適応的に行われています。しかし、強いストレスを受けるなど特別な状況下ではその判断に偏りが生じ、非適応的な反応を示すようになってきます。その結果、抑うつ感や不安感が強まり、非適応的な行動が引き起こされ、さらに認知の歪みが強くなるという悪循環が生じることになります。 

(自動的にというのは、たとえば自転車に乗るときのように、何も考えなくても、すいすいと、という感じ。
最初に自転車に乗るときはすいすいどころではないですね。でもだんだんすいすい乗れるようになります。
しかしその自動化した乗り方が不具合なものであったら訂正した方がいいわけです。
身についてしまった自転車の乗り方の癖を訂正するのは簡単ではないですね。
それで、いろんな作戦を考えているわけです。)

  ○認知療法・認知行動療法の実践 
    認知療法・認知行動療法では、「自動思考」と呼ばれる、様々な状況でその時々に自動的に沸き起こってくる思考やイメージに焦点を当てて治療を進めていきます。治療は対面式の面接が中心で、一回の面接時間は30分以上です。面接は、原則として16-20回行いますが、患者さんの状態にあわせて延長することを検討することもあります。また、場合によっては、フォロ-アップ面接を行うこともあります。 

      認知療法・認知行動療法ではまた、ホームワーク(宿題)といって、面接で話し合ったことを実生活で検証しつつ認知の修正を図ることが必須の課題となります。つまり、観念的な議論ではなく、あくまでも現実に目を向けた検証を基本とする点に特徴があり、日常生活が治療の場となるのです。 

      治療の流れは、①患者を一人の人間として理解し、患者が直面している問題点を洗い出して治療方針を立てる、②自動思考に焦点をあて認知の歪みを修正する、③より心の奥底にあるスキーマに焦点を当てる、④治療終結、となります。そこで用いる具体的な技法など、その詳細については後述します。 

    精神療法では良好な治療関係が重要ですが、認知療法ではとくに、患者を暖かく受け入れると同時に、患者の考えや思いこみを治療者と患者が一緒になって「科学者」のように検証していく協同的経験主義(collaborative empiricism)と呼ばれる関係の重要性が強調されます。そのときに治療者は、患者さんの主体性を尊重し、患者さんが自分の意見を表現しやすい雰囲気を作り出しながら、患者さんが自分で答えを見つけだしていけるような「ソクラテス的問答」と呼ばれる関わり方をすることが大切です。 

1.2 マニュアルの使用に当たっての注意 
  認知療法・認知行動療法は、原則としてマニュアルに準じて治療を進めますが、記載されたセッション番号は目安であり、患者さんの理解度と治療関係の維持を重視します。 

  【治療における優先事項】 
  下記のテーマが話題にあがった場合は、マニュアルの進行度によらず、優先して話しあうことを検討してください。 
① 自殺・自傷に関連する問題 → 可能性を評価してください 



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