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「健康増進プログラム」で社員の医療費を抑える米国企業

「健康増進プログラム」で社員の医療費を抑える
医療保険制度改革で医療費負担を増やしたくない米国企業
BusinessWeek 【プロフィール】
健康・医療 医療費 企業負担 米国 社会 IT・通信 医療保険制度改革
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Rachael King (Bloomberg Businessweek記者、サンフランシスコ)
米国時間2010年5月3日更新 「Slimming Down Employees to Cut Costs」

 米マサチューセッツ州立大学メモリアル医療センターの人事担当責任者ジョイス・ボイズ氏は、常々やせたいと思っていた。彼女は、勤務先の同医療センターが従業員に健康対策を促す取り組みを始めたのを機に、真剣に減量に取り組む決意をした。

 ボイズ氏はこの決意から1年で、50ポンド(約23キログラム)の減量に成功。雇用主が提供する従業員向け健康増進プログラムの効果を示す模範例となった。

 ボイズ氏は米シェイプ・アップ・ザ・ネーションが運営するオンライン交流サイトに登録し、歩数計をつけて自分の運動量を記録し始めた。この交流サイトからは、日常的な運動や正しい食生活を促す電子メールが送られてくる。会社の同僚はサイト上の記録を見て、同氏がきちんと自身の目標を達成しているかどうかを確認した。

 「このプログラムが努力のきっかけになった」と話すボイズ氏は、その後も健康的な生活習慣を保っている。減量の成果により、ボイズ氏の主治医は、高コレステロール血症治療薬「リピトール」の処方量を減らし始めたという。

 米マサチューセッツ州ウスター市でも指折りの、多くの従業員を抱えるマサチューセッツ州立大学メモリアル医療センターは、従業員医療費の支出削減を目指している。

 米国各州や連邦の医療保険制度改革に伴い、雇用主はより多くの従業員に医療保険を提供する必要に迫られており、雇用主の医療保険負担は増加している。また米国の国民医療費は、処方薬の使用量増加や生活習慣病の蔓延、高齢化により、急増している。米民間調査機関の全米産業審議会(コンファレンスボード、CB)が2008年に発表した調査によれば、肥満問題だけでも、米企業は年間450億ドル(約4兆円)もの負担を強いられている。

 そのため、米半導体大手インテル(INTC)や米宅配ピザ大手パパ・ジョンズ・インターナショナル(PZZA)、米アウトドア衣料・靴大手ティンバーランド(TBL)、米肥料・園芸用品大手スコッツ・ミラクルグロー(SMG)、米製紙・梱包材製造大手インターナショナル・ペーパー(IP)などの企業は、従業員が健康対策用ウェブサイトに登録し、栄養管理や健康管理に関する情報を入手できる健康増進プログラムを提供している(Bloomberg Businessweekの記事を参照:2007年2月26日「Get Healthy-Or Else」)。企業は従業員の健康調査や運動習慣の把握にも努めており、従業員に歩数計を支給し、従業員の歩数まで把握している企業もある。

 こうした取り組みを行う企業の目的は、いずれも従業員の健康増進を図り、医療費負担を抑制することにある(Bloomberg Businessweekの記事を参照:2010年3月3日「Workplace Wellness Programs Work」)。

 米製紙・梱包材製造大手ミードウェストバコ(MWV)のジョディ・フラー国際福利厚生課長は、「一握りの不健康な人が全体のコストを上昇させている。福利厚生の責任者として、こうした負担を何とか減らす方法を模索している」と語る。

医療保険制度改革で企業の医療費負担は増加?

 こうした中、IT(情報技術)を活用して医療費削減に取り組む企業が増えている。企業はシェイプ・アップ・ザ・ネーションのサービスだけでなく、英ヴァージン・グループ傘下のヴァージン・ヘルスマイルズや、米ライムエード、米レッドブリック・ヘルスなどのオンラインサービスも活用している。こうしたオンラインサービスは、健康・生活管理上の目標を達成した人に褒賞金の授与や医療保険料の割引など、様々なメリットを提供して従業員の参加意欲を高め、健康増進に取り組む従業員を増やすのに貢献している。

 大企業が主な会員の米非営利団体ナショナル・ビジネス・グループ・オン・ヘルス(NBGH)と米コンサルティング大手タワーズワトソン(TW)が2月に発表した調査によると、米企業の医療費支出は2008年の平均プラス6%に続き、2009年も平均プラス7%と、増加が続いているという。

 多くの企業は、米議会が最近「患者保護・医療費負担適正化法(医療保険制度改革法)」を成立させたため、医療費負担は今後さらに増えると見ている。3月に同法が成立した後、米農機大手ディア(ジョンディア、DE)は、2010年の同社の医療費支出は1億5000万ドル(約130億円)増加するとの見通しを示した。

 従業員の健康増進に徹底的に取り組んでいる企業もある。米インターネット検索大手グーグル(GOOG)は従業員がヨガや太極拳、ダンスに取り組めるフィットネス講座を開設。さらに、はだしで走る同好会をはじめとするフィットネス同好会があり、バレーボールからアルティメット・フリスビー(フリスビーを奪い合う、球技のような競技)まで様々なスポーツ活動が行われている。

 米カリフォルニア州マウンテンビューのグーグル本社には、カイロプラクティックやフィジカルセラピーの専門家が常駐し、健康指南の講座や瞑想部屋なども用意している。16の社内食堂では、健康度に応じて食べ物を色分けしている。緑は健康的な食べ物、黄色は摂取量に注意すべき食べ物、赤はあまり健康的でない食べ物だ。

 従業員の健康増進に急に力を入れ始めた企業も増えている。ミードウェストバコで福利厚生を統括するフラー氏は、同社の米国内従業員1万2000人のうち、約35%が心臓病や高血圧、高コレステロール、糖尿病などの慢性病を患っていることを知り、肥満対策に積極的に取り組み始めた。

 2008年、ミードウェストバコはヴァージン・ヘルスマイルズのサービスを使った肥満対策プログラムを開始。支給されたUSBポート付きの歩数計を従業員がパソコンにつなげば、データをヴァージン・ヘルスマイルズのウェブサイトにアップロードできる。そして、従業員は運動量に応じて、最高で年間500ドル(約4万4000円)の特別ボーナスを受け取れる。

通常の健康対策プログラムに参加する従業員は少なめ

 米女性下着大手メイデンフォーム・ブランズ(MFB)やパパ・ジョンズ、ティンバーランドも昨年、ヴァージン・ヘルスマイルズのサービスを利用する健康増進プログラムを開始した。

 ヴァージン・ヘルスマイルズのショーン・フォーブス社長は、「従業員への褒賞金額が多ければ多いほど、従業員の健康管理は改善される」と指摘する。フォーブス社長は、同社が提供するサービスには契約企業の従業員の約40%が参加していると話す。

 フォーブス社長によれば、通常、従業員向け健康増進プログラムの参加率は低く、約5~7%にとどまる場合が多いという。

 NBGHのルアン・ヘイネン副代表幹事は、従業員は健康増進プログラムに参加すると、自分たちの生活習慣を改める必要があるため、こうしたプログラムへの参加には消極的になると指摘する。「参加者の少なさは、こうしたプログラムにつきまとう問題だ」(ヘイネン副代表幹事)。

 2006年、インテルは従業員向け健康増進プログラムを強化し、「ヘルス・フォー・ライフ」と名づけたプログラムを創設。従業員の体重や血圧を測定し、血液検査も実施している。従業員はセキュリティーを確保したウェブサイト上で、健康に関するアンケートに回答。同社はアンケートの回答内容と健康診断の結果を総合して健康上のリスクを分析し、従業員に適切な指導を行い、各自に応じた健康改善プランを提案する。

 インテルの国際医療福利厚生担当主任コリー・ゼンゾーラ氏によれば、この4年でプログラムへの参加者は7%から約39%に増加したという。同社は2011年、このプログラムに参加している従業員の医療保険料の本人負担を250ドル(約2万2000円)軽減する予定だ。

 その他の企業の健康増進プログラムでも、医療保険料の軽減や医療貯蓄口座(HSA)の積み立て増額といったメリットを提供して、従業員の参加意欲を促している。米保険大手コンセコ(CNO)やインターナショナル・ペーパー、スコッツ・ミラクルグローなどの企業は、レッドブリック・ヘルスのオンラインサービスを利用し、従業員の健康状態の分析や個別アドバイス、交流サイト機能を活用した指導などのサービスを提供している。

一部従業員への差別につながる懸念も

 定期的な健康診断は、ガンなどの病気の早期発見や患者生存率の向上、雇用主の医療費負担削減に有効だ。米医療保険サービス会社シーチェンジ・ヘルスによれば、前立腺ガンの患者1人当たりの年間平均医療費負担は、早期発見の場合は2万2430ドル(約200万円)だが、末期状態で発見された場合は9万1268ドル(約810万円)に増加するという。

 とはいえ、雇用主が従業員の健康対策に力を入れるのに伴い、肥満者や喫煙者が冷遇される懸念も生じている。

 1月、米オーガニック・自然食品スーパー、ホール・フーズ・マーケット(WFMI)は、タバコやその他のニコチン製品を摂取せず、血圧も一定水準以下の従業員に対し、社員販売で大幅な割引を受けられる特典を与えると発表した。同社のジョン・マッケイCEO(最高経営責任者)は1月に従業員に宛てた文書で、このプログラムへの参加は任意で、こうしたプログラムへの参加・不参加によって人事考査に影響が出ることはないと述べた。

 この発表は波紋を呼び、多くのブログで、あまり健康的でない従業員に対する差別だとの批判が巻き起こった。ホール・フーズの広報担当リバ・レットン氏は、このプログラムへの「誤解」が広がっており、同プログラムではBMI(肥満度指数)やコレステロール値、血圧をはじめとする様々な基準で健康を評価していると述べた。

 ITを使った健康増進プログラムではオンラインで健康診断サービスを提供する場合が多く、従業員の健康改善の効果は限られる。

 タワーズワトソンの医療コンサルタント、ジェフリー・ドブロ医師は、「IT活用が運動・エクササイズや、より良い食生活などの生活習慣の改善につながるかどうかは未知数だ」と語る。同医師は、今まで健康増進プログラムを全く取り入れてこなかった企業の場合は特にそうだが、健康増進プログラムに力を入れても、プラス効果が出るまでには約2~3年かかると指摘する。

 マサチューセッツ州立大学メモリアル医療センターのボイズ氏は、健康対策には本人の自覚が欠かせないと語る。「様々なプログラムに参加することはできても、結局は本人が努力しなければ意味がない」。

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大変な時代です





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暖かき春の河原の石しきて背中あはせに君と語りぬ

暖かき春の河原の石しきて背中あはせに君と語りぬ
馬場あき子

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いい景色だね

そうだねえ
何を語るんだろう

そうだねえ
内的対象関係と精神分析とか

そうだねえ
それでだめだったことがあったんだっけ?

そうだねえ
眠っちゃったんだ、あの時は

いい景色だねえ

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睡眠と躁うつの気分

睡眠と躁うつの気分は大いに関係があることが昔から分かっている

原因か結果かについてはよく分かっていない

生活上のショックなことがあって不眠になる例は多い
失恋で眠れない

また嬉しいことがあっても眠れなくなる
何かに合格して嬉しくて眠れない

二つの例とは逆に
何かの都合で断眠すると次の日の朝から少しハイになったりする
たとば当直あけのお医者さん

昔から断眠療法はあり、睡眠を短くする、あるいは徹夜すると、次の日はやや気分が持ち上がる
しかしずっと断眠出来るわけではないのでリバウンドのようにしてたくさん眠り
それとともにうつ気分になることが分かっている
リチウムを飲んで半分だけ寝る方法がある
しかし一人では難しいだろう

ある程度集団の設定があれば実行しやすい
寮とか入院とかそんな環境ならば設定できる

家族がコントロールするのは実際は困難で親子げんかになる

ラピッドサイクラーでは
うつに変化する直前のあたりに過眠傾向が、躁に変化する直前あたりに睡眠短縮が見られることがあり
前触れと見る見解もあるが
過眠そのものがうつを引き起こすのではないかとの見解もある
そうだとすれば
睡眠リズムを整えることが躁うつの波の予防になる

規則正しい睡眠と食事が本人にとって実際の利得があり
そのうえで躁うつの予防にもなっているようならば大変良い設定になる




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社会リズム療法(Social Rhythm Therapy)

社会リズム療法(Social Rhythm Therapy)をいかに洗練させてゆくか考えている

初歩的にはもちろん
睡眠と覚醒のリズム
食事と排泄のリズム
交感神経と副交感神経のリズム
緊張とリラックスのリズム
月経リズム
を眼目として
社会リズム記録(Social Rhythm Metic)を記録する

一日のうちで最初に人と会った時間、挨拶した時間、話をした時間なども書く
これは対人交流のリズムということになる

リズムを記録してゆくことは
リズムを正すことが目標なのだけれど
ではどうなったら正しいリズムであるのかは
人によって違うので一律には言えないところがある

簡単にいえばNHK的で小学生的な生活が健康なのだけれど
それぞれに事情というものもある

ーーー
概日リズム(サーカディアンリズム)が基本となるが
女性の場合のように月単位のリズムもあり
季節のリズムもある

学生なら試験にあわせたり
会社ならば決算にあわせたり
農業の人は農作物に合わせてのリズムがある
いろいろなリズムが発生する

そうしたリズムの複合体としての生体がある

周期の異なる正弦波を重ねあわせて、なお、大きな不整合が発生しないように
調整すること

抽象的に言えばそのようなことが治療の目標となる

ーーー
リズムは主にmanic cellが刻んでいるのだと思う
強迫性細胞は常に一定であるし
うつ細胞はすぐに活動を停止する

だいたい12時間で疲れて12時間で回復するマニーセルがサーカディアンリズムの主体になる

それぞれのマニックセルによってダウンまでの周期が異なる
だから複雑なリズムになる

かなり複雑なリズムならば一気に休止ということはなくなるのであるが
全体の整合性が高まると
つまり集中力が高まると
一気にダウンする確率も高くなる

ーーー
都会で働いている優秀な人達はだいたいが中学時代なんかは秀才で通した人だと思う
よく調べてみると体質としては躁鬱気質のところがあって
躁状態に近い時に勉強がとても良くはかどったはずだ

そうした人たちは
どちらかと言えば細胞の同調性が高いのでうつになる確率が高くなるわけだ

過度の同調性を和らげることはとてもいいことだと思う

波はより複雑なブレンドになるはずである

ーーー
そのように、人間の体に埋め込まれているいくつものリズムを想定しながら
それぞれを整えつつ治療をすすめる

太陽に当たることは大切な項目であり
出来れば午前中に散歩に出て陽の光を浴びてくださいとお願いしている

ーーー
メラトニンリズムも大切で
その点ではメラトニン系の薬を使うこともある

ーーー
血圧、血糖、脈拍、体温など簡単に一日のリズムを測定出来るものもある

女性は妊娠して出産準備に入ると何だか一段強くなる
そのひとつの要因は
産科に通って血圧、血糖、脈拍、体温などを指標として社会リズムを是正しているからではないかと考えている

母子手帳に書いてあるような細々としたことが役に立つ
うつ手帳も躁うつ手帳もそのようなものでありたい

ーーー
不眠症は最も端的にリズム障害を表現している

眠れたらいい時に、なぜか眠れない
眠ってはいけないときに、なぜか眠くなってしまう

ーーー
血縁のお年寄りの生活を見れば参考になると思う
何を食べているか
どのような生活習慣があるか
どのようなリズムで生きているか
血縁者は自分に類似のDNAを持って生きているのであるから
自分の場合にどのように生きたらうまくいくものなのか考える場合の参考になる

ーーー
異なる周期の波を重ね合わせて精妙に一定性を保つのが人体である
それを手助けするのが(私の言う)「社会リズム療法」である

複数の周期と振幅の異なる波の重ね合せの結果が生体であり
その最終的なリズムが成果とし人生に支障を来さないように
それぞれの波の成分を調整する

薬剤としては
リチウム、
バルプロ酸などてんかん系の薬
SSRIやSNRIなどのセロトニン、ノルアドレナリンの薬
ドパミン系の薬
などを調整するのであるが
調整の際にも生体内でのリズムを念頭において適切に調整する












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冷え症の診かたと方剤の選び方

冷え症の診かたと方剤の選び方
 冷え症は西洋医学にはない概念ですが、漢方では立派な疾患として考えられています。

 街を歩いていると、英語教室から講師らしき白人の方が、冬だというのに半袖で出てくるのを見かけることがあります。そうした姿を見ると、西洋医学に冷え症が存在しないのも無理はないと、妙に納得させられます。

 冷え症には、

(1)手足など末梢が冷えるタイプ(年齢に関係なく女性に多い)、

(2)胃腸の働きの低下を伴い、全身が冷えるタイプ(やせ型で小食の人に多い)、

(3)末梢のうち特に下肢が冷えるタイプ(高齢者に多く、やや男性が多い)、

(4)むくみを伴って冷えるタイプ(若い女性に多く、ぽっちゃりした色白の人に多い)

などがあります。冷え症で来院される患者さんの多くはこの4タイプに分類されますので、以下にその代表的な症例を示します。いずれも検査値などの西洋医学的な所見には問題がない症例で、漢方的所見のみを示します。

【症例1 手足だけ冷える】
 患者さんは28歳の女性です。○年1月、手足の冷えを主訴に来院しました。子供のころから、冬になると手にしもやけができる体質だったため、職場でも、エアコンによる冷え過ぎから身を守るため、服装やひざかけ毛布などを使っていました。

 ここ数年、冷えの自覚が徐々にひどくなり、特にこの年の冬には入浴の際、風呂場の床タイルの冷たさで足の裏が痛くなり、入浴に支障を来すようになったため、当科に来院しました。

 手足の冷え以外に、月経不順と排卵時の下腹部痛を自覚していますが、食事、便通、睡眠や、家庭・職場での人間関係には問題ありません。

 身体所見では、身長 158cm、体重 46kgの色白で中肉中背の方です。脈は弱く触れ、腹診ではお腹は軟らかい印象です(虚証)。全体的に皮膚の冷たさは感じませんでした(脾の寒証なし)が、手足を触れると氷のように冷たく感じます(寒証)。舌診では舌の辺縁に歯型(歯痕)を認めず、舌に浮腫(水毒)を認めませんでした。

 以上から、冷えのパターンとしては、四肢末端型の冷え症(寒証)と診断しました。そのため、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう:ツムラTJ-38)の適応と考え、この方剤を日量3パック(分3)で処方しました。

 この方剤は昔からしもやけの薬として使われてきたもので、特に手足の冷えの強い患者さんによく用いられます。長い名前で少し苦い方剤ですが、手足の冷えの強い患者さんに試してください。

 この患者さんの臨床経過ですが、治療開始2週間後の再診時には、なんとなく手足が暖かくなったということでしたので、さらに4週間継続しました。3回目の受診時には、お風呂場の床の冷たさが気にならなくなったと喜んでいたため、さらに6週間継続しました。

 4回目の受診時には、「今まで行くのが嫌だったスーパーの冷凍食品売り場に行ってもつらくないし、排卵時の下腹部痛もなくなりました」とのこと。思いがけない効果に患者さんと2人で喜び合いました。

 漢方をやっていてうれしく思うのは、このように患者さんが元気になって診察室を卒業していくことです。

【症例2 胃腸が弱く全身が冷える】
 患者さんは56歳の女性です。全身の冷えを主訴に、○年12月に来院しました。もともと小食で冷え症もあり、無理をして体調を崩すと下痢をしやすい体質だったようです。1カ月前ころから近所付き合いのいざこざがあって、ストレスがたまるようになり、ストレス解消に甘いものを食べ過ぎて体調を崩していました。1週間前から、電気毛布を使っても寒くて眠れなくなったため、当科を受診しました。主婦で夫と二人暮らしですが、特に持病はありません。

 身体所見は身長 152cm、体重 44kgとやせ型で皮下脂肪が少ない印象です(虚証)。体温は36.2℃とやや低体温。血圧は98/74 mmHgとやや低血圧気味。舌は白い苔があり(胃腸虚弱、脾虚)、歯痕を認めました(舌の浮腫、水毒)。腹診では特に下腹部の皮膚に触れると冷たく感じ(胃腸機能低下:恐らく胃下垂があるので、胃のあたりが冷えて機能が低下している、脾虚)、軽くお腹を叩くとチャポチャポと音がする(浸水音:胃の中に水分があるため、軽く腹壁を叩くと水が跳ねる音がする。水毒)。

 以上より、胃腸機能低下による冷え症と診断し、人参湯(にんじんとう、ツムラTJ-32)日量3パック(分3)を処方しました。

 人参湯は胃腸の働きの弱い、虚弱な人に用いる方剤です。「病気の親に飲ませるため、娘を売る」という話が付いてまわるほど、古くから高価でよく効く薬として珍重されてきました。

 摂取カロリーの約7割は基礎代謝として消費されますが、その熱量のほとんどは体温維持に用いられます。エネルギー源は食物として消化管から摂取されますので、胃腸の働きが悪いと、体温を維持するためのエネルギー源を十分に摂取・吸収できません。そのため、胃腸機能が低下している人は冷え症になりやすいと考えられます。

 胃腸機能の低下によって冷え症になっている人に人参湯を処方することで胃腸の働きを高め、エネルギー源としての食物をより多く体内に取り入れることことができます。それによって、体温を上昇させることが期待できます。

 漢方の考え方では、薬の処方だけでは十分な治療をしたとはいえません。食生活を含めた生活指導(養生)が必要です。漢方では、甘いものは胃腸を冷やすことで胃腸の機能を低下させ(脾虚)、消化管の水吸収能を低下させる(水毒)と考えられています。そのため、今回の症状出現の原因となったと思われる甘いものを食べることを禁止しました。

 臨床経過です。治療開始2週間後には、食欲が元に戻りました。しかし冷えはまだあり、電気毛布をかけても寒いと感じるほどひどい状態は改善しましたが、まだ電気毛布は使っているとのこと。治療の方向性は間違ってはいませんが、何かが足りないと考え、再度入念に診察してみました。

 その結果、舌の白い苔は消失していました(脾虚改善)が、若干歯痕が残っており(水毒)、腹診でも浸水音(水毒)が残っていました。そこで、水代謝を活発にし、新陳代謝を高めて冷えを改善させる真武湯(しんぶとう、ツムラTJ-30)を追加しました。

 体に余分な水分がある(水毒)と、いくら体が熱を産生して体温を上昇させようとしても、なかなか体温が上がりません。自動車エンジンが水でエンジンの過熱を防いでいるようなものです。そのため、冷えの患者さんの場合は余分な水分を排除しなければなりません。

 また、せっかく胃腸の働きを良くしてエネルギー源が吸収されるようになっても、細胞レベルで代謝が低下していては、熱は生まれません。そこで、細胞レベルでの新陳代謝を高めるためにも真武湯の追加が必要でした。

 このように2種類のエキス剤を同時に処方する場合、生薬の重複や同一生薬の量が過剰になる恐れがあるため、1日投与量を少なくし、日量として、人参湯2パックと真武湯2パックを分2で処方します。

 2週間後、3回目の来院時には症状は良くなったようで、診察上も体の余分な水分(水毒)が改善していました。さらに4週間分を同様に処方し、その後、4回目の診察を行ったところ、調子が良いので薬を飲み忘れることがあるということでしたので、患者さんと相談の上、終診としました。

 慢性疾患の場合、治療をやめるタイミングが難しいのですが、調子が良くなると患者さんは薬を飲み忘れるようになります。漢方の場合は、症状がなければ、患者さんの判断で徐々に薬の量や服薬の間隔を延ばしてもらい、最終的に中止するようにしています。

【症例3 高齢男性の冷え】
 患者さんは68歳の男性です。足の冷えを主訴に、○年2月に来院しました。特に既往歴はなく、2カ月前ころから、足が冷たくて困る、特に夜寝る時、靴下を2枚履き、さらに足元に湯たんぽを入れているが、全く足が温まらないので寝付けないと訴えています。足の冷え以外は全く問題ないとのこと。診察所見も、腹部診察で下腹部を指で押したときの抵抗感が減少している(小腹不仁)以外に特に問題ありませんでした。身長 172cm、体重 68kgと中肉中背です。

 この患者さんでは、加齢に伴う様々なホルモン作用の低下によって熱産生の低下や末梢循環不全が生じ、それによって足の冷えが生じている(腎虚)と考えました。その根拠は、男性高年齢者であることと、下腹部の筋力低下(小腹不仁)です。下腹部筋力低下は、男性ホルモンや成長ホルモンなどの低下による、骨盤周囲のインナーマッスルの筋萎縮と筋力低下が原因と考えられます。西洋医学的に考えれば、ホルモン補充療法を行うという発想になりますが、高価な上、前立腺癌リスク上昇などの心配もあります。

 そこで、このような患者さんによく処方する八味地黄丸(はちみじおうがん、ツムラTJ-7)を日量3パック(分3)で処方しました。八味地黄丸には山薬が構成生薬として入っていますが、山薬には男性ホルモン様活性のある物質が含まれていますので、漢方によるホルモン補充療法といった感じになります。

 臨床経過ですが、治療開始2週間後には、足が少し温かく感じるようになったとのこと。さらに4週間処方したところ、湯たんぽを使わなくて済むようになりました。さらに4週間処方したところ、靴下を履かなくても眠ることができ、掛け布団から足を出しても寝られるようになったとのこと。ただし、既に5月になっていたので気候の影響もあったかもしれません。その後、この患者さんは来院していませんので経過は分かりませんが、きっと元気なことでしょう。

 もしこの患者さんに足のしびれがあった場合は、八味地黄丸の類似処方である牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)を処方していたでしょう。また、むくみがあったり活気がない印象がある場合は、水代謝を改善して新陳代謝を高めるため、真武湯を追加して、八味地黄丸+真武湯または牛車腎気丸+真武湯を処方します。
なお、八味地黄丸を処方していて経過中に胃腸障害が出現したときは、八味地黄丸の構成生薬である地黄の副作用と考え、方剤を変更する必要があります。

【症例4 若い女性の冷え】
 患者さんは24歳女性です。肩こりと夕方の下肢のむくみを主訴に、○年1月に来院されました。そのほかに症状はありませんが、月経不順と排卵時の下腹部痛を自覚しています。食事、便通、睡眠や、家庭・職場での人間関係には問題ありません。自覚症状としての冷えは強くありませんでしたが、「冷え症ですか?」と質問したところ、「めっちゃ冷え症です」と元気に返事がありました。

 身体所見では、身長 162cm、体重 52kg。色白でぽっちゃりした印象があります。脈は弱く触れ、腹診ではお腹は軟らかい印象です(虚証)。手足は冷えがあります(寒証)。舌診では辺縁に歯型(歯痕と舌下静脈の怒張(お血)を認めました。

 体がやや浮腫状(水毒)で、軽度の末梢循環障害(お血)があり、冷えも存在するので、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん、ツムラTJ-23)を日量3パック(分3)で処方しました。肩こりは肩の筋肉の水分量が多くなること(水毒)で体温を低下させ、体温低下によって末梢循環障害が起こっていると思われます。昔から当芍美人といって、色白でぽっちゃり型の人には当帰芍薬散が効くことが多いといわれています。若い女性の冷え症には当帰芍薬散が第1選択薬です。

 臨床経過です。2週間後には何となく体が温かい感じがすると言っており、改善が認められたので、さらに4週間、継続治療しました。3回目の診察時にはむくみや肩こりもなくなり、月経痛も軽くなったと喜んでいました。現在、3カ月に1度のペースで来院しています。漢方があった方が体調が良いので手放せないようです。

 以上の4症例が典型的な冷え症患者さんのパターンで、8割程度の症例はカバーできます。

 最後に冷え症についてまとめます。

・四肢の冷えにはしもやけの薬である当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)を用いる。

・胃腸機能が低下した冷えには人参湯(にんじんとう)を用い、むくみの所見があれば真武湯(しんぶとう)を追加する。

・高齢者の足の冷えには、漢方のホルモン補充療法と呼ばれる八味地黄丸(はちみじおうがん)を用いる。

・若い女性のぽっちゃり型体系の冷え症には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を用いる。










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めまいと漢方

 めまいを主訴に総合診療科を訪れる患者さんは少なくありません。その多くは、耳鼻咽喉科などで、器質的な疾患の可能性を除外された上で治療を受けています。それでも十分な効果が得られなかったわけですから、総合診療科やかかりつけ医が再度、西洋医学的に対症療法を行っても意味がありません。このような場合に漢方が役立ちますので、試してみてください。

【症例1】
 患者さんは68歳のやや太った女性です。
現病歴:半年前からめまいがときどき起こるため、精密検査を希望し、当院耳鼻科を受診しました。耳鼻科では特に異常を認めず、脳外科に紹介しました。しかしそこでも異常を認めなかったため、総合診療科に紹介されました。立ち上がった時に引き込まれるような感じを数秒間自覚していますが、それ以外の時は、特にめまいを自覚していません。
身体所見:脈拍 66/min 整。血圧112/68 mmHg。低起立性低血圧は認めない。貧血、黄染なし。心肺腹部に異常なし。下腿浮腫なし。
尿・血液検査:異常所見なし。
頭部MRI:異常所見なし。

 西洋医学では、病気を解剖学的・病理学的に分類して診断し、治療法を決定します。“めまい”という症状の場合、内耳や脳神経に炎症、腫瘍などといった病理学的な異常がなければ、治療が始められません。この患者さんは、耳鼻科・脳神経外科で診察・検査し、めまいを来す臓器に病理学的な異常が見いだされなかったために西洋医学的な治療が行えず、総合診療科へ紹介されてきました。

 ここで、耳鼻科や脳神経外科と同様の西洋医学的思考プロセスで診断しようとしては、お手上げです。心療内科的なアプローチを行い、自律神経失調症として抗うつ薬や精神安定剤を処方する選択肢もありますが、この患者さんのように、ときどき症状が出現する場合、治療による食欲不振やふらつきなどの副作用の出現で、逆に患者さんの状態を悪くする心配があります。このような場合、漢方的に評価をして、漢方薬を使った方がよいと思われます。

 西洋医学では、主訴から考えられる疾患を2~3想定しながら、鑑別診断という形で診察・検査を進めていきます。これに対して漢方では、鑑別処方といって、主訴を治療するために処方される方剤を想定しながら診察を行います。「方剤」とは複数の生薬をあらかじめ調合したものを指します。

 漢方非専門医が漢方薬を処方する場合、煎じた生薬を乾燥し、粉剤や顆粒にしたエキス剤を用いるのが普通ですし、それほど多くの方剤を使いこなす必要もありません。1つの症状に対して2、3種類の方剤で十分です。処方を決める際には、細かい適応にこだわることなく、先生方が感じた患者さんのイメージと方剤の持つイメージから、相性の良い組み合わせを決めるという感覚で処方します。

 めまいによく用いられる方剤は、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)の3剤です。以下に方剤の持つイメージを列挙しますので、これを頭に置きながら漢方的な診察を行います。

補中益気湯:エネルギーの不足から立ち上がった時に血圧が下がり、ふらつくといった人(気虚)に用いる。
半夏白朮天麻湯:身体がむくんでいて、乗り物酔いのような症状の人(水毒)に用いる。
苓桂朮甘湯:イライラしていてのぼせて目が回るといった人(気逆)に用いる。

 これらの3方剤で、コモンディジーズとしてのめまいの大部分に対して対応可能です。これらの処方を試してみて効果がない場合は、漢方の専門家へ紹介しましょう。

患者のイメージをとらえ、それに合う漢方薬を選ぶ
 症例1の患者さんを漢方的に診断する場合、漢方的な病気の分類をしなければなりません。そのためには上記の診察では不十分ですので、漢方的な診察を追加します。カッコ内は漢方用語です。漢方の教科書を読む際に照らし合わせてください。

漢方的問診:冷え性で、あまり活動的な性格ではない(陰、虚)。
  乗り物に酔いやすく、疲れると体が重く、むくんでいるように感じる(水毒)。
  喉はあまり渇かないが、よく水分を摂取している(水毒)。
  水分を摂取している割に尿量は少ない(水毒)。
漢方的診察:体型は水太りの印象。
  舌は腫れている様で、辺縁に歯形がついている(歯痕舌、水毒)。
  手足は冷たい。腹部は皮下脂肪が多いが、押しても弾力性がない(虚)。
  軽く叩くとチャポチャポと水の音がする(振水音、水毒)。
漢方的診断:身体の虚弱な人が水代謝の機能低下により、胃腸などに余分な水分が溜まってむくんだ状態。おそらく内耳の内リンパもむくんでおり、そのためにめまいが生じる(虚証で水毒)
漢方治療:虚弱な人がむくんでめまいを起こしているので、余分な水分を排除することを目的として、半夏白朮天麻湯を処方します。
予後:2週間後の再診時にはめまいは軽快していました。

 漢方非専門医が扱う漢方症例は、コモンディジーズを対象としますので、病態にある種のパターンがあります。ですから難しく考えず、病態のパターンに対応する方剤を処方します。別のパターンのめまいの症例を簡単に紹介しますのでイメージを膨らませてみてください。

【症例2】
 患者さんは78歳の小柄な痩せた女性です。既往歴に胃潰瘍と胆石で手術歴があります。
現病歴:6年前から人と話をしている時に興奮して回転性のめまいが起こるようになりました。また、些細なことで夫と口論してはめまいを起こし、夜間一人でいると不安になって動悸やめまいが起こるため、たびたび救急車を呼ぶようになりました。脳神経外科、耳鼻科、心療内科を受診しましたが改善がみられないために当科を受診しました。診察時、たえまなくしゃべり続け、夫に文句を言うことがありました。
漢方的診察:腹部の診察では、大動脈の拍動が著明でした(臍上悸)。
漢方的診断:以上から、精神・神経の興奮性(気逆)と考え、苓桂朮甘湯を処方しました。
予後:2週間後の再診時には症状は軽快していました。

 このように漢方では、西洋医学と違ってイメージが大切です。生物学的な因子だけでなく、感情を伴って変化する複雑な人間に、多種類の生薬からなる方剤を処方するだけに、個別的、ボトムアップ的ではなく、総合的な対応でいきましょう。

漢方の基礎知識
 漢方における病気の分類は西洋医学とは異なり、病気だけの分類ではなく、患者さんの体質分類も含まれます。体質は次の2つに分類されます。
陽:丈夫で、胃腸が強く、活動的、代謝が活発。
陰:虚弱で胃腸が弱く、家にいることを好む、代謝は低下ぎみである。
 さらに、気温の変化やストレス、微生物の侵入といった、ホメオスタシスを乱す外界の変化に対する人体の対応については、
実:変化に対して過剰に反応する。
虚:変化に対してあまり反応しない。
に分けられます。

 漢方では、病気を解剖学的、あるいは病理学的に分類せず、身体全体をシステムとして捉えて、システムの異常という考え方で病気を分類します。ヒトの生命活動を支えるシステムには、自律神経・生命エネルギーシステム(気)、血液・栄養・内分泌システム(血)、水代謝・免疫システム(水)の3つがあります。これらのいずれかが歪むことにより、病気が起こります。しかも、この3つは互いに影響を及ぼし合っているので、複数のシステム異常が病気の原因となります。最近、西洋医学でも、「心腎相関」など、疾患に複数の臓器が関与しているという考え方が提唱されていますが、同じ発想といってよいでしょう。

病気の分類
 システム異常によって起きる病気には、以下のようなものがあります。

1.自律神経・生命エネルギーシステム(気)の異常
  気虚:エネルギーの不足:元気がない、やる気がない。
  気逆:自律神経の過敏:いらいらする、動悸がする、異常に発汗する。
  気うつ:自律神経の停滞:意欲がでない、落ち込む、胸が詰まる。
2.血液・栄養・内分泌システムの異常(血の異常)
  血虚:貧血、栄養不良、ホルモン低下:元気が無い、疲れやすい、集中力がない。
  お血:血液循環が悪い:肩が凝る、腰が痛む、足先が冷える。
3.免疫・水分代謝システムの異常(水の異常)
  水毒:水代謝異常:浮腫む、喉が渇く、関節が痛む。

 生命エネルギー(気)は、全身を上から下へ循環しています。気虚は、気が足りないこと、気逆は気が下から上に逆流すること、気うつは気の流れが停滞することです。

 日本は高温多湿の気候で、皮膚からの水分蒸発が困難です。食生活では米を炊飯し、喫茶の習慣がありますので、水分の摂取過多になる傾向があります。そのため水代謝異常を来たしやすいと考えられます。

 過労や暴飲暴食などの不摂生はシステムの機能を低下させますし、加齢(腎虚)はシステムの予備能力の低下をもたらします。これらの要因があると、内的、外的なストレスによるシステム異常、すなわち病気になりやすい状態になります。

 



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風邪の漢方処方

(1)風邪の初期(太陽病期):食欲、体力がある時期。
(2)風邪をこじらせた時期(少陽病期):食欲、体力が落ちている時期。
(3)風邪が酷くなった時期(陰病期):食欲はなく、寝込んでいる時期。

(1)の時期は、発汗がなければ葛根湯、発汗があれば桂枝湯を処方します。
(2)の時期は、小柴胡湯を処方します。

 実際には、(1)と(2)は明快に区別できるとは限りません。(1)の桂枝湯と(2)の小柴胡湯のどちらを処方すべきか迷うことがあります。昔の医師も迷ったのでしょう。桂枝湯と小柴胡湯を足して2で割った処方である柴胡桂枝湯があります。この4処方を風邪の患者さんによく処方します。


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耳の痛みが現われた気うつの症例

耳の痛みが現われた気うつの症例

 患者さんは神経質そうで痩せた35歳の女性。5歳の女の子と夫の3人で暮らしています。主訴は両側の耳の痛みです。家族歴・既往歴に特記すべきことはありません。現病歴ですが、3カ月前から徐々に両耳が詰まる感じが出現し、1カ月前から耳が痛くなりました。

 はじめは市販の痛み止めを飲んでいましたが、改善しないために近医の耳鼻科を受診。検査にて異常が認められず、痛み止めが処方されました。

 しかし、全く改善がみられないため、当院脳神経外科を受診。頭部MRI検査などにて異常を認めなかったため、当院精神科に紹介されました。エチゾラム(商品名:デパス)3錠が処方されましたが、体がだるくなるばかりで耳の症状が改善しないため、漢方治療目的に当科へ紹介されました。

 今回は、当初から漢方治療目的ですので、早速、漢方的な問診と診察を行いました。なお、身体診察・血液検査には異常ありませんでした。

漢方的な問診:家計を助ける目的で、1年前から近くのコンビニエンスストアでパートを始めました。店長に仕事ぶりを認められ、徐々に仕事量が増えていった5カ月前ころから耳鳴りが始まりました。このお店は四国でもトップクラスの売り上げがあり、やりがいがあったため、気にせずに仕事を続けました。
 冷蔵庫の在庫管理などを任されるようになり、かなり忙しくなった3カ月ほど前からは、耳が詰まる感じが出現しました。しかし、アルバイトの同僚が高校生なので、疲れていても仕事を任せることができず、責任感が強いこともあって気を抜くことができませんでした。
 1カ月前ころからは耳が痛くなってきました。痛みのために仕事がきつく感じるようになったので、店長に休みをもらおうと思いましたが、気兼ねして言い出せませんでした。同じころ、子どもが通っている保育園の夏祭りの準備が始まりました。世話役をしていた関係でそちらも忙しくなり、気を使うことが多くなったためか、症状はますますひどくなりました。

漢方的な診察:顔貌は抑うつ状(気うつ)。脈に元気がない(気虚)。お腹は季肋部の筋肉が緊張している(胸脇苦満)。
 ストレスがたまると季肋部の筋肉が緊張してきます。一種の腹壁反射だと思われますが、漢方では「胸脇苦満」といってストレスの有無の指標とします。このサインがある場合、「気うつ」の患者さんに対しては、半夏厚朴湯ではなく柴朴湯を用います。

漢方的診察:仕事を頑張りすぎ、気疲れから元気がなくなり(気虚)、それでも頑張っているうちに能率が落ち、仕事が自分の思うように行かなくなり自分を責め、やる気がなくなってきた(気うつ)。

漢方的治療:体と頭を休ませるために仕事を2週間休むように指示。柴朴湯(ツムラTJ-96)3パックを処方しました。

経過:漢方治療開始2週間後には、だいぶ調子が良く耳も痛くなくなったと表情が明るくなってきました。経済的な理由で仕事を再開しましたが、簡単な仕事に替えてもらいました。さらに2週間後には薬を飲みながら、冷蔵庫の在庫管理以外の仕事ができるようになり、症状もなくなりました。その1カ月後には、一段と調子が良くなり、病気をする以前の状態に近く、薬を飲み忘れるようになったとのことでした。店長さんが気を使ってくれて、以前ほど仕事を頼まれることがなくなり、神経を使う在庫管理はやらなくてもよくなっています。

考察:漢方的な解釈では、この患者さんは耳のあたりで気の流れが悪くなったため、耳の痛みと詰まった感じが出現したとみなします。気の流れは、頭のあたりで悪くなると頭重感や頭痛が、胸のあたりだと咳や喉の詰まり感が、お腹のあたりでは腹痛や腹部膨満感が出現すると考えられています。

 西洋医学的には、気の異常は自律神経の異常ととらえられます。交感神経と副交感神経の緊張のバランスは局所的なものとされていますから、頭部の自律神経のバランスが崩れると、頭痛などの自律神経失調症状が現われ、胸部だと息ができないなど呼吸器系の症状が、循環器系だと動悸・胸痛といった症状が出現します。

 今回の患者さんは、おそらく耳管の開閉を調節する自律神経のバランスが崩れたために耳痛、耳重感といった自律神経失調症状が出現したのだと思われます。


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汝自身を知れ おまえほど空しく貧しい存在はひとつもない

 デルフォイの神託で「汝自身を知れ」ということは良く知られているが、この続きが結構長い。
 「おまえの内をを見よ。おまえを知れ。おまえ自身を考えよ。外で費やされるおまえの精神と意志をおまえ自身にひきもどせ。おまえはおまえ自身から流れ去り、おまえ自身を放散させている。自己に集中し、自己を支えよ。おまえは裏切られ、撒き散らされ、盗まれている。おまえにはわからないのか。この世界の万物はすべて自分の目を自分に集中し、自分を見つめるために目をひらいていることを。おまえにとっては内も外も常に空だ。だが同じ空でも拡がりが少なければそれだけ空ではない。おお、人間よ、おまえ以外の万物は皆、第一に自己を研究する。そして自分の要求に応じて、仕事と欲望に限界を定める。世界をいただいているおまえほど空しく貧しい存在はひとつもない。おまえは知識をもたない詮索家であり、権限をもたない裁判官であり、とどのつまりは、道化芝居の道化役にすぎないのだ」
 「汝自身を知れ」というのは結構つらいものがある。そこには「悲惨と空虚だけ」しかなく、だから、「自然は、われわれを失望させないために、うまい具合にわれわれの見る働きを外にむけてくれた」とモンテーニュは書いている。


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メノケアモイストゼリー

メノケアモイストゼリー

●更年期の症状といえば、頭痛、肩こり、めまいなどのように思われがちですが、決してそれだけではなくじつにさまざまな症状があらわれます。皮膚や粘膜についての変化だけをみても、女性ホルモン(エストロゲン)の減少による症状として、みずみずしさが失われたりハリがなくなったりします。目や口にも乾燥の症状があらわれます。
●またさらに女性にとって大変つらい症状としては、膣やその周辺部の乾燥による“不快感や痛み”があげられます。病院などで相談することも控えてしまうことが多く、このことに悩んでいる女性は少なくありません。本来、潤いのある膣内は酸性に保たれ、雑菌等の進入を防ぎ膣炎等から身を守る働きもしています。
●メノケア モイストゼリーは、このような方々の悩みを解決するために開発されたプライベートゾーンのための専用保湿ゼリーです。日常的にケアすることで爽やかな生活をお約束します。
●人生80年時代、更年期、そしてそれ以降もQOLの向上とエイジレスライフのための一助となることを願っています。

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特発性皮膚搔痒症にSSRIが効くことがある




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丸い石

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最初の女が一番いい女だった

先輩は書きました

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最初の女が一番いい女だった

二番目の女が二番目にいい女だった

だんだんつまらない女になっていって

最近になると腹がたつばかりだ

どうしてかなと考えてみた

バブルの頃はいい女が多かったのかなとか

そんなことはない

年をとって自分がつまらない男になったから

ふさわしい程度のつまらない女しかそばにいなくなったのだと

深く認識した

若者は最初の異性を大事にすべきだ

だんだんつまらなくなっていく


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オフラインストレス障害

こんな記事もあり
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あなたに「オフラインストレス障害」の症状はあるか?

ネット中毒もしくは IAD(Internet Addiction Disorder:ネット中毒性障害)の話は良く聞くだろう。中国、そして米国全土にも、患者救済のための宿泊施設や更生診療所が設置されている。

通常の生活(仕事や人間関係など)に支障を来すほどインターネットを利用しすぎるとネット中毒と診断される。ネット中毒は実在の病名だ。例えば、Newsweek ではネット中毒で住む家を失った男性に関する記事を伝えている。

一方、筆者はこれと関連するある疾患に気付いた。定着した病名はまだない。ここではとりあえず「Offline Stress Disorder」(OSD:オフラインストレス障害)と呼ぶことにする。これは、インターネットを使わないこと、もしくはインターネット回線が利用できないことを知って精神的もしくは感情的に不安定な状態になるという病気だ。

どこが違うのだろう? OSD は、通常の生活に対する支障の有無にかかわらず存在する不安感である。必ずしも人を衰弱させるものではない。そして、はるかに一般的なものだ。

例えば、筆者の周辺には深刻なネット中毒患者は1人もいないはずだ。しかし、筆者の知人の半分は OSD にかかっている。実際(もしあなたが技術に関心のある有職者ならばという話にはなるが、この Web サイトをご覧になっているのだからそうだろう)、あなたもネット中毒ではないだろうが OSD にはかかっているかもしれない。

また、これは筆者が想像で述べていることでもない。Virgin Media が1,000人の英国民を対象に実施した調査によると、その3分の1は携帯電話やインターネットが接続不能になるとストレスを感じるという。そして3分の2は、インターネットにアクセスできることが分かっていると「より安心できる」と回答した。

また、英国人よりも米国人の方が困窮している。2008年に Solutions Research Group (SRG)が実施した調査(PDF)によると、定期的ではないものの、アメリカ人の41%がインターネットに接続できないことで不安を感じ、さらに27%が「強い」もしくは深刻な不安を訴えている。

この調査は回答者に対し、インターネットに接続されていないことで感じる気持ちを説明するよう求めた。彼らの回答には「狼狽」、「パニック」、「自由の喪失」、「放心状態」、「無力」、そして「空虚」というものまであった。

筆者もちょっとした独自「調査」をしてみた。ソーシャルネットワークの友人に OSD 症状の有無を尋ねたところ、多くがこの障害があることを認めたのだ。ある友人は、前日の嵐でインターネットにアクセスできなくなった際に「空虚」や「締め出された感じ」があったという。また、もう1人は「目の前の世界が急に消滅する恐怖」を感じたという。

友人の1人で、IT 系ラジオ番組でパーソナリティーを務める Carey Holzman 氏には、自分が OSD であることを発見した面白い経緯を聞いた。「バーニングマンのイベントを見に行ったとき、ネットに接続して連絡を試みるのに必死になり、より良好な電波を求めて RV 車のルーフにまでよじ登った。ノート PC を手に持って RV 車のハシゴを上るのは言葉で言うより容易ではない。そのとき、自分が病気だと認識した…(笑)」というのだ。

筆者はここ最近 OSD のことで頭がいっぱいだ。そして、思いも寄らない人がこの病気にかかることに気付いた。

当然、OSD からはニュース速報や最新トレンドを知ることが仕事だったり喜びだったりする技術マニアやニュース中毒者(筆者は図らずも両者である)などの人を思い浮かべる。

しかし2年前から、筆者は技術嫌いの人々でさえも OSD になることに気付いた。オンラインであることを不安に感じていた人々が、今はオフラインであるときに同じ気持ちになってしまうのだ。

これは2つのトレンドが原因だと思っている。iPhone と Facebook だ。ただ、理由はそれぞれに大きく異なる。

● iPhone が OSD を引き起こす理由

携帯電話でインターネットにアクセスすることは何年も前から可能だった。iPhone が違うのは高解像度の大画面と iPhone アプリケーションの魅力の組み合わせだ。iPhone は Facebook や Twitter アプリケーション、もしくは数千種類の iPhone アプリを使うことでインターネットからのデータ取得をかなり容易にする。

iPhone で最も魅力的な「アプリ」の1つが App Store アプリそのものだ。iPhone を持ち運ぶ人ならだれでも、8万種類(今週にはもうすでに数が変わっているかもしれない)のなかで知らない iPhone アプリがいくつかあっても間違いなくそれを喜んで使うだろう。

言い換えれば、iPhone は(何よりも)接続用マシンになったのだ。われわれは、四六時中接続されていることに慣れてしまい、この環境への順応が接続できないときの不安につながっているのだ。

● Facebook が OSD を引き起こす理由

筆者は約1年前、この分野に関する「Social Networking:What Are‘Friends’For?」(SNS:「友だち」は何のため?)という記事を書いており、そのなかで、Facebook などのソーシャルネットワーキングサイトの最大のメリットは、人間関係の質ではなく量を高めることだと述べた。

現実の世界では、せいぜい数百人程度しか真の関係は築けない(相当な社交家でも200人程度だろう)。なかには10人、あるいはそれ以下としか付き合いがない人もいる。

しかし、Facebook では数千人の「友だち」と連絡を取り合うことができる。おっ、元同僚のところに最近双子が生まれた、弟夫婦が「Couples Retreat」を観に行くようだな(きっと後悔するぞ)、高校時代の友人がマラソン出場に向けてトレーニングしているぞというように、ホームページをチェックし、友人のプロファイルをたまにざっと閲覧するだけで、だれがだれと何をしているのかがすぐに分かる。

ごくありふれたことが人と人を結びつける。ソーシャルネットワークは、われわれが生まれながらに持つ強い願望である社会における結びつきを数に増殖させる。だがその結果として、その雑談に参加できなくなったときにストレスを感じる人もいるのだ。

あなたは OSD にかかっているだろうか? もしそうならば、それによりどのような感情になり、どのようなことが起こるだろうか。ぜひ教えていただきたい。

さて、申し訳ないが iPhone で Facebook をチェックしなければならないのでここで失礼する。どうしても今すぐでなくてはならないのだ。


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ネットに時間を使いすぎると人生が破壊される。


ネットに時間を使いすぎると人生が破壊される。人生を根底から豊かで納得のいくものにしてくれる良書25冊を紹介   186


ネットに割り当てる時間配分を間違えなければ、ネットは人生を豊かにし、自分の未来を切り開く力をくれます。

しかし、ネットに多くの時間を使いすぎると、人生を根幹から豊かで納得のいくものにしてくれる良書を読む時間を失い、自らの人生を破壊し、未熟なまま老いてしまう危険があります。



「優れた書籍」と「はてなの人気エントリに上がるような記事」との落差は、ギアナ高地の断崖絶壁どころではありません。





もちろん、分裂勘違い君劇場のような、薄っぺらくて、矛盾だらけで、勘違いしまくってて、長いだけでろくに内容のない記事ばかり掲載するうんこブログは、優れた書籍とは、比較すること自体がもはや犯罪です。



しかし、分裂勘違い君劇場より1000倍優れている梅田望夫氏や小飼弾氏の本やブログといえども、図書館や書店に並ぶ良書の前には、やはり、ゴミより幾分マシだという程度の価値しかないのです。

優れた書籍のレベルとは、それほどのものなのです。



たとえば、これから到来しつつある「大変化の時代」に対する洞察については、梅田氏や小飼氏の洞察のレベルは、トフラーやドラッカーの足元にも及びません。いや、足の裏の皮にすら達しないかもしれません。それらを真剣に吟味・咀嚼しながら読みおわると、梅田さんの本を読んで、「Webは世界を変える!新しい時代が来る!僕たちの時代だ!」などと興奮していた頃が懐かしくなるかもしれません。



豊かな生き方、人生の切り開き方についても、梅田氏や小飼氏の見識は、マズロー*1やデールカーネギーの見識に比べれば、やはり比較になりません。人間に対する洞察、人生の意味と価値についての洞察については、ニーチェの放つ凄まじい思考の圧力に比べると、圧力計の誤差の範囲内です。

 
人間性の心理学―モチベーションとパーソナリティ

作者: A.H.マズロー, 小口忠彦 
出版社/メーカー: 産能大出版部 
発売日: 1987/03/10 
メディア: 単行本 
購入: 5人 クリック: 25回 
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道徳の系譜 (岩波文庫)

作者: ニーチェ, Friedrich Nietzsche, 木場深定 
出版社/メーカー: 岩波書店 
発売日: 1964/10 
メディア: 文庫 
購入: 3人 クリック: 12回 
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それらを読むと、梅田氏の本やブログを読んで、「ぼくたちは人生は自分の力で切り開ける!好きなことをやって生きていけるんだ!」と無邪気に思っていた頃を遠い目をして思い出すかも知れません。*2



もちろん、梅田氏の著作は、読む価値がある優れた書籍です。ただ、彼の最初の著作であるWeb進化論をせいぜい2~4時間程度かけて読めば、それで十分でしょう。それ以上の時間をかける価値はありません。トフラー、ドラッカー、マズロー、デール・カーネギー、ニーチェを自分の血肉になるまで咀嚼した後なら、そのことが理屈抜きに分かるようになると思います。

 
ツァラトゥストラ (中公文庫)

作者: ニーチェ, 手塚富雄 
出版社/メーカー: 中央公論新社 
発売日: 1973/06 
メディア: 文庫 
購入: 1人 クリック: 110回 
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善悪の彼岸 (岩波文庫)

作者: ニーチェ, Friedrich Nietzsche, 木場深定 
出版社/メーカー: 岩波書店 
発売日: 1970/01 
メディア: 文庫 
購入: 2人 クリック: 5回 
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また、社会、経済、カネ、格差について語る小飼氏の記事や書籍を読む時間があれば、まずはマンキューの教科書を血肉になるまで咀嚼し、クルーグマンの一般向け書籍、トフラー、ドラッカー、ニーチェを読みまくった方が、はるかに良いと思います。そのあと、日本経済について知るための、さまざまな日本の経済学者の書いた本を読んで、日本経済についての見識を深めていくのが良いと思います。あらゆる権力を徹底的に批判し尽くしたニーチェを精読・咀嚼せずにに格差を語れば、話が表層的になってしまうのも不思議はありません。彼は、強者と弱者、正義と真理、善と悪に潜む背後の汚物をとことんまでえぐり出し、解体しつくし、それを乗り越えて価値を創造しようとしたのです。そのプロセスを踏まずに格差を語るから、話が浅はかになるのです。

 
ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる

作者: P・F・ドラッカー, 上田惇生 
出版社/メーカー: ダイヤモンド社 
発売日: 2002/05/24 
メディア: 単行本 
購入: 13人 クリック: 59回 
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グローバル経済を動かす愚かな人々

作者: ポールクルーグマン, Paul Krugman, 三上義一 
出版社/メーカー: 早川書房 
発売日: 1999/01 
メディア: 単行本 
購入: 5人 クリック: 6回 
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また、社会や経済についての小飼氏の議論は、概念や言葉の定義が現代経済学の専門用語との互換性がないために、まったく発展性がありません。たとえば、彼の使う「インフレ」という言葉の定義は、経済学者のそれとは違います。彼の定義する、おカネの価値も、経済学者のそれとは違います。だから、彼が経済学者と議論しても、ろくに話がかみ合いません。小飼弾氏のブログや本をいくら読んでも、経済の専門概念や用語を使って書かれた、見識の深い経済学者達の本を読めるようにはなりません。

それに比べると、マンキューの教科書はすばらしく発展性があります。そこで語られている概念や用語は、世界中の優れた経済学者たちの展開する議論と共通のものですから、マンキュー経済学を読むことで、世界中の優れた経済学関連の書籍を読むための堅牢な土台が構築され、あとは読めば読むほど見識が深まっていくのです。

 
マンキュー経済学〈1〉ミクロ編

作者: N.グレゴリーマンキュー, N.Gregory Mankiw, 足立英之, 小川英治, 石川城太, 地主敏樹 
出版社/メーカー: 東洋経済新報社 
発売日: 2005/09 
メディア: 単行本 
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マンキュー経済学〈2〉マクロ編

作者: N.グレゴリーマンキュー, N.Gregory Mankiw, 足立英之, 小川英治, 中馬宏之, 石川城太, 地主敏樹 
出版社/メーカー: 東洋経済新報社 
発売日: 2005/09 
メディア: 単行本 
購入: 5人 クリック: 4回 
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また、トフラーやクルーグマンが行う経済学批判が極めて本質的なものであるのに対し、小飼氏の行う経済学批判は、そのほとんどが、すでに過去にさまざまな経済学者によって行われてきた陳腐なものか、単なる経済学の無理解と偏見の産物か、的外れの批判のいずれかであり、とくに見るべきところはありません。

経済学の効用、限界、問題点については、小飼氏よりも、経済学者たちの方が、はるかに深く理解しています。

 
富の未来 上巻

作者: A.トフラー, H.トフラー, 山岡洋一 
出版社/メーカー: 講談社 
発売日: 2006/06/08 
メディア: 単行本 
購入: 2人 クリック: 41回 
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富の未来 下巻

作者: A.トフラー, H.トフラー, 山岡洋一 
出版社/メーカー: 講談社 
発売日: 2006/06/08 
メディア: 単行本 
購入: 1人 クリック: 20回 
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それに加えて、小飼弾氏はあれほどの本を読みながら、哲学というものをまるで理解していません。


なぜ哲人たちが、死に恐怖しつつも死に挑戦しないか、私にもわかる。少なくともわかるような気がする。

<略>

哲人は他者の生を押しのけてまで得る「不死」を、「非モテ」は他者の愛を押しのけてまで得る「モテ」をそれぞれ嫌悪しているというわけだ。私はそれをHumility、謙虚と呼んでいる。立派な見識であるとも思う。

こういう意味での「謙虚」であらねばならない、ということを前提とするなど、哲学者としてはありえないことです。謙虚であることを好むために、謙虚な結論を出すように論理を展開するとしたら、そんなものは哲学でも何でもありません。哲学というのは、徹底的に容赦のない思考です。あらゆることに対して容赦がないのです。自分に対しても、他人に対しても、悪に対しても、善に対しても、強者に対しても、弱者に対しても、希望に対しても、絶望に対しても、幸福に対しても、不幸に対しても、人間の最高価値に対してすら、容赦なく徹底的に分析・追求するのです。哲学自身ですら、その追究の対象から逃れる特権的地位にはいられないほど容赦がない思考なのです。

哲学とは、道徳的とか、謙虚とか、役に立つかとか、そういう一切の制約の外側で、ゼロリセットで思考することです。倫理にも実用性にもしばられず、一切のタブーを設けず、「ほんとうのところはどうなのか?」を徹底的に突き詰めるのが、哲学的思考なのです。哲学者は、人間の倫理や常識を超越して思考するから、哲学者なのです。結果的に謙虚な行動という結論が出たとしても、あくまでそれは突き詰めた結果たまたまそこにたどり着いた結果に過ぎず、哲学者が道徳的に気高いためにその結論に達したわけではないのです。



これは、哲学の基本中の基本で、これらの徹底した思考よって生み出されてきた多くの成果が、われわれの社会の根幹を支え、形作っています。それは、あらゆる学問、文化、社会制度を根本のところで支えているのです。彼は何千冊もの本を読みながら、そのいちばん肝心なところを理解していないのです。そういう人が、人間と社会についての洞察や見識をいくらブログ記事や書籍に書こうが、それがなかなか深い物になりにくいのは、当然のことでしょう。彼の本やブログより、優先して読むべき書籍があるのは、当然のことなのです。



それから、小飼弾氏の本の読み方は、単に本を精読・咀嚼しない、というだけでなく、自分を破壊しない、出血しない読み方なのではないかと想像します。だから、小飼氏は、いくら本を読んでも、小飼氏のままなのではないでしょうか。ひたすら知識が増え、視野が広がるだけの読み方です。ひたすら、土台の構造はそのまま直線的に進歩発展していくだけの読み方です。本の内容が自分の内臓に突き刺さり、大出血を起こしながら、死闘を行うような読み方をしないのです。土台からぶっ壊され、建物の根本構造が変形してしまうような読み方をしないのです。だから、多くの場合、本は、小飼氏の精神世界をすっと通り過ぎ、いくつかのインスピレーションをもたらすだけのものに過ぎなくなってしまうのではないでしょうか。

それが、何千冊本を読んでも、小飼氏の人間と社会の理解がこのようなものである理由なのではないかと想像します。




それから、マズローを知らない方々のために、マズローの簡単な紹介を。

マズローが目指したのは「第三の心理学」です。マズロー以前に心理学は2つありました。精神病の人を研究する心理学と、客観的データを統計処理して平均的な人間の行動の法則性を解き明かそうとする、行動科学的な心理学です。

すなわち、病人の心理学と、平均的な人間の心理学ががあったわけです。

しかし、陸上競技において、速く走る方法を知りたいなら、病人を研究するでしょうか?平均的な人間を研究するでしょうか?

そうではないでしょう。オリンピック選手の走り方を研究するべきなのではないでしょうか。

すなわち、マズローの行ったのは、最高に健康な精神の研究です。人間性の最高の高みの研究なのです。

人間の中に眠る、最高の可能性を限界まで引き出し、花開かせる研究なのです。

 
マズローの心理学

作者: フランク・コーブル 
出版社/メーカー: 産能大出版部 
発売日: 1972/01 
メディア: 単行本 
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完全なる経営

作者: アブラハム・マズロー, 金井寿宏, 大川修二 
出版社/メーカー: 日本経済新聞社 
発売日: 2001/11/30 
メディア: 単行本 
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もちろん、トフラー、ドラッカー、マズロー、デール・カーネギー、ニーチェ、クルーグマン、マンキューだけではまるで十分ではありません。それらは、入り口に過ぎないのです。たとえば、科学とニセ科学についてなにかの記事を書く前に、大森荘蔵は読んでおいた方がいいと思います。



また、これらの多くは、それほど難解な本でもありません。デール・カーネギーはずいぶん昔から世界中で愛読されている自己啓発本の定番ですし、マンキューの経済学の教科書は、高校を出たばかりの少々出来の悪い文系の大学生でも十分に読めるでしょう。トフラー、ドラッカー、マズローも、とくに専門知識無く読むことができます。クルーグマンの一般向け書籍も、楽に読めます。

 
人を動かす 新装版

作者: デールカーネギー, Dale Carnegie, 山口博 
出版社/メーカー: 創元社 
発売日: 1999/10/31 
メディア: 単行本 
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道は開ける 新装版

作者: デールカーネギー, Dale Carnegie, 香山晶 
出版社/メーカー: 創元社 
発売日: 1999/10 
メディア: 単行本 
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もちろん、もっとずっと軽い本でも、アルファブロガーの記事や本なんぞより、はるかに良質な本がたくさんあります。



たとえば、いきなりニーチェを読む気力が湧かないなら、竹田氏や永井氏のニーチェ解説本から読み始めてもいいと思います。ニーチェの原文の翻訳を直接読んでもそれなりに分かりやすいし、やっぱり訳本を直接読んだ方が、解説本では得られない深い味わいを得られます。というか、解説本は、ニーチェそのものではなく、竹田氏のニーチェ解釈、永井氏のニーチェ解釈であって、ニーチェそのものとは別物として読んだ方がいいと思いますが。

もちろん、ニーチェばかりにこだわると偏ってしまうので、さまざまな哲学エッセーを読むことで、より深く自分の人生に納得し、人間と社会の奥深さを、日々豊かに味わうことができるようになります。

 
ニーチェ入門 (ちくま新書)

作者: 竹田青嗣 
出版社/メーカー: 筑摩書房 
発売日: 1994/09 
メディア: 新書 
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これがニーチェだ (講談社現代新書)

作者: 永井均 
出版社/メーカー: 講談社 
発売日: 1998/05 
メディア: 新書 
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ポジティブで建設的で健康な考え方が好きな人なら、竹田氏や西氏の書いた哲学エッセーが向いているかもしれません。

ポジティブな考え方には反吐が出る、徹底した絶望を逃げずに直視したいという人なら、中島義道氏がいいでしょう。

建設的だの役に立つという考え方などクソ食らえという人は、永井均氏の本が肌に合いそうです。



自分が存在するとはどういうことか?生きているということはどういうことか?死ぬとはどういうことか?自分とはなんなのか?世界とはなんなのか?その答えを自分はすでに知っているという思いこんでいる人には、永井均氏の転校生とブラックジャックは、いったい何を問題としているのかピンとこないと思います。しかし、そうでない残りの人たちにとっては、この本は、生と死と世界の意味についての高密度な思考を楽しめるかもしれません。

 
転校生とブラック・ジャック―独在性をめぐるセミナー (双書・現代の哲学)

作者: 永井均 
出版社/メーカー: 岩波書店 
発売日: 2001/06 
メディア: 単行本 
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主観は客観をいかにして認識できるか、という問題に結論がついている、主観は客観を認識できないのだ、と思いこんでいる人は、大森荘蔵を読めば、主観-客観という問題設定そのものが、思考の錯覚だったと気がつき、世界が違って見えるようになるかもしれません。

 
知の構築とその呪縛 (ちくま学芸文庫)

作者: 大森荘蔵 
出版社/メーカー: 筑摩書房 
発売日: 1994/07 
メディア: 文庫 
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幸せを求めて一生懸命な人たちの自己欺瞞にうんざりしている人なら、中島義道氏の「不幸論」はうってつけです。自分は不幸なのだから、不幸な自分をごまかして幸せになったと思いこむより、血の出るほど不幸を直視して生きる方が、はるかに豊かな人生を味わえるという可能性に気がつくかもしれません。

 
不幸論 (PHP新書)

作者: 中島義道 
出版社/メーカー: PHP研究所 
発売日: 2002/10 
メディア: 新書 
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「哲学実技」のすすめ―そして誰もいなくなった・・・ (角川oneテーマ21 (C-1))

作者: 中島義道 
出版社/メーカー: 角川書店 
発売日: 2000/12/01 
メディア: 新書 
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また、哲学エッセーばかり読んでいても、人生が貧しくなります。

優れた文学やノンフィクションは、理屈っぽい哲学を、軽々と超越する何かがあります。

哲学は人間の精神の骨格を作り上げますが、文学やノンフィクションは、その人間の精神の骨格を、脈動する血肉で満たします。

いや、それ以上の何かです。



たとえば、トリイ・ヘイデンはすばらしいです。

精神障害児や知恵遅れの子供たちを教える特殊学級で教える教師の体験記(実話)ですが、著者の天賦の文才も加味して、全精神を乗っ取られるほど話に引き込まれます。障害児の世界からは、通常の人間世界以上に人間の本質が伝わってきます。

とくに「よその子」は、魂を引き裂かれるほど感情移入しました。涙が止まりませんでした。読後、しばらく茫然自失しました。

 
よその子―見放された子どもたちの物語 (トリイ・ヘイデン文庫)

作者: トリイヘイデン, Torey L. Hayden, 入江真佐子 
出版社/メーカー: 早川書房 
発売日: 2004/10 
メディア: 単行本 
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<トリイ・へイデン文庫>シーラという子--虐待されたある少女の物語 (ハヤカワ文庫 HB)

作者: トリイ・ヘイデン, 入江真佐子 
出版社/メーカー: 早川書房 
発売日: 2004/06/10 
メディア: 新書 
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ジャックロンドンの「どん底の人々」は、1902年のロンドンの貧民街の潜入レポートです。

野放しの資本主義がどれほどすさまじい暴力装置、いや、屠殺装置となるのかが生々しく伝わってきます。

100年以上前のルポルタージュなのに、つい最近のことのように、筆者の行動を追体験できます。

 
どん底の人びと―ロンドン1902 (岩波文庫)

作者: ジャックロンドン, 行方昭夫 
出版社/メーカー: 岩波書店 
発売日: 1995/10 
メディア: 文庫 
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それと、祖母・母・娘と三代が、中国の近現代の激動の歴史を生き抜いた自叙伝として

生き生きとした描写が面白く、歴史のうねりを感じさせるのが「ワイルド・スワン」ですね。

 
ワイルド・スワン〈上〉

作者: ユンチアン, Jung Chang, 土屋京子 
出版社/メーカー: 講談社 
発売日: 1993/01 
メディア: 単行本 
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ワイルド・スワン〈下〉

作者: ユンチアン, Jung Chang, 土屋京子 
出版社/メーカー: 講談社 
発売日: 1993/01 
メディア: 単行本 
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たとえば、我々は、仕事でも、生活でも、ネットでも、誰がどう悪くて、何がどうして正しいのか、対立したり批判したり同意したりすることがありますが、この善悪の価値判断基準はどこから来たものなのでしょうか?何が正義で、何が悪であるかを究極的に決めているものの正体は、なんなのでしょう?

これについて、善悪の価値判断基準は、全て文化の産物に過ぎない、と主張する人もいますが、進化人類学の本をいろいろ読んでいくと、それが浅はかなものの見方であることがだんだん分かってきます。

正義も悪も、多分に進化論的プロセスの産物であるところがあり、我々の本能レベルに組み込まれている情動や感覚と切り離して考えることはできません。我々の道徳観念は、数百万年に及ぶ進化の過程で獲得されてきた形質が核となっている部分が、想像以上に大きいのです。そして、類人猿や狩猟採取民族の行動、文化、社会を観察・分析し、進化の産物としての人間性、倫理、文化、人間関係、社会を研究する学問が、進化人類学です。

その進化人類学の入門としては、立花隆氏の「サル学の現在」や、フランス・ドゥ・ヴァール氏の著作が優れています。

 
サル学の現在 (上) (文春文庫)

作者: 立花隆 
出版社/メーカー: 文芸春秋 
発売日: 1996/01 
メディア: 文庫 
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政治をするサル―チンパンジーの権力と性 (平凡社ライブラリー)

作者: フランスドゥ・ヴァール, Frans De Waal, 西田利貞 
出版社/メーカー: 平凡社 
発売日: 1994/06 
メディア: 新書 
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利己的なサル、他人を思いやるサル―モラルはなぜ生まれたのか

作者: フランスドゥ・ヴァール, Frans De Waal, 西田利貞, 藤井留美 
出版社/メーカー: 草思社 
発売日: 1998/01 
メディア: 単行本 
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きりがないので、この辺でやめておきますが、ここで紹介したのは、読む価値のある本の、ほんの一部に過ぎません。

言いたいのは、ネットに時間を使いすぎると、それらの価値ある本を読む時間を失う、ということです。




アルファブロガーというのは、証券化バブルにそっくりなところがあります。アルファブロガーバブルです。

証券化バブルは、証券化された金融商品を人々がその金融商品の実体的な価値をしっかり吟味せずに値段をつけ、転売を繰り返したために、実体経済と大きく乖離した値段が付けられ、バブルとなって崩壊しました。

アルファブロガーバブルはこれに似ている側面があります。アルファブロガーの見識のレベルを人々が十分に吟味しないままそこに群がるから、アルファブロガーバブルが起きてしまうのです。*3



バブルが終わってみれば、アルファブロガーは、普通の人とさほど変わらないことがわかると思います。

彼らはダメ人間ではないですが、超人でもありません。

彼らは善人でもなければ、悪人でもありません。

ただただ、普通の人なんです。



そうして、「普通の人」として、彼らを見てみれば、彼らはなかなか良くやっているということが分かります。

「普通の人」としては、じつにすばらしい記事を書くし、すばらしい本を書く。

すばらしい「普通の人」なんです。

アルファブロガーバブルが起きず、人々のネットと読書とリアルな仕事と生活の時間配分さえ適切になるのなら、

彼らはネットを豊かにしてくれる、ネットには欠かせない存在なのです。



もちろん、分裂勘違い君劇場というブログは、一貫性がなく、勘違いしたことばかり書いている、

アルファブロガーの1000分の1の価値もないうんこブログですから、

そんなブログに何を書かれようが、彼らは歯牙にもかけないでしょうが。



ともあれ、ネットに時間を使いすぎていると思われる方は、

この際、ネットの時間を減らし、良書を読む時間を増やしてみてはいかがでしょうか。



おそらくその方が、ネットの記事も今までの何倍も深く楽しく読めるようになり、

世界が全く変わって見えることと思います。

人生も、はるかに深く豊かで心から納得のいくものになっていくかもしれません。



あと注意点ですが、私は、上記に挙げた書籍の内容が正しいとも思っていませんし、賛同もしません。また、正しいと思ったり、賛同したりすることもお勧めしません。あくまで、人生の刺激や肥やしとして利用価値がある、という話です。たとえば、以下のような問題点があります。

・初心者にはニーチェは有害だ(ニーチェは、過激な煽り、挑発、レトリックが満載で、誤読を招きやすい)。

・マズローは疑似科学だ(科学理論としてはインチキだ)。

・竹田氏のは哲学ではない(哲学としてはインチキだ)。

・永井均のニーチェ理解は浅薄だ。

・中島義道氏は、死と絶望に対する感受性が強すぎて、普通の人がついて行けない。

・立花隆氏の科学本は、いいかげんな記述が良く出てくる(彼のインターネット関連の本は本当に酷い)。

・デールカーネギーは、よくある自己啓発本の元祖で、まともな教養の本じゃない。

・経済学は実際の仕事や生活にはほとんど役に立たない。



しかしながら、これらの本は読み方次第です。

マズローの本は、科学ではなく、単に「よりよい生き方をする人間」に対する示唆を与えてくれる本だと考えれば、すばらしい人生の肥やしになります。ケインズの「一般理論」が誤謬と矛盾に満ちていても、そこに多くの示唆的なアイデアやものの見方がちりばめられているのと似ています。そこに書かれている理論の正しさが重要なのではなく、そこにちりばめられている人間に対する洞察が、さまざまなインスピレーションを与えてくれるのが重要なのです。

また、竹田氏の本は、哲学ではなく、哲学風味の人生に対する考察だと考えれば、やはり分かりやすくて良い本です。

立花隆氏の科学理解は、本職の科学者に比べると浅いですが、そのぶんはるかに分かりやすく、入門書としては優れています。

永井均氏が浅薄かどうかは、その人の好みによります。

デールカーネギーは、よくある自己啓発本ですが、自己啓発本の中では、かなりすばらしい部類に属すると思います。

経済学は、仕事や生活の役には立たないですが、それによって世の中をより深く味わうことができるようになります。



というわけで、これらの点には、十分に注意して読まれますよう。



ちなみに、これらの本のリストは、あくまで「梅田氏や小飼氏の本やブログを読む」ということに対する「対案」として挙げた一般向け・入門書的リストなので、単純にお勧め図書を挙げるとしたら、また別のリストが出来上がります。また、僕自身の愛読書リストも、これらとは別になります。

*1:マズローは心理学の本としてではなく、人間性についての深い思索の本として読むのが良いと思います。科学というより、思想書。

*2:もちろん、マズローにしろ、トフラーにしろ、ニーチェにしろ、陳腐・トンデモ・危険な部分もたくさんありますし、鵜呑みにすると、むしろ有害にすらなりえます。自分なりのやり方で慎重に咀嚼・吟味してゆく必要があります。

*3:もちろん、このアナロジーが当てはまらない側面もある。証券化バブルは、転売によって値がつり上がっていくことでおきたが、アルファブロガーバブルは、転売ではなく、多くの人がブックマークするので、それが人気エントリに上がり、それによってさらに多くの人がブックマークするという雪だるま効果などによって起きた。




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セロトニントランスポーターと幼児期別離体験と牛若丸

抗うつ薬であるSSRIが作用する部位が
セロトニントランスポーターと呼ばれている部分で、
そこにタイプがあって、S型とL型と分類され、最近ではSS型とかもう少し細かい分類に進んでいる。

シナプス間隙にいったん放出されたセロトニンを
シナプス前細胞内に再取り込みするときに
このセロトニントランスポーターが働く
ここをブロックすれば再取り込みができなくなり
結果としてシナプス間隙のセロトニン量が増える
この状態が続くと
シナプス後細胞のセロトニンレセプターは減少するだろうし(ダウンレギュレーション)
またセロトニントランスポーター自身も数が変化するかもしれない

セロトニントランスポーターを作る部分の遺伝子が
セロトニントランスポーター遺伝子であり
それにはS型とL型とがあり
遺伝子は微妙に違うが、できあがったセロトニントランスポーターの働きには違いがないと言われる
違いは多分どのくらい能率よくセロトニントランスポーターを作るかとか
どの程度の量を作れば生産がやむかとか、そのあたりに違いが出るらしい

S型の人はセロトニントランスポーターの産生がL型の人よりも少ないだろうといわれている

SS型とLL型ではストレスにさらされたときのうつ病の発現度に違いがあり
SS型ではストレスに応じてうつ病発現が多く
LL型ではストレスにかかわらずうつ病発現は一定であるとの報告がある
ストレスに弱い人の体質というものは実際どのようなものなのかの一部が示されたわけだ

S型ではSSRIの効果がL型よりもよくないだろうとも言われている。

セロトニントランスポーター遺伝子多系の研究で、
民族ごとの違いなども興味深い点である
日本人はS型が多いだろうと言われている

セロトニントランスポーターのタイプと
幼児期の別離体験をクロスさせて分類して
後年にうつ病が発生するかどうかを見ると
セロトニントランスポーターS型、かつ、幼児期別離体験ありの群が
うつ病発症の率が高いとの研究がある。

そうならば
日本人で小学校入学くらいまでに母親と分離された人などはうつ病になりやすいだろうと言える。
戦争などでそのような別離体験をした人が
戦後復興期・経済高度成長のさなかに
軽躁状態を生きてきて
30歳か40歳になってうつ病になるというのは筋が通っている

牛若丸の早期別離体験が
日本人の心を深く揺さぶるのも
S型体質と関係がありそうである。

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双極性障害の再発予防、リチウム+バルプロ酸の併用が有効

双極性障害の再発予防、リチウム+バルプロ酸の併用が有効:BALANCE試験
双極性I型障害|リチウム|BALANCE試験|メンタルヘルス


2010/02/11(木) No.J001042
長期的な治療を要すると考えられる双極性I型障害患者の再発予防には、リチウム(商品名:リーマスなど)とバルプロ酸(同:デパケンなど)の併用がバルプロ酸単剤よりも有効なことが、イギリス・オックスフォード大学精神科のJohn R Geddes氏らが行った無作為化試験(BALANCE試験)で示された。双極性障害は寛解が得られても多くが再発、慢性化し、世界的に15~44歳の障害の原因として最も重要な疾患の一つとされる。炭酸リチウムとバルプロ酸セミナトリウムはいずれも単剤で双極性障害の再発予防薬として推奨されているが、十分な効果が得られない患者も多い。再発例には、エビデンスがほとんどないにもかかわらず両薬剤の併用療法が推奨されているのが現状だという。Lancet誌2010年1月30日号(オンライン版2009年12月23日号)掲載の報告。
単剤と併用を比較するオープンラベル無作為化試験

BALANCE試験の研究グループは、リチウムとバルプロ酸の併用療法がそれぞれの単剤療法よりも双極性I型障害の再発予防に有効か否かを検討する、オープンラベル無作為化試験を実施した。

イギリス、フランス、アメリカ、イタリアの41施設から16歳以上の双極性I型障害患者330例が登録され、リチウム単剤群(血漿濃度0.4~1.0mmol/L、110例)、バルプロ酸単剤群(同750~1,250mg、110例)、両薬剤併用群(110例)に無作為に割り付けられた。

患者と医師には治療割り付け情報が伝えられたが、予後イベントの評価を行う試験管理チームには知らされなかった。最長で24ヵ月間のフォローアップが行われた。主要評価項目は「緊急の気分障害エピソードに対する新たな介入の開始」とし、intention-to-treat解析を行った。

併用がリチウム単剤より優れるかは確証できない

緊急の気分障害エピソードで介入を受けた患者は、併用群が54%(59/110例)、リチウム単剤群が59%(65/110例)、バルプロ酸単剤群は69%(76/110例)であった。

併用群は、バルプロ酸単剤群よりもエピソードに対する介入が有意に低減した(ハザード比:0.59、p=0.0023)が、リチウム単剤群との比較では有意な差は認めなかった(ハザード比:0.82、p=0.27)。リチウム単剤群はバルプロ酸単剤群よりも介入の低減効果が高かった(ハザード比:0.71、p=0.0472)。

16例に重篤な有害事象がみられた。そのうち7例がバルプロ酸単剤群で、3例が死亡した。5例がリチウム単剤群で2例が死亡、4例は併用群で死亡は1例であった。

著者は、「臨床的に長期の治療を要すると考えられる双極性I型障害患者の再発予防には、リチウムとバルプロ酸の併用あるいはリチウム単剤がバルプロ酸単剤よりも有効なことが示唆される。このベネフィットは、試験開始時の重症度とは関連せずに認められ、2年間持続した。併用がリチウム単剤より優れるかは確証できない」と結論している。

さらに、「アメリカやイギリスの双極性障害治療ガイドラインでは、長期的治療の1次治療としてバルプロ酸単剤を推奨しているが、リチウムとの併用あるいはリチウム単剤を考慮すべきである。また、リチウム単剤療法中に再発を繰り返す患者にはバルプロ酸単剤への切り替えが推奨されているが、この場合は併用療法がより有効であろう」と考察している。


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電話加入権

電電公社時代は電話加入権が多分10万円とかに設定されていて
会社の資産の一部として印刷されていたと思う

で、どこに消えたんだろう?
情勢が変化して無価値になったということなんだろうけれど
なんだかごまかされたような気分にもなる

電電公社の電話の権利というものはマーケットで値段が決まるものなのだろうか
NTTに移行して法律が変更されたのだろうか



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「未来への不安」「過去の不快な回想」から「今、ここ」に戻る

「今、ここ」→「未来への不安」

「今、ここ」→「過去の不快な回想」

いずれにしても、「今、ここ」に戻るようにする。



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自己洞察瞑想療法(SIMT)=マインドフルネス心理療法


 SIMT 目標6大技法
*** 問題を改善する6つの目標技法 ***

 疾患や問題行動は、6つの心理的柔軟性の欠如から起きる。これを改善することを焦点とした技法である。「形式技法」を実行する時に、どのような標的を改善するか、「形式技法」を「いかにして」行なうかを指示する。

①直接体験注意傾注法
重要なスキルは「自己の精神作用の自覚と価値実現のことへの注意集中」である。
自分の精神作用を自覚しており、価値実現の直接体験に注意を集中して観察して、推移をモニタリングする。不要な機能に移らない抑制、不要な対象の解放を含む。

②価値(自分の願い、人生の目標)保持法
重要なスキルは「自己の信頼、自己の尊重」にもとづく「価値保持」である。
自分の願い、人生の目標を保持し、瞬間瞬間に参照確認するスキルの習得。

③機能分析法(自己と機能の洞察)
重要なスキルは「感情の制御」である。
精神作用の全体と部分を理解して、現在の瞬間に意識している作用(機能)を自覚し、先行の機能を知り、後続の機能を推測し、本人の価値実現の方向にあるものを選択する。
自己の精神作用についてのコントロール可能性への信頼を向上させる。

④徹底的受容法
重要なスキルは「不快事象の受容」である。
不快事象があってもそれを包む心を成長させて、起きるものを拒まず、不快な事象を無評価で体験して、受容する。 最終的に、価値にそった行動を選択する。

⑤連合解消法
効果ある行動の強化と効果ない行動の消去のスキルである。
重要なスキルは「抑制、解放、注意転換」などである。
価値の崩壊になるような固い反応(「価値崩壊への反応パターン」)を解消して、柔軟性をもって価値実現の方向にある多様な選択肢を想起して選択し、実行する(「価値実現への反応パターン」)。

⑥叡智活性化法
重要なスキルは「直観的な叡智の開発」である。
叡智を開発し価値実現への反応パターン、解決技法を教育、助言する。
自己の種々の精神作用を自覚」して、不快事象があろとも種々の精神作用を包み受容しながら、自己の人生の価値を崩壊させないことを強く想起して、建設的な行動を決意する意志作用を活性化させる。

目次:自己洞察瞑想療法=マインドフルネス心理療法

◆自己洞察瞑想療法(SIMT)の概要

 呼吸法はお産の時に緊張を緩和するために指導されたり、心療内科医が心身症の患者のストレス緩和のために用いている呼吸法です。簡単なものですが、これに6つの心理的柔軟性スキルを織り込むと精神疾患を治療、予防する心理療法になります。
6つの「心の柔軟性スキル」を開発してうつ病、不安障害などを治す、予防する

 うつ病、不安障害、種々の悩みや問題行動は、6つの「心の柔軟性スキル」が充分でないことから起きる。これは、マインドフルネス心理療法の仮説です。心理的柔軟性スキルは誰でも向上させることができる。トレーニングして身につけて、悩みや問題が軽くなっている。課題を実行する時「形式」だけにとらわれて形だけを実行するのではなくて、問題解決の6つのスキルを向上させるトレーニングであることを自覚して行います。 
 呼吸法の時、日常行動する時、家庭や職場などで人に会う時、対話の時、一人でいる時、運動する時、つまりは、すべての時に、この6つのスキルの練習であることを見失わずに考え、会話し、行動します。もちろん、人が完全にできるはずがないので、少しでも多くの時間に実践できると心の病気が軽くなる。再発も予防できる。また、回復不能の過去、回復不能の病気・障害、大切なものの喪失などのつらさを、包みこんであるがまま観察してみるという意志作用の 実践も繰り返しトレーニングします。 今という瞬間(他の時間は過去や未来です)を大切に観察して自分の願いを崩壊させないような行動をとっていきます。

<第1>直接経験注意傾注の心のスキル

常に自己の作用を自覚、覚醒しており(つまり自覚ないままに苦しみを生み出す思考や行動をしていないことを自覚)、直接体験(感覚、感情、身体反応など)を自覚して大切なことに注意を集中して、無評価で観察して、価値実現の行動に真剣にかかわることができる心のスキル。
注意を対象2つ以上に分配することもできる(分配性注意=意志作用)。
見ることと聞くこと(たとえば対話中)、(従来なら回避、逃避するような出来事が起きた時など)不快事象の観察と呼吸法の実行、(同じくつらいことが起きた時)不安・怒りの観察と願いの想起と行動の探索など。
大切なことに注意を持続して、苦の結果を生み出す他の機能に移らない(嫌悪的評価、回避行動欲求など)集中のスキルも重要であり、これもトレーニングする。 仕事や通勤行動など価値実現の実行中に、不快な事象(他人からの言葉、パニック発作の前ぶれ、視線恐怖、仕事の嫌悪感、過去の不快体験の思考など)が起きても価値実現の行動を放棄(回避、逃避、中断)しないように、価値実現の行動(仕事、遊び、対話、通勤行動=電車に乗り続ける)に注意を持続できる(意志作用の活性化)スキルを向上させる。
一方、不快な事象が起きた時、その不快な事象を嫌悪して非機能的行動に移る反応パターンを修正するために、不快事象を包みこみあるがまま無評価で観察してその事象を洞察し、建設的な行動を決意する意志作用のスキルを向上させる。

<第2>価値(自分の願い、人生の目標)確認の心のスキル

自分の願い、人生の目標を保持し、瞬間瞬間に参照確認できる心のスキル。個人の価値実現、願いであって、治療者の価値ではない。たとえば、ある人が 仕事によってうつ病になって治らなくて、仕事は無論であるが家事ができない、他人と会話ができない、外出もできないという状況だとしよう。こういう時、価値・願いは必ずしも「仕事への復帰」ではない。個人個人で違ってよい。 ある人は、仕事の復帰、ある人は「もう仕事への復帰は望まない、家事ができるようになればよい」というならば、それを目標として治療をする。そのような現実的な価値を確認して持ち続けることが治療の動機づけとなる。この目標は治療がすすんできたら、さらにすすんだ価値実現をめざすことはかまわない。
 マインドフルネス心理療法の「価値」は現実的で生きる上で効果的なものでなければならない。「がんが治る」ということは心理療法の目標ではない。「がんであっても心理的な苦悩によって余生をうつの中ですごすのではなくて充実した心で生きたい」というのであれば、現実的で効果ある「価値」である。
価値をほとんど自覚意識しない場合、問題を持続させたり、治療参加への動機づけが失われたり、悲劇的な事態(自殺、非行犯罪等)に発展することがある。
つらいことがあろうと、自分の願いを崩壊させるような無茶なことをしたら、自分が苦しむだけである。一時的な回避、逃避したり、一時的に楽になる方法でまぎらしても、家族や社会にあたりちらしても、後の長い人生を長期間苦しむ可能性がある。長期的な視野で自分の願いをしっかりもって、その実現のために、無茶な行動、無益な行動、逃避行動はしない。すぐにはできないので、その方向でトレーニングしていく。
(注)ヨーガにも呼吸法がありますが、6つの心理的柔軟性の向上、精神疾患の治療の原理はないでしょう。 呼吸法に似た指導法を行なう宗教団体がありますが、そういう宗教は「団体としての価値」を規定しています。たとえば、「目的のない実践」とか「悟りをめざすくふう」とか。だから、個人個人の多様な価値実現を認めないところがあります。従って指導方法も全く違っています。
ところが、マインドフルネス心理療法は「個人の願い、価値実現」を目標にします。「精神疾患を治す」「自殺したい気持がある、治したい、強く生きるようになりたい」「精神疾患を予防する」「ひきこもりを治したい」「子を虐待する心があるのを治したい」「スポーツ選手だがメンタルに強くなりたい」「精神科医、心理士だが効果ある心理療法を併用して患者さんを治したい」「家庭の不和を改善したい」「がんになってつらい。闘病の心構えを身につけたい」など、個人、個人の願い、価値実現を目標にします。
 これは、アメリカのマインドフルネス心理療法も同じです。だから、マインドフルネス心理療法は組織の統一した価値実現を目標としている宗教とはほど遠いものです。マインドフルネス心理療法は1人1人違う個人の願い(価値)を達成するための精神疾患を治療する心理療法ですが、予防法、職業上のメンタルスキルの向上、ターミナルケアなどにも充分に応用できます。アメリカはキリスト教の人が多いのでしょうが、そういう中にあって、発展しているマインドフルネス心理療法ですから、宗教とは違う医療法、メンタルスキルの向上法です。

<第3>機能分析(自己の存在と種々の精神作用、精神機能の洞察)の心のスキル

自己全体の洞察によって主として「思考、感情や行動を制御」する心のスキルである。
精神疾患、非行犯罪、他者を苦しめるところには、「曇った観察・判断」によってものごとをみており、自己の全体がわかっていない。
自己の精神活動の全体と部分(=機能。感覚、思考、感情など)を理解して、現在の瞬間に生起している機能(要素、部分)を理解し、 先行の機能を知り、後続の機能を推測できる。過去や将来の思考による支配を理解し克服する。各機能(要素)の特徴を知り、問題の理解によって自己信頼を獲得する。
要素間の関係を理解し、瞬間瞬間、自己の現在と次の瞬間の行動の結果を推測できるようになる。次の行動が自己や他者を苦しめる結果となる行動をやめて、苦しみを解決する結果となる行動を選択できるようになる。自己の精神活動を「澄んだ観察・判断」の眼でみるスキルを向上させる。
今、ここの瞬間は、自己の生命のすべてである。今の瞬間があるのだから、感覚の時は、それが自己全体になる。瞬間、瞬間、種々の働きが移り行くが、いつもそういうものを意識し観察する自己がある。ものごころついてから一貫して観察する自己があって、感覚や思考や身体反応は変わりゆくもので自分自身のすべてではない。そうすると、つらく感じられる思考内容や感情もあまり苦痛に思わなくてすむのかもしれない。嫌悪的自分の評価も変わり行く波のような思考の一種。こうして、思考、感情などのありさまを違う見方ができるならば、感情にとらわれて無益な行動をしていたことが変われるかもしれない。

<第4>徹底的受容の心のスキル

「不快事象の受容」の心のスキルである。
自分の意識的な努力をもってしてもやむを得ずして起きる(病気の症状や対人関係における不快な出来事など)ものを拒まず、不快な事象を無評価(「澄んだ観察・判断」)で体験して受容して最終的に価値にそった行動を選択する心のスキル。
避けることができない不快な体験が起きるが、起きることを嫌って回避(場所、人、話しを避ける)すると社会生活が障害され、自分の価値・願いが崩壊する。それは、思考(言語プロセス)で拡大していく。そこで、不快な体験をそのまま(言葉で善悪の評価や結果拡大などの連想をせず)無評価で体験して受け入れるスキルを向上させる。無評価で受け入れていれば、その不快な体験の強度が変化するかもしれない。不快事象の強度が変化しなくても、感情が増大せずにすんで、回避や無益な行動をしなければ、社会生活は障害されず、価値は崩壊しない。

<第5>連合解消の心のスキル

感覚や感情、身体反応などの刺激、思考(判断・評価)、感情、行動などの反応パターンが学習されて、非機能的(不適応)な行動が繰り返されて、本人が自覚的な症状(たとえば、抑うつ気分、不安におびえる、など)に苦しんだり、社会生活が阻害されたりする(たとえば、仕事ができない、人とあうことを回避する、など)。 思考が行動に、行動が思考に、感情が行動にと重層的、循環的に連鎖・連合があり、問題が維持される。意識される心理行動と神経生理学的な問題の相互作用もある。
抑制、解放、注意転換などの心のスキルを駆使しながら、他の5つのスキルを活用して種々の連鎖・連合の解消を図る。そして 「価値崩壊の反応パターン」の連鎖を修正できる心のスキルである。
注意を持続して他の不要無益な行動に移らない抑制、不要な対象を捉えていることに気づいて解放するスキル、価値あることに注意を転換するスキルなどが必要となる。
背景に神経生理学的な部位の機能低下や機能亢進があるかもしれないと自覚して、改善効果のあるトレーニングをすることによって、症状や問題が改善するかもしれないと理解して課題を実行する。

<第6>「直観的な叡智活性化」のスキル(叡智活性化法)

4つの智慧を理解して、無評価の智慧にもとづく直観的な叡智、活発な意志作用を開発させる。
独特の認知(考え:苦悩の智慧)が障害を維持悪化させたり、治療行動を回避させたりしている場合、認知の修正ができる柔軟な心のスキルを向上させる。たとえば、朝起きるのが症状回復になるという考え、機能低下がしている精神活動は、それをあえて使うトレーニングをすることが回復になるという考え方などがある。合理的な智慧を学習する。これは副次的である。
自己の精神作用、自己自身、人、世界に対して苦悩の智慧によって「曇った観察」をしており、無評価でありのままで観察して、建設的な行動を選択することができない。つまり、意志作用が活性化していない。自己の精神作用、対象、内容を 無分別、無評価で包み洞察する智慧を基礎として、直観的な叡智を体験的に開発する。事象をすべて包み「澄んだ観察」により、あるがままの自己の精神作用、自己自身、人、世界のみかたを変えて、直観的な叡智を開花させる。


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マインドフルネス&アクセプタンス ACT

1.例としてマインドフルネス&アクセプタンスに関する文章を次にあげる。これで何が治り何が治らないか、各自で考えて欲しい。

2.苦しみとは何か?
マインドフルネス&アクセプタンスは原因療法ですから、苦しみや心の病の原因が何であるかを把握している必要があります。
私たちが感ずる苦しみには生命の苦しみ、恐怖(不安)の苦しみ、関係の苦しみの3つがあります。
生命の苦しみは母体に宿ってから死ぬまでの身体的な苦しみ、恐怖(不安)の苦しみは安全が脅かされる苦しみ、関係の苦しみは人間関係など相対的に生ずる苦しみです。
この中で生命の苦しみも恐怖の苦しみも自分の心の中で生ずることがわかりますが、一番わかりにくいのが関係の苦しみです。

私たちが家庭や学校や職場の人間関係で苦しみを感ずるとき、その原因は自分の外側にあると思っています。
たとえば自分の悪口を言う人がいれば、相手に悪口を言わないように要求したり、相手を避けようとします。
しかしその人を避けたとしても、ほかに悪口を言う人が現れればまた苦しくなります。
潜在的に苦しみを抱えながら、いつも人や環境から逃げ回っているわけです。

ところが同じように悪口を言われてもあまり気にならない人がいます。
それは苦しみの実体が悪口にあるのではなく、苦しみを感ずる側の心の中にあることを示唆しています。
悪口を言われて苦しいとき、自分の心の動きを観察していただくと、「自分の悪口を言わないで欲しい」という強い思い(自動思考/マインドトーク)があることに気がつきます。
その自分の思いと相手の悪口が、自分の心の中で戦っているのです。
その戦い(葛藤)が苦しみの実体で、心の中の戦いが自分の外側に広がって、相手と戦うようになります。

一方悪口が気にならない人は、「自分の悪口を言わないで欲しい」という思いが少ない人で、心の中で葛藤が少ないから苦しくないのです。
苦しむ人と苦しまない人の違いは、自分の外側に向かう思いが大きいか小さいかの違いであることがわかります。
私たちが関係の苦しみをなくそうとするとき、相手や環境を変えようとすれば戦いと苦しみが広がるだけです。
相手や環境は自分の思い通りになりませんから、相手に求める自分の思いをなくさなければ何も解決しないことがわかります。

3.思考の依存性
関係の苦しみは自分の外側に何かを求める思いによって生ずることがわかりました。
例えばいじめで「無視をする」という手段があります。
なぜ無視されるのが苦しいのかといえば、「仲間外れにしないで欲しい、自分を認めて欲しい」と求め続ける思いがあるからで、それがなければいくら無視されても何ともありません。
自分の心をよく観察していただくと、私たちの心は求める思いだらけなのです。
その求める思いによって、求めるものが不可欠になってしまうのが依存性です。

求めるものが人に対する何かであれば、「人のせい、人次第」という相手への依存性を高めて、「~してくれない」という所謂「くれない族」になります。
そのため不平不満が強く、自分の心はいつも人や社会に振り回されて、それが心の病の原因になります。
求める思いはモノやコトへの依存も深め、そのため経済的身体的に支障をきたすものが、「依存症」として定義されます。
依存性は得られても得られても、際限なく何かを求め続けて、求めるものに依存します。
なぜ際限がないのかというと、求めるものより求める思いが先にあるからで、求めるものが得られても求める思いは充足することがないからです。

依存性の求める思いは、自分よりも弱い人に対して支配的になり、押し付け、言いがかり、言葉の暴力、身体的暴力へとエスカレートしてゆきます。
依存性による暴力(攻撃性)は自分の外側に向かって攻撃的であると同時に、自分の内側にも向かって、自分の被害者意識を拡大します。
自分の殻、人嫌い、被害妄想、抑うつなどが被害者意識です。
依存性が強いということは、自立性や創造性などの自己が失われているということでもあります。
そのため心の自由や創造性が失われて、特定の思考パターンに陥りやすく、そこからなかなか抜け出せなくなります。
それが同じことを繰り返す嗜癖(しへき)として表れます。
依存性はそのように関係のストレスや悩みや苦しみを生み、依存症や心の病を生み、暴力や戦争や犯罪を生んでゆきます。

4.思考の二元性
関係の苦しみには、依存性の苦しみのほかに二元性の苦しみがあります。
私たちは小さいころから社会生活の中で、人と自分を比較しながら育てられます。
学校では成績順に評価され、スポーツも優劣を競って比較の中で自分の力を伸ばそうとします。
そのように自分が成長する動機は自分の内発的なものではなく、人より優越を感じたいという比較によるものでした。
しかし優越の喜びには劣等の苦しみがあります。
それは優越の人と劣等の人が別々に存在するのではなくて、優越を感じる人が自分の劣等の部分に苦しむのです。
優越感と劣等感は表裏一体の感情であり、優越感のある人が劣等感に苦しみ、優越感のない人が劣等感にも苦しみません。
つまり優劣の二元性が苦しみなのであって、優劣どちらにも偏らない心が苦しみのない心なのです。

優劣の二元性のほかにも善悪の二元性があります。
私たちは自分に都合のよいものを善として歓迎し、自分に都合の悪いものを悪として排斥します。
ところが私たちの心の中には善も悪も混沌としています。
たとえば人を殺せば殺人という大悪ですが、私たちの心の中には「殺してやる!」と言わんばかりの憎しみが鬱積しています。
だから正義感で社会の悪を糾弾すればするほど、自分の中の善が自分の中の悪と葛藤して、それが苦しみになるのです。
人を善悪で裁いて許さなければ、その裁きは自分も裁いて許しません。
自分を責めたり否定して苦しむ人は、人を善悪で裁くからです。
善悪を峻別する二元性が苦しみなのであり、善悪に偏らない心が苦しみのない心です。

このような二元性はほかにもあって、苦楽もその1つです。
苦があるから楽がある、楽を求めるから苦しくなるわけで、そこにACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)のルーツがあります。
苦しみを否定せずにそのまま認め受け容れるようになったとき、つまり楽になろうと思わなくなったとき、苦しみは自然と消滅してゆきます。

5.心の3要素
「マインドフルネス&アクセプタンス」を理解するために必要な心の要素は、「感情」と「思考」と「自己(存在)」の3つです。
感情は「喜怒哀楽」で表現されますが、私たちは恐怖や関係の苦しみなどを感情として体験しようとするとき、逃げたり我慢することによって感情の体験が中断されて、未消化の感情が残されてしまいます。
それはなぜかというと、私たちに善悪を仕分けする自動思考(マインドトーク)が働いて、それによって嫌な感情が否定されるからです。
テーマに沿って自分の意思で何かを思索する以外、ほとんどの思考は自動的に起こっています。
もし自分が考えていると思うなら、是非思考を止めてみてください。
自分で思考を止められないのは、思考が勝手に考えているからで、苦しみはすべて自動思考によるものです。

蓄積された感情は水中に沈められた風船のように、事あるごとに浮かび上がっては自動思考を誘発します。
それでも逃げたり我慢し続けるので、感情の風船はどんどん膨らんで蓄積してゆきます。
私たちが突然怒りの衝動を感じたり、自分ではどうしようもないトラウマを抱えてしまうのは、そのような蓄積された感情があるからです。
蓄積された感情は幼少期に親子関係で生じたものが核になっていて、それが社会生活の中で雪だるまのように膨らんでいます。
親は一生懸命子供のために尽くすのですが、小さな子供の感じ方がわからないため、心ならずも子供の心を傷つけてしまいます。
子供は楽しいことは満喫して忘れますが、嫌な感情は心に蓄積したまま、その感情によってその後の人生を支配されます。

私たちが感情と思考をこのように見つめるとき、その見つめる心の存在が浮かび上がってきます。
それが3つ目の心の要素である自己です。
自己は「いまここ」の現在進行形の中にあって、そこには自分という分離した概念はありません。
それは無我夢中の「無我」の状態で、時間もありません。
私たちは時々あっという間に時間が過ぎ去る集中した状態になることがありますが、それが無我であり、そこに自己があります。
自己には認識、意思、自立、創造、愛、喜びなどがあって、私たちの心の核になっています。

6.心の病とは
心の病は突然起きるわけではありません。
それは悩み苦しみの延長上にあって、苦しみが臨界を超えて医療に託されたとき、初めて心の病として診断されます。
私たちに日常起こっている苦しみと心の病は連続しているのです。

心の病では思考に依存性の嗜癖を持っていて、思考のパターンが偏ったまま同じ思考を繰り返しています。
その思考の癖が不安感(恐怖感)や心身症状に現れると神経症になります。
また苦しみから生ずるストレスや恐怖感や否定的な感情は、被害性の抑うつ感情を蓄積して、鬱病の原因になります。
心の病がいろんな症状を合併するのは、このように同じ原因がその人の性格や進行によって変化して表れるからで、複数の病気が重なっているわけではありません。

心の病の原因は、今日では脳内物質や脳構造の異変とされますが、本当の原因は偏った感情と思考の連鎖によるもので、脳内物質や脳構造の異変は原因ではなく結果の一つなのです。
薬物は結果を錯乱しているだけなので、一時的に効果はあっても、根本的には治ることはありません。
ですから緊急の対応としては有効ですが、長期的に服用すれば、生理的依存性によって常用化し、副作用の弊害が出てきます。 
また根本的な治療法ではありませんから、治ったと思ってもいずれ再発することになります。

心の病は脳というハードウェアのトラブルではなくて、心というソフトウェアのトラブルなのです。 
ですから自分の心を変革する以外に、根本的に治る方法はありません。

7.鬱病の療法
鬱病に苦しむ人がとても多いので、ここでは鬱病を想定して療法の手順を書きます。
心の病は原因がほとんど同じですから、どんな病気も基本的には同じ考え方で対応しますが、人によって何を優先するかは違います。
これは医療行為ではありませんので、医師の診断、投薬を受けた上で、医療と並行してやってください。

鬱病を治してゆく上で最初に注意することは、苦し紛れに現状を変えようとしない、つまり決して治そうとしないことです。
鬱病の原因は心の中の葛藤にあって、症状はその結果に過ぎません。
その結果を操作して鬱病を治そうと思っても、葛藤が大きくなるだけで、鬱病は悪化する一方なのです。
逃げること、我慢すること、変えようとする(戦う)ことの3つの回避行動はすべて自動思考によるもので、これさえなくなれば自然に治ります。
鬱病はあるがままを受け容れて、過去、現在、未来と続く時間軸の先に期待や目標を持ってはなりません。
これがACTの基本的な考え方です。

次に鬱病の原因である攻撃性の抑圧された感情を解放してゆきます。
攻撃性の感情は、過去人間関係で生じた恨みや怒りの感情を避けたり我慢したため、それが未消化のまま蓄積されてしまったものです。
相手ごとにトラブルのあったシーンを思い出して、その時湧き上がる感情をあるがまま体験してゆきます。
普通はカウンセリングで行いますが、自分でやる場合は感情をそのまま言葉にしたり、ノートに書きなぐります。
感情を体験するというのは、どんな気持ちも否定しぜに感情を自由に表現しながらそこに留まることです。
この方法はACTの応用ですが、段階的に効果を検証できますので、今後心理療法の主流になってゆくと思われます。

苦しみは思考と感情の連鎖によるものですが、ACTは感情への働きかけを目的にして行われ、それと両輪の関係にあるマインドフルネス法は、思考に働きかけて思考に振り回されない自己をめざしてゆきます。
マインドフルネス法では瞑想を通して「いまここ」の現在進行形に傾注します。
さらに食べる、歩く、仕事をするといった日常生活の中で感じる生き方を目ざしてゆきます。
それを習慣化することで自己が強化され、感情と思考に振り回されないようになります。
自己を強化する方法として感謝法も有効で、これは簡単ですからマインドフルネス法の1つとして実施したらよいです。

8.ACTによる感情の浄化法
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)は第3世代の認知行動療法に属する新しい心理療法です。 
その起源は仏教など東洋の自然思想にあって、森田療法の要素と同じものです。 
その基本的な考え方は従来の療法とは正反対で、快さを求めるのではなく、苦しさを受け容れてゆくというものです。 
これは先入観からは思いつかない方法ですが、実際にやってみると、これまでの方法がいかに逆のことをやっていたかがわかってきます。 

私たちは生きてゆく中で精神的な苦しみを感じ、それを回避しようと努力します。 
しかしその回避行動が心の中で葛藤となって、逆に苦しみを深めています。 
回避すればするほど、自分の中の戦いは激しくなり、それが自分の外側(周囲との関係)にも広がってゆきます。 
長い目でよくなるには、苦しみを回避するのではなく、すべての状況をあるがまま受け容れることです。 
自分の身の回りに起こることはすべて、苦しみも怒りも恐怖も、それを避けようとするのではなく積極的に受け容れてゆく、その結果として苦しみがなくなってゆく。・・・それがACTの基本的な考え方です。 

ACTによる感情の浄化法は、それをトラウマや鬱病などの原因療法として応用するものです。 
そのやり方は過去に嫌なことがあった場面を思い出して、湧き上がる感情をあるがまま受け容れてゆきます。 
それを相手単位、場面単位で感情が湧かなくなるまで繰り返します。
それによってこれまで自分が振り回されてきた感情が短期間に消滅して、化石のような感情の湧かない記憶になります。
ACTによる感情の浄化法では、その効果を実感しながら進めてゆくことができます。

多くの場合、その感情は成育時の親子関係において形成され、それが学校生活や社会生活の中で雪だるまのように膨らんでいます。 
蓄積した感情は抑えようとしても抑えることができず、それが臨界を超えると心や体の病として症状が表れてきます。
たとえば鬱病は攻撃的な感情、否定的な感情が抑うつ感情になっています。
トラウマなどの心の傷もこの方法で解決することができます。

9.マインドフルネス/失われた自己を取り戻す
私たちの心は、感覚と感情からの刺激によって、いつも自動思考(マインドトーク)が誘発されています。
心の病は、自動思考と感情がスパイラル状に連鎖して、自己がそれに引き込まれてしまった、いわば暴走状態になっています。
失われた自己を取り戻して思考と感情から自由になり、さらに思考を自在にコントロールするためのトレーニングとしてマインドフルネス法(瞑想)が用いられます。

瞑想では、「いまここ」の現在進行形に注意を向けながら、思考と感情を客観視します。
私たちの思考は過去から未来につながる時間軸上にありますが、自己は瞬間瞬間の現在進行形にあって、両者は別々の心の要素なのです。
私たちは連続的に行われる呼吸に意識を向けることによって、「いまここ」の自己にあり続けることができます。
そして湧き上がる思考や感情は、そのまま捉われずに放置して、私たちは呼吸に意識を向け続けます。

瞑想には座って行う座禅がありますが、それ以外にも歩くこと、食べること、踊ること、仕事をすることなど、生活のあらゆることに応用が可能で、生き方のすべてを瞑想にすることができます。
たとえば草取りでも掃除でも炊事洗濯でもスポーツでも、行動しながら目で見、音を聞き、身体の感触を全身で感じます。
それは瞑想と同じ状態で、感じているとき思考は止まり、思考が働いているときは感じることが止まります。

瞑想が進むと思考のない生き方ができるようになりますが、それがどんなものかを想像してみます。
私たちが街で車を見るとき、車の色は何色?とか、どこのメーカーの何の車種?とか、かっこいい!などと無条件に言語化が行われていることに気がつくでしょう。
この言語化によって思考が発生し、実際には見るものを見ていません。
思考のない生き方は、その車を目に入る光のまま感じています。
思考のない状態で、自分の意思で思考を使うことができれば、極めて高速に思考の切り替えができ、明晰な頭脳と高い創造力を発揮することができます。

ここでのテーマは思考をなくすことではなくて自己を取り戻すことですが、それは同時に考えることから感じることへの移行、過去、現在、未来の時間軸から「いまここ」への移行、関係の世界から自分の内面世界への移行が行われます。
瞑想は指導を受けなければなりませんが、その要素は「マインドフルネス」として第3世代の認知行動療法になっていますので、事前にそれを学ばれると効果的に瞑想を習得できます。

10.感謝法
「いまここ」の現在進行形には大切な心が働いていることがわかりました。
私たちは「いまここ」に全力を尽くし、「いまここ」に楽しさを感じ、「いまここ」に豊かさを感じることができれば、将来にも全力を尽くし楽しく豊かな自分がいます。
どこか将来に幸せがあると思っている人は、将来になってももっと先に幸せがあると思っている自分がいるだけです。
幸せは「いまここ」の現在進行形にしかないことがわかるでしょう。

その「いまここ」を喜びに満たす方法が感謝する習慣です。
感謝というのはおざなりにお礼を言うことではありません。
本当の感謝は喜びの表現であり、その表現によって周りの人にも喜びが伝わってゆくことです。
感謝することによって喜びの感動が起こり、自己がどんどん活性化してゆきます。
苦しみの深い人は共通して、感謝することが少ないことに気がつくはずです。

その感謝を習慣化する方法が感謝法です。
感謝法の1つは1日10回以上「ありがとう」という言葉を使います。
使うというのはありがたいと感じなければ使えませんから、この方法は同時に「ありがた探し」の意味合いがあります。
これを何年か続けるうちに、感謝する習慣が身についてゆきます。

もう一つ短期間で感謝する習慣を身につける方法として、毎日49分づつ時間を取って、10万回を目標に「ありがとう」を唱えます。
これはありがたくなくても声を出して唱えるだけで結構です。
声の響きが直接脳に影響を与えて、短期間で感謝する習慣を身につけることができます。
感謝する習慣が身につくと、顔がいつもほころぶようになって、無条件で幸せを感じます。





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マインドフルネス認知療法(mindfulness-based cognitive therapy: MBCT)

以前の私は瞑想法というと、霊的・宗教的意味のあるニューエイジ系の治療というイメージを持っていましたが、実はマインドフルネス瞑想法(mindfulness meditation)はすべての人に対して、霊的信念や価値観などの変更や放棄を求めることをしない認知療法の一つです。最近、「認知行動療法の第三の波」として注目を浴びるようになってきました。

 

 

マインドフルネス瞑想法のルーツは2600年前の仏陀の観(ヴィパッサナー)瞑想に遡ると言われています。マインドフルネスは「今の瞬間の現実に常に気づきを向け、その現実をあるがままに自覚し、それに対する思考や感情には囚われないでいる心の持ち方、存在の有様」と言われています。つまり「今ここで知覚される対象に注意を向け、その対象を思考の働きで変化させないように気をつけ、観察に徹する行動」です。

 

具体的な方法については熊野宏昭先生の説明が簡便で患者さんにもすぐ実践できるものとなっていると思います。

 

座禅をするときのように身体の力を抜き、背筋をのばして座り(正座でも、椅子でも構いません)、そして、呼吸に伴う身体の動きに気づきを向けます。

 

その際、呼吸は「ゆったりと」するくらいにして、なるべくコントロールしないようにします。つまり、<呼吸のことは呼吸に任せていく>のです。そして、例えば、お腹や旨の辺りの動きに気持ちを向けて、「ふくらみ、ふくらみ」「ちぢみ、ちぢみ」と、身体が動く感覚をそのまま感じるようにします。

 

そうこうしていると、すぐに何かを考えているのに気づくでしょう。そうしたら、「雑念、雑念」と心の中で2~3回唱え(ラべリング)、さらに「戻ります」と唱えて呼吸に伴う身体感覚に優しく注意を戻すようにします。あるいはどこかに痛みを感じたら、「痛み、痛み・・・・・・・、戻ります」、かゆみを感じたら、「かゆみ、かゆみ・・・・・・・・、戻ります」という具合です。

 

しばらく続けていくと、また何かを考えています。今度はしばらく気付かずに、「あいつにだけは負けたくない」とか、「これだけは自分のものにしないと」などと考えてしまっているかもしれません。そういった場合は、思考のレベルを超えて感情が動き始めていますので、「怒り、怒り、怒り」「欲、欲、欲」などと「ラべリング」していくようにします。

  

以上のように、雑念、五感、感情などに巻き込まれていることに気づいたら、ラべリングをしてそっと呼吸の感覚に戻るということを、繰り返し繰り返し行っていくわけです。

 

マインドフルネス認知療法(mindfulness-based cognitive therapy: MBCT)では、瞑想の練習時間は初回は10分程度、最終的には45分程度を目標としています。しかし、あまり形式ばらなくても日常生活の中でマインドフルネスをとりいれることは可能です。ちょっとした休憩時間、散歩しているとき、ソファーに横になっているとき、読書、ストレッチのときなどにもできると思います。私は、患者さんに日常生活の中で、突然、不安や強迫観念が出てきたとき、否定的思考にとらわれそうになったとき、マインドフルネスを実践してもらっています。

 

私自身の実践経験ですが、仕事にせきたてられ常に身体の緊張、不安に付きまとわれた時期がありました。朝日を浴びながら散歩しているのに、不安が取れず、仕事が間に合わなかったらどうしようなどと焦りや恐怖感にとらわれ、身体が硬く、特に首筋(斜角筋、胸鎖乳突筋など)や僧帽筋などの緊張が強く、身体的な不快感を味わいながら、歩いていました。この時に否定的な思考が出てきたことを自覚し、「あせり、あせり・・・・」「不安、不安、・・・・・・」とラべリングして、さりげなく呼吸に注意を戻すということを繰り返しました。はじめは苦しみは和らぎませんでしたが、しばらくやっているうちに、不安がピークにさしかかったと思われた瞬間、不安や焦りの感情をやり過ごすことができ、あっという間に首筋、肩の筋肉のスパズムが消えてしまいました。

 

MBCTはうつ病再燃のリスクを低減する可能性があります。うつ病から回復した人でも、特定の否定的思考パターンに依然として脆弱である場合、マインドフルネスが効果的であると言われています。MBSR(mindfulness-based stress-reduction)に関しては痛み、ガン、心疾患、うつ病、不安障害、ストレスに悩む健常者などを対象にした20の研究のメタ解析で心身両面に十分な効果が認められるという報告もあるそうです。

 

長年、観瞑想を続けてきた人は、背内側前頭前野と島の皮質の体積増加しているという報告もあります。この部位は、パニック障害のエクスポージャー治療の長期効果と共通する場所だという。背内側前頭前野は感情に対する注意、思考に対する注意という機能を持っている。自分の心の中の感情や思考の動きを客観的に観察する能力、さらに自分の心に対する認識ばかりでなく他者の心に対する認識も、この部位でなされているという。

 

よって、マインドフルネスにより、自分の思考や感情に巻き込まれずに、それを外から客観的に観察していこうという方法は、パニック障害のエクスポージャー療法と深い関連性があるという。

 

すべての私的現象(思考、感情、身体感覚、記憶など)は変わり続けていく一過性の出来事にすぎず(無常)、どこにも不変の自分などは存在しない(無我)、そのように一過性のものに執着すると失望を繰り返し味わうことになる(苦)、という事実をありのままに観察することで、批判や比較などの思考によって作り出される不満と渇望の悪循環から抜け出すことを目指すマインドフルネスは、「自分」と呼べるものはどこにも存在しないという認識を持つことになる。「自己」という構成概念に直面化するゆえに、マインドフルネスは認知行動療法の第三の波として位置づけられている。



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世界を味わう・変える、世界はよい・悪い

根本的な態度として
世界はよい・悪いの感じ方の違いがある

またその世界を変える・味わうの違いがある

それを表にするとこんな感じ

         世界を味わう  世界を変える
世界はよい  詩人       穏健な労働者    

世界は悪い  厭世家     革命家 

私は世界はよいと思っていて、世界を味わえば自由分だと思っているので、詩人に属する

ーーー
考えて見れば
世界が悪いのにそれを味わうというのも
正当な態度ではないし
世界が良いのに世界を変えるというのもおかしな話で


となると、世界は良い、だから味わうとする、詩人と
世界は悪い、だから変えるとする、革命家の
二種類に集約されるのかもしれない。

ーーー
追記
世界は悪い、だから良くしよう、というのがバットマン
世界は悪い、だからもっと悪くしようというのがジョーカー

世界は悪いという絶望の認識の点ではやはり一致している






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スカっとする写真

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経口避妊薬飲み忘れの場合の対処

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いちにちを降りゐし雨の夜に入りても止まずやみがたく人思ふなり

いちにちを降りゐし雨の夜に入りても止まずやみがたく人思ふなり
藤井常世

*****
一日中ずっとずっと雨に閉ざされ
なおも降り続く雨の夜
まだ雨は降り止まず
やみがたくもあなたを思うことだ

*****
喋ってないし
考えてない言葉で
詩を作ると言うのは
一体どういうことなのだろうと
不思議に思う

詰め将棋を作る人と解く人という感じかな



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目元整形美人

近頃の整形美人はみんな目元の具合がよく似ていると
8丁目で言うと
そのお店は若い人なんていないので
そうだそうだと盛り上がる

人の悪口を言っている暇があったら稼ごうよ
と言っている割には
人の悪口で盛り上がる

皆さん離婚歴有りとかでその方面でもかなり盛り上がる
「わたしは妹と二人でね、女ばっかりで育ったの。
妊娠して検査で男の子だって分かったの、母親に電話したら、
良かったね、わたしは男の子育てたことないから分かんないけど、
向こうは長男の最初の子が男だからきっと喜ぶわよ、と言われて
姑に電話したら、やっぱり喜んで、男の子は手をかければかけただけ返ってくるのよ、
なんて言うんで、わたしは凍りついたってわけ、
あんたこれから返せって言うのねと思って」
などと言う

内緒だけど、実はこの間出産したばかりという人もいて
親しくなるといろいろ話してくれる
「無認可保育なんだけど、セレブの保育所なの、
だってね、信じられる?
認可保育所だと、おむつをうんち付きで持って帰るのよ、
そこは普通に捨ててくれる、
うんち持ち帰りってどんな意味があるのかしらね」
「いまどうしてるかなって思ったら、ネットで確認できる、実況中継があるの」
などなど
まだ母乳が出る
同席した人は
「それはうんちの具合くらい親なら確かめなさい、だろ」と言う

子育てについては
「姑と半年くらい同居したことがあるの、
びっくりしたのは、子どもが、自分では何もしなくなったの、
変だなって気がついてよく見ていると
姑が、私が片付けてあげる、私が食べさせてあげる、私が着せてあげるって、
連発。ははん、これで自分の息子をだめ男に育てたんだなと気がついて、
そのまま離婚したわ、
自分で自分の着るもの選べないって、育て方なんだよ」
とのこと

虐待する親に育てられると
DNAがメチル化して、遺伝子の発現がマスクされて、
結果として虐待する人間になるっていう報告があるの、
DNAに対する後天的制御なのよ、
なんて言うので、話を聞いてみると
医学部の学生だけどバイトをしているのだという
母子関係に興味があるとのこと


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私の立場

考えてみると私の立場というものは
各思考方法のジャッジのようなものと思う

この問題について
あの立場・理論ならばこのように考えて、このように対処する、と複数の立場を比較的公平に論評し
しかしながら絶対に正しいものでもない
これまでの例で言えばどの程度の成功率とか説明できる

というわけで、まったく迫力がない

一つのものに惚れ込んで徹底的に支持するとか布教するとか、そんな具合ではない

ーー
それぞれにいいところも悪いところもあるんだよね
と説明しても、解決を求める人には物足りないだろう

でも仕方がない
元来が、そういう人間なのだから


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教育と臨床と創造

教育はどちらかと言えば過去に確定したものについての説明になる

臨床は今現在生成している何かである

創造はどちらかと言えば未来である


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