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宮沢賢治

宮沢賢治

みんながめいめい自分の神様がほんたうの神さまだといふだろう。
けれどもお互いほかの神さまを信ずる人たちのしたことでも
涙がこぼれるだろう。
それから僕たちの心がいいとかわるいとか議論するだろう。
そして勝負がつかないだろう。

けれどもしおまへがほんたうの考とうその考とを分けてしまえば
その実験の方法さえきまれば
もう信仰も科学と同じやうになる

正しく強く生きるとは
銀河系を自らの中に意識して
これに応じて行くことである

((みんなむかしからのきやうだいなのだから
けつしてひとりをいのつてはいけない))

『春と修羅 ~青森挽歌~』

もうけつしてさびしくはない
なんべんさびしくないと云つたとこで
またさびしくなるのはきまつてゐる
けれどもここはこれでいいのだ
すべてさびしさと悲傷とを焚いて
ひとはとうめいな軌道をすすむ

宇宙は絶えずわれらによって変化する
誰が誰よりどうだとか
誰の仕事がどうしたとか
そんなことを言つてゐるひまがあるか

新たな詩人よ
雲から光から嵐から
透明なエネルギーを得て
人と地球によるべき形を暗示せよ

まことのことばはうしなはれ
雲はちぎれてそらをとぶ 
ああかがやきの四月の底を 
はぎしり燃えてゆききする 
おれはひとりの修羅なのだ

『春と修羅』

まづもろともに
かがやく宇宙の微塵となりて
無方の空にちらばらう

『農民芸術概論綱要』

ぼくはきっとできると思う。
なぜならぼくらがそれをいま
かんがえているのだから

『ポラーノの広場』

永久の未完成
これ完成である

『農民芸術概論綱要』

新たな時代は
世界が一の意識になり
生物と成る方向にある

『農民芸術概論綱要』

僕もうあんな暗の中だってこわくない。
きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く

『銀河鉄道の夜』

きみのやうにさ
吹雪やわづかの仕事のひまで
泣きながら からだに刻んで行く勉強が
まもなくぐんぐん強い芽を噴いて
どこまでのびるかわからない
それがこれからの
あたらしい学問のはじまりなんだ

『春と修羅 第三集 ~[あすこの田はねえ]~』

何がしあわせかわからないです。
本当にどんなに辛いことでも、
それが正しい道を進む中の出来事なら
峠の上りも下りもみんな
本当の幸せに近づく一足づつですから

『銀河鉄道の夜』

さあ、切符をしっかり持っておいで。
お前はもう夢の鉄道の中でなしに
本当の世界の火やはげしい波の中を
大股にまっすぐあるいて行かなければいけない。
天の川のなかでたった一つの
ほんとうのその切符を
決しておまえはなくしてはいけない

『銀河鉄道の夜(初期形第三次稿)』

けれどもどうしてももうできないときは
落ちついてわらっていなければならん。
落ちつき給え

『グスコーブドリの伝記』

わたくしといふ現象は
仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い証明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといつしよにせはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です

『春と修羅 序』

すべてがわたくしの中のみんなであるやうに
みんなのおのおののなかのすべてですから

『春と修羅』 

なぜやめたんですか。
ぼくらならどんな意気地ないやつでも
のどから血が出るまでは叫ぶんですよ

『セロ弾きのゴーシュ』
*****
銀の波を泳いできました。
ああさっぱりした

ある夜、眼前に拡がる麦畑のうねに飛び込んでいき、
一時間ほど抜き手で泳ぐように走り回った後で
*****
もしおまへが
よくきいてくれ
ひとりのやさしい娘をおもふやうになるそのとき
おまへに無数の影と光の像があらはれる
おまへはそれを音にするのだ
みんなが町で暮らしたり
一日あそんでゐるときに
おまへはひとりであの石原の草を刈る
そのさびしさでおまへは音をつくるのだ
多くの侮辱や窮乏の
それらを噛んで歌ふのだ

『告別』

血がでてゐるにかかはらず
こんなにのんきで苦しくないのは
魂魄なかばからだをはなれたのですかな
ただどうも血のために
それを云へないのがひどいです

『眼にて云ふ』

あなたの方から見たらずゐぶんさんたんたるけしきでせうが
わたくしから見えるのは
やっぱりきれいな青ぞらと
すきとほった風ばかりです

『眼にて云ふ』

一つずつの小さな現在が
続いているだけである

『ビジテリアン大祭』

諸君よ 紺いろの地平線が膨らみ高まるときに
諸君はその中に没することを欲するか
じつに諸君はその地平線に於る
あらゆる形の山岳でなければならぬ

『生徒諸君に寄せる』

諸君はこの時代に強ひられ率ゐられて
奴隷のやうに忍従することを欲するか
むしろ諸君よ あらたな正しい時代をつくれ
宙宇は絶えずわれらに依って変化する
潮汐や風、
あらゆる自然の力を用ゐ尽すことから一足進んで
諸君は新たな自然を形成するのに努めねばならぬ

『生徒諸君に寄せる』

まことの道は
誰が云つたの行ったの
さふいふ風のものでない

『春と修羅 第二集 ~産業組合青年会~』

ちひさな自分を劃(くぎ)ることのできない
この不可思議な大きな心象宙宇のなかで
もしも正しいねがひに燃えて
じぶんとひとと万象といつしよに
至上福祉にいたらうとするそれをある宗教情操とするならば
そのねがひから砕けまたは疲れ
じぶんとそれからたつたもひとつのたましひと
完全そして永久にどこまでもいつしよに行かうとする
この変態を恋愛といふ

『春と修羅 ~小岩井農場 パート9~』

まことのことばはここになく
修羅のなみだはつちにふる

『春と修羅』

ああたれか来てわたくしに云へ
「億の巨匠が並んで生まれ、
しかも互に相犯さない、
明るい世界はかならず来る」と

『無題』

もしそれ人とは人のからだのことであると
そういうならば誤りであるように
さりとて人は
からだと心であるというならば
これも誤りであるように
さりとて人は心であるというならば
また誤りであるように

『手帳より』

 



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