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花の降る午後

虚しさといえば虚しい

桜は満開で今散り始めているのだが
そのことも
この世での愛しい人と
別れの言葉もなく別れるような
そんな感覚だ

昔から
でくの坊みたいに
気の利かない様子で生きてきた
別れだというのにたいした別れの言葉も出ないし涙も出ないくらいだ

こころのなかで
あーあとは思っている
口であーあと言うわけにも行かないので黙っている
するとでくの坊になる

京都の桜の写真を見ていたらJR東海のコマーシャルのシリーズが出て来て
並べて見ると
実にそれはわたしが生きてきた時間そのもので
たったこれだけのものであったかとも思い
なおさら沈む

だいたいどの時期も何かに熱中していたことは確かであって
そのことに悔いはない
もっといい人生の先輩がいてくれれば
また違った人生になっただろうとは思うが
私の人生の先輩たちはこのような先輩たちで
そのような顔ぶれになったのも必然があるのだろう

紅旗征戎(こうきせいじゅう)吾が事(こと)に非(あら)ず
というが、まあ、そんなところだろう

花のしずしずと散る午後と
書こうとしたのだが

ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ 紀友則

の歌を思い出すと
やはり音もなく散るのかと思い
花の降る午後というタイトルの小説を思い出した

花の降る午後
それが今日だ

たったそれだけの景色を残しただけで
人生は終わるのである

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