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石川啄木 歌集:悲しき玩具  歌:井上陽水 "とまどうペリカン"


石川啄木 歌集:悲しき玩具  歌:井上陽水
(1886-1912)死後、歌集"悲しき玩具"刊行、

・呼吸(いき)すれば、胸の中(うち)にて鳴る音あり。
 凩(こがらし)よりもさびしきその音(おと)!
・途中にてふと気が変り、つとめ先を休みて、今日も、
河岸(かし)をさまよへり。
・いつまでも歩いてゐねばならぬごとき
思ひ湧(わ)き来(き)ぬ、深夜の町町(まちまち)。
・何(なん)となく、今朝(けさ)は少しく、わが心明るきごとし。
手の爪(つめ)を切る。
・しっとりと酒のかをりにひたりたる 脳の重みを感じて帰る。
・どうなりと勝手になれといふごとき わがこのごろをひとり恐(おそ)るる。
・曠野(あらの)ゆく汽車のごとくに、このなやみ、ときどき我の心を通る。
・誰(たれ)か我を思ふ存分(ぞんぶん)叱(しか)りつくる人あれと思ふ。
何(なん)の心ぞ。
・なつかしき故郷にかへる思ひあり、久し振(ぶ)りにて汽車に乗りしに。
・よごれたる手をみる――
ちゃうどこの頃の自分の心に対(むか)ふがごとし。
・昨日まで朝から晩(ばん)まで張りつめし
あのこころもち忘れじと思へど。
・家(いへ)にかへる時間となるを、
ただ一つの待つことにして、今日も働けり。
・自分よりも年若き人に、半日も気焔(きえん)を吐(は)きて、
つかれし心!
・なつかしき冬の朝かな。湯をのめば、
湯気(ゆげ)がやはらかに、顔にかかれり。
・あの頃はよく嘘(うそ)を言ひき。
平気にてよく嘘を言ひき。汗が出(い)づるかな。
・ぼんやりとした悲しみが、夜(よ)となれば、
寝台(ねだい)の上にそっと来て乗る。
・びっしょりと寝汗(ねあせ)出(で)てゐる
あけがたのまだ覚(さ)めやらぬ重きかなしみ。
・もう嘘(うそ)をいはじと思ひき――
それは今朝(けさ)――今また一つ嘘をいへるかな。
・何事か今我つぶやけり。かく思ひ、
目をうちつぶり、酔(ゑ)ひを味(あじは)ふ。
・何思ひけむ――玩具(おもちや)をすてておとなしく、
わが側(そば)に来て子の坐りたる。


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