桃
新橋の交差点で軽トラが止まっていて
桃が売れ残り、6つで350円!と叫んでいる
今年は桃なんか食べないだろうなと思い
通り過ぎたけれど桃もいいなと思い直して
軽トラのあんちゃんに近づき
一万円でもおつりありますかと聞くと
大丈夫ありますというので
じゃあ
というと
6つで350円はこっちの小さい奴、
大きい方は7つで1000円、こっちの方がおいしいよというので
気迫で圧倒されて1000円分7個を買う
次の人も同じ文句で勧誘されて
その人は気迫で押し返し
うちは二人しかいないから小さいのでいいよとかいっている
すると大きいのを3つで500円でどうですかなどと言っている
7つも買って一人で多分7日かかるから
それまで持つかなとか思う
帰りに成城石井に寄ったら
桃が三つで500円と出ていて
厳重にパックされていた
桃の値段はそんな感じなのかと
やっと知る
帰って食べてみると
見事に熟していて
おいしかったことはおいしかったが
世間知らずが身にしみる
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桜桃忌には
太宰の墓の文字のくぼみに
サクランボを詰め込む人もいたそうだ
パピパピ太宰も困ったもんだけど
時代はどんどん太宰じみてきている
太宰が生きていたら
今頃は派手な活躍をしていただろうと思う
田中康夫どころではない
実家の津島家は津軽の衆議院議員をずっとつとめているから
いまでいえば
石原家のようなものだろう
裕次郎が太宰にあたるけれど
太宰の場合は当然当選15回くらいは確実にいって
軽い軽い総理大臣になり
総理大臣は自殺したくなるんだよなどと言っていたに違いないのだ
「解散しようと思っていた
夏物のゼニアをもらったから夏まで延ばした」
などと書くだろう
当時の情景としては、太宰が
女給に、ねえ、死のうよ、とふざけてまわり、
たいていの女たちは、よしよしと、養育本能を刺激されていたのだけれど、
この金持ちのボンボンが!とかっとなったその女は、
ならほんとに死のうよ、ね、ね、死にたいんだろう、とキレて
死ぬってこういうことなんだ!と
太宰を道連れにしてしまったとの説がある
玉川上水には手を引っ張られた太宰が入水を拒んで
足を突っ張ったあとがくっきりとあったらしい
力の強い女だった