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美容外科

いろんな立場の人の話を聞けば聞くほど、
それぞれの立場に理由があるのだと知り、
いったいどのように決着がつくものなのか分からなくなる。

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美容外科の先輩がいて、
そのまた先輩である大先輩にごちそうしてもらう。
生ビールジョッキ380円の居酒屋である。

美容外科の先輩もわたしもお金はないので、
大先輩にせめてアパート暮らしを抜け出せる方法を聞きたいのだが、
人徳だと言うだけで、飲まされて、聞けなくなってしまう。
お風呂のついたアパートで少しだけ愛想のいい女と暮らしてみたい、
それだけが人生の目標だ。

美容外科に、天然と養殖の区別がつくかと聞いた。
つかないよと言っていた。

腕がいいのだという自慢とも聞こえるし、頭が悪いのだという謙遜にも聞こえる。
この点については、彼は自分のことは美容整形しないのだから、結論は自明だと、わたしは思う。
彼は、謙遜ではなく、事実、頭が悪いのだ。

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天然と養殖と言えば、鰻である。
鰻は天然物を貴重品として扱い、宣伝もする。
釣り針が入っていても驚くなとか。
公平に考えて、釣り針は最初からとった方がいいと思うけれど。

しかし、ある養殖業者は言う。

そもそも、天然物なんて、どこでどう育ったか分からない。
そんなものは食いたくない。
俺は自分が育てた鰻が一番かわいい。
子どもの頃も知っている。何を食べさせたか、よく知っている。どのように育ったか、分かっている。
性格も、病気の履歴も、知っている。暑い夏も知っている、寒い冬も一緒に生きた。
そんなによく知っている、かわいくて仕方のない鰻が一番おいしいに決まっているではないか。
手塩にかけて育てた俺の鰻なのだ。

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美容外科は解剖学に進んで解剖の絵を描きたいと思ったことがある。
しかしすでに過去の名人が仕事をし尽くしていて、自分には線の一本を
書き加えることも、削ることも、かなわないと理解した。
彼の美術への情熱はしかし強かった。

そこで、生身の女性美を探求する道に進んだのだという。

ときに自分の理想とする形、色、質感がどのようなものであったのか、初めて発見させられる瞬間がある。

自分で手塩にかけた養殖を食べると、その味は、ひとしおだ。

鰻業者にしても、美容外科にしても、同じであると、語る。


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