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医療事務スタッフの外注化=外部委託化

こんな記事でお勉強

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規模の大きな医療機関では、医療事務スタッフの外注化=外部委託化が進んでいます。診療所においても外部委託を導入しているケースが多々見受けられます。

医療事務の外部委託化の現状は、拡大路線にあるというよりも、むしろ一通りの棲み分けが終わった感があります。つまり、ポリシーや経営戦略を持って外部委託化に手を出さない医療機関以外は、ほぼ委託化は完了しているということです(一部部署のみの委託化も戦略の一つ)。

また、そればかりではなく、逆に外部委託化を縮小していこうとする医療機関さえ出始めています。つまり、外注化を取りやめて医療事務の正規職員を養成することで、経営基盤の安定を図るという方針です。

医療機関にとって、医療事務員は正規の職員が良いのでしょうか?それとも外部委託が良いのでしょうか?今回はこのテーマについて考察してみます。

まず、この「医療機関にとって良い」の“良い”とは、具体的に何が良いのかを考えて行きます。

一般的には、外部委託化の目的は「人件費の削減」と「専門性の追求」の2点が“良い”点の代表格として挙げられます。費用としての人件費の抑制と、収入そのものである診療報酬請求の精度や患者サービスの向上を求める訳ですが、それ以外にも考えるべき視点はあります。例えば医療機関の財産としてのスタッフの育成、円滑な人間関係、仕事のやり易さ、医療安全面、個人情報保護など、様々な視点が考えられます。そして、それぞれの視点において、正規職員と外部委託とでどちらが医療機関に有益な結果をもたらすかを検討していく必要があります。

公立の医療機関では、厳しい経営環境からの脱却を図る必要があることと、事務職員は通常2~3年のローテーションで異動になり、複雑化する医療事務に対応することが困難であるという事情から、医療事務の外部委託化が相当進む事態となりました。

ある600床以上の規模を持つ公立病院で、外部委託している事務業務に対して、同じ人数を全て正規職員(=公務員)で賄った場合、今より年間で4億円を上回る人件費が必要になるという試算もあるくらいです。ちなみに、公立病院の事務職員の平均給与は「公営企業年鑑」という統計資料で病院ごとに公表されています(医師、看護師、技師、などの平均給与も掲載あり)。

そのような試算を聞くまでもなく、外部委託は確かに費用的な面では絶大なる効果があったと思われます。

給与や賞与、交通費だけでなく、社会保険などの法定福利費も折半して支払う必要もなく、大規模病院のみならず、診療所においてもそのメリットは大きいはずです。特に厚生年金が賞与まで対象とされるようになった平成15年からは、医療機関側の負担額はかなり増大しているはずです。

また、専門性の点でも、委託先の業者が主催する医療事務資格の活用や、委託職員として同一の医療機関における勤務年数が長くなればなるほど費用対効果が図られることになります。

費用面と専門性の2点以外にも、外部委託化のメリットは多々あります。例えば、委託職員といえども急な退職があります。事務スタッフの数が限られている診療所では、1人欠員が出ただけでもかなりのダメージを受けます。そのような場合は委託先の業者が責任を持って後任者の充当が図られるでしょう。医療機関自らが求人や面接に手間を掛ける必要がありません。

委託先の業者から保険制度改定などの情報を早目に入手することも可能です。委託職員の教育研修も委託先の業者が行います。診療報酬や患者接遇の教育研修を医療職が行うことはなかなか難しいと思われます。

ここまでは外部委託によるメリットを中心に述べてきましたが、如何でしょうか。外部委託化によってこれらのメリットを享受している医療機関が多々あるはずです。

逆に、これらのメリットが見出せないとすれば、それは委託先の業者の対応に問題があるか、医療機関側の受け入れ態勢などに問題が潜んでいる可能性が考えられます。

委託先の業者に対しては医療機関として求める点を明確に示し、しっかりとした対応を求める姿勢が重要です。毎回未経験者を送りこんできたり、会社自体の待遇が原因で人が頻繁に変わったりするような業者に対しては、毅然とした対応が必要です。自院は教育機関ではないこと、人の入れ替わりが激しい実態に対してどのような対策を講じているか、待遇面ではどうなのか、などをしっかりと確認し、然るべき措置を講じるよう求めていかなければなりません。

一方、医療機関側の問題点として、例えば正規職員が、委託スタッフに対して無意識のうちに差別している可能性も考える必要があります。院内の行事や働きに対する評価、接し方などで委託スタッフが嫌な思いをするのであれば、それは委託スタッフの頻繁な交替となって現れます。 

委託スタッフに対しては、正規職員と同様に接し、適正な評価をすることが重要です。ある診療所の医師は、評価の高い委託スタッフの給料を上げるために、委託業者への支払いを増やし、その分が必ずスタッフに還元されるよう念を押し、スタッフのモチベーションを上げて気持良く働いてもらうことで、定着率も高めていくようにしています。委託スタッフを特別扱いする必要はありませんが、重要な点は、外部委託といえども全てを業者任せにはせず、受け入れ側の対応としても十分な配慮が必要であるということです。

一方、自前の正規職員で運用している医療機関ではどうでしょうか。当然そこにもメリットはあります。何と言っても、自前の職員は自院の財産そのものです。帰属意識も高く、経営存続の上で欠かすことのできない存在となってくれます。

冒頭で述べた、外注化を取りやめて医療事務の正規職員を養成するような動きも、このメリットの追求に他なりません。つまり、多少の費用増は犠牲にしても、将来を見据えてノウハウを自院で蓄積していくことで、最終的に経営面や運用面で効果をもたらすような戦略を選択しているのです。

公的病院(済生会、日赤、厚生連など)は、元々正規職員が中心となって運営されていますが、外部委託化を図る場合でも、将来的な観点から入院会計計算部分だけは委託化から除外しているケースが見られます。公立病院(県立、市立、など)でも、昨今ではローテーション有りの自治体採用ではなく、病院単独採用、いわゆるプロパー職員の導入を進めているケースがあります。費用面だけを追求し「安かろう、悪かろう」という事態に陥ることを避け、ノウハウの蓄積に向けて対応し始めています。

ここまで外部委託と正規職員の双方の代表的なメリットについて述べてきましたが、当然デメリットもあります。デメリットは、互いのメリットの裏返しと言えば、ほぼ該当すると考えられます(図参照)。

医療事務は正職員がいいのか外部委託がいいのか、というテーマに対する回答ですが、結論は簡単には出ません。それぞれが持つメリット・デメリットに対して、受け入れる側がどの側面に対して最も効果を求めるのかによってその判断は変わってきます。

例えば、開院当初はその専門性と人材確保のために外部委託とし、運営が落ち着いてきた頃合いをみて正規職員にシフトしていくという方法を取った診療所もあります。当面の運用の安定を優先させた後に、自院のノウハウの蓄積を最終の目的と捉えたことになります。

どちらが良い、という固定概念に囚われず、自院の状況(現在のウィークポイントなど)を把握し、現状の改善と将来的な目的の双方を見据えながら対応していくという、柔軟な考え方が必要です。



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