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統合失調症とうつ症状の関係 症例3

たとえば次のような例も創作することができる

26歳,新入社員、男性。理科系大学院修士を終わってIT系企業に就職、一人暮らし。
上司とうまくコミニュケーションがとれずに次第に疲弊。
最近は憂うつで友人と飲みに行く気もしない。夜に眠れず,朝起きられない。
遅刻しがちなので上司からなんども説教されて,ますます会社が嫌になった。
仕事自体は自分なりに出来ていると思うのに、どうして上司に嫌われているのか理解出来ない。
朝に遅れた分、残業していて、充分働いていると思う。
疲れて帰るので夜にドカ食いすることがある。炭水化物ばかり。体重が増えた。
恋人はいない。漫画を書くのが好きで自分なりに書きためている。
遅刻が多くなって三ヶ月たつ。ケアレスミスが増えたのは事実で,それはいけないと思っている。
休日は一日寝ていることが多い。誰とも話さない。

疲れてばかりもいられないと思い、先日は伊東の温泉にひとりで行ってきた。
友達ができた。いい気晴らしになった。今度は自転車を始めてみようと思っている。

月曜の朝になったら異常にだるくて、それでもなんとか会社に行ったところ,
満員電車で冷や汗が出て、会社の玄関で動悸が始まり,やはり病気だと思い、そのまま心療内科に来た。

会社の検診では悪いところはなかった。
会社をやめてしばらく大学院に戻ろうかとも考えている。貯金は少ないので経済的には苦しい。

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アルバイトの経験はあるし、結構うまく働けていた。
今までこんなにだるくなったことはない。
慢性疲労症候群というのも知っていたが特に熱もないし体で痛いところもない。
頭痛や目眩もないし自律神経失調症とも思わない。
パニック障害に近い感じはする。恐怖症といわれれば、そうかも知れない。
どうしてか、会社と上司が苦手になってしまった。

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小学校や中学校までさかのぼると、
成績は良くて優等生だった。体も大きくて体育もよくできた。
部活動は特にしていなかった。友人は少ない方で,自分ひとりで本を読んでいたりすることが多かった。
姉がいていつも自分より優秀だった。就職が面倒で大学院に進み,論文がはかどらず留年した。
パーティなどでは聞き役になることが多い。ひとりでいる方が気持ちが楽。
アメリカに旅行すると心が開放される感じがする。
几帳面なタイプ。熱中するタイプ。人に気をつかうほうではない。
漫画を読むのが好きで、その延長で自分でも描いてみたりする。
パソコンが好きで自作したりする。仕事がIT屋だけど専門的なことは自宅ではやらない。

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表情は落ち着かなく、汗をたくさんかいている。不安が強い様子。上司に対する不満と怒り。
知能が高いわりには語彙が少なく、上司との関係など困っていることを詳細に描写することができない。

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病前性格はチクロチームよりはシゾチームに近いが典型的ではない。
遺伝歴はない。これまで精神病的Episodeはない。超能力や魔法にのめり込んだこともないし,
むしろ科学的検証を好むほうだと考えている。しかし思考の特徴としては独自の判断が目立つ。
これではたぶん上司も仕事をまかせるのをためらうだろうと感じられる。
感情共感能力は低い。自殺念慮はない。

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現在症としてはうつ状態があり、パニック症状が重なっている。
会社恐怖の一面は現代型のうつ病の典型でもある。
場面選択的うつ症状も新型うつ病の特徴である。
仮眠傾向と過食傾向,体重増加,また体の異常なけだるさなど,非定型うつ病の要素がある。

対人関係特性や病前性格特徴からは統合失調症の可能性を考える必要があると思われる。

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こんな感じの症例も学派や立場によって診断と治療方針が異なると思う。
統合失調症から新型うつ病、非定型うつ病、さらには発達障害の一類型など。
アスペルガーとか高機能自閉症の典型例ではないが、不全型と言えないわけでもない。
スキゾイドとかスキゾタイパルというほど典型的ではないがその要素はないわけではない。

初回面接ではたぶんこの程度で限界だろうと思う。
現在症から言えばうつ状態、その背景に統合失調症を想定するかどうかは決め手がないが、
否定できるわけでもない。

したがって,統合失調症を想定して第二世代向精神薬を投与するのが第一選択とするのも慎重な選択だろうと思う。


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