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嘘つき

嘘付きが嘘を言い続ける様子を見ていると
ひょっとして自分ではそれを本当のことと思い込んでいるのだろうかと推測してしまう
しかし現実は現実である
現実を曲げて受け取ることを妄想と言う

嘘つきが嘘を意図的についているとして
そのこともまた途方も無いことだ
それが嘘であることは自分が一番よくわかることだし
嘘をついて平気という人がいるものだろうか
いるはずがないのであって
それは深刻な病気ということになるだろう

嘘つきの大半はついには他人を嘘つきだと避難し始める
他人はひとりにとどまらず多くの人間を嘘つき、裏切り者と規定する
そんなにも多くの嘘つきがいるはずはないのであって
正解はその人だけが嘘つきなのである

客観的な事実はその人の嘘つき加減を証明する
それを証明されないと思い込んでいるのは自分だけである
彼女とfolie a deux にだけはそれが見えていない
しかし周囲の全員にはそれは明白に見えている

嘘の王国を守るために総てをなくす
凄まじいことである

つまりは謙虚さがないのである
傲慢なのである
神がいないのだ

簡単な訂正ができない

妄想は妄想がほころびかけると妄想でつくろう
結果として妄想の体系化が進行する

まるで官僚組織のような緻密な体系が出現する
内部での思いがけないつながりに驚かされる

だれもがありえないでしょう
と語るが
その瞬間に友人リストから外される

そのようにして妄想の王国は保持される

そこまで行くと世間の人はその人を嘘つきとは言わない
患者という

ーー
嘘が自分を破壊してしまうことがある
かわいそうなことだが
誰もどうすることもできない

子供思いの親が援助しようとすることがあるが
たいていは逆に子どもを追いつめる

妄想促進的な親がいるから
妄想から撤退することができなくなってしまう

嘘が自分を縛るに至り
心理的に破滅する


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