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自殺者統計

  「データに基づいて調査しようとしても、個票レベルのデータにアクセスできない。また、自殺者は年間約3万3000人だが、その対策予算は、年間死亡者約5000人の交通事故対策予算よりも少ない。その上、遺族に対するカウンセリングは保険の対象ではなく、自殺未遂者に対するフォローが十分でない」

  8月30日に開催された、日本医師会の国際保健に関するセミナー「オバマ大統領の医療改革-日本への教訓」で、こう問題提起したのは、東京大学大学院医学系研究科助教の崎坂香屋子氏。崎坂氏は、「武見国際保健プログラム」(詳細は日医のホームページPDF:5.48MB)に参加、2009年から2010年にかけて、米ハーバード大学公衆衛生大学院で研究活動をしており、その成果を発表しました(メーンテーマについて講演した同大学院国際保健・人口学教授のマイケル・ライシュ氏の記事は、『「オバマ改革から得られる日本の教訓とは」、米ハーバード大教授』を参照)。 

 崎坂氏は、ニカラグア、ケニア、ホンジュラスでの公衆衛生学的研究のほか、日本での自殺に関する研究を進めました。

  崎坂氏は、まず自殺をめぐる近年の以下のような統計データを紹介。(1)年間3万人を超す自殺者の約70%が男性、約30%が女性で、最近は男性の増加が目立つ、(2)年齢的には45歳から54歳、特に55歳から64歳の増加が大きい、(3)都道府県別の2008年の人口10万人当たりの自殺者は、山梨、秋田、青森の順、(4)2009年のデータでは、3月と10月、日では1日、曜日では月曜日が多い、など。

 「米国では、近年、自殺者が減少している」とした上で、崎坂氏は、NPO法人ライフリンクが2008年から2010年1月にかけて行った、523人の遺族への聞き取り調査の分析結果を紹介。(1)男性の自営業者は、自殺のサインから死亡までの時間が特に短く、約30%が1年以内に、50%が2年以内に、70%が3年以内に死亡する(対他職業の相対危険度は3.05)、(2)遺族の悲しみ、罪悪感、抑うつ状態は、直後の感情から数年から数十年経てからも、大きく変化(減少)していないように思われる、などが明らかになっています。

 厚生労働省はこの7月には、「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」が報告書(同省のホームページに掲載)を取りまとめるなど、対策は講じてはいます。さらに実効性のある対策を講じるためには、崎坂氏が指摘するように、まずは実態把握のための詳細なデータの分析が必要になっています。


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