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職員を公平に評価

【質問】
 開業して3年目です。やる気のある職員とそうでない職員に給与面で差をつけたいと考え、私の判断で評価を行ったところ、一部職員の反発を招いてしまいました。できるだけ公平な評価をしたいと考えているのですが、どんな方法がいいでしょうか。(42歳、内科医)

【回答】
 職員に求める業務を明文化しその達成度で評価を決める
回答者◎岡眼科クリニック(福岡県飯塚市)院長 岡 義隆


 

 職員を公平に評価しているつもりでも、不満を招いているなら、それは評価の基準があいまいだからではないだろうか。院長の主観など透明性の低い基準で評価を下しては、職員が納得しないのも無理はない。職員の評価には、客観性が何よりも求められる。

 当院でも3年前に、公正な評価をしたいと考え、独自の評価制度を設けた。ここでは、その取り組みを紹介したい。

業務の「完遂度」で判断
 私たちは、当院が求めている業務を「完遂」できたことに対価を与えるというスタンスで、職員の評価を行っている。職員の役割は、医師が医療を遂行するためのサポートをすることにあり、そのベクトルを誤り、勝手な方向に向かっていくら頑張っても意味がない。

 まず必要なのは、職員が何を完遂すべきかを明確にすること。そして、その業務を完遂できたか否かという1点のみで評価を下すことだ。そうすれば、院長の勝手な判断と言われる余地はほとんどなくなる。

 こうした考えの下に当院で作成したのが、表1の評価項目だ。これは、受付および眼科の検査を担当する一般職員の評価に使用するもので、電話応対業務一つを取ってみても、当院の場所や診療時間の問い合わせ、業者からの連絡、病気についての質問など、できるだけ細かく明記してある。それぞれの業務には、難易度に応じて5段階のランクをつけており、ランク1は入職後半年以内に完遂することが目標で、ランク2は1年、3は1.5年、4は2年、5は2.5年が目安だ。

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 この評価項目の使い方は、以下のようなものだ。まず職員が、それぞれの業務の完遂度を「○」「△」「×」の3段階で自己判定する。○は「独力で完遂できる」、△は「何らかのサポートがあればできる」、×は「できない」を意味する。

 職員が自己判定したら、次に上司が判定する。その結果、該当するランクの業務がすべて○になれば、そのランクをクリアできたということになる。当院では職種ごとに1~5の各ランクに対応した給与を設定しており、クリアすれば一つ上のランクの給与が得られる。

自己判定が正しいか上司が査定
 ここで重要になるのが、上司による評価だ。院長は診療に専念していることが多いため、職員の働きぶりを最もよく知っている各セクションの上司に評価を委ねる。

 上司があいまいな評価を行ったのでは公正な運用ができない。そこで、職員が自己判定で「○」とした項目を上司が「△」、「×」と判定した場合、上司にはその理由を、院長に合理的に説明することが求められる。ここでも、「何分以上かかっている」「この業務のこの動作ができない」などと、できるだけ客観的な表現で説明してもらう。

 上司となる職員は「公正に査定できること」が評価のポイントになっており、適切に査定しなければ評価が下がることになる。逆に、部下がなぜ「○」の判定にならないのかを明確にして、「○」を得られるよう的確に指導すれば、評価は上がる。

 そして、最後に職員本人と院長が面談を行う。院長は「あなたは、これとこの業務ができるようになれば、来期は次のランクに上がれるので頑張ってください」などと指導する。同時に、職員の上司には「彼にこの業務をトレーニングしてください」と依頼する。こうした評価を、半年ごとに実施している。

職員が制度の運用に参画
 このような制度にすることで、職員が何を習得すればよいかが明確になり、指導も楽になった。

 また当院では、この評価制度を運用するに当たり、各業務の手順書も作成した。どのような手順で業務を行うかを明記すれば、「独力で完遂できる」ことの判断基準が、より明確になる。

 評価項目の内容やランクなどは、定期的に見直している。例えば、身体的な事情で手術の補助ができない職員に対し、その代替となる項目を特別に追加する形で救済を図ったこともある。評価項目の見直しの内容は職員に考えさせ、自分たちが作った制度という意識を持たせるようにしている。

 なお、こうした評価制度を導入する際には、激変緩和措置を講じることが望ましい。最初は、それまでの給与額に応じて職員を各ランクに割り当てるしかない。当院では、仮に該当ランクの業務をすべて完遂できていなくても、とりあえずはOKとする代わりに、できるだけ速やかに達成することを要求した。できなければほかの職員の目が厳しくなるので、本人も必死に完遂を目指し、結果的に職員全体のレベルが底上げされることになった。

【まとめ】
・評価から主観をできるだけ排除する
職員の評価軸にあいまいな点があれば、不平や不満の声が出てくる。自院が求める業務が遂行できるかという点のみで評価を行う
・合理的な説明と指導をセットで
職員のどこが足りないかを、評価者がきちんと合理的に説明する。その上で指導を行えば、職員も目標を持って働きやすい
・評価項目は職員の手で見直す
評価項目には不完全な部分もあり得る。職員同士で話し合いながら見直し、皆が納得できる評価制度に改良する

 



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