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自閉症裁判―レッサーパンダ帽男の「罪と罰」

2005年4月、「殺人などの罪に問われた札幌市出身の元建設作業員山口誠被告が東京高裁への控訴を取り下げた。これにより、一審の無期懲役判決が確定した」
との短い報道。この山口被告とは、いわゆる「レッサーパンダ帽をかぶった殺人者」。

「自閉症裁判―レッサーパンダ帽男の「罪と罰」」(佐藤幹夫/洋泉社)。2001年4月、東京・浅草、花川戸の路上でレッサーパンダ帽をかぶった男が19歳の女子短大生を刺殺した。この本はその犯人に対する裁判、そして被害者の遺族と犯人の家族を取材したノンフィクション。

レッサーパンダ男は、事件直後からちょっとおかしいのではと思われていた。この本は、この犯人が高等養護学校卒業で軽度の知的障害があり、おそらく自閉症であったこと、しかしメディアはこれを黙殺し、一斉に「中卒」と報道したこと。対人関係に問題を抱え、ほとんど人の目を見て話せない犯人に対する警察の自白調書があまりにも理路整然と犯行を述べていることなどに疑問を呈示する。そして著者の取材により明らかになる犯人の悲惨な家庭。

ロクに働かず、金を浪費し子供を虐待するだけの無能な父親。社会に適応できず定職にもつけない犯人。家計を支えるのは、若くして悪性の転移性腫瘍に襲われた妹。この妹は、倒れた後も、自分の治療費と家族の生活費を稼ぐため手術の合間をぬうように働き続ける。そしてその病気の妹から金や物を盗んで家出するレッサーパンダ男。この妹はレッサーパンダ男の逮捕後、一切の面会をこばんで25歳で病死している。

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広汎性発達障害

Pervasive Developmental Disorders
 


自閉性障害 Autistic Disorder


A.(1),(2),(3)から合計6つ(またはそれ以上),うち少なくとも(1)から2つ、(2)と(3)から1つずつ
 の項目を含む。

 
 (1) 対人的相互反応における質的な障害で以下の少なくとも2つによって明らかになる:
 
    (a) 目とめで見つめ合う、顔の表情、体の姿勢、身振りなど、対人的相互反応を調節する多彩な非
     言語性行動の使用の著明な障害。

    (b) 発達の水準に相応した仲間関係をつくることの失敗。

    (c) 楽しみ、興味、成し遂げたものを他人と共有すること(例:興味のあるものをみせる,もって
     来る,指さす)を自発的に求めることの欠如。

    (d) 対人的または情緒的相互性の欠如。

      

 (2) 以下のうち少なくとも1つによって示される意志伝達の質的な障害:

    (a) 話し言葉の遅れまたは完全な欠如(身振りや物まねのような代わりの意志伝達の仕方により補
     おうという努力を伴わない)。

   (b) 十分会話のある者では、他人と会話を開始し継続する能力の著明な障害。

   (c) 常同的で反復的な言葉の使用または独特な言語。

   (d) 発達水準に相応した、変化に富んだ自発的なごっこ遊びや社会性を持った物まね遊びの欠如。

      

 (3) 行動、興味および活動の限定され、反復的で常同的な様式で、以下の少なくとも1つによって明
  らかになる:

   (a) 強度または対象において異常なほど、常同的で限定された型の、1つまたはいくつかの興味だ
    けに熱中すること。

    (b) 特定の、機能的でない習慣や儀式にかたくなにこだわるのが明らかである。

    (c) 常同的で反復的な衒奇的運動(例えば、手や指をぱたぱたさせたりねじ曲げる、または複雑な
     全身の動き)

   (d) 物体の一部に持続的に熱中する。

      

B.3歳以前に始まる、以下の領域の少なくとも1つにおける機能の遅れまたは異常:

   (1)対人的相互作用、(2)対人的意志伝達に用いられる言語、または(3)象徴的または想像的遊び。

      

C.この障害はレット障害または小児期崩壊性障害ではうまく説明されない。

      

                       引用(DSM-IV 精神疾患の分類と診断の手引)
                       
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物事の因果関係認定には精密なメカニズム解明が必要である











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