夢で逢いましょう 夢だけで逢いましょう

その女とはもちろんもう住んでいるはずはないのだけれど
何か引っ越しの片付けをしているらしい
引っ越してきたのである
なぜだか10歳くらい年の若いその女とそっくりな女と一緒にいるらしく
これからも一緒にいるらしい
二人で歌を歌っている
姉妹でもないのにそっくりなのは夢だから許せるのだけれど
この二人は学校で知り合ったのだろうか

よく分からないと思いつつ考えてみると
自分がいまベッドの中にくるまっているこの部屋はいったいどこなのかと
分からなくなる
様子からいえばあの古いアパートなのだけれど
もちろんそれはずっと昔に出たはずだ
そのあと住んだところを順番に思い出そうとして途中までしか思い出せない
外で誰かが話す声が聞こえている
英語のようだけれどはっきりしない
テニスがどうとか言っている

そんなことがきっかけで夢から覚めてみると
やっとの事で自分がいまいる部屋はどこかはっきりしてくる
当然だここに決まっている
そして私の他には誰もいるはずのないこともはっきりしてくる
さっきまでの女二人のざわめきのなんと懐かしいこと

こうしてみると過去はゼロにはならない
たまに夢に登場して慰めておくれ