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統合失調症のニューロン新生障害仮説-9

●EGF,FGF,Shhなどの分泌因子は成体脳ニューロン新生にかかわる可能性が指摘されている。
しかしこれらの遺伝子そのものは統合失調症と高い関連性を持つ染色体位置には見つからない。
●これは、このような遺伝子に傷がついた場合には、より重篤な発生異常が生じてしまうためだろう。
●ニューロン新生との関連で興味深いのは、Wntシグナル経路のリガンドのひとつであるWNT7B(22q13.31)と、
受容体のひとつであるFrizzledのホモログ(11q14.2および8p21.1)である。
●加えてfollistatin(5q11.2)やSox21(13q32.1)などもニューロン新生に関係がある。
●栄養学的知見からはビタミンAや不飽和脂肪酸が脳の機能を正常に保つために必要であることが示されている。
これらの代謝や細胞内取り込みにかかわるアルデヒド脱水素酵素ALDH(6q23.3)や脂肪酸結合タンパク質FABP7(6q22.31)の
遺伝子も統合失調症関連遺伝子座に存在する。
●つまり、シナプス可塑性に直接影響するカルシニューリンなどの因子に加えて、
胎生後期から生後発達にかけての長い期間にニューロン新生のバランスを保つ多様な因子が、
健やかな精神機能の発達や維持に重要である。
●サイトカインがもう一つの鍵になる。
●Pax6変異ラットでは、社会相互作用、恐怖条件付け記憶、音驚愕反応によるPPIなどに異常のあることを見いだしている。
●Pax6変異ラットではPPIの異常値は、幼若期では認められず、思春期以降で顕著になるという点と、
抗精神病薬クロザピン投与により回復される点が、興味深い。これは統合失調症類似の表現型とみなすことができる。

●Wny7b(分泌因子),ALDH(ビタミンAの下流酵素)、FABP7などはPax6の下流である。
●ヒトではPax6遺伝子に変異があると無虹彩症となり、このなかに統合失調症様の症状を持つ家系があることが報告されている。

●ヒトの精神疾患の診断に用いる認知課題に近いテストが動物実験で行えるような実験系の開発が必要である。

○というわけだ。



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