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リストラの指揮者

リストラの指揮者に指名された幹部もなかなかきつい

自分のかわいがっている部下から順に解雇の検討をしないといけない
他人の部下はそのあとになる

解雇をためらっていると会社の資金が回らなく恐れがある
銀行は情け容赦ない

会社が立ちゆかなくなれば元も子もない
だからといって社員は簡単には退社してくれない

有能な人は退社して次の道もあるが
そうでもなければいまの会社にしがみつく

会社としてもコアになる優秀な社員は残しておかなければならないから
目星をつけて、退職を説得する
組合員になっていれば指名解雇などできるものではないので
やんわりとしかししつこく説得ということになる
退職金の割り増しはあるが
次の就職については就職支援会社を使うにとどまる
この時代に次のいい就職があるとも思えない

退職金をもらったところで先の人生は長いし何かとものいりと考えれば
誰も退職には応じない

全員の給料をカットする方法もあるだろうが
それぞれの社員も教育費、住宅費、介護など計画があって、
今さらの給料カットには賛成しない

それこれ考えると
もう責任が重すぎて
自分が退職金を受け取ってやめてしまおうかと思うが妻子の生活を考えるとそうも行かない

どちらに向かってもどうしようもない苦しい場面である
せめてこの一ヶ月程度、4月の山場だけでも、消えていなくなりたい

どの会社にもそんな困った役回りを押しつけられた人がいて
弱り切っている

退職勧告している人の中には
自分が上司として病気の見舞いに行った人もいる
そのとき家族にも会ったし家の様子も見た

夜寝ようとするとそのようすが目に浮かぶ
自分はそんな人の首切りをしようというのかと考えると眠れなくなってしまう

どんなに考えてもいい考えはないし
いつも堂々巡りである

どうすればいいのかまったくもって分からない
春の嵐のような強風の中で
不眠と抑うつに苦しんでいる

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