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夢について

全然意味の分からない夢もあるが
かなり鮮明に意味の分かる夢もあって
不思議なものだ

夢は他人の意志が入り込む隙間がない
全部自分の心が作り出しているものなのだと思うと
なかなか意義深いものだ

我々は現実を固くて客観的で他人と共有可能なものととらえていて
ときには夢を現実の対極に置く

しかし中間的な形態はいくらも考えられる
感覚器に異常があって途切れ途切れの情報しか得られない場合
情報を統合する脳に異常があって、統合できない場合

認知症の場合、現実は、途切れ途切れの映画のようになり、
ある画面から、脈絡のない別の画面にジャンプする
そのような映画を見て感動することも難しいし
まとまって意味をつかむことも難しい
何かわけの分からないシーンが途切れ途切れにでては消える
認知症とはそのような世界だと言われていたことがあった

しかし考えてみれば、
感覚器はいつでも途切れ途切れであって、部分的でしかないのだ
五感しかない点がまず部分的であるし
注意集中が持続するわけでもないからやはり部分的で断片的である

それなのに纏まった、強固な、客観的な世界と解釈しているのは、
部分をつなぎ合わせて全体を作り出す、脳の内部の仕組みがあるからだ

たとえばロールシャッハでインクのシミを見せて、
それが何に見えるかと、時間をかけて質問する
何に見えるかと言って、それはインクのシミだと答えるのが客観的世界認識であるが
そうは答えず
ウサギの耳とか何とか答えるわけだ

それも、部分をつなげて意味のまとまりを見いだす脳の働きである

夢もそのようなものだと私は思っている

睡眠中の脳に、シミのようなものが発生し、それ自体は単なるシミなのだが、
点を線でつなぎ、線を運動させて物語にしてしまうのが脳の働きであるから、
当然、脳の中のシミにも、物語を「付与」する

そのようにして夢が生成される

だから夢は、その人の現実解釈能力、現実生成能力の分析に最適なのだ。

ーー
夢の中でいやな奴がいやなことをしたとして、
そのような世界を生成しているのは自分以外にはないのだ。

壁のシミが人の顔に見える。
シミの部分をつなげて人の顔としてみる脳の構成力があることを示している。

点が集まっていればそこに意味を見いだす
音が集まっていればメロディを見いだす
これは客観的な世界のあり方なのではなくて
世界の解釈の仕方いかんによる
だからこそ教育が絶大な力を発揮する

自分の力で見つけなさいとか
発見的な教育とか
全部嘘だと思う
共有の言語を押しつけた瞬間に
習慣的な見方しかできない人間を作ってしまっているのだ

独創などというものも嘘で
みんなが独創と褒めてくれるようなものを提出する人だけが
独創的なだけで
本当の意味で独創的な人は理解もそれないで終わってしまう

解釈を排した客観とはどんなものなのかと昔から議論されてきた
解釈されてこそ意味のある世界になるのであって
解釈なしではばらばらの点でしかない
それが何であるかを語るためには必ず解釈が混入する

だから客観的世界というものも、
みんなが共同で、世界を構成する力についての共通項を持っているということに他ならない。
ある時期にある技法が芸術の主流となるのは
この、認識の共通項として、流行するからだろう

世界を見るとき、半分以上は、目と脳の特性によるのだ

従って現代芸術は、必ず解説を必要とする
絵だけでは何も語らないのだ
解説があって始めて世界を構成する力が与えられ、
そのように構成したとき、絵に描いてある、意味にとぼしい色と線は、
意味を持って人に迫ってくる。

つまり特別な解釈のめがねとセットでなければ、
意味のない、みすぼらしい点と色なのである。

独特な解釈のめがねをいつも人は用意している
それが共有されていれば安心感もある
大人の解釈世界に入っていくことを成長と感じたりもする
およそくだらない

ーー
世界構成力、世界解釈力が強すぎるとき、
そしてその結果の世界解釈が、他人との共通項に乏しいとき、妄想といわれる。
そして妄想は訂正されがたい。
どうしてもそのようにしか見えないという切実さについては
一度共感してみる必要がある。

ーー
夢に懐かしい人が出てくるのではない
あなたの中のシミを、あの人と解釈する脳の側の能動性が、懐かしい人を生成するのである。
過剰な能動性である。
そのような過剰さはどの生物の脳にも共通である。

猫はどんな世界を生きているか、考えてみればよい。
人間とは違う感覚器官でキャッチした情報を、人間よりもやや簡単に構成して認知しているのだろう。
餌と敵がわかればまずは生きられる。

ーー
その場合、わたしがあなたを愛しているというのはよい
あなたが、私を愛していると語るなら、その場面を構成しているのは私であって、
あなたにいわせているわけで、そしてそのことに喜んだり驚いたりするのだ。

不思議なものだと思う。


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