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肥満を恐れるな 狭山ヶ丘高校通信

学校通信「藤棚」 平成18年度 

新聞を読んでいて、面白い事実を知った。肥満者と痩せている人とでは、肥満傾向の人間の方が長生きするというのである。アメリカの医学界で問題になっていることらしいのだが、数年前、我が国でも、このことが話題になっていた。
 生命保険会社も、痩せている人よりは、むしろ肥っている人を積極的に勧誘するよう指導しているらしいとの噂も聞いた。
 私事にわたって恐縮だが、実は私も肥ってからの方が、体調が遙かに良好なのである。高校時代の私が、山に登り、腕組みして裸で撮った写真があるが、まるまると肥っている。その後私は、次第に痩せて行った。山奥の代用教員の生活で、ろくに栄養が取れなかったためであろうと思う。大学時代は、貧しくて肥ることができなかった。就職した後、貧しくて栄養が取れないということはなくなったが、どうしても肥ることができない。ひと頃体重が四十九キロだったのだから、この身長とは言え、痩せてガリガリと言える状況であった。他人に「精神的な顔」と励まされて、にんまりしたこともあったが、要するに半病人に近い状態だったのである。
 この原因は、「慢性の盲腸炎」であった。医学的に慢性の盲腸炎はないそうだが、私の盲腸には石が一個存在しており、これが日々の健康を妨げていたらしいのである。肥りたくて、蜂蜜をなめたりするくらいだったのに肥れない。しかし、盲腸を手術した後は、めきめきと肥り始めた。かくして今日の「肥満体」になったのだが、しかし肥満体になってからの方が、体調は極めて良好なのである。
 私のような肥満が好ましいわけでは決してない。しかし、痩せているより肥っている方が「死ににくい」というのは何故なのであろうか。どうもそれは、肥っている人は「大飯ぐらい」だが、痩せた人には「小食」傾向が強い。そのため、本当の体力がつきにくいのだと言う。
 私も、少しでも「スマートに」なりたいと、儚い抵抗を続けてきたが、どうもそれが長続きしない。年齢からは老人だと言うのに、朝から焼き肉やステーキを食べたがる老人は、世の常の「分別世代」には珍しい傾向であるらしい。
 風邪を引いたり、少しく体調を崩したりしたときに、私は大量の肉を食う。体力が忽ちにして回復するから不思議である。
 女生徒に無理なダイエットを重ねている人が少なくない。テレビ局で、ある有名タレント女性の後ろ姿を見たことがある。びっくりするほどスマートであった。職業柄、克己心を持って体型の維持に努めているのであろうが、私は、あのような天才には、少しくらい体型が崩れても良いから、うんと食べて健康な体でいて欲しいと、秘かに思った。
 女性が無理なダイエットを重ねるについては、男性の美意識にも責任がある。「腰が切れそうなほど」くびれている女性が美しいのではなく、はち切れそうな健康の中にこそ本当の美しさがある。高校時代は、生涯のため、その体力を形成、蓄積、保全すべき時である。「女生徒よ、もっとためらわず太れ、もっとどしどし飯を食え」と私は呼びかけたいのである。
 問題は、人の顔を見るとすぐ「標準体重」「肥満傾向」などと口走りたがる医学界の傾向である。私は、この上なく医師を尊敬する人間だが、この点だけは、医師たちを信頼することができない。
 実は1945年の敗戦以来、医師たちは様々に間違った「専門的見解」を流布させてきた。一つは「米食の危険」である。「米一升には、タオル一本分の繊維が入っている。こんな物を食べているから、日本人の体位体力は向上しないのだ。」こんな見解が大まじめに語られ、そのため「粉食」つまり、パンを常食にすることが勧められていたのである。今はどうか、「繊維の飲み物」さえ商品化される時代ではないか。
 肉より魚をという考えも、その出自はうさんくさい。肉の消費量が伸びるに従って、その国の寿命が延びているという統計もあるくらいだからである。
 但し、間食はいけない。絶対にこれは改めた方がよい。その医学的理由もあるのだが、紙幅が尽きたので、これは別の機会に譲る。また、肉を食べるに際しては、必ず大量の野菜も取るべきである。このあたりは厳重に注意して欲しい。
 最後に私の実感をひとつ。魚や納豆ばかり食べていると、どうも人間が大人しくなってくるようである。学問も実は戦いである。自分と異なる学説に、妙な理解を抱くようになっては、学問は成り立たない。反対学説と厳しく争うことによってのみ、学問は進歩することができるのである。
 戦時中「攻撃精神」という言葉が強調された。勿論これは、戦意高揚のためだったのだが、私は今も、この「攻撃精神」を抱くことは、極めて重要だと考えている。学問は、攻撃に次ぐ攻撃の連続の中でのみ発展することができるからである。
 肉が攻撃精神を生み出すとすれば、高校生も大いに肉を食い、大学入試という戦いに、駒を進めなければならぬ。女生徒も、他人がどう見るかなど気にせず、永い人生に対する体力形成のため、旺盛な食欲を身につけて頂きたいのである。なおカップラーメンは、攻撃精神にはつながらない。それは「低劣な肥満体」を生むだけである。

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