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「琳派芸術―光悦・宗達から江戸琳派」展

1月8日(土)~3月21日(月・祝)
出光美術館
華麗な装飾美を特徴とする琳派芸術を2部構成で紹介する展覧会を東京・出光美術館で開催します。第1部「煌く金の世界」(1月8日~2月6日)では本阿弥光悦、俵屋宗達、尾形乾山、尾形光琳らの金屏風や扇面、工芸などを紹介、そして全点を展示替えする第2部「転生する美の世界」(2月11日~3月21日)では酒井抱一の「風神雷神図屏風」や鈴木其一の銀屏風など、あわせて約100件を展示します。


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シュルレアリスム展-パリ、ポンピドゥセンター所蔵作品による-

ダリ、マグリット、エルンスト、デ・キリコ、ミロ、タンギー…
シュルレアリスムの殿堂から約170点を一挙公開!
【会期】 2011年2月9日(水)~5月9日(月)
【会場】 国立新美術館(東京・六本木)
 1924年のパリ、アンドレ・ブルトンの「シュルレアリスム宣言」で始まった20世紀最大の芸術運動「シュルレアリスム」。その膨大なコレクションを誇るパリのポンピドゥーセンターから、絵画、彫刻、オブジェ、素描、写真、映画などの作品約170点に書籍・雑誌などの資料を加えて、現代アートに多大な影響を与えたこの運動の全貌を紹介します。
 よくシュールという言葉を耳にしますが、本展ではこの運動のオリジナリティを重視し、“シュルレアリスム”展という仏語読みのタイトルとしました。人間の無意識の世界を探求することで、日常的な現実を超えた新しい美と真実を発見し、生の変革を実現しようとした世界をつぶさに紹介する、初めての本格的な展覧会をぜひ、お楽しみください。本展を観れば、あなたがいつものように暮らしている世界が違って見えてくるかもしれません。写真は、ルネ ・マグリット 《秘密の分身》 1927年


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絵で考える 自閉性障害

自閉性障害者のテンプル・グランディンは、著書の「自閉症の才能開発」の中で、自閉

性障害の「絵で考えるのが私のやり方である。言葉は私にとって第二の言語のようなもの

で、私は話し言葉や文字を、音声つきのカラー映画に翻訳して、ビデオを見る ように、

その内容を頭の中で追っていく。誰かに話しかけられると、その言葉は即座に絵に転化す

る。言語で考える人達にとって、これは理解しがたい現象であろう。」と述べているよう

に、自閉性障害特有の思考処理をしていることが特徴である。

自閉性障害児者は、相手の言葉のイントネーションの違いの意味を読み取れない。だか

ら、自分の言葉にイントネーションの変化をつけられず、平板な話し方になるし、方言も

使わない。また、自分が相手に言った言葉に対して、その言葉自体に対する相手の反応の

言葉や顔の表情から、相手がどう感じているかを読み取ったり、自分がそれに対してどう

反応すれば良いのか等を理解することが非常に困難である。


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「友達と一緒に遊べない子」

自閉性障害については、各国で様々な訳し方をしているが、ロシアでは「友達と一緒に遊

べない子」というふうに言っているが、適切な訳だと思われる。

「自閉症だったわたしへ」の著者、自閉性障害者のドナ・ウイリアムスは『他の子とどの

ように遊んだらよいのか分からなかった。』と著書の中で言っている。



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己れの職分を堪え忍び、沈黙を守っていることは、中傷に対する最上の答えである。ジョージ・ワシントン

己れの職分を堪え忍び、沈黙を守っていることは、中傷に対する最上の答えである。ジョージ・ワシントン

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自閉性障害

昔の教材

ーー

  自閉性障害とは何かの最近の研究到達点

           奈良県磯城郡 田原本町立 南小学校 西田 清

           (社団法人日本自閉症協会奈良県支部 事務局長)

 ☆人間の発達とは

 私たちの子育ての原点は、子どもたちの持つ内面的な発達の力に依拠して、その持つ力

を大切に育む事にあるのです。決して、外側から強制的に注入するものではないのです。

子どもは、生まれた時から、1人の独立した人間として生きているのです。ですから、私

たちは、子どもの心身ともに健全な発達を保障するために、様々な取り組みをする必要が

あるのです。人間の発達には、厳しい順序があります。また、障害の有る無しに関係なく、

子どもたちの発達は、同じ道筋をたどります。ただ、障害のある子は、その歩む道筋に時

間がかかったり、発達の節を乗り越える(9ヵ月・1才半・3才・9才・15才等)のに、様

々な障害や困難がある場合が多いのが違うだけです。障害児は、その障害を乗り越えるた

めに、きめ細かな特別の指導が必要になりますが、健常児の発達の道筋と、基本的には同

じです。

Ⅰ 自閉性障害の定義と特性について

1.自閉性障害の訳語と定義

 私は、最初の頃は、自閉症又は自閉的傾向と呼んでいたが、最近はより自閉の障害に視

点を当てるためと、診断の基準がきちんと整理され曖昧さが無くなったことから、自閉性

障害と呼ぶことにしている。文中には、自閉症と出てくるのは、人によって用語が異なる

からである。引用した著者の原文に忠実に従うために、自閉性障害を自閉症と書いてある

場合は、そのまま使用しています。自閉症=自閉性障害と同じ意味で使用しております。

自閉性障害については、各国で様々な訳し方をしているが、ロシアでは「友達と一緒に遊

べない子」というふうに言っているが、適切な訳だと思われる。

「自閉症だったわたしへ」の著者、自閉性障害者のドナ・ウイリアムスは『他の子とどの

ように遊んだらよいのか分からなかった。』と著書の中で言っている。

世界的には、発達障害(認知障害・脳機能障害)であるということでは意見が一致してお

り過去に日本の一部で言われていた、子育ての失敗で情緒障害が中心であるという説は、

医学的にも実践的にも否定されてきている。但し、認知が主たる障害ではあるが、最近で

は、カナーの主張した情緒の障害、社会的な障害も 2次障害ではなく基本的な障害の1つ

ではないかと、この部分は再評価されるようになってきている。

ドナ・ウイリアムスは『自分がことばを話せるようになってきた時、誰かに心を通わせた

い。コミュニケーションを持ちたくてたまらなかった。』と書いておりますように「自閉

性障害児は内に閉じこもろうとするのではなく、逆に外側の人に対して、表現したいのだ

が、言葉や表現をどのように表したらよいのか、また生活上の社会的なルールにどう対応

したらよいのか分からない障害である。」と理解するのが、より自閉性障害児者の実態に

近づいた考えだと思われる。

・自閉性障害者のテンプル・グランディンは、著書の「自閉症の才能開発」の中で、自閉

性障害の「絵で考えるのが私のやり方である。言葉は私にとって第二の言語のようなもの

で、私は話し言葉や文字を、音声つきのカラー映画に翻訳して、ビデオを見る ように、

その内容を頭の中で追っていく。誰かに話しかけられると、その言葉は即座に絵に転化す

る。言語で考える人達にとって、これは理解しがたい現象であろう。」と述べているよう

に、自閉性障害特有の思考処理をしていることが特徴である。

自閉性障害児者は、相手の言葉のイントネーションの違いの意味を読み取れない。だか

ら、自分の言葉にイントネーションの変化をつけられず、平板な話し方になるし、方言も

使わない。また、自分が相手に言った言葉に対して、その言葉自体に対する相手の反応の

言葉や顔の表情から、相手がどう感じているかを読み取ったり、自分がそれに対してどう

反応すれば良いのか等を理解することが非常に困難である。

軽度の人でも、この点についてはなかなか大変である。

また、表現したいのだが、自閉性障害児者の圧迫に弱い、という特徴等や、人に真正面か

ら対応することへの恐れ、どのように自分を言葉で表現したら良いのか分からない等で、

混乱していると見るほうが、実態に近いのではないかと思われる。

私も、英語が出来ないのに、カナダヘスキーに行ったとき、相手に英語でペらペらとまく

し立てられたときには、どう表現したら良いのか分からず、パニックを起こしそうになっ

たことで、彼らの障害の一端に触れたように思った。

話しかけたりする場合や、遊ぶときにも少し距離を置いたり、真正面ではなく、はすかい

があまり圧力を彼らに与えないので、リラックス出来るようである。(3)ホブソンは次の

ように述べている。

『自閉症児は、健常な子どもには、備わっている情緒的表出と行動の個人内協応を欠いて

いるようである。この個人内協応が、子どもと大人の間で、行動と経験の共振が生じるた

めに、すでに述べた、自閉症児は他者の感情表出を知覚し、理解し、それに反応する仕方

に欠陥がある。

自閉症児は、他者との情緒的な対人関係を発展させるのに必要な、行為と反応の連
 動を司る素質的基盤を欠如している。

このような関係は、「自分自身の世界と、他者と共通する世界を、共に構成してい
 く」のに不可欠である。

このような間主観的、社会的経験を欠くことからは、2つの重大な結果がもたらされ
  る。すなわち、

  ア‥人々のことを、その人なりの感情や思考、欲望、そして意図などを持つ存在とし

   て意識することができない。

  イ…抽象能力や、象徴的に感したり考えたりする力に欠ける。

④自閉症児は、言語や認知に特有の障害を抱えているが、その多くの部分は、情緒や社会

性の発展に関係の深いさらに根底にある障害、ないしは象徴機能にかかわる社会依存能力

の欠陥の反映と見なすことができる。』

(4)ローダーは、次のように説明している。

『自閉的な人は、他の人々が世界とどのようにかかわっているのかを推し量ることが出来

ないようである。自閉症児は、意図的で、感情の絡んだ出来事でも、その外の側面なら、

対照的に結構理解が出来る、ということを示した。とりわけ、比較的お決まりの行動パタ

ーンであればかなり複雑なものでも、観察によって、その手順を記憶する力は、相当にあ

るのである。自閉症児の人々を理解する仕方の特徴、つまり理解しやすい面としにくい面

の分布状況を把握しておくことは、臨床的にきわめて重要であろう。』

2.健常児の中における自閉性障害児の孤立について

 自閉性障害児の多くは、人や集団にあまり興味を示さない事が多い。そして、集団の中

にいても、周囲から孤立していることが多いし、孤立していても別に苦痛を感じないのは

どう言う理由なのだろうか。

・Lord(1985)は次のように述べている。

 『正常児は、他の人の興味、関心、感情、そして意図などが、どこに焦点をおいている

かを察知することができる。これには理由がふたつある。

(1)他の人々と子ども自身の間には、興味や関心などの赴く(おもむく)ところ、どこか

相通ずるものがあるので、子どもはおのずと他の人々の心中を的確に推察することができ

るのである。

(2)子どもは、話し手から伝わってくる、直接間接の手がかりを逃すことなく、その人が

今何に心を寄せているのかを敏感に感じ取る事が出来るからである。これらの点で、自閉

症児は非常に不利である。人の話が意味のある言葉として入ってくるためには、相手と共

通の視野を分かち持つことが必要である。この拠り所を欠いているために、自閉症児は大

人からいろいろ言われても、無意味な音として過ぎ去ってしまう事が多いのである。』

(3)ロシアの心理学者のヴィゴツキーは「思考と言語」(明治図書)の本の中で「思考

イコール言語と一体であるとしていた、これまでの説を否定し、思考と言語は別々に、互

いに無関係に芽生える。そして、それらは、ある時期までは、互いに別々の路線を進んで、

2才頃に交差して、その後はじめて言語そのもので考えたり、考えを人に伝えたり出来る

ようになる。」と述べている。

3.社会的刺激の適切な処理の失敗について

(1)自閉性障害児は、集団の働きかけに対して、適切な反応が出来ない事が多いが、その

理由について、ドーソン(1993)は「自閉症 野村東助・清水康夫監訳 日本文化科学社

」の中で次のように言っている。『自閉症の定位反応については、予想しがたく新奇な刺

激に対しては、嫌悪を感じる閾値が正常児より低い。とするならば、彼らにおける最適水

準の範囲は、正常児のそれよりも低いと予測される。物体がどのように反応するかは、そ

の物の特質と、その物に加わった働きかけの関数として、十分に予測する事ができる。こ

れに対して人は、自分で主体的に行動を起こしコミュニケーションするので情報は、複雑

さにおいて異なるだけでなく、おそらくより重要な事に、それは新奇性と予測可能性の程

度を異にしているのである。人々はこのように複雑で、新奇で、予測困難という性質を持

つがゆえに、その存在は、嫌悪閾値が低くて、この種の刺激の処理能力が弱体化している

自閉症児にとっては、刺激があまりにも過剰な状態になってしまうのである。』〔サング

ラスやヘッドホンで刺激を防ぐ子も居る〕

(2)聴覚の異常について

・聴覚のトラブルが、自閉性障害児者には多い。ある音には反応するが、別の音には全く

反応しない場合がある。例えば、私達には聞き取れない、ヘルツの高い音に反応する子が

いる。テレビをつけたまま、隣の部屋へ行ってしまったので、テレビを消すと直ぐにスイ

ッチを入れにくるので不思議に思い、つけたまままた隣の部屋へ行ったので、今度はテレ

ビの音声だけを消してしまっても、帰ってこなかった。ところが、スイッチを切ったとた

んに、隣の部屋から帰ってきた、テレビをつけた。私達には聞こえない、テレビの高いヘ

ルツにだけ反応していたのである。

・また、それとは逆に、総ての音をまるでテープレコーダーで録音したとさのように拾っ

てしまう場合もある。自閉性障害児者は、沢山の音の情報の中から、自分に必要な音や物

事だけを拾いだすのが、困難な場合が多い事に留意して、心が休まる生活を心がけてやる

必要がある。耳の穴に指を入れて、音が聞こえないようにして、心の安定をはかっている

子もいる。

 「私の耳は、総ての音をそのまま拾い上げるマイクロフォンみたいなものだから、二人

が同時にしゃべっていると、片方の声を意識外に押し出して、もう一人の声に耳を傾ける

事が難しい。普通の人は、聞くべさ音だけを給い上げる高指向性のマイクロフォンのよう

な感覚を持っているが、私は環境音を締め出すことはできないので、喧騒な場所では、人

の話が理解できない。子どもの頃は、騒音と人声が混じっている場所では、よく癇癪を起

こしたものである。…テンプル・グランディンー…自閉症の才能開発…学習研究社」と述

べている。ですから、言葉に反応しないから、耳が遠いのではないか等と考えて、耳元で

大きな声を出されると、まるで、耳のそばでハンドマイクで怒鳴られたような影響がある

ことを知っておいて対処してほしいものである。

・現在、イギリスで軽い自閉性障害者と結婚しているドナ・ウイリアムス(「自閉症だっ

た私へ」「心という名の贈り物」の著者)は、買い物に行くときは、ヘッドホンをつけて、

余分な音の刺激から自分を守り、強い光やネオンの刺激から自分の意思を守るために、サ

ングラスをつけて防衛している。それらの刺激に気を取られると、自分が何を買いたいの

か混乱して、途中で判らなくなってしまうからである。

 また、レストランなどでも、窓際や壁際の静かな場所を選んで座ると、比較的他の人の

会話の騒音から逃れられるので、落ちついて座って食事をする事ができる。私達は、自閉

性障害児者の多くが、食堂やスーパーマーケットなどで、バックグラウンドミュージック

のかかっている場所では、落ちつかないで、機嫌が悪くなることを経験しているように、

聴覚のトラブルがあることを考慮して、彼らの感覚にあった生活スタイルを見つけられる

ように援助すべきである。

 これは、軽度の知的な障害を持っている人達に言えることですが、8人以上の集団にな

ると入ってくる情報が過剰になり、相互に学ぶことが出来なくなるという調査結果がある。

そういう意味では、障害児学級の定数もそのあたりから決められたようである。

(3)言葉で考えられず、自閉性障害児者特有の視覚で考えることについて。

様々な実践や、自閉性障害児者自身の発言などから、私達は自閉性障害児者が、視覚を頼

りに学習をしたり、生活をしていることを実践で確かめてきた。そして、写真や絵やマー

ク等を手がかりに、彼らの理解を援助してきた。全部の自閉性障害児者がそうだというこ

とではないが、これらの特徴を彼らの生活に取り入れることで、社会生活をより豊かにす

る事ができる。

テンプル・グランディンは「絵で考えるのが、私のやりかたである。言葉は、私にとって

は第二言語のようなもので、私は話し言葉や文字を、音声つきのカラー映画に翻訳して、

ビデオを見るように、その内容を頭のなかで追っていく。誰かに話しかけられると、その

言葉は即座に絵に変化する。言葉で考える人達にとっては、これは理解しがたい現象であ

ろう。…中略…私は自閉症なので、情報を統合するのに普通の人があたりまえと思ってい

るやり方ではない。代わりに、CD-ROMのディスクに記憶するように、頭のなかに貯めてい

く。貯めこんだ情報を呼び戻すときには、ビデオを私のイメージなかで再生するのである。

…中略…自閉症についてもっともまどわせるものに、多くの自閉症者が話し言葉に事欠い

ている一方で、空間視覚認知にとりわけ優れた能力を持っていることがあげられる。」と

述べている。さらに、私達が名詞を自閉性障害児者に教えるのは、わりと易しいが、その

他のことはなかなか教えにくいことを「自閉症者たちは、絵にして考えることのできない

ものを学習するのは難しい自閉症児たちがもっとも簡単に覚えることが出来るのは、絵に

直接結びつくような名詞である」と解説している。

(4)以上の事から分かるように、世界や日本でも、自閉性障害の研究者や実践は、自閉性

障害児者に対しては、障害の軽重はあっても、個人的なプログラムで、個別に指導する必

要があることは、自明の理であると述べている。自閉性障害の軽重や、その子の発達課題

に応じた個人指導が、予後の発達にとって、決定的に重要になってくる。

自閉性障害児者は、大集団のなかでは身につける事が出来ない、固有の発達課題を持って

いる事に注意して綿密な指導をすべきである。勿論、集団の中での課題もあるので、小集

団から始めて段々と大きな集団に参加できるようにする。自閉性障害児特有の障害に配慮

しながらの、適切な交流の必要性は、論を待たない。

別の所で詳しくは述べるが、自閉性障害児者が、集団に参加していくのには、10段階ぐら

いのステップがあると思われる。

(5)10年先を見通した、個別的なプログラムで綿密に指導された自閉性障害児の大部分

(障害のかなり重い子も含めて)は、青年期になると自立の方向に向かっているし、自立

しかかっている例も数多く報告されている。また、私自身の個人的な実践をも含めて、10

年前は考えもできなかった恋愛感情まで生まれてきている子もおり、アメリカのノースカ

ロライナ州の例では、結婚生活を営んでいる人もいる。

94年に日本でも出版された女性の自閉性障害者が書いた本「自閉症だったわたしへ」ドナ

・ウイリアムス著 新潮社は、日本でもベストセラーになりましたが、現在はイギリスで、

軽い自閉性障害者の男性と自立した結婚生活を送っています。

反対に、統合教育(普通学級)のみを強調されて、普通学級だけで、個別の教育を受ける

ことなく学校教育を終えた自閉性障害児の多くが、自立がうまくいっていない例が数多く

報告されている。「可能な限り統合教育で」と、これまで主張されていた佐々木正美氏も、

今まで氏自身で指導されて来た、青年期になった自閉性障害者を追跡調査された。その結

果から普通学級などでの統合教育だけでは自立がうまく行かないことを反省され、数年前

から個別の教育が重要であると主張を変更して、論文も発表され、現在ではショプラーの

ティーチプログラムを熱心に取り入れて、個別指導をされておられる。また、世界や日本

で自立に成功した進んだ実践の多くが、小児病院や療育所、養護学校や障害児学級や共同

作業所等で、個別指導を受けて軽減発達してきた例からも、自閉性障害児者には特別の個

別指導が不可欠なのは明らかである。

4.自閉性障害の発症について

従来は1万人に5人程と言われてきたが、イギリスのWingによると(1986)、1万人に15人

を上回る有病率が報じられている。アメリカのノースカロイナ自閉症協会によると、1000

人に1人か2人と説明されている。日本全国では、12万人から20万人居るのではないかと推

定されている。

5.WHOの医学的障害の分類基準(ICD-10)は、3つの症状が全部36ヵ月までに見られるこ

とを要件としている。

(1)子どもの社会的関係と社会性の発達に障害が見られる。

(2)子どもに、通常の対人的コミュニケーションの発達が見られない。

(3)子どもの関心と行動が、柔軟性や想像力に乏しく、限定的かつ反復的である。

6.アメリカで1987年に出された「精神障害の分類と参断の手引」の4回目の改定版のDSM-

Ⅳ(1995年)が、一般的に判断する場合は、適切ではないかと思われる。

西村章次氏は、内容を大きく6つに分けられてまとめられている。

(1)生後36ケ月末頃までに発症する。

(2)他者に対する反応性の全般的な欠如が見られる。

(3)言語発達における顕著な欠陥が見られる。

(4)話し言葉が存在する場合は、即時の又は、遅延反響言語、比喩的言語、代名詞の逆転

  のような特異な言葉のパターンが見られる。

(5)周囲の様々な状況に対する奇異な反応、例えば変化への抵抗、生魚のある対象あるい

は、生命のない対象への特異な興味、あるいは愛着を示す。

(6)精神分裂病におけるような、妄想、連合弛緩、支離滅裂等が存在しないこと。

詳しくは「DSM-Ⅳ精神疾患の分類と診断の手引」高橋・大野・染矢訳 医学書院1995年

発行を参照されたい。

7.ICD-10やDSM-Ⅳなどの診断基準がハツキリしている現在、自閉性障害の診断は、こ

れらの事柄があるかどうかで診断されるものであって、「自閉的傾向」とか「自閉症的」

とか表現されるような、主観によって判断される様な曖昧なものではない、ということ

をここで、ハツキリしておく必要がある。

 

Ⅱ 自閉性障害について

 自閉性障害について、比較的やさしく説明してくれているものに、アメリカのノースカ

ロライナの自閉症協会の手引き書がありますので、一部を載せる。

Autism Primer 自閉経の手引き 発行:ノースカロライナ自閉症協会

       翻訳:佐々木 正美・青山 均

       「自閉症のトータルケア」佐々木正美監修 ぶどう社発行より

1.自閉症ってなんですか?

 自閉症は、生涯にわたる発達障害です。見るもの、聞くもの、その他感じるものを正し

く理解することが困難な障害です。このため、社会的関係やコミュニケーションおよび行

動面で深刻な問題を引き起こします。

自閉症の人が、正常な会話やコミュニケー・ションの方法、および人や物、出来事に適切

に関わる方法を見つけるのには大変な苦労を必要とします。それは、脳卒中を起こした人

々のリハビリテーションの過程での苦労に似ています。

自閉症は、さまざまな障害の中でも、最も困難なものの1つです。現在のところ、まだ根

本的な治療方法は見つかっていません。

2.自閉症の特徴は、何ですか?

 障害の程度は人によって違いますが、一般に次のような特徴をもっています。

・言葉の発達に著しい遅れがある。

言葉の発達が遅く、発達したとしても特異な話し方をしたり、通常の意味と違った不適切

な使い方をしたりします。ことばをうまく使える人でも、おかしな比喩を用いたり、型に

はまった話し方や、単調な声で話したりします。

・社会的関係を理解することが難しい。

自閉症の人は、視線を合わせなかったり、抱き上げられることを嫌がったり、周囲の世界

に”無関心”であるかのように見えたりすることがよくあります。そして、仲間と一緒に

遊べなかったり、友だち関係を築けなかったり、他人の気持ちを理解できなかったりしま

す。

・感覚に対する反応に一貫性がない。

 自閉症の人は、時々まるで音が聞こえないかのように見えたり、ことばや他の音に対し

て反応しないことがあります。また、一方で、その同じ人が、掃除機や犬の吠える声とい

った日常的な音を極端に嫌がることもあります。さらに、痛みをまるで感じないように見

えたり、暑さや寒さにも反応も鈍かったりしますが、逆に、それらに過剰な反応を示した

りすることもあります。

・知的才能に不均衡がある。

自閉症の人は、ある特定の能力が全体の能力に比べてきわめて不均衡に突出していること

があります。このような能力(ピークスキル)には、描画や音楽の才能、数の計算、それ

がもつ意味とは無関係に事実をあるがままに記憶したり、といった事があります。

またその一方で、多くの自閉症の人はさまざまな程度の精神遅滞を伴っており、正常範囲

かそれ以上の知能を持つ人はわずか20%にすぎません。この知的能力の不均衡さが自閉症

を非常に複雑なものにしています。

・反復性の常同行動やこだわりがある。

自閉症の人は、手をひらひらさせたり、身体をねじったり、回転したり、ロッキング(体

を前後にゆする)したりといった、常同的な身体運動をする事があります。

また、同じ道順を通る、決まった手順で着替えをする、毎日同じ日課で過ごす、などに

もこだわりを示します。もし、これらの習慣に何か変化が起きると、子どもでも大人でも

大変に混乱します。

3.自閉症の原因は、何ですか?

 自閉症は、脳の情報処理機能に障害をもつ生来性の脳障害です。自閉症の原因は、まだ

分かっていません。いくつかの研究によると、感覚器官を通って入った言葉や情報を処理

する脳の各部位に何らかの器質的な問題がある、といわれています。脳のいくつかの生化

学物質の不均衡によるものだという研究報告もあります。遺伝的要因が含まれる場合もあ

るともいわれています。自閉症は、実際にはいくつかの原因が組み合わさって引き起こさ

れるようです。子どもの置かれた心理的な環境が、自閉症の原因となることはありません。

4.自閉症の人は、どのくらいいますか?

「自閉症は、主要な4つの発達障害の1つです。1000人に1人か2人の割合で生まれます。

ノースカーライナにはおよそ10000人の自閉症の人たちがいます。

5.自閉症にはどんな人たちがいますか?

自閉症は、世界中のあらゆる人種、国籍、社会階級にわたって存在しています。自閉症の

人の5人に4人までが男性です。

6.自閉症の人に最も共通する問題は何ですか?

自閉症の人は、ことばや社会的なスキルを身につけたり、人との関わりをもつことがきわ

めて困難です。

7.自閉症の人たちは、どんな行動をしますか?

言葉や社会適応に重大な問題があるのに加えて、自閉症の人たちは、両親や家族、その他

の人たちと関わる際に、非常に多動になったり、また極端に受身的になったりすることが

あります。

8.自閉症のひとたちには、どのくらい行動上の問題がありますか?

 自閉症の行動上の問題は、重度のものから軽度のものまでさまざまです。重度になると

とても異常な行動をとったり、攻撃的になったり、さらに自傷行為などをする場合もあり

ます。これらの行動には固執性があり、改善するのが困難なこともあります。

軽度の場合には、自閉症は学習障害(LD)に似ています。しかしながら軽度の人であって

も、コミュニケーションや社会適応の困難さに本質的な障害があります。

9.自閉症と他の障害との合併はありますか?

 自閉症は、単独で生じる場合もありますが、精神遅滞や学習障害、てんかん、その他の

障害を伴うこともあります。自閉症は、軽度から重度まで連続した障害としてとらえると、

理解しやすいのです。合併する障害の数と精神遅滞の程度によって、どの程度重度かある

いは軽度かが決定されます。(10は略)

11自閉症は改善できますか?

 はい、自閉症は治療教育によって改善します。さまざまな研究の結果、すべての自閉症

の人たちは、自分たちをとりまく世界を理解するようになるにつれて、他の人に対しても

っと反応するようになります。

12自閉症の人は、どのようにして学ぶのがよいのでしょうか?

 特別に訓練された先生によって、個別的教育を重視した、特別に構造化されたプログラ

ムを用いて指導されれば、自閉症の人は家庭生活や地域社会の中で、十分に生活するため

のスキルを学習することが出来ます。中には、ほとんど普通に近い生活を送ることができ

るようになる人もいます。

13自閉症の人は、どんな仕事ができますか?

一般の自閉症の人は、構造化されていて、ある程度繰り返しの多い仕事が最も適していま

す。自閉症の人のなかには、芸術家やピアノ調律師、塗装工、それに農業や事務職に従事

している人、コンピューターオペレーター技師、皿洗い、流れ作業の組立工として働いて

いる人、またシェルタードワークショップやその他の保護された環境下で働いている人も

います。 (以下は略)1993年1月 ノースカロライナ自閉症協会

Ⅲ 自閉性障害に対するとらえ方の変遷

1.第1世代の自閉性障害(心因説が中心)

自閉性障害は心理的な要因で起こるといわれ、一般的には親の子育てに問題があり、それ

が原因で自閉になると間違って言われ、親が肩身の狭い思いをした受難の時代である

1.日本では1960年代の後半に、カナーの論文(1943年)にかなり遅れて、社会的な問題
としてクローズアップされだした。そして、1960年代後半に病院内学級が、そして1969年

(昭和44年)に東京の杉並区立堀之内小学校に、鈴木先生が担任(現在東京都教育庁勤務)

で自閉性障害児を中心として、最初の情緒障害児学級開設された。奈良県で障害児学級に

自閉性障害児を受け入れたのは、桜井市の纏向小学校で、その時1973年(昭和48年)たま

たま担任になったのが私(西田)であった。

(2)「自閉性障害児は、潜在能力がありながら、情緒的な障害のためにその能力が発揮さ

れないのである。」とカナーは述べた。私も実践のごく初期 (25年前)には、この説

を信じたが実践している途中で、情緒よりも言語や認知にこそ問題があると気がついて、

考え方を変えた。

カナーは、自閉性障害の中心をおよそ次のように述べている(1943年)精神分裂症のよう

な症状を示す小児がいるとして、後に「早期小児自閉症」という名をつけた。そこで、精

神分析学者、心理学者の研究の対象になったことから、様々な誤解を与えられるような状

況が生じた。

情緒的な接触の欠如②言葉をコミュニケーションとして用いられない③同一性の保持④
良好な潜在的な能力と説明。
そこから日本独特の解釈がなされ、当時は自閉性障害は「情緒障害児、母親のスキンシッ

プの不足が原因で起こる。子育ての不十分さや、テレビの見せすぎ等も原因。」と間違っ

た考えが言われていた。

(3)日本では、最初に自閉性障害を紹介した人が、心理学を主に研究していた人たちだっ

たので、心理的な方面ばかりに重きを置いた結果、器質的な問題が重視されなかった。

そこで、もっぱら情緒的な障害が強調され過ぎて、結果として「親の子育てに問題がある。

…母親のせいだ症侯群…」という誤った考えが世の中に広がってしまった。

知能的には障害が無いのではないかとか、特殊な能力を持っていると考える人が多く情緒

障害を無くせば健常児に戻るだろうという、親の子育てに責任があるというとんでもない

全く誤った説が大きな力を持っていた。ある説では、テレビを見せることで自閉性障害が

起こると言う荒唐無稽なことを言う人もいた。そのために、親子の心のつながりが不足し

ているために、情緒に障害を起こしているのだから、子どもの要求は全部受け止めなさい

(全面受容)とか、箱庭療法とかの心理的な指導が多かった。

その結果、子どもは何もしないで,大人をあごで使いまわし、結果的には自分で何もしな

い、できないままに大きくなり、「赤ちゃんのままの大人に育ててしまった」という誤り

をおかした実例が多く出た。現在の35才前後~25才位の自閉性障害児に多くみられる。現

在では、自閉性障害は心理療法の対象ではなくなっている。

2.第2世代の自閉性障害(脳の認知障害説へ)

 この時期になると、多くの学枚で情緒障害児学級として学級が開設できるようになった

また養護学校が義務化され、就学免除になっていた多くの重度障害児に、教育を受ける権

利が保障されるようになり、障害児教育全体が大きく進展した。

ラター、ショプラー、ウイング等の研究により 1970年代になると、自閉性障害は情緒
に問題があるのではなく、脳の認知の部分に問題があるのだといわれ、療育の現場でも、
実践でその説が補強されてきた。
2)ラター等が唱えたこの説は「状況証拠ではあるが」と言いながら「脳の機能に問題が

ある。言語並びに認知面に問題があるのだ」と説明している。主たる障害は、脳の機能・

認知障害であり、情緒の障害はその認知の障害の結果出てきたものであり、カナーのいう

情緒的接触の欠如は主たる要因ではなく、2次障害として起こったものであるということ

が言われる様になった。このように、自閉性障害についてのコペルニクス的な発想の転換

があり、日本にも大きな影響を与えた。

(3)この影響と、先駆的な研究や養護学校義務制で、自閉性障害の教育について実践が進

んだ。今までは対処療法が多かったが、この時期からは第1世代の発達から学んだりして、

10年先とかを見通した実践が出来るようになりだし、自立の可能性が見えだしたことで、

暗いトンネルの向こうに、希望の光が見える思いをした者が多い。

3.第3世代の自閉性障害(医療機器の発達や医療の進歩で、療育実践と結論が似てきた)

・ごく最近になって言いだされた説ですが「自閉性障害は注意を向けること、必要な場所

に注意を集中出来ない障害で、最近発見された小脳の異常所見と一致する考え方である。

また、扁桃体や海馬等の大脳辺縁系の萎縮や前頭葉の脳波異常等も関わっているらしい

その時の状況の中で、1番大切な物に目が行くように課題を溝造化したり、手先に視線を

向けるような作業課題を選択して、教育することが大切ではないか」と言われている

1.私自身も、25年間の自閉性障害児とのかかわりを整理してみて、この指摘はかなり的
確なものではないかと思っている。そういう観点から、療育者や親は、もう1度自分の行

っている実践や子育てを、きちんと見直す事が大切である。この観点から見て私たちが長

年かけて作ってきた「生活年齢から考えた発達課題表」(別表を参照)を実践するなかで、

もっと詳しくしていきたいと思っている。

また、最近の多くの研究書は、自閉性障害をもつ子どもには何らかの(おそらく微細な)

脳損傷があると述べている。「損傷が発見されない場合も、脳を検査する手段がまだ十分

開発されていないからだと思われる。」バロン・コーエン…自閉症入門

(2)「自閉症療育ハンドブック 佐々木正美」学研より

社会性・情緒系と言語・認知機能の発達ほ、しばしば顕著な解離を示して進展や停滞を見

せる。重度の発達障害を伴う自閉症児は、両機能とも重い障害を示すが、知的機能が高い

水準にある自閉症児は、相手の人を識別(認知)して会話も自由に出来るのに、社会性や

情緒機能には重い障害を持っていることがある。すなわち相手が何をどう感じているかと

いう気持ちや感情は全く理解できず、式典や行事の場面はもとより日常生活での種々の環

境や状況で、そこにいる人々が暗黙の了解事項や、自分に何が期待されているのか、ある

いはどんな行為が不適切なのかといったような社会的意味を読み取ることが出来ないとい

う、正常知能の自閉症児は少なくない。

むしろ、正常の知能水準にある自閉症の人達もその大多数が、このように社会的、情緒機

能の障害を強度に示しており、自閉症が社会性・情緒系に持つ障害や欠陥の問題は、言語

・認知系機能のそれに劣らず深刻である。〔中略〕

このようにして、自閉症の社会性・情緒系機能の欠陥は、自閉症に一定の特異性を持つ神

経学的な異常による1次性の障害であって、言語・認知系機能の障害による2次性の欠格

ではないとする考え方が、多くの自閉症の臨床研究を経て確認されつつあるしかも近年で

は言語・認知系の障害よりも、社会性・情緒系の欠陥のほうが「自閉症状群の鍵であると

いう認識が受け入れられるようになってきたとさえいわれている(Denckla,M1986)した

がって、今日では、言語・認知機能の治療や訓練のみでは、自閉症の人たちの社会生活に

おける予後の改善には大きな貢献が出来ないという経験的認知が高まってきており、例え

ばTEACCHプログラムでは、自閉症の人たちの社会適応活動を地域社会において直接指導す

るやり方を採用して、社会的機能の改善や発達に大きな成果を上げている。

(3)「自閉症の謎を解き明かす」ウタ・フリス著 富田真紀、清水康夫訳 東京書籍より

・最近のMRI(核磁気共鳴映像法)による研究の一つに、精神遅滞の有無にかかわらず自閉
症の人で、小脳のある」小部分の形成が異常に悪いことが見いだされた。それが脳の他の

箇所の未知の異常と関連していることは、十分にありえます。(中略)

薬物により、自閉症のある種の症状は治療の可能性が間違いなくあるでしょう。しかし、

薬物療法で発達的な脳の病理性を予防したり、回復させるまではとうてい不可能と思えま

す。

・中枢の統合能力は、人間の認知システム固有の(そして有用な)特徴であると考える

のです。しかし、同時に自閉症では、それが重大な損傷を受けていると考えます。

(中略)その能力パターンの全体像は、非常に高度な中枢思考過程に、特異な、あるダ

イナミックな作用を冒す認知機能不全に由来すると見ることによって意味あるものにな

るのです。その機能不全がもたらすものが独特の分離性です。

〔絵を全体としてみないで、断片としてみる。パズルの完成も鎗を手掛かりとしないで、

切り口を手掛かりとして見ていく。絵を書く場合なども、部分から書きはじめて全体を

完成させていく傾向があるなどや、中枢での統合の欠如という考え方から、積木模様の

テストや機械的記憶力の良さなどが説明できるのではないだろうか?これは私の解釈で

す…西田〕

・核となる特徴を見極めるためには、私たちは様々な症状の本質を探っていかねばなり

ません。こうした中で、私たちは様々な証拠を貫いて走る一本の赤い糸を見いだしまし

た。それは、一貫性があり、意味のある概念を得るために、情報を統合する能力に欠け

ることです。世界を意味あるものにしようとする心の準備態勢に、欠陥があるのです。

心の機構のなかにある、ほかでもないこの欠陥こそが、自閉症の本質的特徽を説明でき

ます。

(4)「驚異の小宇宙・人体Ⅱ『脳と心』④人はなぜ愛するか 感情」 NHK出板より

・自閉症の原因はまったく分かっていないが、現在の学説では、胎児期に何らかの異常

が脳の中に起こり、それが原因で通常のコミュニケーションが取りにくくなっていると

考えられている。

・アメリカのボストン市民病院のトマス・ケンバー博士とマーガレット・バウマン博士
は、事故で亡くなった9才から29才までの6人の自閉症患者の脳を解剖し、細胞レベルで

の変化を調べた。その結果、大脳辺縁系(へんえんけい)の海馬(かいば)のCA-1から

C A-4、で海馬支脚にいたるほぼ全域、そして、扁桃体(へんとうたい)のはとんど全

部にわたって細胞の萎縮と凝集化(ぎょうしゅうか)が見られた。

そのほか、小脳でも、小脳皮質のニューロンであるプルキンエ細胞の数が減少しており、

さらに視野を拡大してみると、変化していた部位のニューロンの樹状突起(じゅじょう

とっき)の成長が著しく劣っているのが見られた。

・扁桃体(へんとうたい)は、大脳皮質を通じて外界から人力したすべての信号を、過
去に体験した記憶と照合しながら、役に立つ、役に立たない、好き嫌いなど生物的価値

判断をしていく場所であり、海馬は記憶をつかさどる脳である。またこの辺縁系(へん

えんけい)には、刺激により快感を感じる快感中枢、不快感を感じる不快中枢が隣接し

て走っていて、扁桃体(へんとうたい)の価値判断はこの快、不快と密接に関係してい

ると考えられている。



・ケンバー博士とバウマン博士は、自閉症患者の脳のこれらの異常は、誕生以前の

胎児期の脳の発生時に起こったものと考えている。なぜなら小脳の細胞の軸索(じくさく

)の随鞘化(ずいしょうか)〔神経細胞から情報伝達のために長く伸びた1本の軸索(じ

くさく)のまわりを覆う髄鞘ができあがること〕は、妊娠28~30週ごろに完成するので、

細胞が何らかの原因で変質したのは、それ以前のことと思われるからである随鞘はミエリ

ンとも呼ばれ、ニューロンの随鞘化により軸索を伝わる情報の伝達スピードが大幅にアッ

プするのである。扁桃体、海馬の細胞の萎縮も同じように、この部位の細胞が完成する妊

娠30週以前の胎児期に起こったのだろう。

(5)最新の研究では、小脳の神経の信号の伝達物質のドーパミンが自閉性障害児は少ない

ことが観察されている。ドーパミンを増やすテトラハイドロバイオプテリンが、幼児期に

は自閉性障害児の症状を改善できる場合もあるという。日本で試験的に投与した子の、約

40%にある程度有効だったとテレビで紹介されたが、盲検試験の結果、残念ながら効果

が見られなかったので、96年に中止された。

自閉症児における小脳発達異常の証拠「対象とした自閉症群で、新小脳虫部の解剖学的異

常所見を得た。新小脳虫部のⅥ小葉とⅦ小葉が有意に小さいことが特教であり、旧小脳虫

部であるⅠ-Ⅴ小葉とⅧ小葉は正常の大きさであった。虫部の部分的低形成の単純な指数

が作成され、それによると自閉症では新小脳虫部のⅥ小葉とⅦ小葉に限局して縮小してい

るのであって、それは脳全体が小さいためではないことが確認された。(中略)この小脳

虫部Ⅵ小葉とⅦ小葉の縮小ないし低形成は、他に医学的障害や知的障害を合併しない古典

的な幼児自閉症における神経解剖学的病理所見である。この肉眼的異常は、多少低機能な

自閉症のみならず多数の高機能自閉症児にも見られた。

ことから、幼児自閉症の大部分に共通した所見ではなかろうか。また、これは障害が脳の

発達の早期に生じたという解剖学的証拠とも思われる。(中略)このような新小脳の虫部

と半球皮質の生理解剖学的異常(すなわち顆粒細胞かプルキンエ細胞の脱落)は、深部小

脳核(室頂核、中位核、歯状核)神経細胞の機能異常を引き起こし、次にはこれが覚醒と

注意、視床の感覚処理、運動の発動と協応、セロトニン活性、ドーパミン活性、眼球前庭

機能、海馬機能、発話、食行動のような複雑に動機づけられた行動などを媒介する1つも

しくはそれ以上のシステムの正常機能を障害することになるであろう。」(他の検査では、

ⅥからⅧまでの小脳が小さいという報告もある)

(7)自閉症に見られる発作〔杉山登志郎 静岡大学教授 実践障害児教育・学研〕

・自閉症と脳波の異常

自閉症にしばしばてんかん発作が生じることは、よく知られた事実である。脳波の異常

は、約5割から、一説には8割という高頻度に認められ、さらに全体の1割から3割はてんか

ん発作を生じる。この発作は、児童期に初発することが多い一般のてんかんと異なって、

青年期に至って初めて生じるものが多いことが特徴であることは、以前から指摘されてい

た。(中略)幼児期から見られるてんかん発作は、比較的治療が難航するものが少なくな

く、いわば、難事性のてんかんという重度発達障害が、精神発達面では自閉症という形で

現れたといったものに対して、自閉症の青年期に始まる

てんかんは、だいたい薬物反応は良好で、てんかんそのものの治療に苦労することは少な

いのである。

・前頭部由来の脳波異常の存在

この自閉症の脳波異常という問題に、最近になって、自閉症の病因論に直接絡む重要な

知見が、我が国の研究者から報告された。新たなる発見をなし遂げたのは、川崎葉子氏、

横田圭司氏を中心とする都立府中病院の児童精神科医グループである。

まず川崎らは、15才以上の自閉症青年145名の脳波を検索し、そのうち、83例(57%)に

脳波異常を見いだした。そのうち62例(全体の43%)は、前頭部に発作焦点を持つことに

川崎らは注目した。

これらの前頭部由来の発作波は、青年期になって初めて脳波の異常を示すようになった自

閉症青年に集中していた。川崎らはさらに、脳磁図を用いて、前頭部由来の発作波が帯状

回や上前頭回に局在することを確認し、自閉症において前頭葉一辺縁系に何らかの障害が

存在する可能性があることを示した。

・自閉症における前頭葉一辺縁系障害

この川崎、横田らの一連の研究は、自閉症研究において、実に久々に得られた有力な異常

箇所である。自閉症の病因を巡る研究は、膨大なネガティブ・データ(異常なしの所見)

の山であった。これまでの脳の殆どの部位が自閉症の病因の中心として挙げられたが、例

数を多くして検索してみると、どれも決め手となる所見を得ることができなかった。

最近になって、年長自閉症青年においては、判断能力(executive function)としてく

くられる判断、類推等の前頭葉機能の異常が最も特異的に見られることが報告されている。

年長の自閉症青年に、前頭葉性症侯群が見いだされることは、十数年以上前から、故・十

亀史郎氏によって報告されていた。

一方、事故などで死去した自閉症の脳のごく少数の解剖所見からは、小脳と大脳辺縁系に

異常が見いだされることが報告されていた。

前頭葉が判断や類推の中枢なら、辺縁系は感情の中枢である。川崎らが見いだした前頭部

由来の発作波の所見は、自閉症において辺縁系と前頭葉にまたがる領域に障害の部位があ

ることがはっきり示しており、心理学的・神経病理学的・神経生理学的検索において同一

の部位の異常が示されたという、自閉症研究ではめったにない有力な所見なのである。

自閉症の社会性の障害をはじめ、パターン的な思考、文脈や全体を把握することの困難、

固執傾向、視点の変換が出来ないことなどの諸特徴は、前頭葉一辺縁系機能の障害として、

ある程度説明が可能であり、今後の研究の成果が期待される。

(8)最近注目されだしたアスペルガー症候群と自閉症

・1940年代のほぼ同時期にカナーとアスペルガーは自閉性障害についての報告を行った。
しかし、アスペルガーの研究は長いこと注目されず、研究がされてこなかったが、1990年

代になって急速にアスペルガー型自閉性障害(アスペルガー症侯群)の研究が進んだ。ア

スペルガー症侯群は、高機能自閉性障害とはまだ明確な違いの定義や診断の基準が確立さ

れていない。アスペルガーは「一般的に言語発達で奇妙さがあるものの、5才までにはよ

く話すようになり、ある面では高い知能を持ち、奇妙だが対人関係が比較的良好な少年・

青年期の自閉性障害の軽度の形態」と報告している

・「高機能カナー症候群やアスペルガー症候群は、おおむね話し言葉も発達し、しばしば
勉強もよくできる。アスペルガー症候群児は、カナータイプよりも正常な話し言葉の発達

をみせ、認知能力も彼らより高い。アスペルガー症候群は「高機能の自閉症者の範疇」に

入る。カナー症候群とアスペルガー症候群の際だった違いは、アスペルガー児はしばしば

不器用なことである。(「自閉症の才能開発」テンプル・グランディン著 カニングハム・

久子訳 学習研究社より)

(9)資料「D・タンタムによるアスペルガー症侯群の診断基準」(自閉症とアスペルガー

症候群-ウタ・フリス編 富田真紀訳 東京書籍より)

★成人期において

○次のいずれかを伴わせた、非語的表現力の欠如

 ①表情、身振り、音声の韻律、姿勢などの特異性。

 ②社会的に重要なシグナルが理解できない。

 ③以上の両方。

狭く個人的な性格を持つ、変わった「独特な」興味。この独特な興味は、内容が特異的で
あるか、その追求が強迫的かのいずれか、またはその両方。独特の興味は、物の収集、事実

の記憶を含むことが多い。

社会的に認められた習慣、特に通常は暗黙に了承されている習慣に従って振る舞うことの
困難さ。

〇発語の語用論的側面の異常。

親しい仲間関係の欠如。すべてではないが、仲間にはねつけられる近づき方をした結果
としてのことが多い。(相手の意思を十分に理解することが出来ないためや、相手が今ど

う思っているのか推察出来ないために、相手の意思に関係なく、相手を無視して近づいて

いくので、結果的には嫌われてしまう。……西田の考えとして)

○不器用性の印象。

★小児期において

○前述と同様の症候、または自閉症の症候。

〇小児期の育成暦が得られない場合は、症候を小児期早期からの精神障害に帰するこ

とはできない。

(10)原因論や研究の変遷のまとめとして

以上のような結論から、治療や教育では、初期の頃に存在すると仮定された、自閉性を解

消させることはではない。『自閉症で損なわれているのは、対人関係やコミュニケーショ

ンの意欲とか感情ではなく、それを果たすのに必要な言語の理解とか、文章的な表現や状

況の把握の機能に問題があるのだとの認識である。したがって、「やろうとしない」とい

う意思の問題ではなく、「できない」からやれないということである。』と高橋 晃氏(

しいの実社施設長)は述べているが、同感である。

さまざまな試行措誤の実践から、今では自閉性障害の打開のための方向性や方法がかなり

明らかになってきている。具体的には、個別の問題行動の解決とか、言語の問題とかは、

別の項目で述べることにする。

自閉性障害児者の、中度の人を一応の目安として、私たちはここ10年以上わたって100名

以上の療育の実践を検討して、別のところで述べてある課題表を作ってみた。

それらの表を、これからもっと豊かに発展させていきたいものである。

(11)是非とも読んではしい最近出版された本

◎「自閉症入門」バロン・コーエン・ボルトン書 中央法規   1854円

〇「こころという名の贈り物」ドナ・ウイリアムズ 新潮社   2000円

◎「自閉症の才能開発」テンプル・グランディン著学 習研究社 2500円

◎「自閉症児の保育・子育て入門」中根 晃 大月書店     1300円

◎「自閉症」 G・ドーソン編    日本文化科学社      9000円

〇「自閉症と発達障害研究の進歩」(特集 心の理論)

 高木隆郎 M・ラタ一 E・ショプラー編  日本文化科学社  8000円

〇「発達障害論 研究序説 第1巻」白石正久著 かもがわ出版 3000円

〇「自閉症の謎を解き明かす」ウタ・フリス著 東京書籍 2200円

◎「自閉症療育ハンドブック」佐々木 正美著 学習研究社 2400円

○「自閉症とアスペルガー症候群」ウタ・フリス編 宮田真紀訳 東京書籍

(12)脳の断面図「自閉症入門バロン=コーエン・ボルトン著 中央法規」より




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