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ドパミン・ノルアドレナリン・前頭前野

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やりたいことをみつけて、やりたいことをやりなさい

やりたいことを見つけなさいというのは
教育する側の責任放棄が多分に含まれている気がする

子供が学校の部活を選ぶときに乗馬部でも将棋部でも
別にかまわないだろう
やりたいことをやればいい
と、一応は言える

しかしそうでばかりもない

好きか嫌いかの意味づけだけではなくて
社会的な評価とかもっと広い価値付けがあることを
教育しなければならないのだと思う

それは教育の責任である

「やりたいこと」という言葉の意味が
単に「ちょっと興味がある、好きかもしれない」という次元のものから
「自分の人生にとって意味がある、社会的な意味がある、共同体にとって求められている活動」など
幅が広い

広く社会を見て、人間を見て、また深く歴史を考察して、同時に自分自身を見つめ、
今自分は何をしたいのかと問い直せば、
真実、自分を生かし、社会に役立ち、周囲を幸福にする道が見えてくるものだろうと思う。

そこまで問い詰めないで、単に上司が苦痛とか客先と合わないとか、いやな先輩がいるとか、
そのような偶然の要素でものごとを決めていては
人生で何も達成できないだろう

やりたいことをみつけるには
相当勉強しないと見つからない
若い人にはほとんど無理だろうと思う

日曜日にやりたいことはゲームとか
その程度の次元のやりたいことしか思い浮かばない

ーーーーー
発想を変えて、自分にできることは何かを考え詰めていくことも有効だろうと思う
やったってできないことはできないのだ
あるいは自分よりうまくできる人はたくさんいる
そんな中で自分生きる道はどこにあるかそう考えると
そんなにたくさんの道はないようにも思われる

案外狭い道なんだよ人生は


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「やりたいこと」症候群

 新卒切り──。またもや物騒な言葉が出てきたものだ。

 一部の報道によれば、入社したばかりの新入社員に、理不尽な要求を突きつけたり、上司が罵声を繰り返し浴びせたりして、新入社員が自主的に辞める状況に追い込むケースが目立っているという。

 NPO(非営利組織)法人の労働相談センターにはこの4月以降、「この業界に向いていない」「協調性がない」などの理由で、解雇通知や退職勧奨を受けた新入社員からの相談が10件以上あったそうだ。

 こうした新卒切りが横行している背景には、景気の回復を見込んで多めに採用したものの、予想が外れて慌てて人件費の削減に走る企業の姿勢に加えて、一昨年に「内定取り消し」が社会問題となり、厚生労働省が悪質な企業15社の公表に踏み切ったことがあると見られている。「内定切りはできないから、入社直後に自主的に辞めてもらおう」というわけだ(出所はこちら)。

 もし、これが事実だとすればあまりにひどすぎる。せっかく入った会社で、こんなむごい仕打ちを受けたら、心に大きな傷を負う。入社して半年間は、その後のキャリア人生に大きく影響を及ぼす大切な時期であるだけに、許されることではない。

「仕事をさせる以前」の新人君たち

 ただ、報道をそのままうのみにするのも、少々危険な気がしている。何というか、一人の人生を大きく左右する問題であるだけに慎重に言葉を選ばなくてはならないのだけれど、新卒切りは、派遣切りや内定切りといった調整弁としての“切り切り対策”とは、性質が異なる部分を秘めているようにも思うのだ。

 例えば大学などでも、成績の評価を不服とする学生が、パワーハラスメントならぬ「アカデミックハラスメント(略称:アカハラ)」を訴えて、裁判まで持ち込むケースがある。若い世代に顕著に見られる過剰なまでの自己防衛やら、核家族やら、少子化やらで、自分と違う世代から言われる一言に、必要以上に過敏になっているケースも存在しているのではないか。

 それに「だって、切りたくなるような新人ばっかりなんだもん――」と上司たちが嘆きたくなるほど、問題の多い新人だっている。

 電話が鳴っても、「あの~電話鳴ってますけど……」などと、自分からは一切取ろうとしない。会議用の資料のコピーを頼むと、どうしたって読めないだろうと誰もが思うサイズに縮小コピーしてくる。資料に間違いを見つけても「僕の仕事ではないので」とそのままにする。

 こうした「仕事をさせる以前」のレベルの新人に手を焼いている上司たちの話を聞く機会の多さといったら、半端じゃない。40代以上の社員が2~3人集まれば、大抵は「信じられない新人君たちの行動」で話題が盛り上がる。

わずか3カ月で退社した青年の理由

 いや、だからといって上司が新人に暴言を吐いていいと言っているわけではないし、問題がすべて新人にあるわけでもない。上司たちも上司たちで、何でもかんでも学校教育のせいにして、自分たちで新人を育てることを放棄する。

 新卒切りと呼ばれているものは、すぐに責任、責任と騒ぎたがる世間や、世の中全体に余裕がなくなっている現代ならではの出来事なのかもしれない。

 従って、新卒切りという言葉を使うことも、この問題を扱うことも、かなり慎重でなければならないと思っている。なので、これから紹介する事例については、単なる新卒切りとは考えないでいただきたい。

 A君、23歳。一浪の後、某有名私立大学に進学した礼儀正しい好青年である。

 彼はこの春、某旅行代理店に就職した。ところが、私が彼に会った6月末には既に辞めていた。「やりたいことができない」というのが理由だった。

 今年度の大卒の就職率の低さはご承知の通り。過去最悪だった1999年度の91.1%に次いで2番目に悪い91.8%である(厚生労働省と文部科学省発表)。

 これほど厳しい就職戦線をくぐり抜けたにもかかわらず、わずか3カ月で辞めてしまったのだ。

 「僕はたくさんの人に喜んでもらえる仕事がしたいんです。でも、先輩たちがやっているのは、いろんな会社などを回ってチケットを販売しているだけ。上司には、『新人は自我を捨てろ。やれと言われたことだけ、一生懸命やれ』と言われて。入社面接の時には、会社に入ったら何をやりたいのかって散々聞かれたし、どんなことをやろうと思っているかってレポートまで書かされた。なのに、入った途端に、『言われたことだけやれ』って」

 ――辞めちゃったけど、これからどうするの?

「新卒じゃないと採用も少ないんで、秋に大学院の試験を受けます」

 ――で、やりたい仕事はどうするの? 就職は?

「とりあえず院に行って……そうですよね~」

 以上が彼と私のやりとりである。

 う~む。チケットを買ってくれた人は、喜んでいないのだろうか。やりたいことができない。だから辞める。辞めても採用が少ない。だから大学院の試験を受ける。その大学院はやっぱり親のお金で行くんだろうなぁ。まぁ、本題とは関係ないけど……。

CAになりたての私も「辞めたい」と思ったが…

 入社したての新入社員が、「辞めたい」と思うのは決して珍しいことではない。ある民間企業が入社半年後の新卒社会人を対象に行った調査では、約4割が「辞めたい」と回答している(出所はこちら)。私自身も、全日空(ANA)の客室乗務員(CA)時代には初フライトで「辞めたい」と思った。

 いわゆるリアリティーショック。想像していたCAの仕事とあまりに違う実態にショックを受けたのだ。

 どんな仕事であれ、外から見るのと実際にやってみるのとではえらく違う。世間が思うほど楽な仕事はないし、華やかな仕事もない。そんなギャップを目の当たりにして、「辞めたい」と思った。

 初フライトは米ワシントンDC線。成田に出社してから、初めてCAとして飛行機に乗り込み、ワシントンDCのステイ先のホテルで解散になるまでの約20時間。そのうち、私が思い描いてきたCAを体感できたのは、わずか5分間だった。

 制服のスカーフをたなびかせ、キャリーカートを引っ張りながら空港を歩き、「あら、スチュワーデスさんよ~」とお客さんたちが振り返って、「きゃっ、私、憧れのスチュワーデスになったんだ!」と実感した瞬間だけ。幼稚だ、と思われるかもしれないけれど、そんなささいなことで喜びを感じたのだ。

 その後、機内に乗り込んでからは「えっ、こんなの聞いてないよ」という仕事の連続だった。想像以上の肉体労働、マニュアルには一切書いていない機内のトイレ掃除や灰皿掃除などなど……。

 「何でこんな仕事しなきゃいけないんだ」とがっかりして、「辞めたい」と思った。

 でも、辞めなかった。だって、せっかく憧れてなったスチュワーデスだし、「このまま辞めたんじゃキャリアにも何にもならない。『石の上にも三年』っていうくらいだから、3年間はとりあえず何も考えずに働いてみよう」と思いとどまり、辞めなかった。

 ところがA君は「何か違う」と思って辞めてしまった。しかも、わずか3カ月で。もったいないことだ。

「やりたいことができたのは50歳を過ぎてからだった」

 半年未満に辞めてしまうこと自体は悪いことだとも思わない。個人にとっては、ミスマッチな会社に無理して居続けると、メンタルが低下する。私が以前、新卒社会人を追跡研究した際も、半年未満で辞めてしまった10人の精神健康は、辞めた後に回復していた。

 むしろ、A君について引っ掛かったのは、彼が辞めた理由である。「自分のやりたいことができそうになかった。何か違う、って思って」という言い訳。少々キツイ言い方になってしまうが、「随分と簡単な“やりたいこと”だったんだなぁ」と正直思う。やりたいことって、そんなに簡単にできるほど世間は甘くはない。

 そもそも入社して早々、やりたいことができる会社なんてあるのだろうか。

 先日、退職を1週間後に控えた方に取材させていただいた。その方は「やりたいことができたのは50歳を過ぎてからだった」と語っていた。

 実はこの男性も20代の頃は「会社を辞めたい」と何度も思ったそうだ。

 「僕たちの頃は、会社を辞めるっていう選択はあまりなかったですから。辞めたいと思っても続けるのが普通だったし、昔は選択肢が少なかった分、いろいろ考えずにやるしかなかったから逆に良かったのかもしれません。でも、自分がやりたいことが最後にできたのは、やっぱり地道に自分のできることを続けてきた結果だと思います。会社から功労賞をもらうこともできてうれしかったです」

 インタビューするまでは、リタイア直前の不安や切なさを感じているのではないかと勝手に想像していたのだが、私の期待は良い意味で裏切られ、その男性は満足感に溢れていた。「人間コツコツやることが、大切なんだと思います」というその男性の言葉には、重みがあった。リタイア後は、会社でやってきたこととは全く違う「やってみたいこと」にチャレンジするそうだ。

“やりたいこと”は組織と一体化して初めて見つかる

 やりたいこと。それを組織の中で行うためには、まずは組織と一体化しなくてはならない。組織との一体化とは、すなわち“組織への適応”である。

 米国の組織心理学者のエドガー・H・シャイン(米マサチューセッツ工科大学名誉教授)は、これを組織社会化(organizational socialization)と名づけ、「個人が組織内の役割を引き受けるのに必要な社会的知識や技術を獲得するプロセス」と定義した。

 組織社会化では、
・ 自らに課せられた仕事を遂行する。
・ 同僚や上司と良好な人間関係を築く
・ 組織文化、組織風土、組織の規範を受け入れる
・ 組織の一員としてふさわしい属性を身に付ける
ことが課題となり、 組織社会化に成功した個人は、その後は順調なキャリアを重ねることができる。

 個人は組織と一体化する中で、自分の居場所、自分の仕事を見つけ、離職や転職を考える可能性が低下する。そして、この組織社会化を通じて、自分の“やりたいこと”が明確になり、それを組織の中で実現するための土台作りを始まるのだ。一体化しない限り、やりたいことなどできないし、一体化することで初めて、本当に自分のやりたいことへの道筋が見えてくる。

 組織社会化には明確に何年かかると言いきることはできないが、最低でも3年、長い場合は10年近くかかることもある。

 しかも、組織社会化は入社前から始まるため、どれだけ企業と新人が本音で向き合う時間を入社前に共有できたかが影響する。つまり、簡単な面接試験だけで採用が決まった場合、入社する前から組織社会化のハンディを背負いながら入社することになる。

 いずれにせよ、今のどこの会社でも行っているようなお互いに“猫をかぶった”採用方法では入社前の組織社会化は期待できない。だから余計に、入社直後の経験が重要なのだ(この問題はちょっと根が深いので、別の機会に扱います)。

それでも“やりたいこと”が見つからないこともある

 さて、話を「やりたいこと」に戻そう。

 組織社会化に成功すると、「やりたいこと」が明確になり、組織の中でそれを実行に移す行動が始まるのだが、中には例外もある。私がそうだったように、「この組織では自分のやりたことはできない」と会社を辞めることを選択するケースもあるのだ。

 以前、このコラムでも書いた(関連記事:ANA客室乗務員は見た!JAL全盛期の“光”と“影”)ように、先輩社員たちとの関係、語り継がれている“物語”などを通じ、会社と一体化したことで、私はANAのCAとしてやりがいを感じて働いていた。でも、それが本当に自分のやりたいことなのか? というと、「はい!」と素直に答えられない自分がいた。

 そして、3年を過ぎた頃から、「私のやりたいことは、本当に今の仕事なのか?」という、明確な疑問を持つようになった。ANAのCAでいることに、興奮できなくなっている自分がいたのだ。

 でも、なかなか「だったらどうする?」という答えが見つからなかった。結局、曖昧な不安と不満を抱えながら1年が過ぎた。私にとって当時の最大のストレスは、答えを出せないことで、悩みながら飛び続けていることだった。CAを続けるなら続けるで、続ける覚悟が必要だったし、何か他のことをやるならやるで、それなりの覚悟が必要だった。

 結果的に私は、「自分の言葉で何かを伝える仕事がしたい」という漠然とした“やりたいこと”を求めてCAを辞めた。だが、世の中そんなに甘くはない。自分の言葉など持っていないことに気づいたのは辞めてからのことである。

 帰国子女、元スッチーというだけで、雇ってくれる会社などどこにもなかった。自分の言葉など、自分が持っていないということに、世間の冷たい風に吹かれて初めて気づいたのだ。甘い。完全に私は甘かった。「やりたいことできないから、大学院に行きます」と言うA君と同じくらい甘かった。

 そこで初めて「自分の言葉を持つには、専門性を身に付けるしかない」と、やりたいことをやるための道筋を見いだした。

 とはいえ、何をやったらいいのか分からない。そこで、「とりあえず英語はできるから、同時通訳なんかどうだろう(←この考え方自体、甘いのだが)」と、半年間の授業料を払って同時通訳の学校に行くことにした。

 ところが、である。ここでも再び、ショックを受ける。なんと最初の授業で先生が「一人前の同時通訳になるには、10年かかると覚悟してください」と言ったのだ。

 「マジ! 10年もだなんて、授業料払う前に言ってよ」と私は再びショックを受けた。

 ただ、この先生の一言で、自分のやりたいことが同時通訳になることではなかったってことだけははっきりした。つまり、英語は話せたけど、英語を勉強することは好きではなかったからだ。

 子供の時に耳で覚えただけだから、文法も分からなかったし、英文の本を読みたいとか、書きたいとは思っていなかった。そのことに気づくきっかけにはなった。 

 そして、漠然とではあるけれど、「やりたいことをやるには10年はかかりそうだ」ということだけは、分かったように思う。

“やりたいこと”より大事なもの

 昨今の厳しい状況を受け、大学側はキャリア教育と称して、「やりたいことを明確にしましょう」と学生たちに問いかける。受け入れる企業の側は、キャリア意識の高さのバロメーターとして「やりたいことは何か?」と問い続ける。

 組織の中であれ外であれ、やりたいことをやるには、10年はかかる。 そのことを“オトナ”たちは経験から知っているはずだ。

 だって、「やりたいことを明確にしましょう」と言っている人たちが、やりたいことができるようになったのはいくつの時? 「うちの会社でやりたいことは?」と問う人が、やりたいことができるようになったのは入社して何年目? ひょっとして、自分自身やりたいことがまだやれてなかったりする? 自問すれば分かるだろう。

 ――やりたいことをやるには、10年はかかるよ。

 なぜ、“オトナ”たちは誰も、それを学生たちに言ってあげないのか?

 「会社に入ったら自我を捨てろ。目の前のことだけをやれ」と言うのではなく、「目の前のことだけやるのは、つまらないと思うかもしれないけれど、それを続けていくことがやりたいことにつながるんだぞ」と、彼に教えてくれる先輩はいなかったのだろうか。

 どんな仕事であれ、仕事の9割は好むと好まざるとに関係なく、やらなければならない仕事の繰り返しである。自分のやりたい仕事というものは、何年もキャリアを重ねた結果、やっとたどり着けるものなのだ。

 一体いつから、「やりたいことがある」ことが、過剰なまでに評価されるようになってしまったのだろう?

 やりたいことがあることは、素晴らしいことだ。でも、それ以上に、やりたいことに向かって踏ん張ることの方が価値があると思う。

 50歳でやりたいことにたどり着いた男性は、自分のキャリア人生を「自分なりに満足できるものでした」と振り返った。今の20代たちは、この男性のような穏やかな笑顔でリタイアを迎えることができるのだろうか。

 入社する前に、入社した直後に、それが企業にとっても、個人のキャリアにとっても、大切な時期だけに、「やりたいことをやるには10年はかかる」と本当のことを言ってほしい。

 やりたいことを見つけるよりも、それにたどり着くために目の前のことを必死にやり続けることの大切さをもっと教えた方がいい。やっとやりたいことができた時の感激を薄れさせないためにも……。









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「新卒切り」

4月の入社時期の前後、内定学生や新入社員が理不尽な要求をされ、内定辞退や退職を迫られるケースが目立っている。「新卒切り」とでも言うべき事態だ。専門家は「きちんと採用計画も持たず、新人を調整弁にする企業もある」として、就職活動をする学生に注意を呼びかけている。

■怒鳴られ続け、9日目「自主退職」

 今春、京都市の私大大学院を卒業した男性(25)は、入社9日目で「自主退職」した。

 神戸市に本社を置くITコンサルタント会社に内々定が決まったのは昨年5月。東京に配属されたため都内に引っ越し、4月1日に入社した。

 初日。少し早めの15分前に出社した。いきなり上司から「他の人はもっと早く来ている。意欲が足りない」と叱責(しっせき)された。その後も、電話の応対や退社時間をとがめられ、「落ちこぼれ」「分をわきまえろ」「君が劇的に変わらなければ一切仕事はさせない」と怒鳴られ続けた。

 出社3日目からは、連日反省文を書かされた。

 そして4月9日の夜。上司から会議室に呼び出され「もうしんどいやろ?」と退職を迫られた。「まだまだ頑張れます」と反論したが、上司は「給料だけもらって居座るのか」とたたみかける。2時間近くたって疲れ果てた頃、退職届が目の前に差し出された。ぼうぜんとしたまま「自己都合」としてサインした。

 男性は先月末、この会社に復職するつもりはないものの「無理やり書かされた退職届は無効」として、社員としての地位確認と3年分の給与支払いを求める労働審判を東京地裁に申し立てた。

 「入社までに配属予定先が二転三転したり、同期4人が入社直前に内定辞退したりと、いま思えばおかしい点が多かった」と振り返る。当面、実家か親類宅に身を寄せて職を探す。「今度こそ注意深く選びたいが、新卒でもなく、えり好みできない現実もある」

  この会社は朝日新聞の取材に「コメントすることはない」としている。

 NPO法人「労働相談センター」(東京都葛飾区)には4月以降、「この業界に向いていない」「協調性がない」などの理由で解雇通知や退職勧奨を受けた新入社員からの相談が10件以上あった。

 相談員の須田光照さんによると、景気が回復せず採用計画の見込みが外れたという企業もあれば、とりあえず多めに採用し、後から適当に切っていくつもりだったとしか思えない企業もあるという。「(即戦力にならず)目算が狂ったと簡単に切り捨てる企業が増えている。人材を育てる意識が薄い」と指摘する。

■3月入社強要/「四つ資格取れ」

 内定学生が入社直前に、辞退に追い込まれるケースも。都内の私大女子学生(23)は昨秋、人材派遣会社の内定式で突然「3月に入社して下さい」と言われた。

 卒業旅行の日程を変えて「入社」。特別に休暇がもらえた卒業式の日と土日以外、毎日午前9時から午後6時まで、パソコンの使い方を覚えるというメニューだけで拘束された。大学に相談すると「あまりに異常」。悩んだが内定辞退した。同期120人の5分の1が辞めていくことを後で知った。「人を育てる姿勢がなかった。多く辞めることを見込んで採用しているとしか思えない」

 留年し、元後輩たちに交じって就職活動を続けている。

 都内の私大の元女子学生(24)の場合は、「内定切り」に遭い、昨年度留年して就職活動をした。

 内定していた都内のITコンサルタント会社からメールが来たのは一昨年10月。「入社前に取得して下さい」と四つの民間資格が示されていた。年明けの2月には直接呼び出され、いきなりIT知識を問うテストがあった。結果を見た執行役員から「君の大学では一生上に上がれない」「クズと同じだ」と面罵(めんば)された。涙が出た。

 卒業式前日、「情報を一切漏らしません」と署名し、内定を辞退した。大学のキャリアセンターは「内定取り消しと同様の悪質な事例」と判断し、会社に正式に抗議してくれた。1年間10万円で在籍できる特例措置も認められた。

 再就活中は、キャリアセンターの相談員と常に連絡を取り合い、圧迫面接を受けたことや内々定後にどの程度拘束されたかを逐一報告した。「後輩のためにも、会社の情報は大学に伝え、共有することが大切だと思った」。今春、別のIT系企業に就職。2回目の就活は「納得できた」という。

 元女子学生が内定辞退した会社は朝日新聞の取材に、事実関係を認めた上で「内定切りや新人切りではない。ゆとり世代の学生は甘いところがあり、厳しく接するのは教育」としている。

■内定期間も「労働者」、相談を

 内定期間や試用期間であっても、正当な理由のない解雇や退職勧奨は無効だ。だが、「自主辞退」や「自己都合」の場合、企業側の責任を認めさせるのは容易ではない。

 一昨年に内定取り消しが社会問題化し、厚生労働省は09年3月卒の学生2143人が取り消しに遭ったとして、悪質な企業15社を公表した。しかし、今春の卒業生については厚労省は「ごく少数」として公表しておらず、公表企業も出ていない。

 全国247私大の就職支援部署の責任者で作る「全国私立大学就職指導研究会」の土橋久忠会長は「取り消しという形で表面化した事例は一部。内定切り批判が高まり、むしろ企業の対応は巧妙化した」と指摘する。

 「首都圏青年ユニオン」(東京都豊島区)の河添誠書記長は心得として次の3点を挙げる。

 一つは、納得できない書類にはサインしないこと。退職届を書くよう迫られても「家族と相談したい」などと言ってとにかくその場を逃れる。二つ目は、内定期間や試用期間であっても「労働者」としての権利があると認識する。解雇は、客観的に合理的な理由があり、社会通念に照らしても妥当だと認められない場合は無効で、使用者と交渉する権利がある。三つ目は、いざという時の相談窓口を把握しておくことだ。



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