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音楽は一切の哲学よりもさらに高い啓示である

ロマン・ロラン

音楽は一切の哲学よりもさらに高い啓示である

なるようになる。
すべてがなるようになる。
ただ人間はそれを愛しさえすればよいのだ

一つの魂が完成するまでには、
長い時間と沈黙が必要なのだ

人生はいくたびかの死と、
いくたびかの復活とのひとつづきである

『ジャン・クリストフ』 

*****
魂は別に完成しなくても構わないが

なるようになるという言い方はいい

音楽は啓示である
なるほど
そのように思考する精神の緊張を私は保ちたい



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神は公平である

神は公平である

才能を与えたものには運を与えない

魅力的な人間は
嫉妬され
ライバルを作る

魅力ある人間は運を与えられない

才能のない者が運を割り当てられる

神は公平である
いいことだ

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いっそのことあばずれと呼ばれたい

あたしね、
いっそのことあばずれって
姉さんたちから呼ばれたいわ
だって世間から見たらみんなあばずれでしょ
そのなかでもっと一番のあばずれっていいじゃない

自分たちがあばずれなんだから
あたしをあばずれって非難できるかどうかおもしろいわ
でもやっぱりあの人たちがあたしを言うときはあばずれって言うのよ
それってね、
他人から自分が言われて
くやしいから
今度は私に向けて、
くやしいだろうっていう気持ちで言うんだと思うわ
だからおかしいのよ

あたしは堂々としていたいけどね
生きるってそういうことだし

あたしはまっすぐ行くだけだから気にしないよ

ときどきはね
普通だったら楽だったなあって
逃げるように思ってみることもあるけどね
普通にできるんだったらしてるんだわ
できないからこうなってるわけで
もう仕方ないわ

で、あしたはあばずれでいいんだけどさ、
あたしをあばずれって言ったあとの
あの人たちの気持ちの歯車のきしみようを見て見たい気持ちはあるよ
それでさ、まっすぐ行けばいいじゃないって、言いたいの

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日本映画「阿弥陀堂だより」 可能な人生

なんてすばらしい自然
91歳の大女優、北林谷栄
人間はいい
この世界はいい

筋書きではなく
自然と北林がいい

パニック障害が関係したお話です。

別の生き方ができるという展望を持つことは
とても大切だ。
歳をとっていけば、いつまでも同じ生活ができるはずもない。
その年代で、自分は一体何がしたいのか、
考えおなそう。
周囲のこと、映画や新聞も含めて、情報を集めて、
どんな人生が「可能」なのか、まず考えよう。



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オレンジ色の水着

オレンジ色のセパレート水着をつけて
あなたははしゃいでいる
バリ島はなんだかあなたをうっとりさせている

プライベートプールで横になって浮いている
オレンジ色が光っている

近くに仏教遺跡があるのだけれど
怠惰なので行きたくもない

若者のように性的衝動が溢れるわけでもない

わたしはあなたの物語を聞きたい
あなたの家族の物語
あなたの小さな冒険の物語

さまざまに変わる
輝く表情を見ていたい

持参したのは偶然タルティーニのセットで
バイオリンが鳴り続けている

わたしって、ピーコックかなと聞く
そうだよ、あなたはオレンジのピーコック
老人をとりこにして
いま味わっている

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自己愛と性 自己愛が性欲を搾取している

100年前には確かに性欲のことが問題だったのだろう
臨床としてはそうだったのかもしれない

しかしフロイトはそれを遙かに通り過ぎて
自己愛の領域についていろいろと書いている

なるほどとも思うが不思議な気もする

現在では性的抑圧の状況はどう判定すればいいのだろう
抑圧というよりも出口を求めてさまよう感じだろうか

原初的な性欲回路がそのまま孤立しているのではなくて、
自己愛回路と結合して、
むしろ自己愛回路の下部回路になっている。
自己愛が性欲を搾取している。

子孫を残すのだから性欲の問題は必ずあり
自分が生きているのだから愛着はあって自己愛の問題も必ずある
異常と正常の区別は難しいこともあり
結局社会の容認次第という部分が出てくるのも否めない
その部分については医学とは少し雰囲気が異なる

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しかし必ず地雷を踏んでしまうのである

専門家なら、地雷を踏まない知恵が必要だ。
しかし必ず地雷を踏んでしまうのである。

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あんたといる所が私の家だわ

前には家に帰りたくてしょうがなかった。
でも今ではどうでもよくなったわ。
あんたといる所が私の家だわ
映画 『道』 フェデリコ・フェリーニ

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中坊公平

朝日夕刊で紹介されている。
先日友人宅に行ったら、中坊公平の著作が何冊かあり、
「懐かしいね」などと言っていたものだ。
時代の寵児が一転して弁護士廃業。
詳細はまったく知らないが、「世の中ってそんなものかな、つらいね」と、
話し合っていた。

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発電風車で被害

発電用の風車の近くに住んでいる人が
低周波によるじりつ神経失調症で悩んでいるという

ありそうな話である

むかし病院の当直室の隣がボイラー室だった
ベッドに横になるとボイラーのうなりがしていた
私は眠れなかったが
他の人たちはみんなよく眠れていた

こんな場合は眠れないと言っている人が一人だけわがままで変なやつということになりがちである

風力発電というとこんないいことはないと思うのだけれど
低周波障害とは困ったものだ

いずれにしてももっともっと工夫して
風力、水力、波、太陽光、地熱、その他で発電して電力を輸出したいものだと思う。

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ネットによる国会傍聴

国会論戦で
堂々と相手を論破しろなどという意見があるが
そんなことができるはずがない
よほどのお人好しがあいてでなければ不可能である

ここには明白にバカの壁があるのであって
理性による最善手の模索などはできるはずがない

理性によって説得したいならば
きちんと文章を練り上げて
証拠と推論過程を明示して説得すべきである
国会のような場所で充分な理性の発露ができるとは思わない

普通裁判でよくやるように
お互いに文章を用意して応酬する
それを積み重ねて結論に至る
このプロセスを国会でも踏んで
それを逐次国民に後悔しながら行えばいいのではないだろうか

インターネットの時代になったのだから
国会議員は新聞に書いてもらわなくても
自分の論文とその資料をネットに公開できる

それに対する反論という形で
また論文と資料を公開する

それを何度か繰り返した上で
論点が出尽くし
あとは価値判断によるという地点まで行ってから
投票をすればよいのだろう

ネットによる国会傍聴である

*****
国会議員は
どうせ国民はバカだからあまり詳しいことは知らせない方がいいのだと思っているに違いない
それは正しい側面もある
パチンコがやめられなくて借金を作っている人に
何か正しい判断を期待しても無理だろうとの意見も考慮しなくてはならないだろう

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強迫性と不安

強迫性障害というほど明確できつい症状でなくても
強迫性の心性が生活のいろいろな場面で露出している場合は多くあり
興味深いことである

そもそも学校の勉強は強迫性傾向のある人に有利なようにできている
漢字とか歴史とか地理とか
原理も原則もなく
忘れてしまえばいくら考えても分かりようもない
そんなものを扱うには強迫性の心性が便利である

数学とか理科については原理も原則もあるので
強迫性がなくても頭がよければ分かる

農耕民族の心性と強迫性の心性は重なるだろうと
酒の席などでいわれる
確かに几帳面な漁師がいたとして、
一匹で100万円なんていう魚をつれるわけでもない
几帳面な農家ならかなり確実に稼ぐことができる

対人関係でも
確実なところがあるので信用は出るだろう
魚屋さんなどは朝早く仕入れにいってかなりの重労働であるが
強迫性がなければ続けられないとの意見がある

強迫性の人が年を取って頑固が加わると周囲はつきあいにくい
強迫性の人が認知症になるとこれもまたつきあいにくいところがある

几帳面という性格傾向と
強迫性障害という病気はどう関係しているのか
まだすっきりした説明はない

ばかばかしいと思っていても
やらずにはいられない
不潔ではないと頭で承知はしていても手洗いをやめられない
一回洗ったからいいはずだと理解はしているが手洗いをやめられない

不潔だと思い込んでいれば妄想である
しかし不潔だとは思っていないので妄想でしはないといわれる
そして
行為の点で止められないので強迫性障害と名付けている

考えてみれば
内心の確信としては不潔ではないのだが
行為のレベルでの確信としては不潔であるという妄想が居座っているものとも考えられる

つまり、
人間の脳の基本を自動反応機械として、
それに付随して発達した部分が自意識であるとすると、
自意識の部分では妄想はない、
自動反応部分で妄想がある、
これが強迫性障害である。

だからマウスにでも強迫性障害は起こるだろう。

自意識部分の方があとに発達した部分なので壊れやすくて
被害妄想などになりやすい

自動反応機械部分はそれに比較すれば安定したシステムである。

Windoewsが時間が経てば次第に安定するようなものだ

子どもの教育で反復学習をするというのは
強迫性の推進をしているわけで
やはりどの人も強迫性成分を発達させることになる
得に優等生はそうだと思う

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頭髪の間にかく汗

いまインフルエンザで
ちりちりと寒気などして
困っている人も多いことだと思う

悪寒が走ったあとは
汗が出て
困ったことに頭髪の間くらいにびっしりと汗をかくらしくて
このタイプの汗はなかなか乾いてくれない

夏にたくさん汗をかくときにもこんな汗ではないので
不思議なものだと思う

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ミッキーは

ミッキーは、笑うという目的のためだけに
任命された小さな人格なのだ
 
『ウォルト・ディズニー 夢をかなえる100の言葉』

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アイルトン・セナ

生きるならば、完全な、そして強烈な人生を送りたい。
僕はそういう人間だ。
事故で死ぬなら、一瞬のうちに死にたい

人生の中には、抵抗しようとしても
出来ないものがある。
僕には走るのを止めることは出来なかった。
僕に生命を与えてくれるのは戦いだよ。
この挑戦が無ければ、僕はもう、存在しないだろう

*****
ぼんやり生きているわたしには
コメントしようもない



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いろんな人の七転び八起き

考えてみれば、あの時も、この時も、この人生の中で何度か、
少なくとも三度、
私はすべてを失っている。
こんなにも大変だったかなと思ってね、
年表みたいなものを作ってみたの、
やっぱり変だわ、私の人生。
これは性格のせいなんだ、多分。

あの事件ですべてを失いました。
それでもこうして生きています。
これでいいです。
表面上のことじゃないです、
私は結局神様に誉められたいのだと思っています。
別に信仰しているわけではないんですが、
そんな表現がぴったりかな、と。
改まって言葉で言うのは難しいです。

そしてそこから新しく出発したのだ
一からやり直しは意外といい
プロ野球選手を辞めて
自動車整備工になるみたいな
すっかり新しい人生みたいでさ

屈曲点があります
私の人生には

私の人生は直角に曲がってしまう
いつもご破算なんです
過去を生かしながら はできないんだな
そしてまた初めからです
それでもこうして生きてきたよ
自分でも忘れているくらいのものです
そうね やっていけるものだよ
大変だったけどね
これも神様が私に割り当てたことなんだし
私だって神様の前で威張っていられるような立派な人間でもないし

むしろね
いつもいつも過去を引きずっているというのは
ばかげてるね
ご破算って好き

曲がっても、そのままでまっすぐに進みます
だってそれしかできないんだもの
それでいいの
全速力で前に進むしかないもの
時々休みながら



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目取真俊「群蝶の木」

単行本に収められている他の作品とは少し違う。
テーマとして錯綜している、私には少し複雑。
他の作品は、何といえばいいか、
絵で言えば、バラのデッサンみたいな感じ、
この作品は、いろいろなデッサンを集めて、
テーマを伝えたいと意図している感じ。

古い同級生Tの死、故郷の祭り、沖縄出身のゴゼイおばあ、戦争、
戦争で帰らない親戚、本土決戦、沖縄の男、女、本土の兵隊、
朝鮮半島の女、
これらの要素が作り出すテーマは、重い。

沖縄の土地に折りたたまれて圧縮された何かが、
解凍されて私たち読者の前に供されるが、
時間構造も解体されていて、それらを総合するには
読む側の構成力が必要とされるのだと思う。
そのようにして小説の中で事態を構成する練習をしたら、
今度は自分の人生について、また自分の現在について、
事態を構成してみればよいのだろう。
そのためのよい練習問題だと思った。

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W.シェィクスピア

やや古い翻訳から

*****
真実は行為で示され、
それを飾る言葉はない
『ヴェローナの二紳士』

恋ってのは、それはもう、
ため息と涙でできたものですよ

人生は動く影、所詮は三文役者。
色んな悲喜劇に出演し、
出番が終われば消えるだけ
 『マクベス』

悲しみの耳には
素直な言葉こそ入りやすいもの

涙流すな 嘆くな乙女
『から騒ぎ』

本を読んでも、物語や歴史に聞くところからでも、
真実の恋は滑らかに運んだためしがない

君、時というものは、
それぞれの人間によって、
それぞれの速さで走るものなのだよ
 
われわれは夢と同じものでできている。
そうして、われわれのささやかな人生は
眠りにつつまれているのだ
『テンペスト』

手負いの鹿は泣かせておけ、
傷なき鹿は、たわむれ遊べ。
眠らぬ人に眠る人、
世はさまざまじゃ

仕草をせりふに合わせ、
せりふを仕草に合わせたまえ
 
愛は境遇を左右するか、はた、
境遇が愛の先達となるかは、
われらに残されたる問題じゃ

女はバラのようなもの。
ひとたび美しく花開いたら、
それは散る時
『十二夜』

口に出してお嘆きなさい。
物言わぬ悲しみは、
張りつめた心へ向けてこっそりと、
裂けるように命ずるものです
『マクベス』



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愛してるなんて 誘ってもくれない

愛してるなんて 誘ってもくれない
キャンドルライトが 素敵な夜よ
ガラスの靴なら 星屑に変えて
真夜中のメリーーゴーランド
ついて行きたいの 

今夜だけでも
シンデレラボーイ Do you wanna dance tonight
ロマンテックをさらって Do you wanna hold me night

 ダンシングヒーロー 荻野目洋子  1985 

*****
動画でみると
なんとなく時代がかっていて
ジッタンン・ジンに似ているなと思い
そのころはみんながそうだったのかと
思う

*****
元曲があるわけで、
それに日本語をはめていったわけだが、

ロマンテックをさらって 

でぴたり決まりました。お見事!



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仕事に逃げる

苦しすぎるので仕事に逃げている人は結構いるものだ

仕事をしている限りは他人は褒めてくれる

だから問題は起こらないように見える
しかし実際は仕事に逃げているだけである
仕事に閉じこもっている
仕事でバリアーを張って現実を見ないようにしている

実際は逃避だけれど逃避に見えないようになっている

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必死に仕事をする

ただ必死に仕事をすることで
忘れられることがある
仕事に必死にならなければ忘れられない
世間に褒められ人に褒められ
そのことで自分で自分を褒めて
やっとの事で忘れることを肯定できる
やっとの事で忘れられる
そして忘れ続けるために
また必死で仕事を続ける
その先には何もないと知っている

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目を見て話しなさい

僕は母親に言われたことがあって、
それはとっても記憶に残っているんですが、
話をするときは、人の目を見て話しなさいというんですね。

いま自分で親になってみて、子どもに同じことを言ってまして、
親もこんな気持ちだったのかなと思ったりしています。

手紙を出すときはもう一回読んでから出すようにしなさいとか。
そんなことも。

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パンにカラシ

パンにカラシを塗るととてもおいしくなるので驚く
今更だが

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レストラン クレッセント

芝増上寺の近くにあるレストラン

最近は高級フレンチといえばホテルの中などにあるのが普通だけれど
ここは昔から独立しているらしい

果てしもない贅沢があるものだ
無論、こわいので近寄らない

ホテルに泊まるくらいなら
ここで食べたらどうかと一瞬思ったが
もちろん却下

マキシムのほうが少し安い

フォーティー ファイブ
東京ミッドタウン 45F
ここはすこし新しい

自分で肉を焼いて食べることにする。

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夫の知らない妻の本当の人生

そんなことが実際にある

不思議なくらいにちょうど露見しないらしい

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酔ってるの?あたしが誰かわかってる?

「酔ってるの?あたしが誰かわかってる?」「ブーフーウーのウーじゃないかな」
穂村弘

弘というなまえが渋い
小学校の先生の名前と同じだ

終バスにふたりは眠る紫の〈降りますランプ〉に取り囲まれて

体温計くわえて窓に額つけ「ゆひら」とさわぐ雪のことかよ

*****
もう私の周囲の風景は固定してしまっていて
終バスにも乗らないし
体温計も使わない
酔うこともないし
ブーフーウーを知ろうともしない

世の中に散らばっている宝石を
多分あるのだろうなと
思いつつ探検しなくなっている

ただベッドに横になり
古い本を読んでいる

*****
落語の本を読んでいたら、
「鼻ほしい」と「おかふい」という話があった。
粋なお道楽が過ぎると
鼻の障子がなくなってしまう。
夏座敷と言って、
言葉が鼻に抜けて具合の悪いことを言う。

余り出来のいい話とも思えないし、
第一、発声の不自由な人の事を笑うようにも受け取られるので、
もう演目としては難しいだろう。
しかしどうやって芸人が稽古をしたものか、
不思議ではある。

和歌を読んでしかもそれが鼻に抜けているので
分かりにくいから笑えない。

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ゼロから出発

私はいつでも
明日から
ゼロから出発
でいいと思っている

過去なんてないのだし
未来なんてないのだし
あるのは明日だけだ

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谷川俊太郎 5

すぐれた古典が音楽に限らずすべてそうであるように、ベートーヴェンの音楽も聞く者の生長につれていつまでもその意味を新しくする。私にはベートーヴェンがすっかり分かってしまってもう要らないということがない。

本当に苦しい時に私はベートーヴェンを求める。

私はベートーヴェンをまるで今生きている人間のように身近に感じる。
彼にはどこかしら音楽を超えたようなところがあるのだ。彼には自分を芸術家としてとどめておくことの出来ない何ものかがあるような気がする。
その何ものかのために、私はベートーヴェンと人間的に、実に素朴に人間的にむすびつけるように思うのだ。

「……私は、尚、二、三の大作をこの世に残し、それがすんだら、年とった子供になり、どこかで善良な人々に取り囲まれて、地上の命を終えたいと希っている。」ヴェゲレルに宛てた晩年の手紙の中で、ベートーヴェンはこう書いている。
子供になること、それはもしかするとベートーヴェンが一生の間夢みていたことではないだろうか。彼はあまりに感じやすく、あまりに傷つきやすかった。
しかし本当の子供のもっているあの一番の宝、やすらぎというものを彼はもてなかった。
それは客観的な環境によるよりも、彼自身の生まれながらに負うていた感受性によるものだと私は思う。

彼はおそらく必要以上に苦しむ悩む人間だった。しかし正にその点で彼は偉大だったのだ。



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谷川俊太郎 4

小学生時代に私も少々ピアノを習わせられたことがある。先日久しぶりにぽつりぽつり叩いていたらその頃の思い出が、別に具体的なことは何も思い出さないのだが、ありありとよみがえったのにわれながら驚いてしまった。音楽は不思議な力を持っているものだ。それはわれわれの記憶の中に長い間深く眠っているのだが、ふと引き出されることがあると、まるで長年沈んでいた舟のように沢山の記憶の貝がらをくっつけて出てくる。私は小さな小学生にもどってしまう。そして漠然としたかつての幼いかなしみや喜びの中に身をひたす。それらは限りなくやさしく、そしてかなしい。時の重さのためにその深い表情をあらわにしている。プルウストにとってのマドレーヌ菓子のように、それは私にとって果てもなくなつかしい不思議なものなのだ。

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谷川俊太郎 3

私は毎日のようにくり返しくり返しそれを聞いた。私はただ感動していた。私は生まれて初めて感動ということを知ったのだった。私はその感動からくるどんな思念もなく、ただ純粋にひたすらに音楽に身をまかせていた。そしてそうすることで、私は不思議に元気づけられるのだった。

人を楽しませる音楽はある。人を慰める音楽もある。だが、人をはげます音楽はそう沢山あるものではない。ベートーヴェンの音楽は人をはげます。それはリズムの空元気やフォルテシモのこけおどしではない。もっと内面から、たとえその音楽がどんなにはげしくとも、さらがら救いに似た静かな力強さでわれわれをはげましてくれるのだ。
それらは単なる凱歌以上のものだ。私にとって殆ど宗教的な意味を持っていた。それらは生命の根本からの最も力強いほめ歌なのだ。それは最も効力ある薬でもある。ベートーヴェンの音楽は人を生へと駆り立てる。

彼は沈黙に初めて人間的な戦いを挑み、そして勝ったのだ。

どんなに心の乱れている時にも、いや心だけではない私の肉体の病んでいる時にも、私はこの始まりの音を聞くと落ち着くことが出来る。子守歌のように、それは私を日常的なものから眠らせてしまう。そして私はもっと大きなもの、もっと深く力強いものに目覚め始める。

これは行為への祈りなのだ。ベートーヴェンは諦念の中で何もせずにじっとしてはいられない。彼はあきらめを知りつつも、人間の出来る限りのことをしたいと欲する。

私は沈黙してしまう。それは言葉にすることの出来るにしてはあまりに強く大きい。私はただ太陽に身をさらすように、その烈しさに身をさらす。そうするだけで、ひとつの大きな力が私を貫き、考えることもなく、思うこともなく、ただ馬鹿のように涙を流しているだけで、私は強くなっている。



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